Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2022/5/26)
はじめに
みなさん、こんにちは。
みなさんは『ニューカペナの街角』ドラフトを遊んでみたでしょうか?今回のセットはかなり特殊で、コモンすら能力が盛りだくさんなものばかりです(《宝石泥棒》なんて信じられない強さですよね!)
個人的な意見ですが、現代になっても土地事故はマジックの大きな比重を占めているので、オーバーパワーなカードはどうも好きになれません。あらゆるカードが能力付きでデザインされていると、引きの強いプレイヤーがさらに有利を加速させてしまいやすくなるからです。
話が逸れましたが、今回の本題に移りましょう。今日はセットデザインから環境を理解するトップダウン形式で私の知見を共有していきます。
環境の性質
まず、このフォーマットは優秀な色マナサポートがある3色環境としてデザインされていますが、多色カードはそう多く収録されていません。また、敵対色のカードはなく、3色のカードが強くなるのはアンコモン以上です。
コモンにも3色カードがありますが、主な役割は色事故の防止であり、そのかわりに重めのマナコストになっています。これらのことから、このフォーマットは一般的な3色環境ではなく、2色+1色(3色目をタッチする)環境だと考えています。
そう考えた場合、2色の組み合わせごとに考察していくことができそうです。各レアリティに多色カードが収録されている友好色から考えるのが素直でしょう。その後、その友好色にどうやって3色目を組み合わせ、友好3色にしていくかを検討していきましょう。
赤緑
赤緑の多色カードは《ジェトミアの仲介者》《ロウクスの保安員》《給付金》の3枚。純粋な宝物トークンテーマです。この色の組み合わせでは宝物トークンを出せる呪文に高い点数を付けます。
ピックして嬉しいのは《宝石泥棒》《表舞台の奇術師》《賭け試合》《光素のスカラベ》といったところ。
《ジェトミアの仲介者》を多めにピックできてゲームプランの核になりそうなときは《煌き売り》と《盗み癖》の点数を高めに設定しましょう。
宝物トークン生成カードを多めに採るメリットはほかにもあります。おのずと色事故を防止でき、さらにはマナ加速もできるので、手札のカードを滞りなく唱えていけるのです。赤緑以上に色のタッチに向いた組み合わせはありません。
つづいて舞台座一家と貴顕廊一家の3色のコモン・アンコモンを考えてみましょう。これらの多色カードが流れてきたときはタッチする可能性があります。
舞台座一家 (赤緑白)
舞台座一家にすると《舞台座一家の料理人、ロッコ》《厚顔な成り上がり》《放蕩の歓楽者》が選択肢に加わります。どれもクリーチャー複数体分として計算できるため、「団結」との相性が良好です。
《従者つきの社交家》《機知ある怨怒取り》《洗練された随員》《著名な剣士》を多めにピックできていれば3色目は白がおすすめです。
土建組一家 (黒赤緑)
土建組一家にすると《磐石、ミスター・オルフィオ》と《覆面の匪賊》を選べるようになります。《磐石、ミスター・オルフィオ》は「奇襲」や威迫/トランプルを持つクリーチャーを強く使えるようにしてくれる反面、赤緑は緑のファッティがいるので肉厚なクリーチャーを余分に追加している印象が強いです。
大まかな指針としては、「団結」シナジーでドラフトできているときは黒よりも白の色マナサポートを優先し、強めの舞台座一家のアンコモン、欲を言えば宝物トークンとコンボになる《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》が流れてくるのを待ちます。《騒乱の巡回者》や《宝石泥棒》といった威迫/トランプルのクリーチャーをピックできていれば白よりも黒を優先させるでしょう。
黒赤
多色カードは《殺人魔》《致命的遺恨》《鍛冶場の親方》。こちらも非常にわかりやすく、生け贄がテーマになっています。生け贄に捧げたときの効果を使うには「奇襲」と「犠牲」が主な手段になるでしょう。「奇襲」に関しては、単に強い「奇襲」カードをピックすれば良いだけなので難しくありません。
コツがいるのは「犠牲」のほうです。基本的には、戦場に出たとき/戦場を離れたときにアドバンテージを生むカードを何枚かピックしていくことになります。
《堕落した廷臣》はその最たる例で、《屍体の掘り起こし》で生け贄に捧げるとアドバンテージをさらに重ねていくことができます。ただ、「犠牲2」を要求する《着火》や《貴顕廊一家への入団》のコストには充てられないのが大きな弱点です。このように、クリーチャーのパワーと「犠牲」の要求値に注意を払わなくてはなりません。
土建組一家 (黒赤緑)
タッチをするなら緑か青になります。緑にした場合、《カルダイヤの力自慢》や《土建組一家の囮》といった「奇襲」クリーチャーを追加で選べるようになります。そのため、より攻撃的な戦略を狙うなら緑がおすすめ。《磐石、ミスター・オルフィオ》は先ほども言ったように「奇襲」を組み込むなら最高の1枚です。
貴顕廊一家 (青黒赤)
青なら《死体鑑定士》と《妖艶な泥棒、コルメラ》が3色のカードとして選択肢になります(《妖艶な無法者》は枠を埋めるカードといった印象)。この2枚から言えるのは、戦略をもっと呪文/アドバンテージに寄せるべきだということです。除去をたくさんピックし、ゲームを長引かせられそうなら青をタッチして消耗戦を制するのも良いでしょう。ただ、黒赤には緑を合わせるのが一般的だと思います。
