はじめに
みなさんこんにちは、二度目まして。晴れる屋メディアチーム所属の島田と申します。
前回に引き続き、今回も4月29日に発売される新セット『ニューカペナの街角』の中から、個人的に素敵だと思うカードや伝えたいことがあるカードを紹介していきたいと思います。
最初に「『ニューカペナの街角』は新規次元を舞台にしたセット」と聞いたときには「新規次元だとわからないことも多いしそんなにいろいろ書けるかな?」と不安だったのですが、蓋を開けてみるとエルズペス・ビビアンなどお馴染みの面子やギャング達が治めるカオスな街並み、アールデコ風の洒落たイラスト、はたまたファイレクシアからアライグマまで魅力的な要素が満載でまたしても文字数制限が溢れそうになりました。
情熱のまま突っ走るこの企画、よろしければお付き合いください。
なお『独断と偏見で選ぶ』シリーズを読んでくださっている方々はご存じかもしれませんが、私は毎回以下のような基準でカードを選んでおります。
などなど…つまり特別決まったテーマがあるわけではないので、お気楽な気持ちでご覧ください。
また今回はMTG公式サイトに掲載されている『ニューカペナの街角』のストーリーのネタバレを多数含みます。ご了承ください。合わせて読んでいただけるとなお嬉しいです!
それでは始めましょう。
カード紹介
《市民の鉄梃》
へー天使の羽根モチーフの魔法の杖かな…いや、バールだこれ!
さすがはギャングの支配する物騒な次元、一般市民もちゃんと武装していると思いきや外見がやたらとファンシー。現実だったら魔法少女の持っているステッキのようなかわいいデザインですが、+1/+1修正を与えるということは武器としても立派に使える出来なのでしょう。修正だけで言ったら《エンバレスの宝剣》と同じですからね。
それでいて扉をこじ開ける代わりにアーティファクトやエンチャントを破壊する、いわゆる《解呪》能力も完備。さらに持っている市民までセットでついてくるという、デザインと実用性を兼ね備えた素晴らしい一品です。この鉄梃を持った怖いお兄さんが向こうから歩いてきたら可愛さと恐怖のギャップで気絶しちゃうな。
《華やいだエルズペス》
今回の主人公エルズペスは前回登場時の悲壮な表情とは打って変わって、華やかな装いで姿を見せてくれました。今回彼女は3種類のイラストが存在するのですが、個人的には通常イラスト版の笑顔が一番魅力的に見えますね。
ストーリー上では最初ちょっと情緒不安定でアジャニと喧嘩したり、ニューカペナに来てからはクリーニング屋さんでバイトしたり帳簿をつけたり運び屋をしたり、はたまたウエイトレスをしたりと大活躍(?)。運び屋ってエルズペスの正義感的にはオッケーなんだ!どちらかというと彼女が求めているのは、自分や虐げられている人々が安息を得られることで、法的な公明正大さはそんなに優先度が高くないのかも知れません。一口に白の正義と言ってもいろいろありますからね。
そしてストーリーと背景世界情報で明かされたところによると、このニューカペナ次元は彼女の生まれ故郷だそうです。久しぶりに帰ってきた生まれ故郷がギャングに支配された狂騒の世界に様変わりしているとは、彼女の不幸エピソードがまた一つ追加されてしまった…けど最後には探していた物も守るべき理想も見つけ出してすっきりした気持ちになったと思われるので、これからもっと笑顔を見せてもらいたいものです。
でも一つだけ、戻ったらアジャニには当たり散らかしたことを謝ったほうがいいんじゃないかな。「貴方にできることは何もありません」は言いすぎだよ!
《公共の敵》
はい出ました今回のデザイン最高大賞。
初見だとテキストがちょっとわかり辛いのですが、要はつけられたクリーチャーを「公共の敵」に仕立て上げることで、ほかの人々(=クリーチャー)の怒りの矛先をそちらに向けさせてしまうという恐るべきエンチャントです。
本来は公共の敵=反社会的勢力みたいな意味なので、ギャングばっかりなこの次元はだいたいそうじゃんと突っ込みたくなりますが、もはや公権力までも各一家が握っている状態だということでしょう。エンチャント(プレイヤー)ではなく(クリーチャー)なところも悪辣さを感じて良いですね。あきらかに手ごろな相手を狙っている。
そして、「公共の敵」を倒したところでカード1枚というちっぽけな利益を得られるのは、エンチャントをつけて敵を作り出したプレイヤーのみ。示唆に富んでいてとても美しいデザインです。青のカードはこういう示唆や皮肉が込められたカードがいきなり登場するので深読みのし甲斐がありますね。
《魚の餌になる》
これHUNTER×HUNTERで見たことある!
