はじめに
みなさんこんにちは。
緑系のデッキの支配が続くスタンダード。先週末には『ゼンディカーの夜明け』環境を締めくくるチャンピオンシップが開催されました。参加者たちはどのようなデッキを選択したのでしょうか。
今回は『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップの大会結果を振り返っていきます。
先週末の勝ち組:グルールアドベンチャー
まずは先週末の勝ち組デッキを確認していきましょう!
4 《山》
4 《寓話の小道》
4 《岩山被りの小道》
-土地 (20)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《山火事の精霊》
3 《エンバレスの盾割り》
2 《漁る軟泥》
4 《砕骨の巨人》
4 《恋煩いの野獣》
4 《カザンドゥのマンモス》
3 《探索する獣》
-クリーチャー (28)-
2 《アゴナスの雄牛》
2 《火の予言》
2 《萎れ》
2 《魂焦がし》
2 《アクロス戦争》
2 《怪物の代言者、ビビアン》
1 《解き放たれた者、ガラク》
-サイドボード (15)-
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップのスタンダードラウンド全8回戦を7勝以上で終えたのはグルールアドベンチャーとディミーアローグ、緑単フードの3つのアーキタイプでした。なかでもグルールアドベンチャーは5人が好成績を残しています。ここで紹介しているのは7勝以上あげて、さらにトップ8に入賞したAutumn Burchett選手のデッキになります。
グルールアドベンチャーは《山火事の精霊》からはじまるビートダウン、《エッジウォールの亭主》《グレートヘンジ》のアドバンテージ獲得手段、《エンバレスの宝剣》《怪物の代言者、ビビアン》といった角度の違う攻撃手段を併せ持つアグロデッキとなります。今回のメタゲームブレイクダウンでも1番人気となっていますが、ほかのアーキタイプを意識した工夫が随所にみられます。
最大の特徴はメインボードで3枚ずつ採用されている《エンバレスの盾割り》と《探索する獣》です。前者は緑単フードやオボシュランプ、ミラーマッチといった数を増やしている《グレートヘンジ》採用デッキへの解答です。最低限クリーチャーであるため完全な無駄牌にならず、それ以外のマッチアップでも《エッジウォールの亭主》などとのシナジー形成に一役買っています。
《探索する獣》は速攻により遅いデッキに効果的なクリーチャーであり、非クリーチャー戦を得意としています。緑単フードのような肉弾戦では1対1交換に終わってしまいイマイチですが、《エンバレスの宝剣》さえあれば話は変わってきます。先制攻撃+接死+トランプルにより、どんなにタフネスの高いクリーチャーでも1点のダメージで突破できるのです。
メタゲームが進むことで、消耗戦に意識が傾きつつあったグルールアドベンチャーですが、今回は相手のライフをいかに早く削りきるかに焦点があてられていました。《グレートヘンジ》の減量と《怪物の代言者、ビビアン》のサイドボード落ち、代わりに《エンバレスの宝剣》がフル採用となっています。
インスタントトリックの多いディミーアローグが減少し、緑系のデッキが増えつつある今のメタゲームを適切に読んでの選択だと思われます。オボシュランプにも《厚かましい借り手》がいますが、3色ゆえに展開力で遅れをとることもあり、割り切ってクリーチャーを展開しなければならない場面もあります。《厚かましい借り手》を構えられる前に有利な盤面を形成して《エンバレスの宝剣》へと繋げて削りきる、だからこその4枚採用なのでしょう。
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップ
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Brad Barclay | ディミーアコントロール |
準優勝 | Autumn Burchett | グルールアドベンチャー |
トップ4 | Andrea Mengucci | エスパースタックス |
トップ4 | Tomas Pokorny | 緑単フード |
トップ8 | Brad Nelson | 緑単フード |
トップ8 | Luca Magni | ディミーアローグ |
トップ8 | Jan-Moritz Merkel | グルールアドベンチャー |
トップ8 | Gabriel Nassif | 緑単フード |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者185名で開催された『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップはBrad Barclay選手の優勝となりました。同大会はスタンダードとヒストリックの混合フォーマットで行われ、スタンダードラウンドは全8回戦となっています。人気の緑単フードが3名入賞する一方で、先週まで欠かさずトップ8入りしていたランプ系は残っておらず、メタゲームの変動を感じる結果となっています。
