はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
先週に『ニューカペナの街角』の全カードリストが公開となりました。新しいプレインズウォーカーや3色土地、魔除けとどれから使おうかと目移りしています。発売は来週の29日にですが、そこまでにはデッキを完成させておきましょう。
ところで、『ニューカペナの街角』には懐かしのキーワード能力が再録されているのをご存じでしょうか?それは戦場に出たときライブラリートップから4枚を見て1枚を追放する能力…「秘匿/Hideaway」です!
今回の情報局では、『ニューカペナの街角』に再登場する「秘匿」にスポットを当てていきます。
「秘匿」とは?
「秘匿」とは『ローウィン』と『モダンホライゾン』に収録された6枚のカードのみが持つキーワード能力です。
「秘匿」
このパーマネントはタップ状態で戦場に出る。
このパーマネントが戦場に出たとき、あなたのライブラリーの上から4枚のカードを見る。それらのうち1枚を裏向きで追放し、残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。
タップ状態で戦場に出るため多少序盤の展開を損なってしまいますが、これらの「秘匿」持ちカード(特に『ローウィン』の土地についてですが)はそれを補って余りあるリターンを約束してくれました。ひとたび起動型能力の条件を満たせば自身タップと1マナで追放したカードをプレイできる、つまりマナコストを踏み倒せたのです。
カードとテンポ、両アドバンテージの獲得こそ「秘匿」カードの本質です。セットランドするだけでカード1枚分得できるわけですから、その有無はデッキ構築の段階から差となってしまいます。もちろんカードによって起動条件も異なるためすべてが活躍したわけではありませんが、本来カードアドバンテージを得にくいアーキタイプにとってはこれ以上ない救いとなりました。無から有を生むわけですから、相手からすればいかに「秘匿」条件を満たさせないようにするか頭を悩ませたのでした。
キスキン
『ローウィン』を代表する部族デッキのひとつ、キスキンは《風立ての高地》をもっとも上手く使えたデッキです。序盤からマナカーブに沿ってキッチリ展開していくため、条件である「あなたが3体以上のクリーチャーで攻撃していたなら」を満たすのは比較的容易です。仮にスムーズに展開できなかったとしても、1枚で条件を満たす《幽体の行列》や《雲山羊のレインジャー》が控えています。
《風立ての高地》は中盤~終盤でゲームを決める大事な役割を担いました。ここから《雲山羊のレインジャー》や《遍歴の騎士、エルズペス》がプレイされることを想像してみてください。《イーオスのレインジャー》やプレインズウォーカーなどほかにアドバンテージ源はありますが、《風立ての高地》はもっとも低コストで大きなリターンを得られるカードでした。
刈り痕ストーム
《背骨岩の小山》は《風立ての高地》に比べてやや起動条件が厳しめです。7点分の手札とそれを唱えるためのマナは普通のデッキでは揃いません。目を付けたのは事前にマナを支払って予めプレイするタイミングを決められる「待機」カードと「ストーム」の組み合わせでした。
《睡蓮の花》でマナを、《裂け目の稲妻》でダメージをストックしておき、来るべきターンに備えます。両カードの「待機」が解除されたところから勝負は始まり、12枚の1マナ火力があればあっと言う間に条件を満たせます。後は《紅蓮術士の刈り痕》を設置しながらたっぷり「ストーム」を稼いだ《ぶどう弾》や《記憶の点火》をお見舞いします。
コンボデッキでありながら《魔力変》以外のドローソースのないため、《背骨岩の小山》はコンボパーツや火力の仕込みとなったのです。
『ニューカペナの街角』の秘匿持ちカード
かつては「秘匿」を持つパーマネントはタップ状態で戦場に出るものと相場が決まっていましたが、『ニューカペナの街角』ではエンチャントに付随することもあり、挙動が若干変更されています。「秘匿」時に見るライブラリートップの枚数と戦場に出たときの状態は、必ずしも4枚やタップではなくなったのです。
さて、ここからは新しい「秘匿」カードを見ていきましょう。『ローウィン』のものとの違いは戦場に出すためにマナを支払ってプレイする必要がある点になります。《風立ての高地》のように気軽に出しておくことはできないのです。となれば必然的にマナコストが軽いものほど有用性が高くなりますが、起動条件も加味しなければなりません。「秘匿」しただけでは潜在的なアドバンテージがあるだけなのですから。
土地からエンチャントに変わったことで微力ながら何かしらの効果があり、色ごとにマナコストと起動条件が異なります。黒はボードに何も影響を及ぼさない反面、「発掘」があるフォーマットでは簡単に条件を満たしそうですね。
スタンダード視点では白や青はやや重そうに見えます。赤は宝物・トークンを出すカードと相性がよく、意外と早く達成できそう。
秘匿5
あなたのターンの戦闘の開始時に、あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンター1個を置く。その後、あなたがパワーが7以上のクリーチャーをコントロールしているなら、あなたはその追放されているカード1枚をマナ・コストを支払うことなくプレイしてもよい。
その中でも《八百長試合》はマナコストも軽く、クリーチャーデッキならば起動条件も緩そうです。しかも万が一「秘匿」した中に当たり牌がなかったとしても《光輝王の野心家》のようにクリーチャー強化として使用できる優れもの。緑単アグロに採用しても活躍しそうですが、強化面ばかりが目立ってしまい起動条件達成はやや遠そうです。
早期に《八百長試合》の起動条件を満たすデッキは構築できないのでしょうか?ここからは《八百長試合》の可能性に迫っていきます。
《八百長試合》は新たな秘匿デッキとなるのか?
