はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
かつてのPTQ(プロツアー予選)を彷彿させるように各地で開催されているプレミアム予選。プレイヤーとプロツアーの最短距離を繋ぐこのルートには、毎週末多くの参加者が集まっています。
本稿は、毎週末に各地で開催されているプレミアム予選へと可能な限り帯同し、デッキ分布(メタゲーム)の分析とトップ8デッキを紹介していく企画となります。
執筆にあたり、各店舗様にご協力をいただき公開へといたっています。改めて感謝申し上げます。
それでは早速、先週の大会をみていきましょう。今回はBIG MAGIC Open Vol.12で併催されたプレミアム予選を振り返っていきます。
先週末のトピック
今週のトピックはアゾリウスコントロールの増加です。先週まで白単アグロよりもやや少ない程度でしたが、トップメタに食い込むまでに成長していました。
イゼットフェニックスが減り、代わりにアブザンパルヘリオンや白単アグロが増加した現在のメタゲーム。これはゲームの焦点がボード上の主導権争いになったことを意味しています。思い返してみればラクドスミッドレンジ、緑単信心、白単アグロと速度の差こそあれ、どれもボードの優位を確立し、クロックによる勝利を目指しています。
アブザンパルヘリオンはショートカットとして墓地を経由しますが、結局のところ《大牙勢団の総長、脂牙》が戦闘の開始時を迎えられるか否かが勝敗に大きく影響します。
対して、イゼットフェニックスは《弧光のフェニックス》や《帳簿裂き》に加えて、《宝船の巡航》や《時間への侵入》などクロック以外の武器を持っていました。これらはパイオニアでも屈指のカードパワーを誇り、無視するわけにはいきません。
しかし墓地に依存していたことから目を付けられて対策が進んでしまい、パワーダウンを余儀なくされてしまいました。パイオニアには《トーモッドの墓所》をはじめ、《未認可霊柩車》や《墓地の侵入者》、《安らかなる眠り》とさまざまな対策カードがあり、そのすべてに対応することはできません。
同じ墓地活用デッキであるアブザンパルヘリオンに比べて、イゼットフェニックスが軌道に乗るにはやや時間がかかります。対策の隙をぬって攻めへと転じるのは難しく、イゼットフェニックスは泣く泣く、トップメタの座を明け渡すことになってしまいました。
これによりゲームの中心はボードへと移行します。アゾリウスコントロールはもっともボードコントロールに長けたデッキであり、ボード以外の脅威に対しても打ち消し呪文といった対抗手段を持っています。サイドボードには《安らかなる眠り》も控えており、対策に隙はありません。
絶対に穴がないといえば語弊がありますが、その穴は限りなく小さく、理論上あらゆるアーキタイプへ対抗できるのがアゾリウスコントロールなのです。複数の全体除去があり、有象無象のクリーチャーデッキへ対抗するにはベストチョイスといえます。
《ポータブル・ホール》に加えてカバー範囲の広い《冥途灯りの行進》まで採用されており、たとえアドバンテージを失ったとしても序盤をしのぎさえすれば、と青白の思惑が伺えます。《至高の評決》を中心に据え、《ドビンの拒否権》でサポートする戦略がついに日の目を見るタイミングが訪れたのです。
メタゲームブレイクダウン
第7週
デッキタイプ | 使用者数 | 占有率 |
---|---|---|
ラクドスミッドレンジ | 33 | (16) |
緑単信心 | 22 | (10.8) |
アゾリウスコントロール | 21 | (10.4) |
アブザンパルヘリオンシュート | 20 | (9.8) |
マルドゥパルヘリオンシュート | 4 | (1.9) |
エスパーパルヘリオンシュート | 1 | (0.4) |
白単アグロ | 14 | (6.9) |
ラクドスサクリファイス | 11 | (5.4) |
イゼットフェニックス | 10 | (4.9) |
赤単アグロ | 10 | (4.9) |
ボロスヒロイック | 6 | (2.9) |
ロータスコンボ | 6 | (2.9) |
