はじめに
初めましての人は初めまして。いつもお世話になってる方はお疲れ様です。
てんさいチンパンジーこと増田 勝仁です。
先日、Hareruya Hopes事業の終了が発表され、それに伴い私と晴れる屋との契約も終了しました。こんな自分を約2年間もサポートしていただき、本当にありがとうございます。お世話になりました。
「これからは寂しくなるな」と思っていたところ、なんと今度はライター契約としてお声が掛かりました。これもひとえに応援して下さったみなさんのおかげです。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
早速本題に移らせていただくと、今回は現在のヒストリック環境について解説します。週末に迫った『Red Bull Untapped 2021 Japan Country Stop』や10月&11月の『Qualifier Weekend』のフォーマットがヒストリックのため、普段はヒストリックをプレイしない方に向けての記事になります。ヒストリックって何?という方は公式ページをチェックしてみてください。禁止カードもあるので一度目を通しておきましょう。
◆ヒストリック特有カード紹介
本項ではMTGアリーナでのみリリースされている以下のセットから、環境で活躍するヒストリック特有のカードを紹介します。
『Jumpstart』/『Jumpstart: Historic Horizons』
『ミスティカルアーカイブ』
『ヒストリック・アンソロジー』
『アモンケットリマスター』/『カラデシュリマスター』
『Jumpstart』/『Jumpstart: Historic Horizons』
《エスパーの歩哨》
《光輝王の野心家》で強化したり、《精鋭呪文縛り》で実質除去を機能不全にさせたりとお手軽にハメてきます。《イーオスのレインジャー長》でサーチ可能な点も嬉しいですね。
《海と空のシヴィエルン》
あれも欲しい!これも欲しい!もっともっと欲しい!と能力を追加していった結果、夢のようなクリーチャーが爆誕しました。非常に緩い条件でのドロー&破壊不能を持ち、周囲を守る「護法」に加えて自身のタフネスは脅威の4点。どうしてこうなったんだ…と思わずにはいられません。強すぎます。
《大魔導師の魔除け》
対コントロールには打ち消しとドロー、対アグロにはコントロール奪取と、いつでも・どんな相手にも一定の活躍をします。マナベースに負荷は掛かるものの、それに見合ったリターンが得られます。
《セラの使者》
プロテクション(クリーチャー)を指定したときの影響力は凄まじく、対処方法を持たないデッキを一瞬で詰ませます。シンボルやマナコストの重さから普通に唱えるのは難しいため、《不屈の独創力》で踏み倒すのが一般的です。
《歴戦の紅蓮術士》
手札を捨ててトークンを並べてもよし、使い切って出してリソースとして使ってもよし。赤いデッキにあるまじき粘り強さを実現します。
《ドラゴンの怒りの媒介者》
ヒストリックではフェッチランドや《ミシュラのガラクタ》がないため、専用デッキでないと「昂揚」は難しいですが、しっかり寄せたときの「諜報」&3/3飛行という性能は破格です。強制攻撃後に《魂標ランタン》で墓地を取り除かれて黒塗りのクリーチャーに激突するのはご愛嬌です。
《スランの医師、ヨーグモス》
性能はめちゃくちゃ。サクリ台としては最強クラスの性能です。《小走り樫》との組み合わせで無限コンボも可能な上にドロー&除去も可能。やりすぎです。とんでもない。
《縄張り持ちのカヴー》
2マナ5/5でメリット持ち。《タルモゴイフ》も裸足で逃げ出します。大量のトライオームやショックランドを前提としているため、構築への負荷は異常なレベルですが、条件を満たしたときの爆発力は狂っています。
《上流階級のゴブリン、マクサス》
かつてはヒストリック環境最強と謳われたゴブリンですが、現在ではあまり見かけないデッキになりました。が、その爆発力は健在です。忘れたころに当たって、「やっぱこのデッキ強くないか!?」と思ったのは一度や二度ではないです。
『ミスティカルアーカイブ』
《ミジックスの熟達》
