Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/9/22)
夜明け間近
『ゼンディカーの夜明け』の全カードリストが出ましたが、直近2年のエキスパンションと比べて、個々のカードパワーが大きく下がっているというのが初見での印象です。モダンで多少使われそうなカードもちらほらあるものの、その多くはここ1年半のカードからは大きくパワーが落ちています。
それを踏まえて、私がモダンで使えるようになるのを1番楽しみにしているカードは《創造の座、オムナス》です。《オムナス》は現在のモダンにも通用するカードパワーがあると感じていて、これから数か月の間にモダンへ与える影響を楽しみにしています。
『ゼンディカーの夜明け』注目カード
まず、『ゼンディカーの夜明け』の《オムナス》以外のカードで、モダンで見かける可能性があるものについて語っていこうと思います。どれも頻繁に使われるカードかはわかりませんが、いくつかのアーキタイプで居場所を見つけることでしょう。
土地のモードを持つ両面カード
土地のモードを持つ両面カードですが、神話のソーサリー/土地の両面カードである《エメリアの呼び声》、《海門修復》、《アガディームの覚醒》、《髑髏砕きの一撃》、そして《変わり樹の共生》の5種類以外にはあまり注目していません。これらのカードをデッキに入れる機会コストは低いので、5種類すべてが多少なりとも使用されるでしょう。
そうは言ったものの、元々3色以上のデッキには単色の土地を入れる枠があまりなく、先ほど挙げた5種類のカードも入れるメリットがそこまでないのなら、代わりに《溶岩の投げ矢》や《神秘の聖域》のために基本土地の枠を確保するほうが有益でしょう。
モダンの歴史を振り返ると、複数のモードを持つカードは弱いことが多いようです。《大魔導師の魔除け》や《謎めいた命令》、《ボロスの魔除け》を例外として、ほとんどのカードは定着できませんでした。特定のゲームプランに沿ったカードとの競争に勝てない印象です。
このようなモダンデッキの成立初期に姿を見せては、デッキの最適化が進むにつれて姿を消すカードの代表例として、《イゼットの魔除け》が思い起こされます。幸運にも上記の5種類のカードは土地と枠を争うので、モダンで使われる可能性は高くなるでしょう。
《変わり樹の共生》はアミュレットタイタンで使えるため、1番モダンに影響がありそうなカードです。《原始のタイタン》から土地としてサーチすることはできないものの、デッキ内の土地の総数を減らさずに脅威となるカードを増やし、序盤に土地として置いても後々バウンスランドで戻すこともできます。
私がアミュレットタイタンの名手だと考えているWill Pulliamは、「今後のアミュレットタイタンは《変わり樹の共生》を4枚採用することが標準になる」と考えており、私もそれに同意しています。
2 《冠雪の森》
1 《樹木茂る山麓》
1 《繁殖池》
1 《魂の洞窟》
4 《シミックの成長室》
3 《グルールの芝地》
2 《ゴルガリの腐敗農場》
4 《ギャレンブリグ城》
2 《トレイリア西部》
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
1 《ボジューカの沼》
2 《死者の原野》
1 《幽霊街》
1 《ハンウィアーの要塞》
1 《光輝の泉》
1 《ヴェズーヴァ》
-土地 (31)- 4 《桜族の斥候》
4 《迷える探求者、梓》
4 《イリーシア木立のドライアド》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (16)-
《古の緑守り》
《変わり樹の共生》だけが新たにアミュレットタイタンやそれと似たデッキに加わる唯一のカードではないかもしれません。アミュレットタイタン系のアーキタイプでは《ラムナプの採掘者》をサイドインすることがあります。《ラムナプの採掘者》のマナ・コストの軽さは魅力的ですが、戦場にフタをできる《古の緑守り》のほうがより価値ある選択肢となる可能性があります。
普通のランプデッキでも《召喚士の契約》や《エラダムリーの呼び声》のサーチ先として、デッキに1枚入っていても驚きはありません。バウンス・ランドとの相性はよくありませんが、《死者の原野》や《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と合わさるとゲームを終わらせる確かな力があり、《幽霊街》と一緒にアミュレットタイタンで使っても良いでしょう。
《海門の嵐呼び》《マグマの媒介者》
