Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/05/03)
ギルド環境……じゃない!?
みなさん、こんにちは!ペトル・ソフーレク/Petr Sochurekです。
グランプリが開催できない情勢になっていますが、今週末はその代わりとも言えるイベントがMTGアリーナにやってきます。そう、アリーナオープンです。リミテッドで行われた前回のアリーナオープンは大成功であり、ウィザーズはもう一度リミテッドで開催してくれるようです!そのため、僕はここ数週間『ストリクスヘイヴン:魔法学院』リミテッドに力を注いでいて、環境を完全攻略しようと意気込んでいます。
通常、僕は「ギルド型」のリミテッド環境に期待しないようにしています。ひとつのギルドが飛びぬけて強かったり、エキスパンションが想定する色の組み合わせ以外でドラフトするのが難しかったりして、退屈に感じたり、ドラフトが単調になったり、運の要素が強くなったりすることが多いからです。
しかし嬉しいことに『ストリクスヘイヴン:魔法学院』は全く違いました。さまざまな形でデッキを組むことができる、多様性に富んだ環境です。3色目を追加できるだけでなく、「ギルド(大学)」の構築方法もひとつではありません!
アリーナオープンのフォーマットがシールドしかないことは承知していますが、この記事では『ストリクスヘイヴン』リミテッド全体に通じる話をしていきたいと考えています。環境にはどんな有効な戦略があり、それをどうドラフト・構築していくべきかを解説しますが、その内容を知っておけばシールドにも応用が効くはずです。
強メカニズム、「履修」
デッキ解説に入る前に、まずは新メカニズムである「履修」について少し言及させてください。このメカニズムを最初見たとき、深く考察しませんでした。「講義」が手札に入るとしても、そのほとんどは似た効果を持つ呪文よりも若干重いコストに設定されていて、1ドローよりも弱いだろうから大したメカニズムではないと直観的に判断していたのです。
しかし僕の見込み違いでした。蓋を開けてみれば「履修」はとてつもなく強力で、ほぼ間違いなく「履修」カードは全てデッキに入れるべきほどでした。それだけに「履修」カード(と「講義」カード)は非常に点数を高くしてピックすべきです。
これだけ「履修」が強力なのは、終盤になれば1ドローのほうが弱くなるからです。ドローの場合はデッキに1/3の割合で入っている土地であったり、終盤では役に立たない軽い呪文を引いてしまう可能性があります。しかし「履修」には”当たり”しかありません。
しかも、その役割は可変的です。適切なピックができていれば、状況に応じて必要としているものをほとんど「履修」で引っ張ってくることができます。除去、クリーチャー、サイズ強化呪文、ドロー、土地。そして何よりも常にルーティング(手札入れ替え)の選択肢があります。
「講義」呪文のなかで圧倒的に重要度が高いのは《環境科学》です(常識では考えられない多色デッキができるのは、全ての「履修」呪文が《環境科学》によって色マナに変換できるからです)。次点で重要なのは、デッキ次第ではありますが、たとえば《フラクタル召喚学》の1枚目でしょう。終盤戦の強さを担保してくれます(デッキ内の「履修」カードが全て巨大なクリーチャーに変化していく)。
おすすめのアーキタイプ
ティムールランプ
この環境は奥が深く、デッキの構築方法が最適化されたり、プレイヤーたちのピック優先度が変化していけば「メタゲーム」が動いていくんじゃないかと思います。ただ、現時点でもっとも勝てる戦略は”ティムールグッドスタッフ”だと考えています(場合によっては4色目以降も追加し得る)。上にデッキリストを掲載しましたが、これと似たデッキを何度もドラフトしてきました。
基本となるコンセプトは非常にシンプルで、ひたすら強いカードをピックし続けてカードパワーで相手を圧倒すること。上記のリストは運が良かったからできたんだろうと思われたかもしれませんが、この色の組み合わせにはアドバンテージを生むカードや除去呪文が豊富にありますので、みなさんが思うよりもずっと似たデッキを組めるはずです。
特定のカードをピックするタイミングを理解するには何度か練習する必要がありますが(特に土地が難しい)、苦労した分の見返りが間違いなくありますよ!
