(編集者注: この記事は《時間のねじれ》禁止告知前に執筆されたものです)
Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/06/13)
はじめに
こんにちは!みなさんお元気でしたか?
先週末は『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップが開かれました。ご存知のとおり、優勝したのはサム・パーディー/Sam Pardee!彼や彼の調整チームにはおめでとうと言いたいですね。
今回は本大会における私の体験を最初から最後まで余すことなくお届けします。
大会調整編
ここ最近になって、アルゼンチンプレイヤーたちとeスポーツチーム、MTGWAIを結成しました。私も参加している新規プロジェクトであり、アイディアと優秀なプレイヤーで溢れたチームです(チームのTwitter)。
このMTGWAIのメンバーを含め、同郷のアルゼンチンの仲間のなかにはチャンピオンシップに権利を持っているプレイヤーがいました。そこで慣れ親しんだテストパートナーと組むのではなく、セバスティアン・ポッツォ/Sebastian Pozzo(彼もMTGWAIのメンバー)と私は出場権利を持ったチームメンバーと調整することにしたのです。
チャンピオンシップのような大会に向けて調整するにはメンバーが少なく、全ての課題に取り組むだけの余裕がありませんでしたが、参加権利のないMTGWAIメンバーも調整に協力してくれました。MTGWAIから本大会に出場したのは、セバスティアン・ポッツォ、マウロ・サッソ/Mauro Sasso、マルティン・キロガ/Martin Quiroga、ジュリアン・マルティネス/Julian Martinez、そして私です。
こういった経験を彼らと共にできるのは本当に幸せなことでした。彼らは長年付き添ってきた友人であり、その一人一人が実力あるプレイヤーなのです。
『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップはダブルフォーマットの大会。スタンダードとヒストリックで争われました。
スタンダードは何か月も変化していませんでしたが、ヒストリックは本大会が新時代の幕開けでした。『ヒストリック・アンソロジー5』が使えるようになってから初のプレミアイベントだったからです。また、直近のリーグウィークエンドから《タッサの神託者》が禁止になり、環境最強のデッキ(ディミーアパクト)は構築が困難となっていました。
そういった経緯があり、ヒストリックのほうが調整に労力がかかると予想。ヒストリックに重点的に時間を使うことにしました。しかし残念なことに、『ヒストリック・アンソロジー5』がMTGアリーナで使えるようになったのはデッキ提出のわずか4日前のことでした。
スタンダード
これまで現環境のスタンダードの大会に出るときは「ラクドスサクリファイスは使えないか?」と毎回考えてきましたが、今回もそれは変わりませんでした。特に今回は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』から新戦力が加わってデッキ構築の幅が広がったため、希望が持てそうでした。
しかし《オリークの首領、エクスタス》の努力もむなしく、環境トップのスゥルタイ根本原理との相性はいまだに最悪。私はラクドスサクリファイスを諦めることにしました。
スゥルタイに対抗すべく、私が信頼を置いたのは空飛ぶドラゴンたち。イゼットドラゴンを選んだのは、スゥルタイ(使用者数がもっとも多いと予想していたデッキ)に有利に戦うことができると思っていたからです。また、私の好みに合っており、使っていて楽しいデッキでした。
ではチャンピオンシップに登録することになったリストをご覧いただきましょう。
デッキリスト:イゼットドラゴン
サイドボードプラン
スゥルタイ根本原理
対 スゥルタイ根本原理
Out
イゼットドラゴン
対 イゼットドラゴン
ナヤアドベンチャー
対 ナヤアドベンチャー
ジェスカイサイクリング
対 ジェスカイサイクリング (先手)
対 ジェスカイサイクリング (後手)
ディミーアローグ
対 ディミーアローグ
赤単アグロ / グルールアドベンチャー
