準々決勝: 土橋 竜馬(千葉) vs. 安田 真幸(千葉)

晴れる屋

By Atsushi Ito

(スマートフォンの方は【こちら】)


 【第4期スタンダード神挑戦者決定戦】

 【第5期レガシー神挑戦者決定戦】

 【第5期スタンダード神挑戦者決定戦】

 これら3つの大会の共通点が何だかわかるだろうか?

 そう、これらはすべて安田がトップ8に入った挑戦者決定戦なのだ。

 ということはつまり、安田が「神」への挑戦権を逃した回数に等しい。

 トップ8に入ってからの3回戦。たったの3回戦だが、同じくトップ8に残った強豪を相手に全勝しなければならないとなると、その難易度はフライデーナイトマジックとは比べ物にならない。言うまでもなく、安田ほどの実力者であっても必ず勝てるという保証があるはずもない。

 とはいえ、挑戦を続けていればいつかは勝てるはずなのである。その1回がいつ来るか。まだ来ないのか。

 そんな思いを抱えながら今回、第6期スタンダード神挑戦者決定戦でも、そうまたしても、安田はトップ8まで勝ち残った。

 だから、準々決勝のテーブルに着いた安田は。間違いなく、こう思っていることだろう。

 今回こそ。

 【トップ8プロフィール】で恒例となった祈りのポーズも4回目となった。そろそろ安田の祈りも、聞き届けられてもいい頃合いだ。


 そんな安田と相対するのは土橋。

 【デッキテク】でも紹介した青緑エルドラージランプを駆り、《希望を溺れさせるもの》《精霊龍、ウギン》の組み合わせで今日は幾多の対戦相手の希望を溺れさせ、トップ8に進出した。

 記事や予選ラウンドでの土橋のプレイを見ていて思うのは、土橋は本当にこのデッキを気に入っているし、デッキもそれに応えるだけの確かなポテンシャルがある、ということだ。

 誰しもが「これが自分のデッキだ」と誇れるデッキに出会えるとは限らない。環境も終盤とはいえ、そんなデッキに巡り合った土橋は幸運なのだろう。

 しかも準々決勝の対戦相手となる安田のデッキは、通常ランプデッキにとってお客様以外の何物でもないコントロールデッキなのだ。

 4度目の挑戦に臨む安田に、土橋が最大の試練を突きつける。



Game 1


 先手の土橋が《森の代言者》から攻めようとするが、これは《破滅の道》で除去される。だが代わりに《ニッサの巡礼》を通した土橋は、さらに《ニッサの誓い》《見捨てられた神々の神殿》を手に入れ、安田のクロックが不十分なうちにマナを確保しにいく。

 安田も「空出し」の《ゴブリンの闇住まい》で攻めにいくが、土橋は《希望を溺れさせるもの》をプレイ。これは変身した《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》によって再利用された《破滅の道》で除去されるものの、対応してエルドラージ・末裔トークンで《ゴブリンの闇住まい》をタップ。時間稼ぎとしての役割は十分だ。

 さらに《爆発的植生》から《空中生成エルドラージ》を並べ、態勢が整った土橋。

 まずは《世界を壊すもの》をプレイして安田の《さまよう噴気孔》を追放しつつ、《ウギンの聖域》を生け贄に捧げて《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を手札に入れると、加えてエルドラージ・末裔トークンを生け贄に捧げて《希望を溺れさせるもの》までもこのターンにキャスト。《見捨てられた神々の神殿》2枚の力も借りて一挙13マナ分の行動というビッグアクションだ。



土橋 竜馬


 この《希望を溺れさせるもの》はさすがに《軽蔑的な一撃》で阻んだ安田だったが、次のターンには確定で《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が出てしまう状況となってしまう。

 安田も《残忍な切断》の再利用で《世界を壊すもの》を除去から《炎呼び、チャンドラ》を叩きつけ、「+1」能力で《ゴブリンの闇住まい》と合わせて10点アタック、土橋のライフを残り4点まで追い詰めるのだが。

 《空中生成エルドラージ》からの《精霊龍、ウギン》ですべてのリソースを失ってしまい、さらに土橋の手札にはなおも《絶え間ない飢餓、ウラモグ》まで控えているとなると、カードを畳むほかなかった。


土橋 1-0 安田


安田 「きつい……」

 ポツリと安田が漏らす。当然だ。

 コントロールがランプデッキと当たれば、必ず自分のデッキのクロックの少なさを悔やむ事態になる。コントロールがどんな手札をキープしようとも、《世界を壊すもの》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が着地するまでに相手を倒すことは実質ほぼ不可能だからだ。

 速度で勝負することはできない。ならば絡め手で攻めるしかない。

 勝負は2ゲーム目以降。手札破壊とカウンター、あらん限りの妨害要素を詰め込んで、安田はサイドボード後のゲームに臨む。



Game 2


 後手ワンマリガンの土橋に《強迫》が突き刺さる。

《ニッサの誓い》
《否認》
《森の代言者》
《森》
《ヤヴィマヤの沿岸》
《ウギンの聖域》

 という手格好から《ニッサの誓い》が抜かれると、さらに安田は《ヴリンの神童、ジェイス》を送り出し、《強迫》の再利用を匂わせる。

 そして土橋が仕方なく《森の代言者》でターンを返したところで、安田はサイドカードの《無限の抹消》をプレイ!


