Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/7/15)
はじめに
みなさん、ごきげんよう。ドミトリー・ブタコフ/Dmitriy Butakovだ。
ヴィンテージ。不変のフォーマット。《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《ウルザの物語》は歴史の浅い環境を揺るがしているが、ヴィンテージはほとんどその影響を受けていない。
確かに《ウルザの物語》はときおり見かけるし、青赤には《ドラゴンの怒りの媒介者》と《濁浪の執政》という期待の新戦力が加わっている。《猛火のルートワラ》と《激情》はホロウヴァインの新たな構築を誕生させた。
しかし、『モダンホライゾン2』のヴィンテージへの影響はそれぐらいのものだ。MOCS Showcase予選が2つ控えているから、今回はスゥルタイ視点からヴィンテージ環境を覗くことにしよう。
デッキリスト:墓荒らし
ヴィンテージチャレンジにスゥルタイ(通称、墓荒らし)で3度参加したところ、20-4を達成した。現時点でのリストを共有しておこう(少なくとも《イクスリッドの看守》1枚と《精神壊しの罠》は場違いであった。好きなものに変えてもらって構わない。私は《書庫の罠》で行こうかと考えている)。
環境を定義する4枚
ヴィンテージはパワー9のフォーマットだと思われる傾向にあるが、環境をより定義しているのは別のカードだと私は思う。1枚で勝利をほぼ確定させるカードや、継続的に莫大なアドバンテージをもたらすカードだ。
本稿では自分のスゥルタイのリストを詳細に解説することはしない。想定される相手に対してスゥルタイがどう対処すべきか検討していこう。
《Bazaar of Baghdad》
ドレッジ
ドレッジは《Bazaar of Baghdad》に大きく依存しているため、ゲームプランは比較的単純。最優先すべきは《Bazaar of Baghdad》の破壊だ。
そのためには《不毛の大地》か《暗殺者の戦利品》を使おう(ドレッジも土地破壊を運用しているため、《不毛の大地》はすぐに起動しないならセットしないように。土地を置かないターンが発生してしまうかもしれないが、それでも手札に持っておいたほうが良い)。
《トレストの使者、レオヴォルド》や《覆いを割く者、ナーセット》で《Bazaar of Baghdad》の力を抑えることはできるが、ほかに良い対策があるならこの方法はおすすめしない。「発掘」を相手のターンに1回、自分のターンにも1回されるだけでも十分にデッキが回ってしまう。
次に優先するべきは、墓地対策だ。幸い、スゥルタイはこの点に抜かりはない。《死儀礼のシャーマン》4枚、《忍耐》4枚、《外科的摘出》2枚、《イクスリッドの看守》3枚。《悲嘆》の手札破壊をくらってもなお、相手のプランを妨害できるだけの余裕があるだろう。
ほかのデッキでもそうだが、ドレッジとの1戦目は押される展開になる。運よく《不毛の大地》と《死儀礼のシャーマン》が揃えば、その相性も覆せるだろう。サイド後はスゥルタイが圧倒的に有利になる。
対 ドレッジ
ときおり《虚ろな者》によるスタートダッシュが突き刺さることがある。普段私はやらないが、後手で《活性の力》を1~2枚サイドインするプランがあってもおかしくはない。
こちらの切り札は《イクスリッドの看守》だ。《虚ろな者》以外のカードを完封し、《Contagion》でしか除去されない。《Contagion》は《イクスリッドの看守》を2体まとめて排除できるため、すでに1体を戦場に送り込んでいるならもう1体は手札に控えさせて置いても良い。
しかし正直なところ、こちらのターン終了時に《イクスリッドの看守》が破壊されれば、相手には《Bazaar of Baghdad》の2回起動とドローステップのチャンスが生まれ、ドレッジ側が勝つには十二分な隙を与えてしまうことになる。だから慎重になりすぎるのも良くない。
《忍耐》は墓地を追放するわけではないので注意を要する。ライブラリーのボトムに送るだけだ。《Bazaar of Baghdad》が回り始めていれば、数ターンで掘り当てられてしまうだろう。
《不毛の大地》と同じく、《The Tabernacle at Pendrell Vale》も必要になるまではセットしないようにしよう。破壊されるおそれがあるし、自分自身の展開を停滞させかねない。
ホロウヴァイン
《Bazaar of Baghdad》を悪用するデッキはドレッジだけにとどまらない。
ドレッジよりも一回り《Bazaar of Baghdad》への依存度が高まっているのが、《復讐蔦》デッキの最新型であるホロウヴァインだ。このデッキの《Bazaar of Baghdad》は攻守にわたって活躍する。《復讐蔦》を墓地に送ることもできれば、マナコストを払うことなく計12枚分のクリーチャーを戦場に出すこともできる。
ドレッジと違うのはある程度手札の枚数が必要な点だが、手札に帰ってくる《死の達人》と《ゴブリンの太守スクイー》によって各種ピッチスペルのコストが確保しやすくなっている。