メタゲーム
デッキタイプ | 1日目 |
---|---|
グルールアドベンチャー | 44 |
緑単フード | 32 |
ディミーアローグ | 31 |
オボシュランプ | 20 |
ディミーアコントロール | 19 |
エスパースタックス | 17 |
マルドゥスタックス | 4 |
その他 | 17 |
合計 | 185 |
グルールアドベンチャーや緑単フードといった緑系のデッキに続くのはディミーアローグ、オボシュランプ、ディミーアコントロール。そのなかでディミーアコントロールの台頭こそ、オボシュランプが勝ちきれなかった要因といえるでしょう。ディミーアコントロールは「グルールアドベンチャーに強いミッドレンジを意識したアーキタイプ」となっています。打ち消しと除去呪文に加えて、《精霊龍、ウギン》がフィニッシャーとなっているため、スタックス系にも強いデッキとなっています。
トップ8デッキリストはこちら。
緑単フード
4 《ギャレンブリグ城》
2 《眷者の居留地》
2 《這い回るやせ地》
-土地 (23)- 4 《金のガチョウ》
4 《絡みつく花面晶体》
1 《イリーシアの女像樹》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
1 《打ち壊すブロントドン》
4 《意地悪な狼》
4 《貪るトロールの王》
2 《巨大猿、コグラ》
-クリーチャー (28)-
2 《鎖巣網のアラクニル》
2 《漁る軟泥》
2 《魔術遠眼鏡》
1 《打ち壊すブロントドン》
1 《原初の力》
1 《強行突破》
1 《萎れ》
1 《怪物の代言者、ビビアン》
1 《精霊龍、ウギン》
-サイドボード (15)-
緑単フードは《金のガチョウ》と《パンくずの道標》を並べて、《意地悪な狼》や《貪るトロールの王》など食物・トークンを効率よくリソースへと変換するカードに繋げて盤面を支配していくミッドレンジデッキ。緑単フードのなかでも7勝以上をあげたGabriel Nassif選手のデッキをみていきましょう。
地味ながら注目すべきはマナソースでしょう。新たに採用された《這い回るやせ地》は後半にダメージソースとなる土地であり、ディミーアコントロールやスタックス系などのこちらよりも遅くコントロール力に長けたデッキに対してのフィニッシャーとなります。《精霊龍、ウギン》や《屋敷の踊り》の返しなどはダメージを稼ぐチャンスとなります。
また、対処手段が《取り除き》か《廃墟の地》くらいしかないため除去されにくいカードでもあります。通常、相手の土地が起きているのであれば除去を警戒しますが、現在のメタゲーム的には積極的にクリーチャー化してダメージを稼ぐのも正当化されるでしょう。
除去呪文がないため、展開力の遅れは敗北へと直結します。そのために相手より素早く有利な盤面を整える必要があり、《金のガチョウ》《絡みつく花面晶体》に続く9枚目のマナクリーチャーとして《イリーシアの女像樹》が採用されているようです。
ほかの緑単フードよりも多めにマナクリーチャーを採用しているため、伸ばした先のカードも増やしたいところでしょう。このデッキでは盤面干渉できる《巨大猿、コグラ》が2枚と多めに採用されています。生き残れば攻撃に合わせエンチャントやアーティファクトも破壊できるため、相手の《グレートヘンジ》に触る手段となります。
Brad Nelson選手のように小回りの利く《打ち壊すブロントドン》を選択した構築もありましたが、ミラーマッチやオボシュランプを意識するならば重いながらも制圧力にたけた《巨大猿、コグラ》に軍配が上がりそうです。緑系のデッキとの対戦で一歩抜きに出た構築といっていいでしょう。
サイドボードにはゲーム展開を変える《探索する獣》が3枚採用されています。スタックス系などのコントロールマッチではクリーチャーを展開しつつリソースを稼ぐ中長期戦となりますが、《探索する獣》を採用したことでこれまでよりもライフを詰めやすくなっています。《エルズペス、死に打ち勝つ》や《絶滅の契機》の返しでのプレイが理想といえます。
ディミーアコントロール
6 《沼》
4 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《清水の小道》
4 《欺瞞の神殿》
4 《這い回るやせ地》
-土地 (31)- 4 《真面目な身代わり》
3 《半真実の神託者、アトリス》
-クリーチャー (7)-
2 《塵へのしがみつき》
4 《無情な行動》
4 《ジュワー島の撹乱》
2 《本質の散乱》
2 《否認》
1 《取り除き》
4 《中和》
4 《絶滅の契機》
4 《海の神のお告げ》
3 《エルズペスの悪夢》
4 《精神迷わせの秘本》
2 《悪夢の詩神、アショク》
4 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (42)-
3 《神秘の論争》
3 《影の評決》
1 《エレボスの介入》
1 《本質の散乱》