ヒストリックではお馴染みの《マグマ・オパス》とのコンボは他フォーマットでは見られない光景です。ほかにも《出現の根本原理》を素早く唱えたりと、いかに”悪く”使えるかが試されます。
《稲妻のらせん》
3点火力に3点回復。シンプルイズベスト。アグロを使っていると、撃たれるだけでやる気が失せるレベルです。色さえ合えばアグロ/ミッドレンジ/コントロールのメイン/サイド問わず使いたいカードです。
《審判の日》
《神の怒り》の完全下位互換です。ですが、ヒストリックには「再生」を持ったクリーチャーがいないので、《神の怒り》とは名前が異なる以外すべて同じです。
『ヒストリック・アンソロジー』
《スレイベンの守護者、サリア》
モダン/レガシーでも大活躍のヘイトベアーです。ヒストリックは《弧状の稲妻》のような低タフネスをとがめる方法が少なく、見た目以上に対処が難しいです。
《コーの精霊の踊り手》
オーラを唱える。殴る。相手は死亡する。少しでも対応が遅れるとすぐに対処不能なサイズになります。上昇値がえげつないです。
《炎樹族の使者》
引いて並べる。いっぱい殴る。相手は死亡する。性質上、《アタルカの命令》や《エンバレスの宝剣》といったアグロデッキの必殺技との相性◎です。
『アモンケットリマスター』/『カラデシュリマスター』
《集合した中隊》
クリーチャーデッキの強さを5段階くらい引き上げています。急に4マナ立ててターンを返してくると、椅子に座り直します。
《神の怒り》
《審判の日》と同じです。8枚入れることはないと思いますが、《ギデオンの介入》《翻弄する魔道士》で指定されたときのことを考えて散らしたほうがいいでしょう。
《奔流の機械巨人》
お手本のようなコントロールデッキのフィニッシャーです。《マグマ・オパス》を「フラッシュバック」されると机をひっくり返したくなります。
《反逆の先導者、チャンドラ》
スタンダードでは大活躍だったものの、時間の経過とともに「あのころは強かったけどね…」というカードは多々あります。しかし、このカードは別格です。時間の経過を一切感じさせません。今でも出てくる度に「強すぎだろ!」と叫んでしまいます。
《不屈の独創力》
ヒストリックにはこの手の“インチキ”をするカードが種類が少ないため、お目にかかる機会は多いです。かつては《ヴェロマカス・ロアホールド》を踏み倒していましたが、最近は《セラの使者》《大修道士、エリシュ・ノーン》を踏み倒すことが多いです。
《安らかなる眠り》
ヒストリックは多くのデッキが墓地を利用するため、このカードをサイドに取れない&その影響を強く受けてしまいます。そのため、《安らかなる眠り》を使えるデッキはそれだけで大きなメリットと言えます。
◆主要デッキ紹介
本項ではヒストリックの主要デッキを紹介します。 便宜上、Tierを分けて紹介しますが、これは私の独断と偏見と好みと主観です。「これは違うだろ!」と思う部分もあるかもしれませんが、参考程度にとらえていただけると幸いです。
Tier1
ジャンドサクリファイス(ジャンドフード)
スタンダードでも大活躍だったデッキで、ヒストリックでも常に一定のシェアを保っています。直近の『$5K SCG Tour Online Championship Qualifier』でも優勝を飾りました。
基本的な動きはいつの時代も変わらず。《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《波乱の悪魔》のサクリファイスシナジーを《金のガチョウ》《パンくずの道標》でサポートします。
『Jumpstart: Historic Horizons』からは《貪欲なるリス》が追加され、一段階強化されました。追加のサクリ台かつリソース源として活躍しつつ、序盤に《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》とセットでそろったときは驚異的なスピードで育つ爆発力も見せます。
ジェスカイオパス
《マグマ・オパス》を《ミジックスの熟達》や《奔流の機械巨人》で踏み倒すコンボ内蔵のコントロールデッキです。《マグマ・オパス》+《ミジックスの熟達》のコンボは他フォーマットでは味わえない爽快感があります。