対 赤単アグロ / グルールアドベンチャー
白単アグロ
対 白単アグロ
今回のデッキリストは一般的なものとほぼ変わりません。唯一違うのは、《神秘の論争》3枚のところを《神秘の論争》2枚と《否認》1枚に散らしたことでしょう。デッキリスト公開制の大会であることを踏まえ、こうした変更を加えました。
サイドボードに話を移すと、ピン挿しの《影槍》はアグロ、特にサイクリングに対して大活躍します。目障りな《秘密を知るもの、トスキ》も破壊できる数少ない手段なので、うっかり忘れないようにしてくださいね。
最悪の相性であるナヤアドベンチャーの使用率が高まることがなければ、我慢強いプレイヤー、そして試合のペースを握りたいプレイヤーにはイゼットドラゴンをおすすめします。
大会結果
対戦相手 | 結果 | |
---|---|---|
4回戦 | Max Mick (スゥルタイ根本原理) |
2-1 |
5回戦 | Jeffrey Silver (スゥルタイ根本原理) |
1-2 |
6回戦 | JoJo Basilio (ナヤアドベンチャー) |
2-1 |
7回戦 | Zack Witten (グルールアドベンチャー) |
2-1 |
12回戦 | Lukas Dusek (スゥルタイ根本原理) |
2-0 |
13回戦 | Francesco Biscardi (白単アグロ) |
1-2 |
14回戦 | Franche Tan (スゥルタイ根本原理) |
2-1 |
15回戦 | Andrew Cuneo (グルールアドベンチャー) |
2-1 |
アーキタイプ別の戦績
総合戦績 | |
---|---|
対 スゥルタイ根本原理 | 3-1 |
対 ナヤアドベンチャー | 1-0 |
対 白単アグロ | 0-1 |
対 グルールアドベンチャー | 2-0 |
スタンダードは6-2。デッキ選択には大満足です。対戦の半分は意識していたマッチアップ、スゥルタイでしたからね。
ヒストリック
直近でヒストリックをやり込んでいたのは、3週間前にリーグウィークエンドに参加していたセバスティアン・ポッツォと私だけでした。幸いだったのは、当時のデッキ選択(彼はイゼットフェニックス、私はジェスカイターン)に満足していたことです。
新カードを使った練習時間が限られていたため、1からデッキを組む時間はわずかにすることにし、そこで何か発見がなければ熟知した2つのデッキの調整に移行することにしました。
そしてその予想は見事に的中します。新しく組み上げたデッキはどれも予想したメタゲームで戦える代物ではなかったのです。イゼットフェニックスは環境随一の安定度であることは明らかであり、最大勢力になると予想していました。セバスティアン・ポッツォとマウロ・サッソはイゼットフェニックスを選択しましたが、残りのチームメンバーは《ヴェロマカス・ロアホールド》のパワーに賭けることになりました。
ジェスカイターンは私がリーグウィークエンド調整で一番時間をかけたデッキであり、当時選択したのも私だけ。今回の選択にも自信がありました。
イゼットフェニックスとのメインゲームはジェスカイターンが有利ですが、サイドボードを挟むと戦いづらくなります。しかし、MTGWAIのメンバーであるオマール・カブレラ/Omar Cabreraのおかげで勝率を高める素晴らしいサイドボードプランを見つけたのです。
そのコンセプトとは、コンボ部分をサイドアウトし、《原初の潮流、ネザール》を主役にしたコントロールに変貌すること。『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップの後にこのサイドボードプランを使う人が増えていきましたし、この技をリーグウィークエンドのときに発見できたのは喜ばしく思います。
カード選択でもっとも悩ましかったのは、もうひとつのコンボとして《マグマ・オパス》と《ミジックスの熟達》を入れるかどうかでした。カードパワーが高い2枚ではあるものの、墓地対策の採用率が高くなった場合を懸念していました。そこで1ゲーム目のコンボを押し通す打ち消しを採用し、より柔軟なサイドボードプランがとれるような手堅い構成にすることにしました。
このデッキ選択は正しかったと思います。この構成は大会の2大勢力であったイゼットフェニックスとジェスカイターンに有利に戦えるからです。