両方ともモダンよりもレガシーで活躍すると考えているカードです。これは《秘密を掘り下げる者》や《戦慄衆の秘儀術師》のようにインスタント/ソーサリーとの関わりが大きいカードにはありがちなことで、そうなる最大の要因はモダンよりもレガシーのほうが強いキャントリップが多いことです。
そう考えると、モダンで《海門の嵐呼び》はあまり活躍しないでしょうが、《マグマの媒介者》は赤い果敢デッキに入る可能性がありそうです。この手のデッキは最近になって、ロングゲームをしながら必要に応じて急速に攻めに転じられるようになってきているからです。
新しい土地対策
『ゼンディカーの夜明け』から《当惑させる難題》と《石成の荒廃》、《浄化の野火》という新しい土地対策が加わります。どれもすごく強いとは思っていません。《石成の荒廃》と《浄化の野火》は《広がりゆく海》とよく似ていますが、《広がりゆく海》自体がそこまで使われていませんからね。
それでもモダンにとって歓迎すべきなのは、選択肢が追加されるということです。このような対策カードが存在することで、特定のカードが禁止入りする可能性が減るのはとても好ましいと考えています。オーバーパワーと思われるカードを禁止告知によって解決するのではなく、新カードによって対策する姿勢は素直に嬉しいです。
さらに《当惑させる難題》と《浄化の野火》は序盤に相手の土地をロックする新しいデッキを誕生させるかもしれません。両方とも《幽霊街》や《廃墟の地》と相性が良く、白単《砂の殉教者》デッキをそれなりに使った身としては、基本土地の採用枚数の少なさを咎める戦略は好感がもてます。
アグロ向きの「上陸」カード
《スカイクレイブの鶴嘴》、《アクームのヘルハウンド》、《山火事の精霊》の3種類は《ステップのオオヤマネコ》と《板金鎧の土百足》に並んで、「上陸」アグロでは強烈なカードです。今の「上陸」アグロは4ターンキルが失敗だと思えるほど、理論上3ターンキルを頻繁に狙えるデッキとなるでしょう。問題は1つの勝ち筋に頼りすぎていることで、デッキ内のクリーチャーがほとんどタフネス1になってしまうので、《溶岩の投げ矢》や《レンと六番》のようなカードに対して脆弱になってしまう点です。
過去のモダンにおいて、《風景の変容》を採用した「上陸」アグロが存在していたのを覚えています。この呪文を「上陸」を4回誘発させるためだけに採用するのではなく、数枚搭載された《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を織り交ぜることで土地7枚から18点の火力を出す古典的なコンボも使えるようにしていました。
《這い回るやせ地》
このカードは一般的なトロンでもエルドラージトロンでも使われると想定しています。複数枚入るかもしれませんが、少なくとも1枚の枠を作るのは簡単だと思いますし、トロンがマナフラッドを起こしたときに引けていればかなりメリットのあるカードだと考えられます。《致命的な一押し》や《流刑への道》で簡単に対処される可能性はありますが、特に消耗戦を挑んでくる相手に対しては、相手の解答よりも脅威を1枚多く持ってさえいれば勝てるものです。デッキトップから引いた《探検の地図》や《森の占術》から巨大なクロックを用意できれば、モダンでも多くの試合で勝利につながるでしょう。
特にエルドラージトロンの場合には《這い回るやせ地》のスペースを確保するために、これまで採用していた《探検の地図》でサーチ可能なマナ生成以外の能力を持つ土地の種類を減らすことや、逆に土地の総数自体を増やすことさえも考えられます。
1 《魂の洞窟》
4 《エルドラージの寺院》
4 《ウルザの鉱山》
4 《ウルザの魔力炉》
4 《ウルザの塔》
3 《這い回るやせ地》
2 《爆発域》
1 《幽霊街》
-土地 (25)- 3 《歩行バリスタ》
4 《作り変えるもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
-クリーチャー (15)-
1 《歩行バリスタ》
1 《ワームとぐろエンジン》
1 《隔離するタイタン》
1 《トーモッドの墓所》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》
1 《液鋼の塗膜》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《倦怠の宝珠》
1 《罠の橋》
1 《見捨てられた碑》
1 《神秘の炉》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
