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PWCCにはバイ (不戦勝) が存在する。
PWCで優勝すると1つ、年間ポイントレースでトップ8に入ることで与えられるバイが最大2つ。つまり3バイを手に入れるためには、PWCで少なくとも1回は優勝した上で、更にPWCで勝ち続け、ポイントを稼がなければならない。
そんな3バイプレイヤーは4人。PWCで勝ち続けた4人がこのラウンドでついにテーブルへ着くこととなった。
そして勿論、この男も3バイプレイヤーだ。
【第11期ミスターPWC】、三宅 恭平である。
渡辺 雄也以来、更に現在の制度になってからは初めてとなる「2年連続ミスターPWC」という快挙を成し遂げた三宅。去年とは違い、ミスターPWCという称号を得た状態で、このPWCCの対戦テーブルでデッキをシャッフルする。
さて、晴れて連続ミスターPWCとなった三宅だったが、その道程は決して平坦なわけではなかった。本来であればポイントレースで圧勝していた三宅を、最終節まで追い詰め続けたプレイヤーがいたのだ。
それが今三宅の前でデッキをシャッフルしている中道 大輔なのだ。
プロツアー出場経験もある中道はPWCのみならず関東の大会を暴れまわるジャガーノートのような存在だ。【プロツアー地域予選】では【準々決勝】で敗北してしまい、プロツアーの権利は獲得できなかったものの、中道の地力の高さをまた1つ証明した。
自身がミスターPWCになった第9期。梁瀬要との間にあった圧倒的ポイント差を逆転した中道は、今年もまた、追う立場として最終節を戦った。優勝すればミスターPWC、その結果は――準々決勝敗退だった。
2年続けて三宅にミスターを譲る形となってしまった中道。穏やかな表情だが、ここでの対戦は燃えているに違いない。
三宅 「決勝でまた当たるのにね」
中道 「言うじゃん。残れるの?」
ライバル同士の軽口が飛び交い、やがてシャッフルが終わる。
現ミスターPWCと元ミスターPWCのライバル対決。
熱戦にならないわけがない。
Game 1
先手の三宅が《さまよう噴気孔》、《窪み渓谷》とタップインを並べる立ち上がり。だが先手のためにタップインの遅れが軽減され、中道の《ヴリンの神童、ジェイス》に《龍詞の咆哮》をなんとか合わせる。
だが三宅は土地が3枚で止まってしまう。それもダークティムールにも関わらず緑マナがないという絶望的な土地事故だ。
中道の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を《頑固な否認》で打ち消した三宅はようやく緑マナとなる《血染めのぬかるみ》をドローするも、戦場に基本地形が2枚なく、《燃えがらの林間地》はタップイン。それが仇となり、《放浪する森林》、《凶暴な拳刃》と続けて中道の《シルムガルの嘲笑》に打ち消されてしまう。
そして2回目の《放浪する森林》が《はじける破滅》され、5枚目の土地を手に入れた中道がプレイしてきたのは《龍王オジュタイ》。
ダークティムールで《龍王オジュタイ》を対処する手段はない。
《凶暴な拳刃》を出してダメージレースを挑んではみるものの、中道の手札からは2枚の《龍詞の咆哮》。
溢れかえる手札を一瞥した三宅は、静かに土地を片付けた。
三宅 0-1 中道
Game 2
いかにミスターといえど、土地がきちんと並ばなければゲームはできない。そして今度はその不運に中道が見舞われることとなった。
三宅の展開した《ヴリンの神童、ジェイス》を《龍詞の咆哮》で除去し、自身の《ヴリンの神童、ジェイス》を起動できるようになった中道だが、どれだけ引けども土地が見つからないのだ。
中道 大輔 |
今度は順調に展開する三宅が《凶暴な拳刃》、《雷破の執政》と出し、ここでようやく土地を引く中道だったが、今度は3枚で止まり、1ターンに1回以上行動することができない。
手札にたくさんある除去で盤面こそ捌いてはいくものの、戦場の土地は増えない。
そればかりかカードを引くたびに増えていくのは《龍王オジュタイ》。気付けば初手に1枚しかなかった《龍王オジュタイ》は今や3枚。コントロールする土地は3枚のみ。
《放浪する森林》を除去できない中道に、次のターンが訪れることはなかった。
三宅 1-1 中道
Game 3
今日はマジックの神様は中道に冷たい。痛恨のダブルマリガンを喫した中道。それでも占術で見つけた《ヴリンの神童、ジェイス》をそのまま残し、2ターン目にプレイする。
更に三宅の《ヴリンの神童、ジェイス》を《龍詞の咆哮》で焼き、一縷の希望が見え始めるも、三宅が唱えたのは《コラガンの命令》。モードは《ヴリンの神童、ジェイス》に2点と《ヴリンの神童、ジェイス》を回収。
だが中道は2枚目の《ヴリンの神童、ジェイス》をドロー。《ヴリンの神童、ジェイス》を巡る戦いはまだ終らない。
三宅 恭平 |
このジェイスによる争いが終わったのは、次のターンだった。《龍詞の咆哮》を三宅は持っていて、中道にはなかった。
《凶暴な拳刃》で攻撃しつつ《苦い真理》で手札を補充と、三宅のアクションはよどみない。気付けば手札の枚数もパーマネントの数も、三宅が圧倒している。
ようやく土地を引いた中道が《苦い真理》を唱えるも時既に遅し。
現ミスターPWCの三宅が唱えた《炎呼び、チャンドラ》が、ミスター対決を速やかに終わらせた。
三宅 2-1 中道
お互いが事故によりそれぞれのゲームを落としてしまったこの戦い。名手同士の戦いがこんな形で終わってしまったのは少し残念だ。
だが不運を嘆くこともなく気持ちを切り替える中道と、そんな中道に声をかける三宅を見て、その感想はなくなった。
三宅が試合前に言っていたように、この2人が決勝で相対し、繰り広げられるであろう最高のゲームが見たいと、そう思うようになっていた。
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