スゥルタイにとって朗報なのは、《Bazaar of Baghdad》を対処さえすれば勝てること。逆に悲報なのは、ホロウヴァイン側もそれに備えていることだ。考えられる対策を挙げてみよう。
対策その1、土地破壊。この戦略なら《不毛の大地》と《暗殺者の戦利品》が有効かつ最善の方法だろう。《有毒の蘇生》は打ち消せば良いし、《石化した原野》は1ターンの猶予が与えられる。もちろん《死儀礼のシャーマン》で回収させないようにしても良い。《外科的摘出》がクリティカルヒットすれば勝利に直結するため、次回はサイドボードに数枚追加するかもしれない。
対策その2、墓地封じ。《イクスリッドの看守》はドレッジのときほどの完封力を持たないが、大量ドローさせない対策にはなる。ただし、ホロウヴァインはサイドから《激情》を入れてくるから注意が必要だ。
対策その3、ドロー妨害。《覆いを割く者、ナーセット》と《トレストの使者、レオヴォルド》が該当する。相手のゲームスピードを十分に遅らせられるが、それだけで勝つには心もとない。単なるサポートプランとして捉えよう。《覆いを割く者、ナーセット》の着地に成功したら、《激情》で落とされないように忠誠度能力を起動しないことも検討したい。
対策その4、墓地追放。これもサポートプランだ。全リソースを割いてしかけ、《忍耐》にまんまと引っかかるようなことはしてこないだろう。
ドレッジとのゲームプランと同じとも言えなくないが、ホロウヴァイン戦は少々工夫が必要だ。1ターン目に複数のクリーチャーを並べられた場合、《The Tabernacle at Pendrell Vale》で守ることもできるが、まずは《Bazaar of Baghdad》の破壊を優先しよう。1~2回なら攻撃を食らっても構わない。
幸い、ホロウヴァインはマリガンによる被害を受けやすい。《Bazaar of Baghdad》を探し求めた結果、《意志の力》や《不毛の大地》をキープする余裕がなくなることもある。
対 ホロウヴァイン
ホガークヴァイン
《Bazaar of Baghdad》がなくても回る保守的な構成だ。多少なりともヘイトカードを乗り越える力があるため、スゥルタイにとっては都合が悪い。《The Tabernacle at Pendrell Vale》による課税を払えるだけのマナがあるし、《Bazaar of Baghdad》がなくなっても投了しない。《甦る死滅都市、ホガーク》や《復讐蔦》も不意を突くように飛び出してくる。
喜ばしいのは、こちらのゲームプランに介入してこないこと、そして《Bazaar of Baghdad》の破壊力が突き抜けていないことだ。こちらのゲームを展開するだけの時間は数ターン得られることだろう。
《最後の審判》
ドゥームズデイ
ドゥームズデイ相手に正しく対応するのは非常に難しいが、ドゥームズデイには勝ち筋がひとつしかないという弱点がある(一度だけ《通りの悪霊》に殴り切られたことがあるが)。つまり、スゥルタイ側は勝つ必要はなく、負けないように意識すれば良い。《思案》の使い方は重々承知しているだろうから、序盤の戦い方については触れないでおく。勝敗が決まる山場だけ検討していこう。
手札に打ち消しや《忍耐》が豊富にあるのであれば、《最後の審判》は解決させてしまい、相手の行動を伺う。話をわかりやすくするため、まずは積み込む5枚のサンプルを並べてみよう。上から順に……
私はドゥームズデイに精通しているわけではないが、よく見かける一般的な積み込み方だ。ここで見逃してはならないのは、相手が追放したカードは確認できることだ。全てのカードをくまなくチェックして手札や残りのライブラリーを予測しても悪くはないが、私はいくつかポイントを絞って確認するようにしている。
《Ancestral Recall》《噴出》《渦まく知識》は追放されているか?通常はこのうちの2枚が追放され、残りの1枚が相手のドロー呪文になる。
《Black Lotus》は追放されたか?《Black Lotus》が残っていれば、《狼狽の嵐》や《神秘の論争》でバックアップしながら《タッサの神託者》を強気に出してくるだろう。《Black Lotus》が追放されている場合は、2枚目の青マナを《暗殺者の戦利品》や《不毛の大地》で潰して勝てる可能性がある。
打ち消しは何枚残っているだろうか?一般的なリストでは、《意志の力》が4枚、《否定の力》が1枚、《目くらまし》が2枚、《狼狽の嵐》が3枚、《神秘の論争》が1枚になっている。3枚以上を残す可能性は低いため、ここは念入りにチェックしよう。残る打ち消し全てと対峙しなくてはならない。
《タッサの神託者》の残り枚数は?《タッサの神託者》の2枚目の枠は打ち消しが入ることも多いため重要性は下がるが、《タッサの神託者》が2枚とも残っているなら1ターン猶予が伸びる可能性がある。
これらの情報をもとにすれば、ある程度詳細なプランを立てられるはずだ。では、どうすれば相手の狙いを挫くことができるだろうか?