トリガーと当たり牌
《八百長試合》の起動条件はパワー7以上であるため、3ないし4ターン目に《八百長試合》を設置すると仮定して4マナ以下で調べてみます。すると次の候補が見つかりました。
いずれも4マナ以下と《八百長試合》の前後でプレイして、即「秘匿」したカードをプレイできるクリーチャーばかり。《デーモゴスのタイタン》はクァドラプルシンボルながら同じ緑のカードでありプレイしやすそうです。後は当たり牌を選定していきましょう。
スタンダードで7マナ以上のカードを検索してみると《発展の暴君、ジン=ギタクシアス》に《星界の大蛇、コーマ》、《マグマ・オパス》、《船砕きの怪物》、《蝕むもの、トクスリル》とわらわらと出てきます。
踏み倒すならこれらでも十分と言いたいところですが、踏み倒すカードにしてはプレッシャーが足りません。求めるのは圧倒的なパワーと、確実な勝利なのです。さらに検索していくと…
あったー!!こ、こいつだぁ~!
《タラスク》は唱えられていれば速攻と護法が付与されます。つまり、《八百長試合》からプレイしていきなり10点のダメージを与えらえるのです。「ブロッカー?攻撃時に格闘で排除」「インスタントの単体除去?護法10が目に入らぬか」と走り抜けます。
しかし、《タラスク》1種類だけでも当たり牌が足りません。できればもう1種類、一撃で10点近く削れるカードが欲しいところ。再度検索してみます。
当たりは何もクリーチャーである必要はありませんでした。《爆発的特異性》は戦場に関係なく10点削ってくれる火力です。《八百長試合》で《タラスク》か《爆発的特異性》を「秘匿」して、次のターンに《デーモゴスのタイタン》を出すだけ!10点確約!『ニューカペナの街角』スタンダード、完!!
コンボの爽快さとは裏腹に、残念なことにマジックでは10点削っただけでは勝てません。最低でも倍の20点削る必要があります。《タラスク》にしても返しのターンで「予顕」した《ドゥームスカール》や《魂の粉砕》で対処されてしまう可能性があります。タップアウトした相手を咎める刹那的なプレッシャーが、このデッキにはまだ足りていないように思えます。そう、何かが。ゲームを決めるための何かが足りていないのです。
もう10点削る方法を模索
足りないのは残る10点を削るカードです。厳密に言えば《デーモゴスのタイタン》がいるのですからこれが攻撃できれば問題ありません。いっそのこと、緑お家芸のマナ加速で《デーモゴスのタイタン》を先に出しておくのはどうでしょうか。マナ・クリーチャーを採用することで《デーモゴスのタイタン》の攻撃時のコストも用意できます。2ターン目マナ・クリーチャー、3ターン目《デーモゴスのタイタン》、4ターン目《八百長試合》。
いいえ、対戦相手が《デーモゴスのタイタン》を見逃すはずがありません。スタンダードには《粗暴な聖戦士》などの対処手段があります。《デーモゴスのタイタン》を見て反射的に除去してしまう光景は想像に難くありません。やはり《八百長試合》を先にだし、相手に『パワー7ならまだ時間ありそう』と油断させた後、《デーモゴスのタイタン》をプレイして条件を達成するのがベストなのです。
つまり、《デーモゴスのタイタン》をプレイしてすぐに攻撃へ迎えれば解決するわけです。デッキに足りていなかったのは攻撃までのラグを消すカード、速攻を付与するカードだったのです。最高の相性が予想された《跳ね橋》は残念なことにローテーションによりスタンダードを去ってしまっています。第二の《跳ね橋》を見つけなければなりません。
パッと思いつくのは《兎電池》と《活力の温泉》でしょう。ともにボロスやグルールで採用歴があり、1~3マナと最小限のコストで継続的に効果を付与してくれます。それでも、これらのカードは理想とする動きからはほど遠いのです。
