Translated by Kohei Kido
(掲載日 2020/11/17)
はじめに
みなさん、こんにちは!東京から地元に戻ってきて、僕はマジックをプレイすることをしばらく休止していました。今まで6年間ほど、毎日欠かさずに何時間もマジックをやる日々が続いていましたが、それに疲れを感じてしまってそこまで根を詰めてやる気がおきなくなってしまったのです。今まで経験したことがない事態で、マジックを始めて以来一番長いお休みをもらいました。
今は世界がパンデミックに対処しなければいけない状況なのも一因だったのは確実です。オンラインでマジックをプレイするのは大会に備える優れた方法だとは思っていましたが、オンラインよりも現実世界でやるマジックの方がはるかに楽しいと感じてきました。ゲーム体験としての質が違っていて、自分が向いているのも現実世界のマジックだと思います。
トレーディングをしたいと前から思っていましたが、今まではそれをやる時間もモチベーションもあまりありませんでした。マジックとの距離を置いたことで使える時間が増えたので2カ月ほどそれに集中する時間が取れました。トレーディングは順調にいき、初めはマジックをやる気をなくしてしまうのではないかと心配するほどでした。
でも新しいセットが発売されただけで、再び毎日何時間もMTGアリーナをプレイするようになったのです!僕がやりたかったのは結局マジックでした。勝利と上達への欲望を感じずに長く過ごせるとは思えません。少しほっとしています。
自分は珍しいタイプのプレイヤーだと思っています。僕の強みも実績も構築フォーマットに集中しているのですが、リミテッドフォーマットの方が好きです。リミテッドでミシックランク1200位以内に入ったので予選ウィークエンドの権利を得ました。
予選ウィークエンド
長い間スタンダードのランク戦から距離をおいていたので、予選ウィークエンドのために必要なデータや情報を持っていませんでした。10月シーズンが終わった翌週末に大会があることすら知らなかったくらいで、どのデッキを使うのか早く決めなければなりませんでした。
オンドレイ・ストラスキー/Ondrej Strasky(以下、ストラスキー)に聞いてみると、彼はグルールとローグの2択で考えていて、その2つから選ぶべきだという答えをもらいました。その2択なら僕は青いデッキの方が好きなので、ローグを選んで木曜日まで使い続けました。
ストラスキーがローグを選択肢として提示したのは理屈が通っていました。ローグを正しく組めばグルールとの相性は互角で、グルールはミラーに合わせて調整すると想定されました(たとえば《アクロス戦争》はグルールミラーで効果的であっても、ローグにとってみれば弱いカード)。また、グルールを標的とするスタックスのようなデッキに対してローグは有利です。
ストラスキーを信じて何時間もローグを使ってみましたが、結果には満足できませんでした。最高のプレイングができたわけでもありませんが、デッキが弱いと感じたのです。うまくいっている試合はグルールと互角に感じるものの、デッキから不要牌を引いてしまうと何もできないことがあります。マナベースが悲惨であることは言うまでもありません。(10枚のタップインランドに加えて、色マナの数も不十分です)
デッキが抱えている問題のひとつは、青と黒のどちらにもトリプルシンボルのカードがデッキに入っていることです。色マナが足りているように見えても、新しい2色土地である《清水の小道》は青マナと黒マナからひとつを選ばねばならず、序盤に除去のために黒マナの側で出すと4ターン目に《凪魔道士の威圧》を唱えづらくなるのです。逆に《凪魔道士の威圧》のために全力で青マナを出しにいくと、あとで《夢の巣のルールス》と黒い呪文を同一ターンに使えないというような状況が発生してしっぺ返しを受けます。
でも自分の練習が足りなくてデッキを使いこなせなかった可能性も高いです。結局のところ複雑なプレイングを要求するデッキですからね。最終的にはローグよりも高い勝率を出せると思ったのでグルールを使うことにしました。
この大会でローグを使っても問題なかったかもしれませんが、予選ウィークエンドの翌週の方がさらに立ち位置はよくなっていたはずです。グルールに有利なスタックスの構築があるのか自信を持てない人も多かったはずですが、マジック・プロリーグとライバルズリーグのプレイヤーがしっかりグルールに勝てるデッキリストを編み出したようです。
これによって今のメタゲームは素晴らしいものになりました。グルールは序盤も終盤も強いクリーチャーを使ったアグロデッキで、一番強力なデッキです。スタックスはそのグルールを獲物にしていて、とても魅力的な環境が誕生しました。
僕の直近の記事は一般論の記事だったので今回はみんなが期待しているデッキガイドを書きます。ローグのデッキリストとサイドボードガイド、さらに予選ウィークエンドで使ったグルールのデッキリストのおまけ付きです。さあ始めましょう!