早いターンでの《マグマ・オパス》や《稲妻のらせん》のおかげで雑多なデッキに滅法強いのが特徴です。また、《大魔導師の魔除け》の追加で《奔流の機械巨人》の「フラッシュバック」対象が増え、より強く使えるようになった点も見逃せません。
問題はデッキのレアリティが高く、構築のハードルが非常に高い点が挙げられます。とにかく神話レアの枚数が多いため(当然、レアの枚数も多い)、資産に余裕がある方にオススメです。
ジェスカイシャーク
ジェスカイオパスと使用するカードが似通っているため、まとめてジェスカイコントロールと表記されることもありますが、それぞれ別デッキだと思ったほうがいいです。ジェスカイオパスはコンボ内蔵のタップアウトコントロールデッキですが、ジェスカイシャークは構えて除去して捌いてから《ドミナリアの英雄、テフェリー》や《サメ台風》で支配する典型的なコントロールデッキです。
ヒストリックにはめずらしい墓地をほとんど使わないデッキなため、《安らかなる眠り》を強く使える数少ないデッキです。ほかにも《墓掘りの檻》《大祖始の遺産》といった、他デッキでは使いづらい対策カードを一通り使える自由度の高さも特徴です。
イゼットフェニックス
かつてはヒストリック最強とまで言われたデッキですが、《渦まく知識》が抜けた穴は想像以上に大きく、環境外に追いやられていました。しかし、『イニストラード:真夜中の狩り』で《考慮》を手に入れ完全復活を果たしました。
《渦まく知識》があったころほどではないですが、それでもほかのデッキとは比べものにならないくらい安定したデッキです。豊富なドローソースや《嵐翼の精体》で特定のカードを探す能力にも長けており、サイド後に対策カードを引き込みやすい点も特徴です。《弧光のフェニックス》を使うものの完全に墓地に依存してるという訳ではなく、見た目以上に対策が難しいです。
白単人間/セレズニアカンパニー/アブザンカンパニー
性質は同じ白系部族デッキということで一括りにしています。《エスパーの歩哨》や《サリアの副官》、《イーオスのレインジャー長》など、『ヒストリックホライゾン』で追加された強力な白いクリーチャーたちを中心としたアグロデッキです。
緑をタッチすると最強の展開&リカバリーである《集合した中隊》が、黒をタッチすると《帆凧の掠め盗り》や《ドラニスのクードロ将軍》といったより優秀な妨害クリーチャーを使用できます。
また《エスパーの歩哨》《イーオスのレインジャー長》《集合した中隊》といったリソース獲得手段に長けており、コントロールデッキ相手でも息切れせず粘り強く戦えます。《ドーンハルトの主導者、カティルダ》や《秋の占い師》など、『イニストラード:真夜中の狩り』からの新戦力にも注目です。
Tier 2
5色ニヴ=ミゼット
ミッドレンジの王、《ニヴ=ミゼット再誕》を使った重量ミッドレンジです。《稲妻のらせん》《消失の詩句》《大渦の脈動》といった大量のリソース交換カードを撃ち合った後に飛び出す《ニヴ=ミゼット再誕》は爽快感抜群です。
5色というデッキの性質上、《縄張り持ちのカヴー》との相性は抜群です。序盤の能動的なアクションが少ないという問題点を最高クラスのカードで埋められたことで、デッキパワーが飛躍的に向上しました。
赤単マッドネス
《歴戦の紅蓮術士》《猛火のルートワラ》《ドラゴンの怒りの媒介者》を中心としたディスカード・墓地利用のアグロデッキです。手札を一気に消費するので、《ボーマットの急使》《アゴナスの雄牛》を強く使える点も◎です。
赤単らしいスピード感を持ちながら、多くのリソース獲得カードを有しているので粘り強さもあります。《獲物貫き、オボシュ》を使ったタイプも存在したりと、単色の割には拡張性があって長く遊べます。
ジャンド城塞
ジャンドサクリファイスの派生系です。《ボーラスの城塞》+《悲哀の徘徊者》のコンボでパーマネントを一気に並べ、《波乱の悪魔》がいる状態で《ボーラスの城塞》を起動して20点砲撃!で締めます。
《裕福な亭主》の追加でライフゲイン要素を獲得し、コンボはスタートしたがライフが足りずに仕方なくターンを返す、といった展開が減りました。
ラクドスアルカニスト
《戦慄衆の秘儀術師》を中心としたミッドレンジです。《思考囲い》→《戦慄衆の秘儀術師》の黄金ムーブは地味ながらもどんな相手にも有効な”コンボ”です。