-サイドボード (15)-
《創造の座、オムナス》
冒頭でもふれましたが、モダンでの活躍を1番楽しみにしているのはこの《創造の座、オムナス》です。現在のモダンは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》デッキに支配され、それぞれスゥルタイ、ティムール、バントのどの色でも似たようなミッドレンジ/コントロールの戦略を取っているようです。《オムナス》 は新たな環境の支配者として、RGWU(黒抜き4色)ミッドレンジ《ウーロ》が誕生するきっかけとなりそうです。
私の想定では、4マナのカードが欲しくなるどんな状況でも機能しそうなカードであり、また、《オムナス》デッキを構築する際の難所は4色を使うことではなく、2度目の「上陸」で生まれたマナをどう有効活用するかという問題です。
《オムナス》とフェッチランドを同じターンに出して合計5マナを得ることがプレイングの定石となりそうなので、マナを能動的に使えるカードを見つけたいということです。5マナ全部を使い切ることは必須ではなく、マナを使い切りたいがあまり《不屈の巡礼者、ゴロス》のような本来のゲームプランから逸脱したカードはデッキに入れないほうが良さそうです。
1 《山》
1 《森》
1 《冠雪の島》
1 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
2 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《蒸気孔》
2 《神秘の聖域》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
4 《沸騰する小湖》
2 《死者の原野》
1 《廃墟の地》
-土地 (28)- 2 《瞬唱の魔道士》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
3 《創造の座、オムナス》
-クリーチャー (8)-
2 《流刑への道》
4 《成長のらせん》
2 《マナ漏出》
1 《差し戻し》
3 《否定の力》
2 《謎めいた命令》
1 《嘘か真か》
1 《サメ台風》
1 《レンと六番》
2 《時を解す者、テフェリー》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (24)-
コントロールによくみられる相手の戦略に対応するデッキは、常に想定されるメタゲームに合わせてデッキ構築を調整する必要があります。《オムナス》の3度目の「上陸」で与えられるダメージは相手に大きなプレッシャーを与えられるので、プレイヤー本体も狙える《稲妻》を除去枠の主役に据えるという発想には一貫性があります。その方向性で相手によりプレッシャーをかけるカードを探していくと、《瞬唱の魔道士》と《サメ台風》が見つかります。
《オムナス》についてもう1つ付け加えるならば、2度目や3度目の「上陸」能力の誘発にそこまで重点をおく必要はないということです。アグロ相手ではフェッチランドを引いた際にフェッチランドの起動を相手のターンまで待つことで、毎回8ライフ回復できます。アグロにとって、それを乗り越えるのは難しいはずです。
《オムナス》は4色サヒーリのようなデッキでも使えるはずですが、現時点では《ウーロ》と一緒のデッキを構築することが最上級の使い方でしょう。現環境のモダンで《ウーロ》を使わないことは誤りだとすら思っています。
現在のモダンについて感じていること
本当はもっとマジックをやりたいのですが、今はそこまでたっぷりやれていません。モダンとレガシーのメタゲームの変化を観察しているだけというときも多いです。本音を言えば、現時点でモダンで《ウーロ》を禁止して欲しいとさえ思っています。
果敢デッキやビッグ・マナ戦略が成功しているのをみることもありますが、日々のメタゲームの変化のなかで《ウーロ》系ミッドレンジが対応しようとしている攻め方に対して、軸をずらした異なるアプローチを採っているだけに思えます。《ウーロ》は単純にどのデッキに対しても機能する強すぎるカードだと感じていて、《否定の力》と合わさることで、かつてのミッドレンジデッキが抱えていた弱点の多くをも克服しているように思えるのです。