ディミーアローグ
3 《沼》
4 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《清水の小道》
4 《欺瞞の神殿》
-土地(22)- 4 《マーフォークの風泥棒》
4 《盗賊ギルドの処罰者》
3 《遺跡ガニ》
4 《空飛ぶ思考盗み》
-クリーチャー(15)-
数週間前には《夢の巣のルールス》が入っていない《サメ台風》入りのコントロール型のローグデッキが存在していましたが、私見ではあれは弱いです。コントロール型の方はサイドボード後に試合を自分のペースで運ぶことが得意だと思うのですが、《夢の巣のルールス》があるとカードパワーに劣る部分をうまく補えると思っていて、メインゲームではこちらの方が強いはずです。
一般論として、メインゲームでは自分のデッキの中心的なゲームプランをスムーズに実行できる構築にして、メインゲームで相手のデッキについて知ったらサイドボード後に解答を用意してコントロールしたりできるデッキにしたいのです。
《遺跡ガニ》はまさにメインゲーム向きのカードです。弱いところもあるカードですが、どんな相手だろうとメインゲームでは自分のゲームプランに合っているカードなので問題ありません。つまり相手を少し(場合によっては大量に)切削して自分のデッキの他のカードを強く使えるようにしてくれます。
スタックスが相手なら打ち消しがあった方がいいですし、グルールが相手なら除去があった方がいいですが、相手のデッキがわからないならもっと丸いカードを採用してサイドボード後に調整した方がいいのです。
メインデッキ
デッキの中心的カードについては語らず、他のデッキリストと異なっているカードを中心に語ろうと思います。
《塵へのしがみつき》
多くの人が2枚入れていますが、メインゲームで追放したいカードは実のところあまりありません。(ラクドスはメタゲーム上で減少傾向にあって、そもそも《塵へのしがみつき》が2枚あってもなかなか勝てません。)それでも1枚目は結構強いのですが、複数枚引いても1枚目ほどの価値を持たないので、2枚目は1枚目ほど重要ではないと考えています。今はメインデッキに1枚というのが妥当だと思います!
《無情な行動》《本質の散乱》
2マナ域で除去をいくつか採用する必要があります。打ち消しも含めると選択肢は《ジュワー島の撹乱》《本質の散乱》《無情な行動》《取り除き》です。《ジュワー島の撹乱》は弱すぎるという結論に至ったのでデッキから抜きました。
《取り除き》と《無情な行動》については判断が難しいです。《無情な行動》は、除去対象である《探索する獣》が数を減らしていますし、《漁る軟泥》を対処できないですが、それでもグルールに対して完全に腐ることはありません。対する《取り除き》は《太陽の恵みの執政官》や《空を放浪するもの、ヨーリオン》を除去できない状況が致命的です。このように考えると、《無情な行動》の方が優れていると思います。
3枚目の除去の代わりに《本質の散乱》が入っている理由は、除去よりは弱くてもクリーチャー中心のデッキに対して十分強いカードでありながら、ヨーリオンデッキに対する切り札になるカードであり、上振れを用意できるからです。
《凪魔道士の威圧》
マナベースに大きな負荷がかかるのは事実ですが、グルールまみれの環境を想定するなら、グルールに対する最高の武器になりながらも素のカードパワーが高いものをデッキの自由枠に入れるのは理にかなっています。
《ゼイゴスのトライオーム》
自動的にデッキに入るような2色土地以外で使える2色土地の選択肢がタップインランドしかないのは受け入れがたいですが、デッキ内の色拘束は非常に厳しいので採用する価値があります。
サイドボード
《塵へのしがみつき》《魂標ランタン》
ストラスキーは《魂標ランタン》を使わずに4枚目の《塵へのしがみつき》を採用していましたが、《魂標ランタン》は4枚目の《塵へのしがみつき》よりも強いと考えています。試合中に引いた1枚目の《塵へのしがみつき》は肥えた墓地を使って「脱出」させやすく《魂標ランタン》よりも優れていますが、先ほども言ったように2枚目以降は価値を低下させていくため、たいていは《魂標ランタン》の方が使いやすいのです。