しかし、デッキの大部分が墓地に依存しているため、墓地対策を乗り越えるのが非常に困難です。色の都合上、対策するのも難しいため、基本的には割り切ったほうがいいです。
マーフォーク
主力となるクリーチャーはすべてマーフォーク!全体強化クリーチャーは脅威の3種12枚!!お手本のような部族デッキです。戦術もシンプルに並べる→殴るのみ。《マーフォークのペテン師》《メロウの騎兵》以外はほとんど相手に干渉しないという漢らしさです。
アンコモン以下のカードが多いため、とりあえずヒストリックで遊びたいという方にはオススメです。ただ、デッキのほとんどが専用パーツなので、流用が効かないのが難点ですが…
ジェスカイ《不屈の独創力》
ヒストリックではめずらしいコンボデッキです。構築に制約はあるものの(《不屈の独創力》を使う関係上、コンボパーツ以外のクリーチャー/アーティファクトを使えないなど)、コンボに必要なパーツが少なく、構築の自由度が高いのが特徴です。
《不屈の独創力》は相手のクリーチャーやアーティファクトを対象にすることで疑似除去として使えたりと、意外と器用な一面もあります。また、《不屈の独創力》は《墓掘りの檻》で対策できない点は注意して下さい(※一度追放された後に戦場に出るため)。
Tier 3
グルールアグロ
《通電の喧嘩屋》《グルールの呪文砕き》《エンバレスの宝剣》などなど……。近年のスタンダードにおけるグルールアグロで活躍したカードたちの集大成です。ヒストリック要素の《炎樹族の使者》を絡めた爆発的な展開力は目を見張るものがあります。
除去耐性は低いものの打点が異常なため、単体除去程度では止まらないブルドーザーデッキです。《集合した中隊》から複数の《グルールの呪文砕き》が捲れると思うと…その後、どうなるかはご想像にお任せします。
セレズニアライフゲイン
デッキ構造はセレズニアカンパニーに近く、そこに《小走り樫》+《太陽の神、ヘリオッド》+《魂の管理人》(《裕福な亭主》)の無限ライフ&無限パンプコンボを内蔵した形です。
《集合した中隊》から突如として無限ライフが決まる可能性があるため、ライフを削ることでしか勝てないクリーチャーデッキからしたら地獄のようなデッキです。しかし、無限ダメージではない・破壊耐性もないことから、返しのターンに《神の怒り》のような全体除去で対処される可能性があるため、コントロールデッキに対してはあまり効果的ではないです。
オルゾフオーラ/アゾリウスオーラ
かつてはヒストリックを席巻したデッキですが、最近はずいぶん大人しくなった印象です。が、その爆発力は健在です。《コーの精霊の踊り手》《上級建設官、スラム》のいずれも出た瞬間に対処できなければその場で敗北するレベルの影響力です。
《エスパーの歩哨》が追加されて多少は強化されたものの、やはり要求値の高さがネックになります。絞り気味の土地とクリーチャーとオーラをバランスよく引かないとまともに機能しないという構造の問題は永遠の課題です。
◆結局、どのデッキを使えばいいの?
あれよこれよとデッキを紹介してきましたが、結局どのデッキを使えばいいのか?と思う方もいるかもしれません。現在のヒストリックはかつてのオラクルパクトやイゼットフェニックスのような圧倒的なデッキがないため、好きなデッキを使って十分に勝てる・楽しめる環境です。なので、自分の好みのデッキがあればそれを使えばいいと思います。大きく外すことはないでしょう。
特に組みたいものが思いつかない!という方はアーキタイプ別にオススメを紹介します。参考にして下さい。
アーキタイプ | デッキ |
---|---|
アグロ | 赤単マッドネス |
ミッドレンジ | 5色ニヴ=ミゼット |
コントロール | ジェスカイオパス |
コンボ | ジェスカイ《不屈の独創力》 |
上記4つのデッキはどれも強さが担保されており拡張性も高いため、長く遊べる点を評価しています。せっかく組んだデッキがあまり勝てない/すぐ飽きてしまってはもったいないですからね。
これでヒストリック環境解説は以上になります。また次回の記事でお会いしましょう。
増田 勝仁 (Twitter)