《ウルザの物語》を攻略せよ

Piotr Glogowski

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2021/06/22)

はじめに

《ウルザの物語》とは奇妙なカードです。

ウルザの物語ウルザの物語

《ウルザの物語》は、かつてのエキスパンション『ウルザズ・サーガ』を面白おかしくリメイクしようというカードなのでしょう。英語版ではカードタイプに「ウルザズ」と「サーガ」が入っている言葉遊びになっています。

このカードは好奇心をそそり、直観的には理解できず、遊びがいがある。当初はそういった印象にとらわれてカード評価を行っていました。この印象はどれも間違いではなかったのですが、Magic Onlineに実装されてわずか数日でただのパワーカードだと気づくことになりました。この記事では、その《ウルザの物語》が持つ強さを一部紹介していきましょう。

《ウルザの物語》は何をするの?

本質だけ見れば、《ウルザの物語》は特殊能力を持った無色土地に過ぎません。しかし、特殊土地というのは割に合わない能力を持っていることがほとんどですが、《ウルザの物語》の能力は全くそんなことはありません。3マナを払えば打ち消されないトークンが無視できないサイズで現れ、そのトークンはいずれカード1枚分の働きをします。

構築物トークン

実際、このカードを使い始めたばかりのころは「手札の呪文を唱えるよりも《ウルザの物語》の能力にマナを使うのが最善のプレイなのでは?」と思わされることが多く、驚かされるばかりでした。

最高工匠卿、ウルザ

これまでにも《最高工匠卿、ウルザ》で構築物トークンを使った経験はありましたが、そのときは衝撃的なサイズまで成長することは稀でした。そのため、《ウルザの物語》のトークンもきっと同じ問題を抱えているだろうと最初は思っていたのです。

しかし、これは全くの見当違い。構築物トークンを2体出し、III章でアーティファクトを1枚サーチするため、《ウルザの物語》単体でもアーティファクトを3枚確保できます。ということは、ちょっと意識したデッキ構築にしてやれば、構築物トークンが7/7や8/8に届くことも十分にあり得るということ。今回の構築物は紛れもない脅威です。

III章はアーティファクトをサーチし、マナを払うことなくそれを直接戦場に出す能力です。まずはテキストを誤解しないようにしましょう。この能力はマナコストが0か1のアーティファクトを探し出す効果です。マナコストはマナ総量(点数で見たマナコスト)とは異なるものであり、カードの右上に書いてある数字が0か1のアーティファクトをサーチ対象にする必要があります

アーカムの天測儀エスパーの歩哨睡蓮の花
ダークスティールの城塞虚空の杯

《極楽のマントル》《石なる知識》は問題ありませんが、《アーカムの天測儀》《エスパーの歩哨》《睡蓮の花》《ダークスティールの城塞》《虚空の杯》は全てNG。マナコストが0でも1でもないからです。

《ウルザの物語》でサーチできるアーティファクトが主役であるデッキであれば、そのキーカードを実質「待機2」で4枚追加できるようになります。構築物トークンには興味ないという場合は「マナを3回出したらキーカードをデッキから直接戦場に出すカード」として使っても良いでしょう。では、デッキの軸となりそうな強力なサーチ対象は何があるのでしょうか?いくつか確認してみましょう。

地獄料理書精力の護符巨像の鎚
洞察のランタン写本裁断機拷問台

こういったカードに簡単かつ高確率でアクセスできるようになれば、カード名を冠したデッキは安定して回るようになります。サーチ対象はこれ以外にも優れた選択肢が揃っていて、ヘイトカードのようなものも扱えます。その一部を並べてみましょう。

ミシュラのガラクタモックス・アンバートーモッドの墓所溶接の壺
上天の呪文爆弾虚無の呪文爆弾黄鉄の呪文爆弾探検の地図
墓掘りの檻真髄の針影槍
バネ葉の太鼓魔女のかまど

ここまでの話を整理すると、結局《ウルザの物語》から得られるのはカードアドバンテージ、打ち消し不可の脅威を2体並べる機会、チューター効果、(1マナのアーティファクトをサーチした場合は)追加の1マナ。対して採用するリスクは、決まったタイミングで生け贄に捧げられてしまう無色土地であること。こうして見てみると、代償はごくわずかなのに見返りが莫大であることがわかります。

エンチャントであることがひとつのデメリットだと思われているようですが、奇しくもアーティファクトではないために《ウルザの物語》は多くのヘイトカードに引っかからないようになっています。

《ウルザの物語》を上手く使えるデッキ構築とは?