5ターンキルを想定するならば別ですが、今求めているのは4ターンキルを実現する圧倒的な速度とプレッシャー。相手に選択肢を与えずに勝利できる速さ、この一点のみなのです。《活力の温泉》は素晴らしいカードではあるものの、《八百長試合》とマナ域の被る今回は見送らざるを得ません。
4ターンキルを前にすると《兎電池》の1マナすら重く感じてしまいます。《兎電池》の「換装」コストを支払うためにマナクリーチャーも併用しなければなりません。理想は2ターン目マナクリーチャー、3ターン目《八百長試合》+《兎電池》、4ターン目《デーモゴスのタイタン》の動きですが、実に4枚のカードと緑と黒マナを合計で4つ用意しつつさらに赤マナを捻出しなければなりません。うっかり赤マナが2点も出てしまえば、肝心かなめの《デーモゴスのタイタン》が着地不可能になってしまいます。
求めているのは2マナで速攻を付与できるカード。《活力の温泉》の2マナ版ともいうべきカードがそんな都合よくあるわけありません。いえ、あったのです。《跳ね橋》の代わりはスタンダードにありました。
残念ながら赤のカードになってしまいますが、《アクスガルドの騎兵》は先出しで追加コストを必要とせずに速攻を付与できる、まさに求めていたカードです。2マナであるためほかのカードとマナカーブが被らず、速攻付与後は自身を《デーモゴスのタイタン》に捧げる献身ぷり。もうこのデッキのために生まれてきたとしか思えません。
さあ、これでカードは揃いました。形にしてみます。
サンプルリスト
《アクスガルドの騎兵》→《八百長試合》→《デーモゴスのタイタン》と美しすぎるマナカーブ。しかも《八百長試合》から《タラスク》か《爆発的特異性》がプレイされればピッタリ20点。相手は何もせぬまま敗北しているわけです。仮にブロッカーで《デーモゴスのタイタン》の道をふさがれてしまったとしてもご安心を。《タラスク》がガードをこじ開けてくれます。
《八百長試合》の対象が《デーモゴスのタイタン》だけでは少ないため、《デーモゴスの悲哀喰らい》と《死の神、イーガン》を追加しています。これら10枚のクリーチャーで《八百長試合》の起動条件達成を目指します。
赤いカードが増えたことで4ターン目に《デーモゴスのタイタン》をプレイできるのか危ぶむ方がいるかもしれません。赤マナは《落石の谷間》などのスローランドからプレイすることが理想ですが、時には《岩山被りの小道》を置く必要も出てきます。《領界路の開放》は序盤に設置した赤い小道を緑と黒マナへフィルターしてくれる色マナ補助カード。不可能を可能にし、4ターンキルに貢献してくれます。
とまぁ、理想論ばかり述べてきたわけですが、現在のスタンダードにはクリーチャー以外のパーマネントを対処できる《消失の詩句》や《スカイクレイブの亡霊》がメインボードから採用されています。棒立ちの《デーモゴスのタイタン》へ《ドゥームスカール》が飛んでくるかもしれません。
相手のデッキが白系の場合は《タミヨウの保管》を構えながら動きましょう。《タミヨウの保管》は単体除去にも全体除去にも強いカードであり、最速コンボが決まらない時の助けとなります。《蛇皮のヴェール》と違い効果範囲がパーマネントなのも嬉しいところ。《八百長試合》を守れるのです。
おわりに
今回は新しい「秘匿」カードに注目してきました。八百長シュートは本当に4ターンキルを決められるのか、実物のカードで試したいですね。『ニューカペナの街角』よ、早くやって来ぉーい!
2022年4月29日(金)発売予定の『ニューカペナの街角』ですが、現在晴れる屋ではブースターBOX、シングルカードともに予約受付中となっております!下記のリンクより『ニューカペナの街角』の商品ページへ繋がっておりますので、ぜひ、ご活用ください!!