◆総合勝率
順位 | 名前 | 総合成績 | 勝率 |
1位 | 八十岡 翔太 | 21勝12敗 | 64% |
2位 | 行弘 賢 | 15勝9敗 | 63% |
3位 | 原根 健太 | 16勝11敗 | 59% |
4位 | 井川 良彦 | 17勝13敗 | 57% |
5位 | 津村 健志 | 13勝11敗 | 54% |
6位 | 中村 修平 | 15勝15敗 | 50% |
7位 | 齋藤 友晴 | 12勝15敗 | 44% |
8位 | 高橋 優太 | 9勝12敗 | 43% |
9位 | 大礒 正嗣 | 7勝14敗 | 33% |
10位 | 金川 俊哉 | 7勝20敗 | 26% |
◆3-0アーキタイプまとめ
ドラフト | プレイヤー | アーキタイプ |
【1stドラフト】 | 井川 良彦 | 赤白 |
【2ndドラフト】 | 津村 健志 | 赤黒 |
【3rdドラフト】 | 行弘 賢 | 青緑 |
【4thドラフト】 | 原根 健太 | 赤緑 |
【5thドラフト】 | 行弘 賢 | 緑黒 |
【6thドラフト】 | 八十岡 翔太 | 赤黒 |
【7thドラフト】 | 津村 健志 | 青黒 |
【8thドラフト】 | 八十岡 翔太 | 白緑 |
【9thドラフト】 | 原根 健太 | 赤黒 |
【10thドラフト】 | 中村 修平 | 緑黒 |
【11thドラフト】 | 八十岡 翔太 | 白緑 |
◆2-0アーキタイプまとめ
赤緑:4回
赤黒:4回
緑白:3回
赤白:2回
青緑:2回
白黒:2回
緑黒:2回
青黒:2回
青白:1回
青赤:0回
赤黒:4回
緑白:3回
赤白:2回
青緑:2回
白黒:2回
緑黒:2回
青黒:2回
青白:1回
青赤:0回
◆ 「環境の速度」
~攻撃側優勢のテンポ環境~
『イニストラードを覆う影』ドラフトは早い環境か?と問われれば、答えはYesだ。
環境の早さは攻撃補助の要素と攻撃抑制の要素の量で決まる。たとえばブロッカーとして大量のエルドラージ・末裔トークンが並ぶ『戦乱のゼンディカー』は攻撃抑制の要素が多く、遅い環境だった。
翻って『イニストラードを覆う影』はというと、2マナパワー2や3マナパワー3といったマナレシオが標準のクリーチャーが数多く存在することはもちろん、それだけでなくひとたび変身すれば手が付けられない狼男たちもいたりする。
また「調査」は、受けるためのアクションが限られており手札よりもマナが欲しい防御時よりも、手札を失ってマナが余りがちな攻撃時の方がありがたい能力だ。
対し、受けるための除去は重いか、何らかの制約があるようなものばかり。
このように見ていくと、『イニストラードを覆う影』ドラフトは【八十岡が指摘する】ように、基本的に攻撃側優勢で、マナカーブの良い展開とコンバットトリックの組み合わせや軽い装備品が重要なテンポ環境であると言うことができる。
◆ 「環境の性質」
~4, 5ターン目のスケールが問われるシナジー環境~
そのようなテンポ環境であることを前提とすると、「払ったマナ以上の効果をどのようにして得るか」が重要になる。
クリーチャーの単純なマナレシオにおいては赤と緑の狼男に勝るものはない。狼男を全て裏面だけで評価するならば、かけたマナ以上の働きが約束されているようなものだからだ。表面があるのでそううまくはいかないが、少なくとも4~5ターン目には使い手が望めば変身させることができる。
しかし赤や緑の狼男をピックできるポジションは限られている。では他の色や戦略を使わざるをえない場合、どのようにして狼男に対抗することになるのか?
