USA Pioneer Express vol.6 -果てなき開拓地-

Kenta Hiroki

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はじめに

みなさんこんにちは。

前回の連載でも予想したように6月1日の禁止改訂で「相棒」そのものに変更が加えられました。キャストまでに追加で3マナの支払いが必要となったため、多くの場合一度手札に加えることになり、ハンデスされるリスクも生じるようになりました。しかし、レガシーやモダンほどスピードが要求されないパイオニアでは、新環境でも「相棒」は使われ続けるでしょう。

さて、前置きが長くなりましたが、今回の連載では先週末に開催されたPioneer Challengeの入賞デッキを見ながら環境がどのように変化をしたのかを解析していきたいと思います。

Pioneer Challenge #12168603
60枚Dimir Inverterの復権

2020年6月14日

  • 1位 Dimir Inverter
  • 2位 Izzet Ensoul
  • 3位 Azorius Control
  • 4位 Boros Burn
  • 5位 Lotus Breach
  • 6位 Bant Spirits
  • 7位 Mono Black Aggro
  • 8位 Sultai Delirium

トップ8のデッキリストはこちら

先週末にMagic Onlineで開催されたパイオニアの大規模イベントであるPioneer Challenge。60枚のクラシックな形のDimir InverterにBant SpiritsやSultai Delirium、「相棒」を使用したAzorius Control、Lotus Breach、Boros Burnなどトップ8にはさまざまなデッキが残りました。

パイオニアはレガシーやモダンのようにカードプールが広くないこともあり、弱体化はしたものの「相棒」は依然として多くのデッキに採用されています。

デッキ紹介

Dimir Inverter

Dimir Inverterは『イコリア:巨獣の棲処』リリース前の環境ではその支配的な強さゆえには禁止カードが出そうな勢いでもありました。しかし、マジックの歴史上もっとも壊れたメカニズムの1つとなった「相棒」が導入されると、支配力は薄れて普通に強いデッキの1つへとおさまったのです。

「相棒」を活用するデッキに対抗すべく、Dimir Inverter自身も《空を放浪するもの、ヨーリオン》を採用した80枚バージョンが主流になった時期もありました。しかし「相棒」のルール変更に伴い、古典的な60枚型が復権してきています。

☆注目ポイント

集団的蛮行ヴリンの神童、ジェイス

『イコリア:巨獣の棲処』リリース前に比べてBoros Burnが増えたため、メインから《集団的蛮行》が採用されています。ハンデスと除去を1枚で同時におこなえるフレキシブルなスペルです。

《ヴリンの神童、ジェイス》は赤単アグロが多い環境では《乱撃斬》で簡単に除去されてしまいますが、ミラーマッチやBant Spiritsなどが増えるようならメインからの採用が主流になりそうです。

Cry of the Carnarium

赤単アグロや黒単、Bant Spiritsが多い環境ではサイドボードに《肉儀場の叫び》は欠かせません。

Azorius Control

Dimir Inverterにも「相棒」として採用されていた《空を放浪するもの、ヨーリオン》ですが、長期戦を見据えた遅いデッキに噛み合っているクリーチャーであるため、1番フィットするのは青白系コントロールだと思います。

黒をタッチしたEsperバージョンも見られましたが、今回入賞を果たしたのは青白の2色でした。スイーパー(全体除去)とライフゲインを搭載しているためBoros Burnなどのアグロデッキに強く、打ち消しやプレインズウォーカーによってSultai Midrangeにも強い構成です。

☆注目ポイント

サメ台風空を放浪するもの、ヨーリオン

メインのクリーチャーは《夢さらい》のみで、デッキに多数搭載されたプレインズウォーカーでアドバンテージを稼ぎつつ打ち消しやスイーパーでゲームをゆっくりコントロールしていきます。また、《サメ台風》はパイオニアでも青いコントロールデッキのフィニッシャーとして定着しています。カウンターされずにインスタントタイミングでクリーチャー・トークンを生成できるため隙も少なく、ゲーム後半では余ったマナを注ぎ巨大な飛行トークンへと変わる優秀なサイクリングスペルです。