墓地対策をサイドインするマッチアップでは、通常1マナ域の弱いカードをサイドアウトするため、《夢の巣のルールス》の効果で墓地から拾い上げる呪文の枚数が減りますが、《魂標ランタン》はその枠を増量させる利点もあります。追放できる枚数が1枚ではなくすべてであるのも、ラクドスエスケープを相手にしたときはありがたいですね。
《神秘の論争》《否認》
コントロールに勝つためのカードです。説明不要。
《スカイクレイブの影》
ミラーマッチとラクドス相手の試合はリソースの削りあいになりやすいので、《スカイクレイブの影》は相手にリソース勝ちするのに一番いい選択肢です。
《本質の散乱》
サイドインするカードが足りなければ多くのデッキに対してサイドインしていいカードですが、主な標的はエスパースタックスです。
サイドボードガイド
ミラーマッチ
ミラーマッチ
ディミーアローグには多くの型のデッキリストが存在していることは知っていると思います。相手によってサイドボードの仕方が違うので相手に合わせて調整する必要はありますが、一般論としてはこういうサイドボーディングをしたいです。
初めは《塵へのしがみつき》が強いと思っていましたが、試合はテンポゲームとして展開することが多く、「脱出」コストで唱える余裕はほぼありません。ただのキャントリップとして使うだけだと弱いです。
《本質の散乱》も最初はサイドインしていなかったのですが、試合は《夢の巣のルールス》中心に展開することが多いので《本質の散乱》が使えると便利です。
グルール
対 グルール(先手)
対 グルール(後手)
もうみんな《アゴナスの雄牛》と《灰のフェニックス》を使っているので、追放する手段を持っていないとゲームはすぐに不利になります。
先手で《遺跡ガニ》をサイドアウトするときには相手をそこまで切削しないので墓地を追放する手段は3枚で十分だと思うのですが、後手なら4枚とも必要です。後手でカードアドバンテージを1枚損するのはそこまで問題になることではありませんし、《遺跡ガニ》も自分のキーカード、特に《凪魔道士の威圧》を使えるようにしてくれるので、デッキに残す価値があると思います。
《マーフォークの風泥棒》2枚と《空飛ぶ思考盗み》1枚をサイドアウトするのは奇妙に見えるかもしれませんが、僕の視点では理にかなっています。《マーフォークの風泥棒》は後手では特に弱いのですが、中盤で大型クリーチャーをチャンプブロックできて《夢の巣のルールス》との相性もいいので、後手でも2枚は残していいと思っています。
デッキの中核となっている《空飛ぶ思考盗み》をサイドアウトするのはおかしいと思うかもしれませんが、グルールのクリーチャーに対して1/3のパワー・タフネスはあまり意味がなく、ライフを攻めるにしろライブラリーを攻めるにしろ速度が間に合っていません。だから1枚サイドアウトしてしまうのは問題ないと考えています。
エスパースタックス
対 エスパースタックス
相手が《悪斬の天使》か《太陽の恵みの執政官》を採用していれば《スカイクレイブの影》の代わりに除去を何枚かデッキに残してもいいです。《スカイクレイブの影》が相手に対してすごく有効なわけではありません。相手の除去の多くは追放除去で《メレティス誕生》の0/4の壁でブロックされます。
《予言された壊滅》に対して《スカイクレイブの影》をサイドインしておいてよかったという状況もありますが、相手のデッキに上記のクリーチャーが入っているなら除去の方がマシです。《塵へのしがみつき》の枚数も相手が自らの墓地を活用する手段をどれだけ持っているかによります。試合はかなり長くなりがちで、《垣間見た自由》のせいで負けるということも起きるので、3枚目をサイドインする余地もあります。
ラクドスエスケープ
対 ラクドスエスケープ
これは明らかに相性が悪い相手です。自分のカードの多くは相手を不可避的に切削してしまいます。相手は墓地を活用するデッキなので、サイドボード後はゲームプランを大きく変える必要があります。
緑単フード
対 緑単フード
このデッキにも複数の型があります。例えば《怪物の代言者、ビビアン》や「脱出」持ちカードの枚数が異なります。相手のデッキの内容に合わせて墓地追放カードと《否認》の枚数を調整する必要があります(とはいえ相手は《パンくずの道標》を使うので、先手の《否認》は絶対に強いカードです。)
グルール!
