高橋 優太(東京)。
【GP京都優勝】・【GPシンガポールトップ8】・【第4期スタンダード神挑戦者決定戦優勝】・【プロツアー『マジック・オリジン』15位入賞】。
これはここ5ヶ月ほどで高橋が残してきた輝かしい戦績の数々だ。GP優勝を皮切りに次々と上位入賞を繰り返す高橋は、今現在最も勢いのあるプレイヤーと言っていいだろう。
昨年まではプロツアーで初日落ちを繰り返すなど、今ひとつ波に乗り切れなかった感のある高橋だが、飛躍の要因は何なのだろうか?
今の自分は負けた分だけ強くなれる
--「今年に入って絶好調ですが、ご自身でその秘訣はなんだと思いますか?」
高橋 「メンタル面での変化が1番だと思います。昔は負けると『運が悪かった。なんで自分はこんなについていないんだろう。』と思うことが多かったんですが、最近はそういったことを考えずに、『どこが敗因だったのか』を分析しながらゲームを振り返るようになりました」
--「ゲームに対する向き合い方が変わったと」
高橋 「まだ甘いところはありますけど、自分の不運を嘆くことはなくなりました。今の自分は負けた分だけ強くなれると思います」
--「ほかに心境の変化はありましたか?」
高橋 「最近は強いプレイヤーと試合をするのがとにかく楽しくて。【この間のプロツアー】で久しぶりに2日目にいけたんですけど、セカンドドラフトの卓に強豪がたくさんいたんですよね。『これからこんなに強いプレイヤーと対戦できるんだ!』と思うとワクワクが止まりませんでした」
--「完全にサイヤ人ですね(笑)」
高橋 「はい(笑) もともと1人旅が好きなのもあって、そういったわけで最近は強いプレイヤーに会うために積極的に海外遠征するようになりました」
--「プロポイントや賞金を求めて、というわけではないんですね」
高橋 「もちろんそれも大切ですが、それよりも良い試合がしたい、強いプレイヤーとたくさん試合がしたいという気持ちが強いです」
--「ほかにも変化はありましたか?」
高橋 「あとは【Hareruya Prosに加入】した頃から、(仕事の)後輩がちゃんと育ってくれたおかげで、マジックに打ち込みやすくなりました。例えば以前だと仕事の都合で国内グランプリには参加できないことが多かったんですけど、最近ではほとんどの国内グランプリに参加できるようになりました」
--「小室 修さんたちですか?」
高橋 「そうです。そういった周りの人たちの協力のおかげで、今の好調があると思います」
強いプレイヤーと試合をすると大きく成長できる
--「現「スタンダード神」である瀬尾さんに対して、どのような印象をお持ちですか?」
高橋 「【僕の弟子(木原 惇希さん)に勝って『神』になったプレイヤー】ということですが、今度は師匠が出てきたぞと(笑) それと、最近ではなかなか若いプレイヤーが出てこなかったので、瀬尾さんのような若いプレイヤーが出てきてくれたことはすごく嬉しく思っています。強いプレイヤーと試合をすると大きく成長できると思うので、自分が瀬尾さんにとってそういった対戦相手になれれば光栄です」
--「渡辺 雄也さんも【大礒 正嗣さんとの試合】で【成長した】って言ってますよね。ちなみに高橋さんにとってそういった試合経験はありますか?」
高橋 「僕も大礒さんとの試合です。ちょうどその【なべ対大礒さんの試合】の直前に、僕は【準々決勝】で大礒さんに負けてるんです」
--「あのときの大礒さんは強かったですね」
高橋 「強かったです。僕がたくさんミスをしたのも確かですけど、それを抜きにしても大礒さんが強かった。実は2日目にも大礒さんと当たってるんですけど、完全に別人でした(笑)」
--「2日目までは【<否定の契約>払い忘れたり、<祖先の幻視>「待機」し忘れたり】してましたからね(笑)」
高橋 「(笑) でもあの試合で大礒さんに完膚なきまでに打ちのめされたおかげで、もっと努力しなきゃと思えました」
--「ご自身が勝った試合で印象的なものはありますか?」
高橋 「【津村さんとの試合】も1ターン目から鮮明に覚えてます」
--「あれは僕がミスりすぎました(笑)」
高橋 「あと【最後の世界選手権】のスタンダードラウンドで、僕が「赤緑《ケッシグの狼の地》」、対戦相手が「エスパーコントロール」のマッチアップがあったんですが、3本目が始まる前の残り時間が3分しかなかったんです。でもそこから全部の選択肢で正解を選べて、3分で勝てたんです。その試合ではスポーツとかでよく言われる『ゾーンに入る』みたいな感覚があって、すごく印象に残ってますね」
--「ゾーンですか」
高橋 「言葉では上手く説明できないんですけど、世界が止まっているというか、ほかの人と違う時間軸で動いているというか。あれを自分自身で引き出せたらなぁとよく考えるんですが、全然できません(笑)」
--「その感覚はなんとなく分かる気がします。でも自分の意思で簡単に引き出せたらきっと面白くないですよ(笑)」
高橋 「そうですね(笑) もしかしたらまたあの感覚が味わいたくて、今も大会に出続けているのかもしれません」
終わりなき旅
--「最後に、今後の目標をお聞かせください」
高橋 「プロツアーで優勝することです。もう挑戦を始めて10年になりますが、いまだに手が届きません」
--「Magic Onlineの影響もあって、昔よりも強いプレイヤーが増えましたよね」
高橋 「その通りだと思います。今は地方のプレイヤーでも練習環境に困ることはありませんし、弱いデッキで参加するプレイヤーなんて一切いなくなりましたね」
--「それだけにハードルは高いですが……」
高橋 「【ヤソもHareruya Prosに入ってくれたし】、環境はどんどん良くなってると思うんですよ。練習も新セットが発売したら始めるんじゃなくて、スポイラーが出た段階から始めるようにしてますし、これからは今まで以上に集中して取り組んでいきたいと思っています」
--「がんばってください」
高橋 「ありがとうございます。ただ次のプロツアーはまだ先なので、とりあえずは目の前の試合に集中したいと思います。瀬尾さんの使うデッキもなんとなく予想はできているので、しっかり練習して【スタンダード神決定戦】に挑みます」
--「期待しています。本日はありがとうございました」
プロプレイヤーとして、今まさに円熟期を迎えている高橋 優太。
今回は「挑戦者」として瀬尾に挑む形となるが、強い対戦相手を求める高橋にとって、この試合は願ってもない好機と言えるだろう。
更なる高みに到達するために。「スタンダード神」になるために。高橋の挑戦は続く。