つい数か月前まで環境はバントカラーに染まっており、猫も杓子も《集合した中隊》から《反射魔道士》や《呪文捕らえ》をプレイしていたことを、みなさんは覚えているだろうか?
しかしそれでいて、月日が流れ『タルキール龍紀伝』と『マジック・オリジン』がスタンダード環境からローテーション落ちすると、世界は一瞬で「緑黒昂揚」「赤白機体」「青白フラッシュ」「赤緑《霊気池の驚異》」に移ろいこの緑白青の組み合わせはまったくと呼んでいいほど見られなくなってしまった。
落花流水の理を感じさせるエピソードではあるが、とはいえそれだけ《集合した中隊》や《ヴリンの神童、ジェイス》は替えの効かないカードであり、反対に新たに環境に追加された《密輸人の回転翼機》や《霊気池の驚異》といったカードのインパクトが強烈だったことがよくわかる。
しかし、みなさんは覚えているだろうか? バントカンパニーに採用されていた強力なクリーチャーたちの多くはまだ環境に残されていることを。
そして、近年のカラー・パイに忠実なカードデザインにおけるバントという色の組み合わせの万能性……すなわち攻めも守りも器用にこなす柔軟なカラーリングであるという点は、未だ不変であるということを。
その事実を裏付けるかのように、髙橋 哲大(東京)はこのThe Last Sun 2016に《実地研究者、タミヨウ》が4枚採用された「バントタミヨウ」を持ち込んで、上位テーブルに残っていた。
本記事では、知る人ぞ知る【エターナルブルーマスター】、髙橋の個性的なオリジナルデッキについてインタビューを行った。
髙橋 哲大
--「このデッキを作成された経緯について教えてください」
髙橋「【プロツアー『カラデシュ』】の結果を受けて、【BMO vol.8】などの国内イベントで『緑黒昂揚』が流行したことから、これらに対してアドバンテージを取って勝とう!と考えたのがきっかけです」
--「アドバンテージの取り合いというと、具体的にはどういった要素から構築を開始されたんですか?」
髙橋「まずは環境随一のドローエンジンである《不屈の追跡者》と、クリーチャー中心のデッキと相性がよく《密輸人の回転翼機》にも強いプレインズウォーカーである《実地研究者、タミヨウ》を4枚使うことからスタートし、色の合う優秀なクリーチャーを枚数を調整しつつ追加していく形でデッキにしました」
--「なるほど。このデッキの基本的な動きはどういったものになるのでしょうか?」
髙橋「最序盤はクリーチャーを展開しつつ相手の攻撃を凌いで土地を伸ばし、4~5ターン目以降は以降は《不屈の追跡者》や《実地研究者、タミヨウ》によってアドバンテージを稼いで横並びさせ、一気に押し切るデッキです。相手がもたついているときは早い段階で殴り始めることもできますし、臨機応変に攻撃と防御を入れ替えることができるのが強みです」
--「なるほど。ちなみに、一部のカードに見られる1枚挿しにはどのような意図があるのでしょうか?」
髙橋「《往時の主教》は5枚目の《不屈の追跡者》として採用していて、特に『白青フラッシュ』に対しては2/3飛行というサイズが優秀なこともあって活躍してくれます。《新緑の機械巨人》は《最後の望み、リリアナ》に対して強いのですが、動きとしてもっさりするので採用は1枚だけに留めていて、サイドアウト率もやや高めです」
--「ありがとうございます。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》についてはどうでしょう?」
髙橋「《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はメインボードの4マナ域が渋滞しやすく、『白赤機体』のようなアグロデッキ相手にはあまり仕事をしない関係でメインボードには1枚だけですが、メイン1サイド1と枚数を散らしているのでミッドレンジ相手には増やすことが多いです」
--「ふむふむ……ちなみに、デッキを拝見するとなんとなく《約束された終末、エムラクール》に弱そうな印象を受けるのですが、いかがでしょうか?」
髙橋「そこそこ厳しいです(笑) なので、除去は全て追放除去を入れていて《最後の望み、リリアナ》で回収されないようにしています。ただ、《約束された終末、エムラクール》が出てくる頃にはこちらもマナが伸びていて手札も潤沢、という状況が多いのでアドバンテージ差で押し切れることも多いです」
--「とにかくアドバンテージとマナを伸ばすことが重要なわけですね。有利なデッキや苦手なデッキなどはありますか?」
髙橋「ミッドレンジ系のデッキに対してはアドバンテージ戦略が刺さり、サイドボード後は軽いところを抜きながらプレインズウォーカーを大量投入することでマッチを通して有利に戦えます。他にも《呪文捕らえ》が効果的な『《霊気池の驚異》』系のデッキにも有利ですが、『青白フラッシュ』のブン回りや『緑黒昂揚』の6ターン目《約束された終末、エムラクール》、みたいな“極端に強い動き”には対応しきれないことがあります」
--「ブン回りに対処しにくい、というのもバントらしいのかもしれませんね。最後にこのデッキを使いたいという方へアドバイスなどがあれば教えてください」
髙橋「メインボードの土地26枚というのを見ていただければお分かりいただけるかもしれませんが、土地を伸ばすことが非常に大切なデッキなので『あと1枚土地引けば回る!』みたいな際どいハンドはキープしないようにしましょう。逆に言えば、マナさえ順調に伸びれば攻防に渡って非常に安定した動きが期待できますよ」
--「ありがとうございます。この後も頑張ってください!」
攻守一体の《実地研究者、タミヨウ》を主軸に据えた「バントタミヨウ」。『霊気紛争』の新カードである《アジャニの誓い》などによってさらに強化されることがあるかもしれない。
髙橋 哲大はインタビュー時点(Round9)で7-2の成績を残している。彼と「バントタミヨウ」とから目が離せない!
5 《平地》 3 《森》 1 《島》 3 《大草原の川》 1 《梢の眺望》 4 《進化する未開地》 4 《植物の聖域》 3 《霊気拠点》 1 《要塞化した村》 1 《伐採地の滝》 -土地 (26)- 4 《導路の召使い》 3 《無私の霊魂》 2 《森の代言者》 4 《呪文捕らえ》 4 《不屈の追跡者》 3 《反射魔道士》 1 《往時の主教》 2 《大天使アヴァシン》 1 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (24)- |
2 《停滞の罠》 3 《密輸人の回転翼機》 4 《実地研究者、タミヨウ》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (10)- |
3 《呪文萎れ》 2 《自然のままに》 2 《否認》 2 《生命の力、ニッサ》 1 《神聖な協力》 1 《石の宣告》 1 《隔離の場》 1 《罪人への急襲》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード (15)- |
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