青黒
多色カードは《詮索する新聞記者》《染みついた耽溺》《組織の潜入者》。カードを見てのとおり、「墓地に5種類以上のマナ総量がある」ことをテーマにしています。この条件を満たすには、デッキ内のマナ総量に幅を持たせる必要があります。
「謀議」や「犠牲」で多少なりとも墓地肥やしできますが、条件達成を狙うにはデッキ全体の構成をおろそかにしてはいけません。でたらめに高マナ域のカードを多く突っ込むだけではいけないのです。だからこそ、《不吉な小包》などの使い勝手の良い1マナ域や、生け贄に捧げられる土地は条件達成に便利なカード群だと考えています。
自分のライブラリーを切削できるカードや呪文ベースのデッキは墓地を無理なく肥やすことができるので、楽に条件達成を狙えます。《屍体の掘り起こし》《交渉の難航》は40枚のなかにぜひ入れたい呪文です。
また、墓地からリソースを生み出す《捨て石の従僕》《光素のスカラベ》《貴顕廊一家の新入り》は墓地を肥やす意味を増やしてくれるので、普段よりも点数を高めに設定しましょう。
貴顕廊一家 (青黒赤)
赤は優秀な1マナの除去である《絞殺》があり、このテーマにすんなりと馴染む色です。《死体鑑定士》は墓地の枚数を増やし、《妖艶な泥棒、コルメラ》は呪文ベースのデッキで最高の1枚。呪文ベースのデッキは青黒なら進みたい方向性であるのも追い風です。
常夜会一家 (白青黒)
他方、白は「5種類のマナ総量」というテーマと相性が良くないように感じます。《敏捷な窃盗犯》《苦悶の占い師、クェザ》《砕かれた熾天使》はどれも強力なカード。そこから考えられるのは、長いゲームを戦い、カードパワーで勝つことです。有効な戦略ではありますが、青黒の多色カードとは噛み合いません。なので、青黒ベースのデッキには赤を3色目に選ぶことが多いですね。
白青
多色カードは《天界の整調者》《風変わりなペット》《大都市の天使》。白青はカウンターテーマですね。
軽くてカウンターを配備できるカード、たとえば《支援工作員》や《ラフィーンの密通者》、あるいは少し弱くなりますが《斡旋屋一家の古参》といったカードを選びたいところです。また、この3種の多色カードは共通して回避能力が備わっています。つまり、「地上を固めて空から殴る」プランが使えるということです。守備を固めるなら《斡旋屋一家の新入り》や《裏通りの暴れ者》は頼りになる低マナ域になるでしょう。
常夜会一家 (白青黒)
青黒ベースのデッキのときと違い、白青では常夜会一家の多色カードが強く使えます。《敏捷な窃盗犯》と《砕かれた熾天使》は飛行持ちですし、《苦悶の占い師、クェザ》は直接ダメージを与えつつ、ライフ回復によって射程圏外へと逃れさせてくれます。このように、3色の組み合わせが同じでもデッキの狙いが違えばカードの評価も大幅に変わってくることがあります。
斡旋屋一家 (緑白青)
もう一方の緑は回避クリーチャーこそ少ないものの、《カルダイヤの力自慢》や《規律正しい決闘者》といったカウンターシナジーのカードがあります。ほかにもダメージレースを有利に運んでくれる《雑集家、ラグレーラ》や《スパーラの審判者》などの優秀な面子が揃っています。白青が本環境の最強カラーだと言われることがありますが、白青が3色目にどちらを選んでも噛み合うことを考えれば、そう言われるのも納得できるでしょう。
緑白
多色カードは《市民の奉仕者》《群衆の寵児》《儀礼用シャベル》。疑いようもなく市民がテーマです。このテーマが好きになれない理由のひとつは、ほとんどの市民クリーチャーがキーワード能力を兼ね備えていないことです。たとえば、「謀議」「奇襲」「団結」「宝物トークン生成」の能力を持つカードに市民はほとんどいません。市民シナジーで組もうとすると、結果的に能力ではなく素のカードパワー重視のクリーチャーをドラフトすることになります。
また、《儀礼用シャベル》は《早抜きの短剣》よりも弱くなってしまうことが多々あります。確かに2ターン目の《市民の奉仕者》は環境屈指の初動のひとつですが、市民のために強いクリーチャーのピックを諦めることは難しいタイミングもあり、結局シナジーよりも強いクリーチャーに寄せたデッキになりがちです。
舞台座一家 (赤緑白)
クリーチャーベースのデッキにカードアドバンテージ源を足したいときは、赤を追加して《舞台座一家の料理人、ロッコ》あるいは《厚顔な成り上がり》でリソースを稼げるようにします。
斡旋屋一家 (緑白青)
除去が必要なときは《雑集家、ラグレーラ》《スパーラの審判者》のために青を足すでしょう。ただ、緑白は2色でまとめて相手をテンポよくビートダウンするのが基本だと思います。
さいごに
青黒ベースの常夜会一家 (白青黒)が上手く回らないのに、なぜか白青ベースの常夜会一家なら3勝しやすいと感じるとき。ある色の組み合わせは全然機能しないのに、別の色の組み合わせにすると安定してアドバンテージが稼げるとき。そういうときはセットデザインから環境を理解するトップダウン形式で考えてみることをおすすめします。
ときには何度も何度もドラフトを繰り返して環境を理解していく手法を採ることはあります。ですが、セットを読み解いて、環境にどうアプローチしていくか考察していく手法を採ることもできるのです。この記事を通して『ニューカペナの街角』ドラフトの概要を理解し、セットを解析することで結果に差がつくことを感じてもらえたら幸いです。
では楽しいドラフトを!