それはシナジーだ。
2枚以上のカードを組み合わせ、それぞれを単体で引いたときよりも多くの効果を得る。そうすることで、狼男が変身する4~5ターン目に、払ったマナ以上の効果を獲得できるのだ。
実はこの環境には様々な2枚コンボが隠されている。たとえば「マッドネス」は手札を捨てるカードと「マッドネス」持ちカードとのコンボだし、マナレシオの良いクリーチャーに付いた「昂揚」も、《発生の器》や《闇告げカラス》《ガラスの破片》といった墓地を肥やすカードと組み合わせて真価を発揮するという点で、いわばコンボのようなものなのだ。
無論コンボの達成によって得られる効果には大小様々があるので、「強いコンボ」と「微妙なコンボ」の峻別はされてしかるべきだ。
他にも初手級のレアや狼男、コモン・アンコモンにいくつか存在するような特にシナジーを必要とせずに単体でも機能する「タダ得」カードに勝るものはないから、コンボにこだわるあまり最初からコンボの達成だけを目指すようでは本末転倒となってしまう。
ただそういったカードを除いては、いかにして4~5ターン目にコンボパーツを揃えてシナジーを形成するかが、実は勝負の分かれ目になっていることが多いのだ。
こうした環境の特性からすると、実はピックの段階で相当なデッキデザイン力が求められる環境だということがわかる。
【3rdドラフト】で行弘は《墓モグラ》の一周を見越し、2手目に《未知との対決》をピックした。【8thドラフト】の【八十岡のピック】を見ても《信条の香炉》のようなシナジーカードの点数はかなり高い。
「タダ得カード」>コンボパーツ>マナカーブ用バニラ。ただのマナカーブ押しのバニラビートだけで勝てる環境ではないことを念頭に置いた上で、特に序盤のピックにおいては、場を支えるためのレシオ標準の展開に加え、デッキ内により多くのシナジー要素を取り込むことを目指してピックした方が良さそうだ。
◆ 「特殊要素」
~両面カード入りドラフトの機微~
ピックの話が出たので、ここではもう1つこの環境ならではの特殊なルール (※マジックオンラインは除く) にも言及しておこう。パック開封後の両面カードの公開についてだ。
通常のドラフトではお互いのピックしたカードはすべて非公開のため、「上家が何をピックしたか」「どの色をやりたいと思っているか」は、1パック目の4~5手目以降のカードの残り具合から逆算して判断するしかない。「AとBの色のカードが回ってくるということは、AとBはやっていない。ならばCとDとEのうちの2色だろう」といった具合に、消極的な情報を積み重ねて上家のやっている色の情報を得るのがセオリーだ。
だが両面カードを上家が1パック目の早い段階でピックした場合、下家はそれを見て「上家はDの色をやっている (か、少なくともその時点ではやる気だった)」という確信的な情報が得られる。そしてその状況で下家がDの色をやるには相当のリターンが必要になるから、ということはつまり両面カードをピックしたことで下家との色の住み分けが促進されることになるのだ。
このように考えていくと、1パック目の両面カードには、カード自体の強さのほかに「住み分けバリュー」が付加されるということがわかる。
この「住み分けバリュー」ははたしてどれくらいの点数差をまくる力を持っているのか?
そのあたりの肌感覚は自分でドラフトを経験してもらって確かめていただくほかないが、おそらくこの環境のドラフトが未経験の読者の方々が想像するよりはずっと大きいものである、ということだけ差し当たり述べておきたい。
(余談だが、今回は公式がプロツアーのストリーミングに力を入れてから初の「パック開封後の両面カードの公開」ルールが採用されたドラフトになると思われるので、プロプレイヤーたちの両面カードをめぐる駆け引きにも注目だ)
◆ 現段階での色の評価
◆ 3-0デッキのメインカラーになった回数
緑:6回
黒:6回
赤:5回
白:3回
青:2回
緑:6回
黒:6回
赤:5回
白:3回
青:2回
◆ 2-0デッキのメインカラーになった回数
緑:11回
黒:10回
赤:10回
白:8回
青:5回
緑:11回
黒:10回
赤:10回
白:8回
青:5回
環境最強色は緑だ。
他の4色を圧倒するほどの生物の質、アグロデッキを前提にすれば使い勝手の良い除去、そして「調査」と、リミテッドで強力なほぼすべての要素が揃っている。
黒、赤、白の3色はどれも悪くはないが、特に緑のデッキに対する相性の良さとアンコモン以上の質の高さという観点から、個人的には黒を推しておきたい。
青はそもそもコモンの質が悪すぎるので色と呼べるか怪しいが、2色目のサポートカラーとしてはまだしも評価できる点と、『ゲートウォッチの誓い』環境と同様、不人気さが際立った場合の独占/複占バリューは【7thドラフト】の津村の例などそれなりにあるので、青いデッキの組み方は覚えておいて損はない。
◆ 舞台はプロツアーへ
このあたりまでは何回かドラフトをすれば感覚として掴める範囲である。
だが、重要なのは次のステップだ。すなわち共有された情報から一歩先に進んだ、自分なりの安定戦略を見つけ出すことが課題となるのだ。
この前提を受けて、プロプレイヤーたちはどんな戦略でもってプロツアー『イニストラードを覆う影』に臨むのか?
彼らがトップ8に残り、そして優勝することを祈りつつ、今回は筆をおかせていただく。
それでは、7月の『異界月』でまた会おう!