デッキリスト:アルゼンチン流ジェスカイターン
サイドボードプラン
通常、メインゲームはコンボを達成しやすいですが、サイド後は相手が《丸焼き》や《ドビンの拒否権》、追加のカウンターなどの厳しい対策をとってきます。そこで、コンボパーツの大部分をサイドアウトし、打ち消されない脅威で勝利を目指します。
ジェスカイコントロール
対 ジェスカイコントロール
イゼットフェニックス
対 イゼットフェニックス
ジャンドフード
対 ジャンドフード
ジャンドカンパニー
対 ジャンドカンパニー
グルールアグロ
対 グルールアグロ
オーラ
対 オーラ
セレズニアカンパニー
対 セレズニアカンパニー
ジェスカイターン
対 ジェスカイターン (先手)
対 ジェスカイターン (後手)
黒単アグロ
対 黒単アグロ
大会結果
対戦相手 | 結果 | |
---|---|---|
1回戦 | Eric Pei (黒単アグロ) |
1-2 |
2回戦 | Beatriz Grancha (グルールアグロ) |
2-1 |
3回戦 | Scott Lipp (ジェスカイターン) |
2-0 |
8回戦 | Nathan Steuer (イゼットフェニックス) |
0-2 |
9回戦 | Scott Miller (ジェスカイターン) |
2-1 |
10回戦 | 熊谷 陸 (イゼットフェニックス) |
1-2 |
11回戦 | Jonathan Geist (イゼットフェニックス) |
2-0 |
アーキタイプ別の戦績
総合戦績 | |
---|---|
対 ジェスカイターン | 2-0 |
対 グルール | 1-0 |
対 イゼットフェニックス | 1-2 |
対 黒単アグロ | 0-1 |
ヒストリックは4-3で終えました。これは少々残念な結果です。イゼットフェニックスに対するプランには自信があっただけに、イゼットフェニックスとの戦績が1-2だったのは想定外でした。熊谷 陸との3ゲーム目は接戦を落としましたが、もう少し上手くプレイしていれば勝てていたはずです。
黒単を駆るエイルク・ペイ/Eirc Peiとの試合も最適なプレイができませんでした。3ゲーム目は勝てた状況を見逃し、1ターン後にそれに気づいたものの、そのミスが仇となってマッチを落とすことになりました。
デッキ選択は良かったと思いますが、私がその好条件を活かせませんでした。
おわりに
両フォーマットを合わせると、総合成績は10-5。かなり良い結果ですが、ほろ苦い後味ですね。ミスをいくつか減らせていたらもっと良い結果になっていた、もしかしたらトップ8に入賞できたのかもしれないのですから。
でも、どんなことからも学ぶべきことはあります。次回もっと良い結果を出せるプレイヤーになれるかどうかは自分次第。この大会では長くて面白い試合がたくさんあり、対戦していて本当に楽しめました。マジックは素晴らしくも難しいゲーム。だからこそこんなにも面白いのでしょう。
終わりになりますが、MTGWAIの仲間と調整できたこと、今回このような結果を出せたことを本当に嬉しく思います。マルオ・サッソも10-5で終え、次回のセットチャンピオンシップの権利を獲得しました。マルティン・キロガとジュリアン・マルティネスは2日目進出できませんでしたが、この経験が彼らの選手としての成長を促し、次回は目標を達成してくれると信じています。
今回も読んでいただきありがとうございました。困難な時代ですが、みなさんの幸せを願っています。ではまた次回お会いしましょう。
この記事内で掲載されたカード
Matias Leveratto アルゼンチン出身のベテランプレイヤー。2012年にプロマジック業界から身を引くが、MTGアリーナを契機に復帰し鮮烈な再デビューを飾る。ミシックチャンピオンシップ予選を立て続けて通過し、世界最高峰で戦うチャンスを得た。見事にこの好機をものにし、ミシックチャンピオンシップ・ラスベガス2019で優勝。シミックネクサスで世界屈指のプレイヤーたちを次々と倒していった。ミシックチャンピオンシップ王者となった今、注目を集める選手の一人である。
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