はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
『フォーゴトン・レルム探訪』の新カードが続々と公開されていますが、お気に入りの1枚は見つかりましたか?自分は「d20(20面ダイス)を振る」効果に注目しています。最低限の効果が保証されているだけではなく、出目によっては大きなアドバンテージを得ることができそうです。
新エキスパンションについて語りたい気分はもう少し先延ばしにして、今回は『ストリクスヘイヴン』リーグ・ウィークエンドの大会結果を振り返る、現環境の総括をお送りしたいと思います。
『ストリクスヘイヴン』リーグ・ウィークエンド(7月)
1年間に渡り開催されてきたリーグ・ウィークエンド。その締めくくりとなるのが今回のリーグ戦であり、成績により世界選手権へ参加権利や来期の立場、進むべきガントレットが決まります。リーグ所属選手はどのようなデッキを選択したのでしょうか。
メタゲーム
デッキタイプ | MPL | ライバルズ |
---|---|---|
ナヤアドベンチャー | 5 | 5 |
スゥルタイ根本原理 | 3 | 7 |
サイクリング | 2 | 8 |
ティムールルーカ | 2 | 3 |
ディミーアローグ | 1 | 2 |
赤単アグロ | 0 | 2 |
ジェスカイ変容 | 0 | 2 |
マグダグルールタッチ青 | 1 | 1 |
その他 | 2 | 3 |
合計 | 16 | 32 |
現環境を代表する2大アーキタイプは《エッジウォールの亭主》と「出来事」カードを軸としたナヤアドベンチャーと、《出現の根本原理》を中心に据えたスゥルタイ根本原理です。MPLは実際にこの2つをサイクリング、ティムールルーカが追うかたちでメタゲームが形成されていました。
安定したミッドレンジやコントロールを選択する者が多かったMPLに対して、ライバルズではこの2つよりも人気を集めたアーキタイプが存在していました。サイクリングです。スゥルタイ根本原理のようなコントロールが増えることを見越して選択したプレイヤーが多かったようです。さらに赤単アグロとジェスカイ変容も2名ずつおり、スゥルタイ根本原理は強く意識されていたことがうかがえます。
また、両リーグに共通していえるのはイゼットドラゴンが皆無な点でしょう。アグロ狩りの筆頭といえるミッドレンジデッキですが、参加者は単色アグロを選択するプレイヤー自体が少ないと呼んでいます。
MPL成績上位者
勝利数 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
5勝 | Gabriel Nassif | ナヤアドベンチャー |
Lee Shi Tian | マグダグルールタッチ青 | |
4勝 | Jean-Emmanuel Depraz | サイクリング |
Marcio Carvalho | スゥルタイ根本原理 | |
八十岡 翔太 | ナヤアドベンチャー | |
Javier Dominguez | スゥルタイ根本原理 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
ナヤアドベンチャーとスゥルタイ根本原理が2名ずつ、次いでサイクリングと順当に成績を残しています。最多勝に輝いたマグダグルールタッチ青はアドベンチャー系の中でもっとも展開力に優れ、トークン戦略にも強いアーキタイプ。サイドボードに採用された打ち消し呪文によりスゥルタイ根本原理にもより強い構築となっています。
MPL全プレイヤーデッキリストはこちら。
ライバルズ成績上位者
勝利数 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
5勝 | 熊谷 陸 | サイクリング |
Corey Burkhart | サイクリング | |
Jacob Wilson | マグダグルールタッチ青 | |
4勝 | 高橋 優太 | サイクリング |
Thoralf Severin | ティムールルーカ | |
Alexander Hayne | 赤単アグロ | |
Kai Budde | ナヤアドベンチャー | |
Grzegorz Kowalski | スゥルタイ根本原理 | |
Luca Magni | ティムールルーカ | |
Louis-Samuel Deltour | ディミーアローグ | |
Mike Sigrist | 赤単アグロ | |
Miguel Da Cruz Simoes | スゥルタイ根本原理 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
ライバルズもメタゲーム通りサイクリングが最多アーキタイプとなり、さらに赤単アグロやディミーアローグも残っています。4勝したプレイヤーもいますが、スゥルタイ包囲網は形成され厳しい戦いが続いた印象です。
ライバルズ全プレイヤーデッキリストはこちら。
スゥルタイ根本原理
初期から最後まで、『ストリクスヘイヴン』期のメタゲームの中心にいたスゥルタイ根本原理。語りつくされてはいますが、マナ加速とボードコントロールによりどんな環境でも戦える対応力の高さと、揺るぎないフィニッシャー《出現の根本原理》がデッキの強みです。
「撃てば勝ち」とされる《出現の根本原理》は状況により、さまざまなカードの組み合わせがあります。盤面が押されているならリセット呪文を絡めつつ脅威を、五分なら手札破壊やリソースカードを、コントロールマッチでは対処手段の限られるプレインズウォーカーも効果的です。これらに《アールンドの天啓》を絡めることで、追加ターン+脅威か脅威2枚と相手に厳しい選択を強いることが可能となります。