無限の抹消


土橋 「指定は?」

 しかし土橋はあくまでも冷静だ。《世界を壊すもの》を指定されるも、手札には《空中生成エルドラージ》の姿もある。ライブラリーにはまだ《希望を溺れさせるもの》も、《精霊龍、ウギン》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》も残っている。致命傷というほどではない。

 とはいえ、安田が《ゲトの裏切り者、カリタス》を着地させると、土橋も返しで《爆発的植生》を通すものの、《強迫》からの《破滅の道》《森の代言者》を除去されつつクロックを増やされてしまい、手札にビッグアクションがない現状、余裕綽々とはいかない。

 《空中生成エルドラージ》《破滅の道》を再利用した《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》によって除去され、そのたびゾンビトークンが増えていき、同時に土橋に残されたターンが少なくなっていく。





 それでも、これほど不利な状況でも土橋には引けば勝てるカードがあった。《精霊龍、ウギン》だ。4枚入ったこのプレインズウォーカーを引けば、どんなに不利な状況からでも逆転の可能性がある。

 だが土橋はドローを見て首を傾げる。《希望を溺れさせるもの》……決して悪いカードではないのだが、ターンが延びただけに過ぎない。

 しかもその《希望を溺れさせるもの》も、《苦い真理》で手札が溢れている安田に《残忍な切断》を連打され、結局大した時間稼ぎにもならない。

 もはや《ゲトの裏切り者、カリタス》本体をチャンプブロックしたとしてもゾンビトークンのダメージだけでライフが削りきられてしまう、事実上のラストターン。

 《精霊龍、ウギン》を、引くしかない。

 土橋は明確にその姿を思い描く。山札の上を。その1枚が、右上に「8」と書かれたカードであることを。

 ドロー。そして。

 土橋は、潔くカードを畳んだ。


土橋 1-1 安田



Game 3


 再びマリガンの土橋に後手2ターン目の《強迫》を突き刺す安田。

《ニッサの巡礼》
《爆発的植生》
《精霊龍、ウギン》
《精霊龍、ウギン》
《ヤヴィマヤの沿岸》

 から《ニッサの巡礼》を抜く上々の立ち上がりだ。

 だがそう思ったのも束の間、3ターン目に《ヴリンの神童、ジェイス》をプレイした安田にセットランドがない。さらに4枚目の土地を引き込んだ土橋に《爆発的植生》をプレイされてしまう。

 返すターンにようやく土地を引き込むが、セットは《さまよう噴気孔》で動くに動けない。そうこうしているうちに土橋は7枚目の土地をセット。手札は《精霊龍、ウギン》2枚、ドローが何であっても受け入れられる格好だ。

 このままでは《精霊龍、ウギン》をプレイされるだけの安田は意を決して《骨読み》から《強迫》の再利用で《精霊龍、ウギン》2枚のうちの1枚を抜く。

 土橋の返しのドローは《見捨てられた神々の神殿》《精霊龍、ウギン》が降臨し、《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》を薙ぎ払う。



安田 真幸


 それでも安田は《破滅の道》《精霊龍、ウギン》を破壊すると、2枚目の《ヴリンの神童、ジェイス》を送り出す。もはや土橋に手札はなく、ここからは土橋が何らかのフィニッシャーにたどり着く前に安田が殴りきれるかが焦点となる。

 とはいえ、既に土橋は《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《大いなる歪み、コジレック》すらも万全に受け入れられる状況だが、安田が《ゲトの裏切り者、カリタス》プレイからの《残忍な切断》再利用で一気にクロックを作ると、土橋に残されたドローは3枚か4枚程度といったところ。

 その1ドロー目は《希望を溺れさせるもの》。悪くはないが、《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》が支配するこの戦場においては、安田の《残忍な切断》の餌食となり《ゲトの裏切り者、カリタス》がゾンビトークンを増やす糧となるだけだ。

 2ドロー目はまたしても《希望を溺れさせるもの》で、これも《残忍な切断》からの《炎呼び、チャンドラ》で綺麗にブロッカーを薙ぎ払われる。

 ラストドロー。ラストターン。

 そのドローは、ついに土橋の期待に応えることはなかった。


土橋 1-2 安田


 安田、試練を乗り越え準決勝へ進出!


この記事内で掲載されたカード