《ウルザの物語》を上手く使えるデッキを組むにはどうすれば良いのでしょうか?まずは私の失敗作を見てみましょう。

アスモラノリアニメイト

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自然とチューター効果に重きを置くデッキもあれば、構築物トークンに焦点を当てるデッキもあります。《ウルザの物語》を余すことなく使おうとするならば、それらを両取りできるのが理想ですが、いつもそれができるとは限らないでしょう。少なくとも《ウルザの物語》の効果のいずれかを上手く使えるようにするべきです。

先ほどのリアニメイトデッキでは、出てくる構築物トークンのサイズも小さければ、チューターで持ってくるものも頼りありません(《地獄料理書》は状況によっては弱く、実際にそういう場面は多くあります。その場合はサーチしたいものがありません)。

頑強残虐の執政官

《ウルザの物語》は強力なサブプランに位置付けられるものですから、デッキは能動的であるほうがベターです。そうすれば、メインプランがヘイトカードに封じられたときに、マナベースから1枚でプランを立てられるこのカードに出番が回ってきます。《頑強》《残虐の執政官》のプランは相手を十分に脅かすほどの強さはなく、相手が弱ったところを《ウルザの物語》で勝つということもほとんどありませんでした。

バネ葉の太鼓

もうひとつ気づいたのは、《ウルザの物語》マナカーブの低いデッキで使うのが望ましいということです。序盤から軽いアーティファクトを展開することは将来の構築物トークンへの投資になります。反対に4マナ以上の呪文は《ウルザの物語》が生け贄に捧げられると唱えづらくなるので避けるべきです。重たい呪文をどうしても使いたい場合はチューター効果から《バネ葉の太鼓》をサーチできるようにしましょう。

不吉な儀式の僧侶

私のリアニメイトデッキは《不吉な儀式の僧侶》を「蘇生」するために5マナまで伸ばしたいのですが、それは《ウルザの物語》と真っ向から対立するプランでした。マナカーブを低くすれば、《ウルザの物語》が土地枚数を増やし、マナスクリューを避けやすくなります。

上手く使うコツを知ったところで、早速成功を収めている《ウルザの物語》デッキをいくつかチェックしてみましょう。

アミュレットタイタン

デッキ名

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アミュレットタイタンは『モダンホライゾン2』でもっとも強化されたデッキのひとつ《ウルザの物語》を採用する最大の理由は実質的な《精力の護符》の増量です。

精力の護符探検の地図トレイリア西部

《精力の護符》は複数あっても困らないカードですので、もうひとつのチューター対象となる《探検の地図》は1枚に抑えてあります。余ったマナを《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を変換したり、《トレイリア西部》を介して《原始のタイタン》へアクセスしたりできるようになります。

豊穣な収穫

安定性を上げるツールとして《豊穣な収穫》も採用しています。アミュレットタイタンは理想的な手札を引いてさえいれば強いデッキでしたから、できる限り安定性を底上げするほうが魅力的に思えたのです。《むかしむかし》が使えた頃がアミュレットタイタンの全盛期のひとつだったのは、それなりのわけがあるのです。反対に《大いなる創造者、カーン》のように枠を埋めるだけのようなカードはデッキのつながりを弱めるカードでした。

樹上の草食獣桜族の斥候

《桜族の斥候》ではなく《樹上の草食獣》を採用し続けているのも同様の理由からです。1ターン目にアンタップインする緑マナ源は少なく、2ターン目以降は弱くなってしまい、ブロッカーにも向かず、相手の除去(特に《溶岩の投げ矢》!)を有効牌にしてしまう。そんな《桜族の斥候》を優先する理由は私には全くわかりません。

《ウルザの物語》のIII章がスタックに置かれたとき、《桜族の斥候》の効果でバウンスランドを置けば生け贄に捧げられる前に《ウルザの物語》を手札に回収できます。こういったプレイは、魅力的に思えて実は結果に影響したゲーム数はごくわずかという好例でしょう。

原始のタイタン

構築物トークンの効果はこのデッキでは優先度が低いですが、コントロールに対して《原始のタイタン》から《ウルザの物語》を2枚サーチすれば、ちょっとした《死者の原野》を彷彿とさせる動きができて便利です。純粋なコントロールは《死者の原野》の禁止以降アミュレットタイタンにとって厳しいマッチアップでしたから、《ウルザの物語》の加入は本当に意味のあるものだと思います。

アスモラノフード

アスモラノフード

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《虚ろな者》《復讐蔦》と一緒に使うことを想像していたからというのもありますが、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》はプレビュー期間から非常に期待していたカードでした。しかし2週間経過して輝き始めたのは、もっとミッドレンジに寄せた安定性のある構成です。

アスモラノマルディカダイスティナカルダカール地獄料理書楕円競走の無謀者ウルザの物語

ゴルガリフードはひとつの構築方法に過ぎず、ほかにもさまざまな方向性が考えられます。というのも、デッキの核となる部分が《アスモラノ》《地獄料理書》《楕円競走の無謀者》《ウルザの物語》の4枚だからです。

これらのカードは多角的なシナジーを形成しており、食物トークンを大量に並べることで構築物トークンや《アスモラノ》を強化します。この4枚を使うだけでカードアドバンテージを獲得し、十分なクロックを用意しながら、除去までできるのです。