1 《否認》
1 《エルズペスの悪夢》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
急激に数を伸ばしたディミーアコントロール。その背景には緑単フードなどグルールアドベンチャーに強いデッキの増加があります。ミッドレンジのクリーチャーデッキに対して打ち消しと単体除去は効果的であり、《真面目な身代わり》のおかげでランプに対してもゲームスピードで遅れを取りません。《発生の根本原理》や《グレートヘンジ》などの中盤以降に活躍する重いカードには打ち消し呪文が効果的であり、かなりテンポを稼ぐことができます。
デッキの基本は2マナ以下の呪文の組み合わせによるコントロールであり、「《本質の散乱》+《血の長の渇き》」や「《否認》+《無情な行動》」のように2+αで動けるように構築されています。ドロー呪文にいたってもインスタントタイミングで起動できる《精神迷わせの秘本》が採用されており、《本質の散乱》《無情な行動》などと併せて使用できるようになっているのです。軽い干渉手段と制圧力の高い《精霊龍、ウギン》をフィニッシャーとしたディミーアコントロールは、メタゲームの支配者となりました。
緑系デッキとの対戦でキーとなるのは相手の《グレートヘンジ》です。これが着地するか否かで勝敗は大きく左右されるため、4ターン目の最速着地を避けるためにも、3マナ以下でパワー5になるクリーチャーには特に注意が必要です。《恋煩いの野獣》《カザンドゥのマンモス》はどのデッキでも採用されているため、これらを後手でも除去できるカードが5枚採用されています。現在はグルールアドベンチャーや緑単フードを意識して《無情な行動》が多めに採用されていますが、《這い回るやせ地》の採用率が上がれば《取り除き》の増量も視野にいれなければならないでしょう。
《エルズペスの悪夢》は先手後手で強さが大きく変わりますが、2マナの干渉手段と組み合わせてなるべく早くキャストしたい1枚です。2枚以上の交換が狙えるだけではなく、相手の手札を参照することでその後の展開に大きく影響してきます。「何を打ち消し、除去すべきか」「どのタイミングでタップアウトすべきか」など、自分有利なゲーム展開にするためにも早めの設置を狙いましょう。
ディミーアローグ
3 《沼》
4 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《清水の小道》
4 《欺瞞の神殿》
-土地 (22)- 4 《遺跡ガニ》
4 《盗賊ギルドの処罰者》
3 《マーフォークの風泥棒》
4 《空飛ぶ思考盗み》
-クリーチャー (15)-
Martin Juza選手やPaulo Vitor Damo da Rosa選手が使用したのは《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたディミーアローグ。「切削」を最大限に活かすクリーチャーと補助呪文の構成となっており、緑単フードやランプなどの中速デッキを狙い打ちます。「切削」に特化した既存デッキですが、変化もみられます。
これまで《物語への没入》に頼りがちだったアドバンテージ獲得手段に、《心を一つに》が追加されています。戦場に人間/非人間・クリーチャーが必要となりますが、うまくいけばわずか1マナで2ドローできる破格の呪文となります。《遺跡ガニ》《空飛ぶ思考盗み》からの《心を一つに》+αの動きは、ボードと手札で大きくリードできます。
消耗戦で力を発揮する《夢の巣のルールス》ですが、このクリーチャーこそ《心を一つに》のキーといえるでしょう。《夢の巣のルールス》召喚後、墓地から人間・クリーチャーをキャストすれば《心を一つに》のコスト軽減条件を満たします。序盤でも終盤でも引いて嬉しい1枚となっているようですね。
リソース獲得手段が増えたことで土地も伸びやすくなり、呪文枠にも変化がみられます。これまで軽いカードでや打ち消し呪文に割かれていた枠が、《アガディームの覚醒》や《凪魔道士の威圧》といったマナコストの重いパワーカードへと変化しています。《夢の巣のルールス》を「相棒」とするためにパーマネントこそ2マナ以下と制限があるものの、呪文によりカバーしており、カードパワー不足は一切ありません。
メインボードは対クリーチャー戦を意識してカードが採用されているため、サイドボードにはコントロール用のカードが多めに採用されています。《スカイクレイブの影》は除去に強い再利用可能なクリーチャーであり、《スカイクレイブの亡霊》が減りつつある今、対処することは困難を極めます。《否認》《神秘の論争》でバックアップしながらのビートダウンプランに隙はありません。
おわりに
『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップでは、アグロ構成に寄せたグルールアドベンチャーが高い勝率をおさめました。変化を見せつつも、グルールアドベンチャー中心のメタゲームに変わりはないようです。
今週末にはどのような変化があるのでしょうか。また次回の情報局でお会いしましょう。