プリズマリ(テンポ型)
プリズマリの構築方法は2つあります(その中間になることもよくあります)。1つ目に紹介するのはテンポに寄せた形であり、僕はこちらのほうが強いと思いますね。プリズマリを目指すならたいていはテンポ型にすべきでしょう。
マナコストの軽い優秀な呪文をひたすらピックしていき、”重すぎる”呪文はどんなものであっても避けていきます(マナコストを軽減するカードが豊富にある場合は1~2枚程度ならOK)。とはいえ、通常はマナカーブを低くするのが理想です。
プリズマリ(グッドスタッフ型)
これはルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-VargasがTwitterに投稿していたデッキですが、プリズマリの2つ目の構築方法をわかりやすく示しているサンプルです。
このグッドスタッフ型の本質はマナコストの重いパワーカードを使ったミッドレンジであり、3色目をタッチすることがよくあります。それを念頭においてピックを進めましょう。
シルバークイルアグロ
今度はセス・マンスフィールド/Seth ManfieldがTwitterに投稿していたリストです。ティムールランプには及びませんが、シルバークイルは環境で2番目に強いアーキタイプだと考えています。白と黒には質の高いコモンが潤沢にあり、必要なカードが全て揃っているという印象です。軽くて強いクリーチャー、除去、持久戦に強いカード。欲張った構築をしたプレイヤーを咎められる長所もあります。
ひとつ注意点があります。シルバークイルには4マナ以上で強力なカードが多くありますが、このアーキタイプは白のクリーチャーデッキであり、綺麗なマナカーブを描く必要があります。マナコストの重い呪文は優先度を下げ、軽い呪文に重点を置きましょう。
それから、《シルバークイルの誓約魔道士》は本当に強いです。適当なコモンで代わりが効くだろうとは考えず、チャンスさえあればピックしましょう!
マルドゥミッドレンジ
もちろん必ずしもマルドゥカラーにする必要はなく、ロアホールドやシルバークイルにまとめても良いのですが、基本的な考えは変わりません。とにかく強い除去とクリーチャーをピックしていき、リソース差で勝利を目指します。
ただ、このアーキタイプには問題点があります。この環境の特徴として、クアンドリクスやプリズマリはマルドゥよりもカードアドバンテージ源を多く擁していることがあり、そうなるとリソースで押しつぶすのが難しくなるのです。よほど強いレアを引かない限りはマルドゥを目指そうとは思いませんが、こういうアーキタイプも組めることは知っておくべきでしょう。
ウィザーブルームアグロ
このセットが発売された当初、ウィザーブルームは邪魔者トークンと生け贄を軸にした構築が王道だろうと考えていました。しかしこれは勘違いでしたね。もちろんそういうシナジーデッキになることもあるのですが、勝てるウィザーブルームというのはアグロ寄りになっていることがほとんどでした。気取ってシナジーに過度に寄せようとするよりも、強いクリーチャーと強い呪文で固めるという古き良き戦略のほうが断然上手くいきます。
シールドとドラフトの違い
シールドの常ですが、完成度の高いアグロを組むのはドラフトよりも圧倒的に難しくなります。そういった戦略を機能させるには軽いクリーチャーがたくさん必要ですが、シールドだとプールにそれだけある確率は低いですからね。
そのため、シールドはレアを主役にした長く激しい戦いになるのが普通ですが、『ストリクスヘイヴン』も例に漏れません。4色目をタッチしたり、打ち消しや手札破壊を全てデッキに入れたり、ひたすら強いカードを入れたりしようとするのは一見すると異常に見えますが、シールドでは間違いではありません。
ドラフトでは《否認》や《激しい落胆》などが有効である状況は限定的ですが、シールドならばほぼ間違いなくデッキに入れるべきです。
環境には《情報収集》や《巧みな軍略》といったライブラリー操作呪文が多く存在しますが、これらはシールドにおいて点数が高くなります。デッキを”薄く”し、レアに対する解答や自分のレアへたどり着きやすくなるのです。シールドのパックを開封したら、こういったカードがないか確認してみましょう!
多様性のあるリミテッド環境を楽しもう!
そろそろ記事を締めくくろうと思いますが、その前にルイ・デルトゥール/Louis Deltourがシールドで組み上げたオーバーパワーなデッキをお見せしましょう。この環境がどれだけ奥深いかわかってもらえると思います。
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