準々決勝: 佐藤 光一郎(東京) vs. 野稲 和弘(広島)

晴れる屋

By Atsushi Ito


 ついに、このときが来た。

 【Super Crazy Zoo】が、世界に羽ばたく瞬間が。

 そのチャンスを掴み取ったのは、18才という若さでここまで駆け上がってきた佐藤だ。

 しかも独自の調整で《ステップのオオヤマネコ》を排除、メインに《思考囲い》を移し、マナベースを改良。元のデッキレシピから、さらに大胆な改良を施している。


 だが、対するは「このために広島から来ました」という剛の者、野稲。

 しかもデッキはアミュレットブルーム。モダン最速のデッキと言われ、「3ターン目《原始のタイタン》アタック」も普通に起こりうるという、規格外のコンボデッキだ。


 モダンといえば3ターン以内に対戦相手を倒せるコンセプトを実現するようなカードはことごとく禁止カードに指定されている環境だが、それでもデッキビルダーというのはデザイナーの想像を容易にすり抜けるものだ。

 現にSCZとアミュレットブルーム、両者の平均キルターンは「3」に限りなく近い。

 極限 対 極限。

 早さの限界を追求した2人の死線が交差する。


Game 1

 スイスラウンドの上位が決勝トーナメントの先攻選択権を持つため、先手は佐藤。SCZ対アミュレットブルームという対戦で、この先手はあまりにも大きい。

 現に後手でマリガンした野稲に対し《思考囲い》を突き刺した佐藤は、

《花盛りの夏》
《殺戮の契約》
《召喚士の契約》
《仕組まれた爆薬》

 というラインナップから自身にとってのキラーカードになりかねない《仕組まれた爆薬》を排除することに成功する。

 このとき佐藤の手札には《僧院の速槍》もあり、ダメージ効率的には《僧院の速槍》プレイの方が上回っているが、互いにリストが公開されていることから、《精力の護符》ケアも合わせて敗北の可能性を潰しにいったファインプレイだ。



佐藤 光一郎


 そして土地を置いてターンを終える野稲に対し、佐藤は《僧院の速槍》を送りだし、《変異原性の成長》を撃ち込んで4点を与えると、第2メイン、ライフ11点で《死の影》を召喚する。

 さらに続くターン、《ギタクシア派の調査》で安全確認を済ませた佐藤は、フェッチ起動と2枚目の《変異原性の成長》であっという間に《死の影》を11/11まで育てあげると、手札の最後の1枚=《ティムールの激闘》を公開!


死の影ティムールの激闘


野稲 《仕組まれた爆薬》さえあればなぁ……」

佐藤 「入ってるの知ってますからね(笑) それだけは落とさないと」

 鮮やかすぎる先手3キル。オー、クレイジー。

佐藤 1-0 野稲


Game 2

 お互いマリガンスタート。そう、必要なのは一瞬の輝きだけだ。妥協の入る余地はない。

 だが《カルニの庭》スタートに対して《通りの悪霊》から《僧院の速槍》で駆ける佐藤、2枚目の土地が置けない。一方そんな佐藤に追い打ちをかけるかのように、野稲がプレイしたカードは《亡霊の牢獄》


亡霊の牢獄亡霊の牢獄


 さらに2枚目を重ね貼りされてしまい、レッドゾーンが遠い。

 それでもようやく2枚目の土地を引き込み、わずかな希望にかけて《タルモゴイフ》を送り出す佐藤だったが。

 やがて野稲が《集団意識》《召喚士の契約》のコンボを決め、勝負は3本目に持ち越された。

佐藤 1-1 野稲


Game 3

 今度こそお互い7枚キープ。そして佐藤が1枚目の土地を置くより早く、野稲は《神聖の力線》を設置する。

 これに対して涼しげな表情で《僧院の速槍》を送り出す佐藤だが、手札には《思考囲い》があり、目論見を外された格好。

 やむなく《古えの遺恨》を構えつつ1点クロックで甘んじる佐藤だが、それでも2ターン目のドローで《強大化》《ティムールの激闘》コンボを揃えている。墓地はフェッチ2枚しかないが、あと2枚墓地を溜めれば、18点コンボで一瞬で致死量のダメージを叩きだすことが可能なはずだった。

 そう、はずだったのだ。《血清の幻視》2枚で手札を整えた野稲が、3ターン目に《仕組まれた爆薬》「X=1」をプレイするまでは!


仕組まれた爆薬


 佐藤も即座に《古えの遺恨》を撃ち込むが、当然対応して《仕組まれた爆薬》が起動される。そして佐藤が引いていたクリーチャーは《僧院の速槍》1体のみ。2体目のクリーチャーを引かなければ、《強大化》《ティムールの激闘》のコンボは決められない。

 この隙に野稲は《精力の護符》をプレイ、セットお帰りランドにはスタックでフラッシュバックの《古えの遺恨》が飛ぶものの、《花盛りの夏》で普通にマナを伸ばしにいく。


野稲 和弘


 ワンチャンス。《僧院の速槍》さえ引けば、綺麗に18点入る。引け……引け!

 ……だが佐藤は引けず。

 野稲は《スラーグ牙》で安全圏へと退避し、《トレイリア西部》を「変成」した。

 それはゲームの終わりを意味する。

 野稲の手札に加えられたのは《召喚士の契約》

 そして野稲は、《原始のタイタン》を喚び出した。

佐藤 1-2 野稲


佐藤 「2枚目のクリーチャー引けなかったかー……」

 だが3ゲーム目で佐藤は1つ、重大なプレイミスをしていた。
 先手2ターン目。《神聖の力線》で封じられていた《思考囲い》をもし自分に撃つ・・・・・ことができてさえいれば。

 3ターン目の段階で2枚のフェッチと《思考囲い》《古えの遺恨》で墓地は4枚。《強大化》《ティムールの激闘》のコンボを先手3ターン目に決めることができていたはずだった・・・・・・・・・・

 しかもこのプランなら《古えの遺恨》を墓地に送り込んだ上でフラッシュバックの緑マナを残り1枚の土地で立たせられるため、佐藤がケアした「2ターン目《精力の護符》《花盛りの夏》《原始のタイタン》」プランもしっかり妨害できる。

 そして実際には野稲が《精力の護符》を見つけたのは後手2ターン目の《血清の幻視》の「占術」によるものだった。

 つまり、佐藤は勝てていたのだ・・・・・・・・・・

佐藤 《思考囲い》自分に撃つかは悩んだんですよね……でも《精力の護符》からの《原始のタイタン》ケアして構えちゃったんですけど……行った方が良かったのかなー」

 Super Crazy Zoo、無念の敗退。



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