Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/11/15)
はじめに
やぁ、みんな!晴れる屋で僕が書く最後の記事にようこそ!ひとまずはここで一区切りだ。
みんな知ってのとおり、パンデミックでマジック、特にテーブルトップのマジックは大きな被害を受けた。契約選手がブランドを背負って世界中でプレイすることができなくなったのだから、晴れる屋がスポンサードプレイヤーの数を減らすのはやむを得ないし、当然の判断だと思う。
それから、ウィザーズがプロリーグの終了を発表してから、僕は自分の視野を広げ始めた。いま興味を持っているのがゲーム、そして仮想通過への投資の2つであり、その2つを組み合わせている「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」を見つけた。マジック専門の生活だったところから、ほかのゲームやそのほかのことにも手を伸ばし始めているんだ。
もっとも、ライバルズリーグの特権としてセットチャンピオンシップの参加権利が与えられているから、セットチャンピオンシップには参加し続けるけどね。
この記事では、長年マジックをプレイしてきたからこそ、ほかのゲームに移行したり、新天地を求めたり、新たな人たちと出会えたことについて話そうと思う。
マジックに存分に打ち込む余裕があると、マジックプレイヤーは自然とあれこれと思考を巡らせる。それは当然のことだと思うかもしれないけど、戦略ゲームの経験が豊富でない人にはなかなか備わっていない習慣だ。マジックで培ってきた考え方をいくつか紹介してみよう。
最終目標に焦点を当てる
マジックのようなゲームを戦っているとき、僕らは何よりも優先すべきひとつのゴールがあると認識している。それは、目の前のゲームに勝つことだ。だから、その究極の目標にたどり着く可能性を最大限まで高めるように判断を下していく。
その道のりのなかで、ゲームに勝つというメインゴールを達成するべく、さまざまなスモールゴールを設定することがある。相手のプレインズウォーカーを除去したり、あるいは自分のプレインズウォーカーを守ったり、ライフを守ろうとしたりね。
だけど、経験の浅いプレイヤーと比べて実力があるプレイヤーというのは、何にもまして重要な目標からを目を逸らさない。勝ったときのライフが1であろうと20であろうとそれはどうでもいい。相手のライフを1点も削れずに負けても、ライフを1まで削ったとしても関係ない。大事なのはその日の終わりに(今回のケースでは、そのゲームの終わりに)誰が勝ったかだ。
ひとつ例をあげてみよう。自分はアグロデッキを使っていて、相手は《神の怒り》のような全体除去を採用しているデッキを使っているとする。まだ経験が浅いプレイヤーだと盤面を一掃されて更地になってしまうことを恐れ、手札のクリーチャーを全て展開することに抵抗を感じる。
しかし、経験が増えてくると、相手が全体除去を持っていようといなかろうと、クリーチャーを全て出さないとゲームに勝てないとわかるようになってくる。結果的に相手が全体除去を持っていて、数体のクリーチャーを温存していたとしても、どっちにしてもそれだけの戦力ではゲームを勝ち切ることはできない。
マジックをプレイしているとき、こういったことを僕らはいつも当然のようにやっている。だけど、この考え方は日常の状況にも適用することができるんだ。たとえば、1時間以内に空港に着かなくてはいけない状況だとしよう。電車は空港まで40分かかるが、2時間に1本しかなく、時刻表はわからない。車で移動することも考えられるが、車だと1時間10分かかってしまう。
このとき、時間内に空港に到着するには、駅まで移動し、20分以内に電車がくることにかけるしかない。なぜなら、車では間に合わないからだ。こういった例外的な状況でない限り、普通は車で移動したほうが手堅く早く到着できるだろうだけど、今回の場合は手遅れだ。時間内に着くことが全てなんだ。運に恵まれ、駅に向かって間もなく発車する電車があれば、君は時間に間に合わせられるだろう。
こういった論理的思考はあらゆる戦略ゲームで頻繁に使用する。チェスなら重要な駒をおとりにし、そこからチェックメイトすることもあるだろう。
ハイリスク・ローリターンはお断り
マジックではありふれているけど、とても大切な考え方はほかにもある。それはリスクを測ることだ。リスクをおかしたときに得られるかもしれないリターンに対し、どれほどリスクがあるのかを考えることだ。
リミテッドをプレイしていると、戦闘時に自軍よりも敵軍のクリーチャーが大きく、「コンバットトリックを恐れて相手がブロックしなければ、数点のダメージを稼げる。それを期待して攻撃すべきだろうか?」という考えがよぎることがよくあると思う。
この場合、相手がブロックせずダメージを通せた場合にゲームに勝率する確率がどれほど増加するのかを考えなくてはいけない。それだけでなく、相手がブロックしてクリーチャーを失ったときにどれほど勝率が下がるのかも検討する必要がある。あわせて相手がブロックする確率も考慮すべきだろう。
もちろん数学的な答えがでることはないけど、プレイ経験が増えてくるとそのブラフがしかける価値のあるものかどうか判断がつきやすくなってくる。一般的には、数点のダメージで勝てる確率よりもクリーチャーを失うことによる敗北の可能性のほうが高いから、自軍のクリーチャーをリスクにさらすべきではない。
だけど、トップクラスの選手たちになると、相手は自分のクリーチャーを絶対に失いたくないだろうとか、相手が数点のダメージの重要性に気づいてない間にその数点を稼いでおくことが必要だとか、状況に応じてリスクをおかすべきタイミングを見極めている。
自分でコントロールできるものだけを考える
マジックは自分のコントロール下にあるものは多いし、多種多様なルートをたどることができる。だけど、全てをコントロールできるわけじゃない。その最たる例がお互いのトップデッキだ。
だからこそ、トッププレイヤーたちはランダム要素がゲームにどれだけ影響したかに固執せず、自分の判断が勝率を最大限まで高めるものだったかを分析する。ランダム要素がゲームに与えた影響を考えてみても、それはベストなプレイを見つけるための努力にはならない。
確かに信じられない負け方から立ち直るには、友人に話して慰めてもらうことが役に立つ。だけど、究極的な目標は自分がコントロールできるものだけに目を向けることだ。そうすれば、運悪く負けたときでも落ち込まずにすむようになる。
さいごに
この3つのトピックのなかで培った経験というのは、アクシー・インフィニティでの成功に大きく役立っているし、マジックでの功績があったからこそ仲間を求めている優秀なプレイヤーたちと巡り合うこともできた。
さいごになってしまったけど、ひとつ言っておきたいことがある。競技プレイヤーにとって現状の大会や制度はベストではないかもしれない。だけど、マジックはこれまでもそうであったように、強く復活してくれると確信している。マジックというゲームが約28年も続いているのにはそれ相応のワケがあり、あらゆる戦略カードゲームの先駆けなんだ。
そして、この場を借りてこれまでサポートをしてくれた晴れる屋にも感謝したい。功績も少なかった当初は、スポンサードしてくれたからこそ世界を旅して戦うことができた。
Arigato!!!
セバスティアン・ポッツォ(Twitter)