「魚の餌になる/Sleep with the Fishes」、つまり死体を海に投げ込んで隠蔽してしまうというギャングらしさたっぷりのやり口はニューカペナでも健在のようです。私は映画に詳しくないので今回調べて初めて知りましたが、元ネタは有名な映画「ゴッドファーザー」だとか。日本でも「東京湾に沈める」みたいな脅し文句がありますね。
しかしこのカードの場合はただタップされてアンタップしないだけ、生きてはいるけど体が動かない状態なわけ。ということは生きたまま食べられてる…ってコト!?
フレーバーテキストを総合するにこのカードは3部作のようです。かわいそうなアルトニオさん、愛しの魚ってきっとそういう意味じゃなかったんだろうに。しかもこの人ならず者じゃなくて一般市民なんですよ…
《しつこい負け犬》
いや名前辛辣だな!昔「骨なしチキンのお客様」というコピペが流行ったのを思い出しました。それよりもさらに罵倒としてのレベルが上がっている気がする。
しかし名前に反して能力は非常に強力で、ただでさえ2マナ3/2という優秀なスペックを持ちながら墓地から何度も甦るタフな体の持ち主。しかも「奇襲」により毎回ドローまでついてきます。こんなに強いのに「負け犬」になっちゃうって、相手はどれだけ強いんでしょう。《死の影》でも出されました?
その頑張りはちゃんと伝わっているようで、リングの外では熱の籠った表情で彼を見つめるファンも。いずれ勝利して「負け犬」でなくなった暁にはもっとかっこいい名前がつくといいね。
あと特別版イラストではコーナーに座っている姿が犬の耳のようになっていて洒落てます。このイラストも筋骨隆々で超強そう、相手がどれだけ恐ろしいのが気になるな。
《喧嘩腰の拳闘士》
日本語版のカード名を見た瞬間に気づきました、これは韻踏み翻訳シリーズ!
英語版だと「Pugnacious Pugilist」となっているところを日本語版は「けんかごしのけんとうし」と完璧に訳しています。1つでもこういうとこに気づけると嬉しいし、多言語や多文化に習熟している方はもっと多くのことに気づいて楽しみを見い出せるのでしょう。いつか自分もそうなりたいものです。
軽く他言語も見てみたところ、ブラジル・ポルトガル語版やフランス語版は同じように韻を踏んで訳している様子。言語ごとに文字や文法の違いがあるから、こういうときは同じラテン文字系が有利なのかな?もし韻に詳しい方がいらっしゃったら教えてくださると嬉しいです。
ここで小ネタを1つ。カードギャラリーの任意のカードを右クリックして「新しいタブで画像を開」き、開いた画像のURLの中ほどにある「jp_(カードごとの文字列)」部分を書き換えると各言語版の画像を表示できます。
en_:英語版
sp_:スペイン語版
ru_:ロシア語版
pt_:ブラジル・ポルトガル語版
kr_:韓国語版
it_:イタリア語版
de_:ドイツ語版
fr_:フランス語版
ct_:繁体字中国語版
cs_:簡体字中国語版
ほかにも多言語版を見る方法はいろいろありますが、1枚のカードのいろんな言語版をチェックしたいときにお使いください。
《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》
えっ情婦?ということはジェトミアさんと親密な関係で、でも猫・デーモンとエルフですよね?現実と体の作りは違うだろうけどいったいどうやって…と桃色の邪推をしてしまいましたが、英語版は「Jinnie Fay, Jetmir’s Second」。「次席」とか「補佐」みたいな意味でしょうか。
フレーバーテキストでもジェトミアさんは彼女に背中を預けるほど信頼しており、実の娘のように可愛がっているようです(直接の血の繋がりはないけど義理の親子関係)。
ははーんこれ知ってますよ。実の娘のように可愛がっていて信頼もしているしいずれは後継者にしようと思っているけど、それを公にするのが早すぎると妬まれたり後継者狙いのライバルに狙われるから「こいつは俺の女だから手を出すんじゃねえぞ(ギロリ)」みたいにして偽装するみたいな!その手のゲームで見たことある(※このくだりはすべて妄想です)。
《敵対するもの、オブ・ニクシリス》