アカデミーの整備士

この4枚を軸にもっと墓地あるいはアーティファクトシナジーに寄せることもできれば、トークンを並べる《アカデミーの整備士》と合わせてコンボ要素を入れることもできます。単にグッドスタッフを入れて脇を固めるのも良いでしょう。

《アスモラノ》《ウルザの物語》を組み合わせたデッキは《ウルザの物語》を余すことなく使おうとするデッキです。《地獄料理書》《楕円競走の無謀者》のコンボで構築物トークンもがっちりとしたサイズになります。

ランタンコントロール

ランタンコントロール

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《オパールのモックス》の禁止、そして万能な除去と手軽なアドバンテージを意識した新たなカードデザイン指針。今のランタンコントロールの境遇はかつてとは違います。しかし、《ウルザの物語》がこのアーキタイプに新たな息吹を吹き込みました

発明品の唸りオパールのモックス

《発明品の唸り》《オパールのモックス》が禁止になってからでは扱いづらくなっていました。そして《ウルザの物語》が無色土地であることが追い打ちとなり、今はもう大目に見る余地はなくなっています。

ランタンコントロールの《ウルザの物語》の魅力は、不足しているロックパーツを探し出すことであり、理想的な安定性が手に入ります。

しかし、それだけだと侮ってはいけません。構築物トークンを作ることも重要な部分なのです。私が経験したところでは、守りは構築物で十分だったので《罠の橋》をサーチする必要がなくなったりだとか、ライブラリーアウトと速度勝負したりだとか、《石のような静寂》を置かれてビートダウンプランに移ったりしたことがあります。従来は苦戦していたパーマネントタイプであるプレインズウォーカーへの脅威として使ったり、打ち消しをたんまり抱えた相手を出し抜くことさえありました。

クリーチャーを採用しないロックデッキにおいて、異なる角度からの攻め手になりつつロックパーツをサーチできる土地を手軽に採用できるのは計り知れないすごさですよ。

親和

親和

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『モダンホライゾン2』の発売とともに人気が復活し、プレイヤーたちに試されているのが親和です。まだ定石と呼べる構築方法は見つかっていませんが、《ウルザの物語》が馴染むデッキであるのは間違いないでしょう。ここでも《ウルザの物語》土地枚数を少し引き上げながらも、その4枚の土地はドローして一番強い脅威となっています。

イラクサ嚢胞

上記のリストの特徴は、オンライン上で見かける一般的なリストよりも3マナ域の数を抑えていることです。このデッキを回していたとき、《ウルザの物語》の能力を起動しているうちに《イラクサ嚢胞》が手札でだぶつくというパターンが多かったためです。

《ウルザの物語》を倒すには?

《ウルザの物語》は非常に強くて効率的なカードです。では、いずれ禁止されるほどなのでしょうか?その可能性はあるかもしれませんが、まだ確かなことを言えないのが現状です。

解呪

《ウルザの物語》は土地であり、プレイにあたってマナを払う必要がないので、《解呪》効果で対処しようとしても大きく有利になることはありません。それを承知のうえで破壊したくても、構築物トークンを出された時点で相手が実質的にカード1枚分の得をしているため、損をせずに破壊できるタイミングは非常に限定的です。

摩耗+損耗引き裂く突風ハーキルの召還術活性の力

エンチャントやアーティファクトを超効率的に対処できるカードであれば、期待する役割を果たせるかもしれません。《摩耗/損耗》《引き裂く突風》《ハーキルの召還術》《活性の力》などは、ときに理想的な解答になり得るでしょう。しかし、紛れもなく素晴らしい解答だと言えるカードが1つあります。それが《血染めの月》です。

血染めの月

《血染めの月》《ウルザの物語》が絡んだときの正確なルールはちょっと変わっています。《ウルザの物語》は山になり、能力は失われますがエンチャント・英雄譚という性質は残ります。英雄譚は最後の能力が解決したあとに生け贄に捧げられるというのがルール。能力がなければ英雄譚は即刻生け贄に捧げられるのです。

《血染めの月》は戦場の《ウルザの物語》を破壊しながらも、手札の《ウルザの物語》も完全に無意味なものにできるため、非常に強力かつ適切な対策となります。今後はポンザ、オボシュ果敢、その他《血染めの月》をメインに入れたデッキが増えてきてもおかしくありません。かなり環境の立ち位置が良さそうに思えます。

いずれにしても、まだまだ『モダンホライゾン2』を使ったデッキの構築・調整・配信を続けていくつもりです。このセットはまだまだ遊べそうですよ。

ピオトル・グロゴゥスキ(Twitter / Twitch / Youtube)

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Piotr Glogowski マジック・オンライン上でkanisterとしてその名を轟かせ、Twitchの配信者としても人気を博す若きポーランドの雄。 2017-2018シーズンにはその才能を一気に開花させ、プロツアー『イクサラン』でトップ8を入賞すると続くワールド・マジック・カップ2017でも準優勝を記録。 その後もコンスタントに結果を残し、プラチナ・レベル・プロとしてHareruya Prosに加入した。 Piotr Glogowskiの記事はこちら