2018年にゴールドレベル・プロになったころに「どうしてそんなにモダンが好きなのですか?」と聞かれれば、「そのとき1番警戒されていない常識外れのデッキを見つけるのが大好きなんですよ」というような答えを返すことが多かったですね。それが墓地利用デッキや《オパールのモックス》デッキであれ、《むかつき》や「ストーム」のような非クリーチャー呪文中心のコンボであれ、逆に「感染」や《献身のドルイド》のようなクリーチャー主体のコンボであれ、とにかく週末の大会で正しいデッキ選択をできるように準備していて、ミッドレンジやコントロールは避けることが多かったのです。
ジャンドのようにメタゲーム上のデッキどれに対しても互角に近い相性を持っているものを大会で使用するという発想は好きになれませんでした。私がマジックで1番好きなのはデッキ選びとデッキ調整です。確かにアミュレット・ブルームのように毎回使ってもいいと思えるくらい突出して好きなデッキはありましたが、ほとんどの場合、あらゆる選択肢のなかからその大会で1番相手の想定外となりそうなデッキで勝つことに挑戦してきました。
しかし、今のモダンでそれをやろうとするのは賢明な判断ではありません。この数年で、ミッドレンジとコントロールが使えるカードを獲得し過ぎてしまったためです。
ミッドレンジ戦略が『どのデッキ相手にも勝率50%:50%の相性だ』という時代から、現在は『55%:45%かそれよりもいい勝率になっている』と感じる時代に移ったと思います。主な原因は《否定の力》《神秘の聖域》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の3枚でしょう。このなかで《神秘の聖域》と《ウーロ》は近い将来に禁止されて欲しいと思っています。
これらのカードは面白くないワンパターンなゲーム展開につながっているだけでなく、モダンのミッドレンジとコントロールをひとつの巨大なアーキタイプにまとめてしまっている印象を受けます。かつてのジャンド・青白コントロール・ティムールのミッドレンジ/コントロールの代わりに、今ではスゥルタイ《ウーロ》・バント《ウーロ》、そしてティムール《ウーロ》と対戦しているのです。
《否定の力》については《神秘の聖域》や《ウーロ》と一緒に使われなければ、特に問題ではないと考えています。ゲーム開始時のロンドンマリガンを手札選びに有効活用しているネオブランドやドレッジのようなデッキにリスクを負わせるためには、《否定の力》は必要です。ただ、青いミッドレンジやコントロールがゲーム中盤に『《ウーロ》を「脱出」させるためにガードを下げるけど、何かあったときは《否定の力》でカバーできる』というような、隙のない一種のコンボめいた動きをするのが好きになれないのです。
モダンでコンボデッキを使っていると、以前はコンボを仕掛けるタイミングを探っている時間こそ重要な場合が多く、たとえば《屑鉄さらい》で攻撃したり、《天使の嗜み》や《ファイレクシアの非生》がないにもかかわらず《むかつき》を唱えてみたりと、相手にマナを使わせるためにプレッシャーをかけることが多くありました。ところが、今はコントロール側のプレイヤーがゲームの主導権を握っていると感じることが多く、対してコンボ側にできることは少なく感じます。
6/6のクリーチャーである《ウーロ》はゲームを素早く終わらせられる脅威であり、アグロを相手にすれば相手の攻勢をしのぐ助けになり、ゲームが長引いた場合でもデッキ内の土地総数が多いにもかかわらず、《神秘の聖域》と《死者の原野》があるおかげでマナフラッドを気にしなくてもいいのです。
記事の前半でカードが禁止されることが好きではないとはいいましたが、もはや《神秘の聖域》と《ウーロ》は、モダンで最近禁止されたカードよりも影響が大きな存在になっています。この2種類を禁止することは《時を越えた探索》や《宝船の巡航》、《死儀礼のシャーマン》と同じくらい正当化しやすいことです。どれもフェッチランドと組み合わせると強すぎるカードであり、それはモダンがフェッチランドを使えるフォーマットのなかで1番カードパワーが低いフォーマットだからです。
おわりに
モダンに変化が早めに起こることを望んでいます。現在、紙のマジックの大会が存在していないことでその変化は認識しにくくなっているかもしれませんが、ほぼすべてのフォーマットで有力なミッドレンジ/コントロールデッキが《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を中心に構築されており、もはやマジックは別のゲームになってしまったように感じます。
この記事はいつもより不満を多く書いてしまいましたが、最後まで読んでくれた読者に感謝したいと思います。
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