《Ancestral Recall》。もっとも美しい解法だ。《タッサの神託者》に対応してライブラリーアウトに追い込む。1マナしかかからない効率の良さである。
打ち消し。相手が残した打ち消し呪文を予測できているため、《意志の力》を《狼狽の嵐》をバックアップするプランが有効になる。
《忍耐》。《タッサの神託者》が1枚しか残っていない場合は、《忍耐》に全てを賭けることになるだろう。《狼狽の嵐》《否定の力》《神秘の論争》に引っかからない。《目くらまし》のおそれがあるなら、わざわざ3マナ払って唱えないようにしよう。
《暗殺者の戦利品》。この選択肢が採れる場合は、追放された青マナソースをしっかりと確認したい。通常、青マナソースは《Underground Sea》4枚、《Black Lotus》、《Mox Sapphire》、《島》1枚である。2枚目の青マナ源を根絶できると確信したら《暗殺者の戦利品》を放とう。
対 ドゥームズデイ
《書庫の罠》などを採用している場合は、《王冠泥棒、オーコ》が次なるサイドアウト候補になる。
《修繕》
《逆説的な結果》
《修繕》はデッキの中核ではないが、甘く見ていると痛い目にあう。スゥルタイは《逆説的な結果》デッキに対して堅実に戦える力がある。相手の脅威に対して打ち消しを合わせられるし、メインデッキからのヘイトカードである《溜め込み屋のアウフ》《覆いを割く者、ナーセット》《トレストの使者、レオヴォルド》も痛烈に刺さる。サイド後は一層状況が好転する。
新戦力である《ウルザの物語》は見た目ほどの脅威ではない。《不毛の大地》でも《暗殺者の戦利品》でも壊せる。《活性の力》を土地破壊として使えれば最高だ。
勝つために重要なのは、相手の手札を予測し、《逆説的な結果》や《修繕》といったビッグスペルを打ち消す備えをするべきなのか、それとも序盤から相手のシナジーを崩すべきなのか決断することだ。
青マナを生まないマナソースは無視することがほとんどだが、《Mox Sapphire》+何らかのアーティファクトは《活性の力》の格好の的になる。
対 《逆説的な結果》
《Mishra’s Workshop》
ゴロススタックス
ラベジャーショップ
この2つのデッキは異なるゲームプランを持つものの、厄介な部分が同じであるため、スゥルタイ視点でみると大きな違いはない。
何よりも気をつけるべきなのは《抵抗の宝球》《三なる宝球》《アメジストのとげ》であり、もっとも煩わしい3枚だ。盤面に残らないようにしなくてはならない。逆手に取れる状況もなくはないが、それはレアケースだ。もし本当にそういう状況になったら、私のアドバイスは無視してもらって構わない。
《Mishra’s Workshop》デッキのスゥルタイに対するゲームプランは主に3つある。
お気づきのとおり、3つとも即座の敗北を意味するわけではなく、盛り返す方法も多い。幸い、ゲームをぶち壊してしまうのは《抵抗の宝球》だけだ。確かに《不毛の大地》や《ファイレクシアの破棄者》も面倒な存在だが、気をつけてさえいれば問題になることはない。
《溜め込み屋のアウフ》への過信は禁物だ。ラベジャーショップにはある程度有効だが、ゴロススタックスにはあまり効かない。このマッチアップの切り札は《活性の力》であるから焦って使わないように。2枚破壊できるタイミングで唱えていこう。
対 ゴロススタックス
対 ラベジャーショップ
おわりに
ミラーマッチはプレイングに全てがかかっている。残念ながら、これを短い言葉でアドバイスすることはできない。経験こそが最高の教師となってくれるだろう。
今回も読んでくれてありがとう。MOCS Showcase予選で会えることを楽しみにしている。
ドミトリー・ブタコフ(Twitter)