ニューカペナはデーモンが中心の次元、そしてデーモンのプレインズウォーカーといえばこのお方!ということでオブ・ニクシリスが颯爽と登場。今回はギャングらしく格好良いスーツに身を包み、新能力「犠牲」で分身を出す能力を引っ提げての登場です。お洒落には全然興味ないタイプだと思ってたけど、TPOに合わせたりするんだ。
どうやら性能も期待されているようで、トップレア候補として各所の予約販売ではかなりの高値がついているようです。初代ゼンディカーで初登場したときからのファンとしては嬉しいかぎり!でもあんまり高額になると手に入れるのが大変になるから加減していただきたいところ。晴れる屋さんお願いしますよ。
『灯争大戦』のときに暇を持て余して鳥を焼いていたのとは打って変わって、今回は敵役として大暴れ。暴力と懐柔により各一家に浸透し、光素を巡ってエルズペスやビビアンと死闘を繰り広げます。ただ部下に八つ当たりしたりとちょっと小物描写が多かったような…敵役だから悪く書かれるのは仕方ないけど、もっと格好良く描写してくれてもいいんですよ。次回に期待。
カードとしても工夫のし甲斐のある能力で早く使ってみたいですね。黒赤のサクリファイスデッキにはすぐにでも入れられるし、ほかにも《エシカの戦車》でコピーしてみたり、《ファイレクシアン・ドレッドノート》なんかを生け贄で出して即奥義を使ったり。あとは今後のセットで優秀なデビルやデーモンが増えたら完璧だ。
《策謀の故買人》
これは…殿堂プレイヤー津村 健志さん!?つまりこれはプレイヤー・スポットライト・カード!?
なんじゃそりゃという方に説明しますと、世界選手権の優勝者は自分を描いたイラストのカードをその後のセットに1枚収録する権利を手に入れられるのです(ただ能力などは決められない)。この権利を使用して作成されたのが「プレイヤー・スポットライト・カード」で、現在MTGには下の2枚のカードが存在しています。
またかつては似たような仕組みで「インビテーショナルカード」が制作されていました。こちらは能力もある程度決めることができ、今でもよく使われている《闇の腹心》や《瞬唱の魔道士》はここで生まれています。
冷静に考えると昨年の世界選手権を優勝したのは高橋 優太さんですし、デッキボックスに書かれているアップの画像を見たらそこまで似てなかったんですが、カードの小さい画像は何度見ても似ていると思うのです。洋風な津村さんといった趣き。
能力も「小型のクリーチャーが優秀で珍しい能力を持っている」といかにもインビテーショナルカード感ありますし。イラストにばかり気を取られていましたが能力も優秀ですよね、こういうほかのカードの能力を得られるやつは無限コンボの気配がする。
《ジアーダの贈り物、ラクシオール》
ストーリーのラストでエルズペスを救った新たな愛剣が伝説の装備品として登場。そういえばエルズペス《影槍》はどこやったの?テーロスで壊れちゃった描写ありましたっけ。
巷ではさっそく《献身のドルイド》との無限コンボが発見され、また1マナなので《ウルザの物語》で探せることもあり性能的にも注目されているようです。無限コンボの話になるといつも《献身のドルイド》が酷使されている気がする。
気になるのは「プレインズウォーカーに装備」という独特の能力と「装備するとプレインズウォーカーではなくなる」という不思議な効果。これが光素の性質の一つなのでしょうか。もしゲーム上だけの効果なら何でもないのですが、ストーリー上でも同じ力を持っているとしたら…?
エルズペスがその灯を犠牲にする代わりにファイレクシアを打倒したり、あるいはほかの次元に進出しようとするファイレクシアのプレインズウォーカーをその能力で押しとどめたりするのかもしれません。あと次元渡り能力の暴走に苦しんでいる《放浪皇》に持たせてあげたらとても喜ぶのでは?今後その性質が明かされるのに期待しましょう。
おわりに
今回はここまで。ほかにも『ニューカペナの街角』にはたくさんの素敵なカードがありますので、ぜひカードリストを見てお気に入りの1枚を探してみてください。通常版と特別版の全カードリストを置いておきますね。
さらに2022年4月29日(金)発売の『ニューカペナの街角』ですが、現在晴れる屋ではブースターBOXやシングルカードの予約を受付中です。下記のリンクより『ニューカペナの街角』の商品ページへ繋がっておりますので、ご活用ください。
それではみなさま、『団結のドミナリア』でお会いしましょう。また次回!