予選ウィークエンドでは4-3しかできませんでした。グルールを使った練習も不足していましたし、デッキリストも最適ではありませんでした。それでも大会とマジック・プロリーグ/ライバルズリーグの観戦を通して多くを学んだので、今後使いたいと思うデッキリストをお見せしたいと思います。
3 《山》
4 《寓話の小道》
2 《進化する未開地》
4 《岩山被りの小道》
-土地(22)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《山火事の精霊》
3 《漁る軟泥》
4 《砕骨の巨人》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
1 《探索する獣》
-クリーチャー(24)-
2 《運命の神、クローティス》
2 《探索する獣》
2 《萎れ》
1 《灰のフェニックス》
1 《打ち壊すブロントドン》
1 《火の予言》
1 《魂焦がし》
1 《アクロス戦争》
1 《怪物の代言者、ビビアン》
-サイドボード(15)-
予選ウィークエンドでも似通ったデッキリストを使用しました。唯一の違いは《魂焦がし》の代わりに2枚の《火の予言》を入れていたところで、これは大きな間違いだったと感じています。ミラーマッチの後手で《魂焦がし》は本当に強いカードです。
《グレートヘンジ》の4ターン目の着地を叶える《恋煩いの野獣》は対処しないといけないクリーチャーであり、除去する手段が必要です。エスパースタックスもメインデッキの《太陽の恵みの執政官》を増やす傾向にあって、対処に困ることがあるので除去手段があるのはいいことです。《空を放浪するもの、ヨーリオン》も除去できますしね!
ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasはメインデッキに《エンバレスの宝剣》を2枚しか入れていませんでしたが、これは正しい可能性があります。先手でとても強力なカードですが、この装備品が活躍するような状況ならばそれがなくても優位に運べる試合も多いはずです。後手だと扱いにくい上に、複数枚引いた場合には特にもてあますカードです。《エンバレスの宝剣》の枚数は検討の余地がありそうですね。
サイドボードは多くのカードについて自信がありますが、《打ち壊すブロントドン》と《萎れ》の2種類のカードで分けている3枚の枠については定まっていません。
《萎れ》の方が軽いマナ・コストでエンチャント・アーティファクトに対処でき、重要なパーマネントに対応する状況ならば4マナと2マナの差は試合を左右することもあります。でも《打ち壊すブロントドン》は能動的に場に出すことができるカードで、《グレートヘンジ》でカードを引けるという要素は思ったよりも重要です。今のところこの枚数のバランスで満足しています!
サイドボードガイド
ディミーアローグ
対 ディミーアローグ
ミラーマッチ
ミラーマッチ(先手)
ミラーマッチ(後手)
《エンバレスの宝剣》は後手だと先手よりは弱くなりますが、ときどきゲームに大きな影響を与えるので少なくとも2枚はデッキに残したいです。
エスパースタックス
対 エスパースタックス
《萎れ》を1枚しか入れないのは奇妙な行為に見えるかもしれませんが《予言された壊滅》を破壊できること以外には相手のデッキに対してあまり効果のないカードです。その上、他のカードをデッキに残すことの方が重要です。
ラクドスエスケープ
対 ラクドスエスケープ
読者のみなさんは《怪物の代言者、ビビアン》をサイドインして《山》をサイドアウトしているのを疑問に思っているかもしれません。
その理由は、どのデッキもサイドボード後はグルールに対する対策カードをサイドインしてくるからです。ゲームは長引いてリソースの削りあいになります。だからデッキに入っている相手に対する脅威となるカードの密度は上がった方がいいのです。
緑単フード
対 緑単フード
おわりに
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最後まで読んでくれてありがとうございます。また次の記事で!