《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》がすでに戦場にいるならばプレインズウォーカーの価値も上がります。戦場に出るなりいきなり《オニキス教授》の奥義が起動できるなら、勝負は決まったも同然です。
メタゲームがアグロ中心からミッドレンジへと移行し、かつボード以外に勝ち手段を搭載したことでサイドボードには打ち消し呪文や手札破壊が増えています。サイクリングに対して複数のカードが用意されています。《悪意に満ちた者、ケアヴェク》はトークン戦略を止め、《才能の試験》と《エルズペスの悪夢》は《天頂の閃光》に絶大な効果を発揮します。
サイクリング
サイクリングは環境初期からいたものの、構築はかなり変わったデッキです。《夢の巣のルールス》の有無に始まり、タップインランドを極力減らした2色から干渉手段を増やした4色と多岐にわたりました。「サイクリング」シナジーに加えて、「2枚引くことで誘発する能力」を採用したことでデッキパワーは格段に上しました。
《繁栄の狐》から始まる速攻は環境屈指のダメージクロックの高さを誇り、適切に除去できなければそのままゲームを決してしまうほどです。その脇を支えるのは《アイレンクラッグの紅蓮術師》であり、ブロッカーをどかしつつ中盤以降は本体を狙っていきます。また、トークン戦略により相手に単体/全体除去の両方を要求します。
そして忘れてはならないのが《天頂の閃光》です。たとえボードでのダメージが止まろうとも、直接本体を狙えるこのカードがある限り相手はのど元に刃を突きつけられているも同然。タップアウトで動くことは許されません。
「サイクリング」することでデッキを回していくため、「サイクリング」さえ付与されていればさまざまなカードが選択肢にあがります。《切り裂かれた帆》はシナジーを形成するカードでありながら、《黄金架のドラゴン》や《エシカの戦車》、《エンバレスの宝剣》への対処手段となります。
サイドボード後は《夢の巣のルールス》を「相棒」とする選択肢があります。ミラーやコントロールマッチでは《アイレンクラッグの紅蓮術師》よりも、カード1枚分多く確保できる構築へと変形します。《魂標ランタン》はミラーマッチで特に強い1枚であり、対戦相手の《天頂の閃光》のみ無効化できる優れモノ。《夢の巣のルールス》と《魂標ランタン》が揃えば、逆転は不可能といっていいでしょう。
マグダグルールタッチ青
グルールアドベンチャーは「上陸」をベースにした構築から、《ヤスペラの歩哨》+《厚顔の無法者、マグダ》によるマナ加速を取り入れたかたちとなりました。最速3ターン目に《黄金架のドラゴン》が走れる奇襲性を持ちながら、長期戦では《厚顔の無法者、マグダ》によるアドバンテージも期待できるのです。元々は《グレートヘンジ》によるバックアップ手段が取られていましたが、ボードにパワー5以上のクリーチャーが残りにくくなり、プレイできず手札に残るマッチアップが増えたことで構築自体が大きく変化しました。
《ヤスペラの歩哨》と《厚顔の無法者、マグダ》が揃えば戦闘を介さずとも宝物トークンを生成できるようになります。アドベンチャー系のなかでも《エシカの戦車》や《黄金架のドラゴン》など重いカードが複数採用されているのは、このマナ加速があればこそ。
ナヤアドベンチャーとサイクリングが持つトークン戦略は、《黄金架のドラゴン》や《恋煩いの野獣》などの単体で攻めるクリーチャーの天敵といえます。しかし、グルールアドベンチャーはトランプルを付与することでタップアウトを咎め、強引に突破していきます。複数のタイプの攻撃手段があることもこのデッキの強みなのです。
サイドボードにはクリーチャー対策が多めに採用されていますが、目を引くのはタッチされた《軽蔑的な一撃》でしょう。元々スゥルタイ根本原理に強いアーキタイプですが、長引いた場合にも目の前でプレイされるビッグスペルをただ眺めずにすみそうです。青マナ源は9枚の土地に加えて、《ヤスペラの歩哨》に宝物トークンと十分過ぎるほど用意されています。
ナヤアドベンチャー
環境中盤、アドベンチャーエンジンと《クラリオンのスピリット》、リソース確保とボード変換の一体になった《スカルドの決戦》を組み合わせたナヤアドベンチャーが登場しました。しかし、当時はボード以外の干渉手段は乏しく、全体除去からの《出現の根本原理》には苦戦を強いられていました。
しかし、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の《精鋭呪文縛り》により、相性はかなり肉薄します。余剰マナを付与する白き《ヴェンディリオン三人衆》はマナ加速に待ったをかけ、全体除去を遅らせ、《出現の根本原理》をゲームから締め出します。質の高いクリーチャーと除去、ボード以外の干渉手段を手に入れたことで、アドベンチャー系のなかでも一歩抜きんでたアーキタイプとなりました。
《ドラニスの判事》は先の《精鋭呪文縛り》とのコンボもさることながら、ミラーマッチでは「出来事」持ちカードや《スカルドの決戦》に対するアンチテーゼです。《砕骨の巨人》で除去できない点も厄介であり、このカードがメインサイド合わせて4枚採用されていることからも、ナヤアドベンチャーが強く意識されていることがわかりますね。
おわりに
今回は『ストリクスヘイヴン:魔法学院』環境の総括をお送りしました。今晩にも全カードリストが公開となりますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。