はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
今回は規格外のカードが目白押しの『ウルザズ・サーガ』をご紹介しましょう。
『ウルザズ・サーガ』ってどんなセット?
『ウルザズ・サーガ』とは、その意味するところの通り「ウルザの物語」であり、数多の極悪メカニズムと強力アーティファクトを生み出したエキスパンションであります。しかし、本来はウルザ・ブロック自体はアーティファクトではなくエンチャントに焦点を当てたエキスパンションであり、ターン毎に効果が増す成長エンチャントや《怨恨》に代表されるエターナルエンチャントがデザインされました。悲しいことにブロックテーマ以外の部分があまりにも印象的すぎたのです。
1998年10月に発売された同エキスパンションの収録カードは全350種類、新規キーワード能力は「サイクリング」、「エコー」となっています。「エコー」はパーマネント(主にクリーチャー)が持っており、本来よりも低コストにデザインされた代わりに、マナコストを2ターンに渡り分割して支払うもの。環境の高速化に一役買った能力であり、序盤から高い打点で押すストンピィ躍進のきっかけとなりました。
『ウルザズ・サーガ』の名カードたち
《燎原の火》
各プレイヤーは土地を4つ生け贄に捧げる。燎原の火は、すべてのクリーチャーにそれぞれ4点のダメージを与える。
《燎原の火》は土地とクリーチャーの両方を流すリセット呪文。《ジョークルホープス》に比べて効果は限定的ですが、タフネス5以上のクリーチャーならば先に出しても《燎原の火》の効果で流れず、自分優位な戦場を維持しつつコントロールが可能でした。
世界選手権99で、かのKai Budde選手(現マジック・プロツアー殿堂)は、《燎原の火》をキーカードに持つ赤茶単で世界一の座を手に入れました。当時はクリーチャー主体のアグロやコントロールが多かったため、このカードは効果てきめん。さらにマナアーティファクトの恩恵で倍のスピードで加速する赤茶単は、相手の展開力に遅れるどころか《欲深きドラゴン》で悠々と待ち構える始末だったのです。相手のクリーチャーが並んだところで《燎原の火》キャストされるといった次第であり、このタッグによって勝ち星を重ねていきました。
《通電式キー》
(1),(T):アーティファクト1つを対象とし、それをアンタップする。
「アーティファクト1つをアンタップする」。非常にシンプルな能力を持つ《通電式キー》ですが、多種多様なアーティファクトが揃った『ウルザズ・サーガ』に生まれたのが運の尽きか、茶単を中心に目覚ましい活躍をみせました。
マナアーティファクトと相性が良く、《通電式キー》により序盤から大量のマナ生成が可能となります。上で紹介した赤茶単では《厳かなモノリス》や《スランの発電機》を設置してマナを確保すると、《呪われた巻物》や《束の間の開口》、《ファイレクシアの処理装置》といった攻撃的なカードへと繋げました。《束の間の開口》から呪文が連打されては、もはや勝ち目はありません。
《アルゴスの女魔術師》
被覆(このクリーチャーは呪文や能力の対象にならない。)
あなたがエンチャント・呪文を1つ唱えるたび、カードを1枚引く。
《アルゴスの女魔術師》は《新緑の女魔術師》をスタイリッシュに、しかも単体除去に強くリデザインしたクリーチャーです。ひとたび着地すればエンチャントを唱えるほどリソースが増えるので、軽いエンチャントと合わせて使用されます。緑には珍しいドロー能力を持ったシステムクリーチャーであるため、特性を生かしたデッキが構築されました。
《アルゴスの女魔術師》はその特性から、攻撃的なデッキでも防御的なデッキでも使用された珍しいクリーチャーです。スタンダードにおいては《ヤヴィマヤの女魔術師》《祖先の仮面》と一緒にエンチャントに寄せたアグロデッキ、アデプトグリーンとなり、対戦相手を一撃のもと切り伏せてきました。《怨恨》による後押しがあったのも大きいでしょう。
カードプールが広がったエクステンデッドでは、《女魔術師の存在》と合わせてより安定したドローエンジンの構築が可能となり、《セラの聖域》による大量マナと合わせて《気流の言葉》による無限コンボへと発展しました。《アルゴスの女魔術師》によるドローを《気流の言葉》で置換し、自分はエンチャントを戻すことで、相手のパーマネントがなくなるまで続けることが可能だったのです。
現在では、レガシーのエンチャントレスにてその存在を確認することができます。
《弧状の稲妻》
1つか2つか3つのクリーチャーとプレインズウォーカーとプレイヤーの組み合わせを対象とする。弧状の稲妻は、それらに3点のダメージを望むように割り振って与える。
ウルザ・ブロックを代表する火力といえば《弧状の稲妻》でしょう。《ショック》と比べるとダメージ効率は悪いものの、ポイントはダメージを割り振れるところです。複数並んだクリーチャーを一網打尽にし、タフネス以上の余剰ダメージはプレイヤーへとあたえられるのです。カードパワーよりもメタゲームにおける理由から、一時代を築きました。
『ウルザズ・サーガ』がスタンダードリーガルだった時代、一つの緑単色デッキが覇権を獲得しました。《ラノワールのエルフ》や《極楽鳥》、《ラノワールの使者ロフェロス》からスタートし、高マナ域へと繋げるコントロールデッキ、トリニティです。次第に勢力を強めミラーマッチが横行していきますが、致命的だったのはマナクリーチャーが先にアクティブになる先手があまりにも優位過ぎたことです。
そこで生まれたのがトリニティに《弧状の稲妻》をタッチしたアングリーハーミット。デッキの根幹であるマナクリーチャーを対処することで、高マナ域への到達へと待ったをかけたのです。同じ基盤を持つデッキ同士ならば、一方だけマナクリーチャーが残ればどのような結果になるか、想像に難くありませんね。《弧状の稲妻》はミラーマッチにおける後手番の不利を覆し、先手にあっては優位を確固たるものとしたのです。
《天才のひらめき》
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、カードをX枚引く。
《Braingeyser》のアップデート版にして、青のX火力とまで呼ばれたのが《天才のひらめき》です。真価を発揮するには大量のマナが必要ですがシングルシンボルのため使いやすく、テンペスト-ウルザ両ブロックに相性の良いマナ生成カードがあったため、大活躍しました。
『エクソダス』で紹介したMoMaは、まさにこの《天才のひらめき》をフィニッシュブローに据えていました。勝利手段として大量のマナを注ぎこんでキャストされる様はX火力を想起し、まさに青のX火力の名をほしいままにしていたのです。さらにこのカードが優れていたのは、コンボ過程における手札補充として使えたことです。コンボを続けるためのドローの一つでありながら、同時に勝利手段となる、無駄のないこのデッキが一時代を築いたのはご存知かと思います。
そしてMoMaが世界を去って以後、《天才のひらめき》は由緒正しきコントロールデッキのアドバンテージ源へと姿を変えました。青茶単と呼ばれた《厳かなモノリス》入りのパーミッションデッキでは、打ち消し呪文で減った手札を瞬時に満たすとともに《マスティコア》の維持コストを補充し、揺るぎないコントロール能力を発揮するに至りました。《天才のひらめき》の後にキャストされる《変異種》や《マスティコア》、そしてあふれんばかりの手札を前にすると、投了以外に選択肢はなかったのです。
まだある名カード
さて、『ウルザズ・サーガ』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『ウルザズ・サーガ』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『ウルザズ・レガシー』をお届けいたします。