《海の神のお告げ》《エルズペス、死に打ち勝つ》《覆いを割く者、ナーセット》などのパーマネントを《空を放浪するもの、ヨーリオン》で使い回すことで多大なアドバンテージを稼ぐ動きは健在です。ネックとなる追加コストですが、元々最速5ターン目よりもある程度コントロールしきった後にキャストすることが多かったため、それほど問題になりません。

暗記+記憶覆いを割く者、ナーセットガイアー岬の療養所

《暗記/記憶》+《覆いを割く者、ナーセット》のコンボや《ガイアー岬の療養所》+《覆いを割く者、ナーセット》によるロックが採用されています。メインボードでエンチャントを多用しているためサイドボードには《太陽の恵みの執政官》が控えていますが、赤単アグロなど対アグロのほかにもアグレッシブサイドボードプランとしても使えます。

Lotus Breach

今回の変更は元々「相棒」が非採用だったLotus Breachにとってはノーダメージなだけではなくほかのデッキが弱体化したこともあり、一見すると有利な立ち位置です。

しかし、このデッキにとっての悪い知らせはハンデスとコンボの組み合わせが厳しいDimir InverterやBant Spiritsの復権です。復帰組の中ではSultaiなど有利なマッチアップも存在しますが、メタゲームによっては以前よりも厳しくなりそうです。

☆注目ポイント

夢の巣のルールス死の国からの脱出

今大会で結果を残したリストは《夢の巣のルールス》を「相棒」としたバージョンでした。条件を満たすために《砂時計の侍臣》を諦める必要がありますが、《巧みな軍略》《サテュロスの道探し》などで墓地に落ちた《死の国からの脱出》もプレイできるためコンボが決めやすくなります。追加マナは《睡蓮の原野》+《演劇の舞台》+《見えざる糸》《熟読》によって大量に出るため、あまり気になりません。

漸増爆弾精霊龍、ウギン萎れ

サイドボードには《漸増爆弾》《神々の憤怒》などBoros BurnやBant Spiritsといったアグロデッキ対策に多くスペースが割かれています。《精霊龍、ウギン》《漂流自我》でコンボパーツを狙ってくる相手用の追加の勝ち手段として機能します。

『イコリア:巨獣の棲処』からの収穫は《夢の巣のルールス》以外では《萎れ》があります。「サイクリング」付きスペルなので腐りにくく、このデッキにとって厄介な対策カードである《減衰球》用に多くのマッチアップでサイドインされます。

Bant Spirits

「相棒」を採用しにくいということもあり数を減らしていたBant Spiritsでしたが、「相棒」デッキが弱体化しメタゲームが変化したため復権してきました。Dimir InverterやLotus Breachといった環境を代表するコンボデッキと互角以上に渡り合え、プレイヤーズツアー・名古屋2020の優勝デッキであり、新環境の有力なデッキの1つです。

《夢の巣のルールス》を使ったBoros Burnなどアグロデッキが弱体化していることも追い風になりそうです。

☆注目ポイント

基本的な構成は『イコリア:巨獣の棲処』リリース前と変化がなく、瞬速クリーチャーをロードで強化してクロックをかけつつ《呪文捕らえ》《霊廟の放浪者》《集合した中隊》でバックアップしていきます。

無私の霊魂鎖鳴らし

《無私の霊魂》によってスイーパーもシャットアウトすることができるため青白系のコントロールに強く、《鎖鳴らし》と組み合わせることで《至高の評決》に対して実質的に打ち消しのように機能します。

オジュタイの命令ドロモカの命令

サイドボードの《オジュタイの命令》は用途が広く、Dimir Inverter戦ではキーカードである《真実を覆すもの》をカウンターし、Boros Burn戦ではライフゲインしたりと多くのマッチアップで活躍するスペルです。モダンの《謎めいた命令》を彷彿とさせる1枚になります。

アグロデッキを苦手とするため《ドロモカの命令》《秋の騎士》などが多めに積まれています。《ドロモカの命令》は火力を対策しつつ相手のクリーチャーを除去したりと、Boros Burnとのマッチアップで特に活躍します。

総括

「相棒」のルール変更によってカード自体は弱体化したものの、使用可能なカードプールの関係もありデッキの存続に影響するほど致命的ではありませんでした。

環境はDimir InverterやBant Spiritsが復権し、「相棒」を使用するAzorius ControlやBoros Burnなどデッキの種類も多く群雄割拠となった印象です。

USA Pioneer Express vol.6は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら