『ゼンディカーの夜明け』発売後の勝ち組は?
テーブルトップでもついに『ゼンディカーの夜明け』がリリースされ、先週末はオンライン上のものを含めて複数の大会が開催されました。メタゲームはどのように形成されたのでしょうか?今回は最新エキスパンションの影響をみていきたいと思います。
今回は『ゼンディカーの夜明け』環境初陣戦とRed Bull Untapped Japan Qualifier、そしてSCG Tour Online Season Two Championshipの大会結果を振り返っていきます。
まずは先週末の勝ち組デッキを確認していきましょう!
4 《森》
1 《平地》
1 《山》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《岩山被りの小道》
2 《枝重なる小道》
-土地 (28)- 4 《水蓮のコブラ》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《創造の座、オムナス》
2 《峰の恐怖》
-クリーチャー (14)-
先週末の勝ち組はオンライントーナメントを軒並み制した4色オムナスになります。《水蓮のコブラ》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《耕作》のマナ加速から展開するランプデッキであり、《僻境への脱出》でリソースを稼ぎ、勝ち手段へと繋げます。《創造の座、オムナス》はデッキの接合役であり、4/4という場持ちのいいサイズながら手札を減らさずに召喚でき、「上陸」すればライフとマナの供給源となってくれます。
主たるフィニッシュブローは《発生の根本原理》(から出るパーマネント)であり、《精霊龍、ウギン》や《峰の恐怖》で場を制圧していきます。戦場にでるパーマネントが土地に偏ってしまったとしても、《水蓮のコブラ》や《創造の座、オムナス》が戦場にいればマナを生成できるため、再度《発生の根本原理》をキャストすることも可能です。
MTGアリーナにより環境解明が加速し、すでに4色オムナスのミラーマッチを視野に入れた構築が生まれています。メインボードに採用された《神秘の論争》によって《創造の座、オムナス》や《発生の根本原理》を打ち消すことで大きくテンポをとり、返すターンに自分のビッグスペルを通して優位を確固たるものとします。
アグロに対しては、メインボードは《水蓮のコブラ》の生存有無と《創造の座、オムナス》の「上陸」によって《発生の根本原理》までたどりつけるかどうかの速度勝負となります。サイドボード後は《轟く叱責》や《砕骨の巨人》といった除去呪文が増えるため、ゲームスピードをコントロールしやすくなります。
『ゼンディカーの夜明け』環境初陣戦
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 小西 詩穂 | ディミーアローグ |
準優勝 | 宮田 健太郎 | アゾリウス《運命の天使》 |
トップ4 | 上間 善一郎 | ディミーア変容 |
トップ4 | ナカツカ ショウタ | 4色オムナス |
トップ8 | 金井 匠馬 | 白単アグロ |
トップ8 | 島崎 啓太 | 赤単アグロ |
トップ8 | 竹内 篤史 | ディミーアローグ |
トップ8 | 木下 祥 | ディミーアローグ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者38名で開催された『ゼンディカーの夜明け』環境初陣戦は、ディミーアローグを使用した小西 詩穂選手の優勝となりました。トップ8には6種類と多用なアーキタイプが残り、環境の本命と謳われた4色オムナスはトップ16にわずか1名のみと厳しい結果となりました。反面、《トリックスター、ザレス・サン》擁するディミーアローグはトップ16に5名を送り込み、躍進を遂げました。
同じディミーアカラーでも、上間 善一郎選手が使用したのは「変容」をフィーチャーしたディミーア変容。ディミーアローグと同じく瞬速を持つクリーチャーが主力であり、土地を見ただけでは区別がつかないため、相手の思考をミスリードできる可能性があります。
4色オムナスは除去が薄くクリーチャー主体のデッキであるため、《発生の根本原理》で複数のパーマネントが並ばない限り《飛びかかる岸鮫》と《哀歌コウモリ》を「変容」することで大きくテンポをとり、ゲームを優位に進められますね。デッキテクでも語られている通り、押し込みが強いデッキとなっています。
宮田 健太郎選手のアゾリウス《運命の天使》も独創的なデッキと言えるでしょう。白のクリーチャーを青のスペルでサポートする構成であり、《エメリアのアルコン》や《スカイクレイブの亡霊》の加入によってコントロール力が格段に上昇しています。
《スカイクレイブの亡霊》は自身が除去されても追放していたカードは戻らないため、《幸運のクローバー》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》など厄介なパーマネントを元から絶ってくれる便利屋さん。白をメインカラーに据えたデッキではよくみる1枚になるでしょう。
デッキ名にもなっている《運命の天使》はクリーチャーデッキ同士ならゲーム支配するだけの力がありますが、代わりに対戦相手に戦闘ダメージが入るたびに自分と相手両者ともにライフゲインをすることになります。基本はマナカーブ通りに展開するビートダウン戦略を主体としていますが、赤単や緑単アグロといったライフを削ることにのみ特化したデッキに対しては、ライフ35点を目指していくまったく別のプランをとることになりそうです。
トップ8デッキリストはこちら。
ディミーアローグ
4 《沼》
2 《寓話の小道》
4 《清水の小道》
2 《欺瞞の神殿》
-土地 (19)- 4 《マーフォークの風泥棒》
4 《盗賊ギルドの処罰者》
4 《空飛ぶ思考盗み》
4 《厚かましい借り手》
4 《夜鷲のあさり屋》
2 《ブラックブルームのならず者》
2 《玻璃池のミミック》
3 《トリックスター、ザレス・サン》
-クリーチャー (27)-
『ゼンディカーの夜明け』によって誕生したディミーアローグは、相手の墓地に8枚以上カードがある場合に強化されるカードを多用しているデッキです。瞬速を持つクリーチャーがほとんどであるため隙がなく、手札に持っているカードがクリーチャー/打ち消し/除去のいずれかなのか予想しづらくなっています。強力なカウンターパンチを持ち合わせているので、大振りなパーマネントは諸刃の剣となってしまいます。
序盤から展開して、相手の墓地に8枚以上カードが溜まるようにダメージを与えつつ「切削」していきます。《盗賊ギルドの処罰者》から《空飛ぶ思考盗み》と動いた場合、2ターン目にして6枚のカードを墓地へ落とせ、3ターン目には両カードとも強化することができます。
線の細いならず者のなかで、《トリックスター、ザレス・サン》は単体の打点も高く、「切削」や除去により相手の墓地へと落ちた強力なパーマネントを釣り上げることができるマスターピースです。相手は2枚のカードを対処しなければならず、序盤作ったリードを完全な形で保管してくれます。アタック時に戦場へ出すことも可能ですが、瞬速があるため相手のエンドに召喚することもできます。パーマネントなら何でも対象にできるため、《創造の座、オムナス》をはじめ《峰の恐怖》や《精霊龍、ウギン》までも配下とすることが可能となっています。
対4色オムナスでは、相手のメインボードには除去呪文が少ないため狙い通りにゲームが進んでいきますが、その過程で《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が最大のガンとなります。「脱出」コストを提供してしまうばかりか、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》自身さえ「切削」過程で墓地へ落ちる可能性があるためです。一度「脱出」されてしまうと打点が下がるばかりか、《湖での水難》が対象とできる範囲も狭まるため、苦しい展開となってしまいます。
《トリックスター、ザレス・サン》はパーマネントを対象とするため土地を得ることも可能です。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を確認した際は、土地を戻すなどして「脱出」できないように立ち回ることも覚えておきましょう。
Red Bull Untapped Japan Qualifier
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 石橋 広太郎 | 4色オムナス |
準優勝 | 柏 智博 | 4色アドベンチャー |
トップ4 | 上田 渉 | 4色オムナス |
トップ4 | 岩橋 宣輔 | 4色オムナス |
トップ8 | 和田 寛也 | 4色オムナス |
トップ8 | 浦崎 貴之 | スゥルタイコントロール |
トップ8 | 井上 徹 | スゥルタイコントロール |
トップ8 | 齋藤 智也 | ディミーアローグ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者383名で開催されたRed Bull Untapped Japan Qualifierは4色オムナスを使用した石橋 広太郎選手の優勝となりました。トップ8の内5名が《創造の座、オムナス》を使用しており、ミラーマッチを強く意識してメインボードから《神秘の論争》を採用している構築もみられました。
前環境から存在するスゥルタイコントロールを使用したプレイヤーが2名入賞しました。Team UNITE所属の井上 徹選手は打ち消し呪文をベースに手札破壊/除去を加え、フィニッシャーとして《自然の怒りのタイタン、ウーロ》をタッチした4色オムナスを強く意識した構築を持ち込んでいます。1対1交換を続けていくことで自然と「脱出」コストがたまり、存在自体がアドバンテージをもたらしてくれます。
大会情報はこちら。
ナヤウィノータ
4 《枝重なる小道》
4 《岩山被りの小道》
4 《針縁の小道》
-土地 (14)- 3 《石とぐろの海蛇》
4 《金のガチョウ》
4 《水蓮のコブラ》
4 《絡みつく花面晶体》
4 《カルガの威嚇者》
4 《エメリアのアルコン》
4 《バスリの副官》
4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》
2 《帰還した王、ケンリス》
-クリーチャー (33)-
3種類の小道によってマナベースが充実しているナヤカラーの《軍団のまとめ役、ウィノータ》デッキがトップ16に入賞しました。moto 3選手が使用したデッキは呪文/土地の両面カードを17枚採用していることでマナフラッドに強く、非常に高いデッキパワーを秘めています。
主たる戦略はマルドゥウィノータと変わらず、クリーチャーの頭数を揃えて《軍団のまとめ役、ウィノータ》を召喚し、攻撃することで能力が誘発し打点を上げていきます。《急報》のように1枚で複数のクリーチャーを用意することはできませんが、12枚のマナクリーチャーがいるため事故りにくく、マナが増えるため1ターンに複数展開や相手よりも上のマナ域のカードが使えるようになっています。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》の当たり牌である人間・クリーチャーは、《カルガの威嚇者》のようにマナカーブに沿って優秀なカードが選択されており、手札に来た際もキャストできるものになっています。コンボ内蔵のアグロデッキといえますね。
ボルトランドと呼ばれる神話レアの呪文/土地の両面カードが10枚採用されているため、4マナ揃うころにはかなりライフを失っている可能性があります。アグロデッキがメタゲームの中心にいた場合には厳しいところですが、現環境は4色オムナスが支配するためそこまでライフ損失は気になりません。環境を見極めた構築といえるでしょう。
土地としての側面が強いものの、マナコストが重い分だけ強力な効果であるため、ゲームが長引いた場合は呪文としても使います。《変わり樹の共生》から《軍団のまとめ役、ウィノータ》や《帰還した王、ケンリス》を呼び込めれば、逆転の一手となるでしょう。
サイドボードは非常にわかりやすく、赤単アグロとアドベンチャー、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に的を絞っています。特に《幸運のクローバー》が残ると戦線が壊滅する可能性がかなり高くなるので、《エンバレスの盾割り》が4枚採用されています。
SCG Tour Online Season Two Championship
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | tangrams | 4色オムナス |
準優勝 | Mirozel | 4色オムナス |
トップ4 | Yuma Koizumi | 4色オムナス |
トップ4 | Nicholas Price | 4色オムナス |
トップ8 | Camilo Mora | グルールアドベンチャー |
トップ8 | Kevin Perez | スゥルタイコントロール |
トップ8 | Simon Nielsen | 4色オムナス |
トップ8 | Noam Zimet | 4色オムナス |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者79名で開催されたSCG Tour Online Season Two Championshipは4色オムナスを使用したtangrams選手の優勝となりました。トップ8中6名がオムナスを使用しており、構築も環境序盤にして末期感が漂う内容となっています。
Simon Nielsen選手は狙いを4色オムナスのミラーマッチ1本に絞った構築にしています。メインボードから《発生の根本原理》や《耕作》を排除し、打ち消し呪文の《神秘の論争》と《否認》合わせて6枚、アドバンテージ源に《精神迷わせの秘本》を採用してコントロール力を高めています。
《発生の根本原理》を抜いたことからもわかる通り相手の《神秘の論争》を強く意識しており、代わりのフィニッシャーとして《神秘の論争》のコスト軽減の対象とならない《精霊龍、ウギン》を3枚に増量しています。万が一相手有利な盤面を構築されたとしてもリセット可能となっているのです。
メインボードでもすでに十分すぎるほどですが、サイドボードからは《サメ台風》を加えて、相手のターンにも仕掛けられるようになります。
大会情報はこちら。
グルールアドベンチャー
4 《山》
2 《寓話の小道》
4 《岩山被りの小道》
2 《奔放の神殿》
-土地 (18)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《リムロックの騎士》
4 《義賊》
3 《漁る軟泥》
4 《砕骨の巨人》
4 《恋煩いの野獣》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《探索する獣》
-クリーチャー (31)-
3 《轟く叱責》
2 《エンバレスの盾割り》
2 《長老ガーガロス》
2 《原初の力》
2 《レッドキャップの乱闘》
1 《怪物の代言者、ビビアン》
-サイドボード (15)-
アドベンチャーデッキといえば《幸運のクローバー》から「出来事」カードを使ってアドバンテージを稼ぐティムールカラーが有名ですが、Camilo Mora選手が選択したのはビートダウンに特化したグルールカラーのアドベンチャーデッキ。以前から《恋煩いの野獣》や《砕骨の巨人》を採用していたグルールアグロに、《エッジウォールの亭主》のアドバンテージエンジンをドッキングしています。
基本的には《エンバレスの宝剣》を頂点とした速度勝負ですが、ほかのアグロデッキよりも「出来事」と《エッジウォールの亭主》により消耗戦に強いのが特徴です。
環境屈指の2マナクリーチャー、《義賊》と《漁る軟泥》の両方が採用できるのもグルールアグロの利点でしょう。アドバンテージをもたらす速攻持ちと、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》対策となるクリーチャーであり、4色オムナスに対して強烈なプレッシャーをかけることができます。
4色オムナスの《水蓮のコブラ》はゲーム展開をガラッと変える1枚であり、必ず除去したいカード。新加入の《棘平原の危険》は最適なカードといえますね。たかが1点と侮るなかれ、環境には強力なタフネス1クリーチャーが存在しています。
また、手札からキャストされた《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を対象にすることで除外できる優れもの。土地にもなるため無駄にならない破格のカードなのです。
直近の大会結果
9月22日から27日までの大会結果(最低参加人数16人以上)になります。緑単アグロやティムールアドベンチャー、ディミーア/スゥルタイコントロールは善戦してものの、全体を通して4色オムナスが環境を支配しているようです。『ゼンディカーの夜明け』環境初陣戦こそ《創造の座、オムナス》の入賞率は低かったものの、ほとんどの大会で複数のプレイヤーがトップ16に入賞しています。
Comic Con Africa 2020では、スゥルタイコントロールがデッキの方向性を4色オムナスに全振りすることでメタゲームを制したかに見えましたが、クリーチャーデッキに対してガードが下がったことで、皮肉にもグルールアドベンチャーが隙を突き優勝をかっさらっています。
また、4色オムナスがミラーマッチを意識しはじめたことで、《神秘の論争》や《否認》を採用するようになり、副次効果としてオムナスをメタるほかのコントロールにも強くになっています。メタゲームの見地から優位となるはずのコントロールは、苦境に立たされているのです。呪文/土地の両面カードの出現によってデッキの密度が濃くなっているため、コントロールデッキはこれまで以上に繊細な調整が必要となりそうですね。
4色オムナスのメインボードから除去が抜けたことでクリーチャーデッキに対して弱くなっているものの、それでも《創造の座、オムナス》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はゲームを引きのばし、《発生の根本原理》《精霊龍、ウギン》までの時間を作ってくれます。サイドボードには8枚前後の除去呪文が採用され、万が一メイン戦を落としても取り返せるように構築されています。
対してアグロ側は1~3ターン目までマナを余すことなく展開し(《水蓮のコブラ》を除去しながら)、キッチリ《探索する獣》や《エンバレスの宝剣》による後詰めをする必要があります。相手のもたつきがない限り、BO3においてアグロデッキに課されたノルマは想像以上に厳しいようです。
どうなるスタンダード!?
『ゼンディカーの夜明け』が発売されたばかりにもかかわらず、4色オムナスが支配しつつあるスタンダード。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは何らかのテコ入れをするようです。
【お知らせ】現在のスタンダードにおける動向を鑑み、太平洋夏時間での来週始め頃にフォーマットについてのアップデートを行う予定です。詳細については告知をお待ちください。 #mtgjp https://t.co/OBNvHafqo7
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) September 23, 2020
禁止改定告知かルール変更か、はたまた禁止制限を解かれるのか?すべての答えは、もうそこまで迫っています。
来週には新スタンダード環境をご紹介していきたいと思います。それでは、また次回。