《不屈の独創力》コンボ | 6 | (2.9) |
青単スピリット | 5 | (2.4) |
ジェスカイオパス | 5 | (2.4) |
エスパーコントロール | 4 | (1.9) |
その他 | 27 | (13.2) |
合計 | 205人 | (100%) |
BIG MAGIC Openの併催イベントとなったプレミアム予選でしたが、本戦に負けず劣らず多くのプレイヤーが参加していました。その結果、国内では初の200名超えとなり、3名のプレイヤーが権利を獲得できることに。メタゲームは第一集団、第二集団とわかりやすくなっています。
第一集団を形成したのは最多となったラクドスミッドレンジ、緑単信心とアゾリウスコントロール、アブザンパルヘリオンの4アーキタイプ。前回のトップ3に割り込むかたちでアゾリウスコントロールが急増しています。どれもデッキパワーは十分であり、攻めに重きを置くか守りに重きを置くか、はたまたバランスを重視するかといったところ。
第二集団に位置するのはアグロデッキ。横並びの白単アグロと単打点で押し込む赤単アグロです。赤単アグロはスタンダードでお馴染みだった《鍛冶で鍛えられしアナックス》+《エンバレスの宝剣》の組み合わせが目立ちます。加速度的に「信心」を稼げる《炎樹族の使者》を得ており、急角度から勝利が舞い込んでくることもあります。
さらにショートレンジの極みボロスヒロイックと、小型クリーチャー戦に強いラクドスサクリファイスが続きます。ラクドスサクリファイスは《大いなる創造者、カーン》を苦手とするものの、緑単信心を狙うクリーチャーベースのデッキを一網打尽にしてしまおうとの選択です。
そしてここにイゼットフェニックスがランクイン。墓地へのガードは下がらず、むしろパルヘリオンシュートの隆盛により厳しくなるばかりです。立ち位置は改善されていませんが、《宝船の巡航》や《弧光のフェニックス》は使うに値すると考えたプレイヤーが多かったようです。
さて、スイスラウンドが進行するにつれてデッキの分布は変化していくわけですが、最終ラウンドで上位10卓にいたのは次のアーキタイプでした。緑単信心、アブザンパルヘリオン、アゾリウスコントロール、白単アグロが3名で横一線。そのあとを青単スピリット(2名)が追い、ほかは使用者1名といったところ。
上位を見てお分かりの通り、ラクドスミッドレンジに強いアーキタイプが並びます。実際ラクドスミッドレンジは数を減らしており、かなり追い詰められています。安定して上位へ残るのはラクドスミッドレンジ攻略を最低条件として、序盤から自分の戦略を押しつけていける攻め手が早く太いデッキか、コントロール色が極端に強いデッキのいずれかとわかります。
まとめ
第7週終了時点でのメタゲームまとめは、以下の通りです。ここでは実際の大会のメタゲーム同様に、使用者数が多いと思われるものほど上位におきます。
Tier | デッキタイプ |
---|---|
Tier1 | 緑単信心 ラクドスミッドレンジ アブザンパルヘリオン アゾリウスコントロール(増) |
Tier2 | 白単アグロ サクリファイス(増) 赤単アグロ イゼットフェニックス |
Tier3 | ボロスヒロイック ロータスコンボ 青単スピリットなど |
元々人気だったアゾリウスコントロールは今が最盛期。除去と打ち消し呪文を武器に、プレインズウォーカーの着地を狙います。《ドミナリアの英雄、テフェリー》が生き残ってしまえば、それは敗北と同じです。どのプレインズウォーカーも強力ですので、速やかに対処する必要があります。
サクリファイスは小型クリーチャーを多用するデッキに強い一方で、Tier1のアーキタイプには相性が良くありません。緑単信心やアブザンパルヘリオンがそこそこでアグロが多いタイミングが理想であり、それらを食って上位へきたアグロデッキを狙いたいところ。
続いては実際の大会結果をみていきましょう。
大会結果
チャンピオンズカッププレミアム予選 in BIG MAGIC
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得 | カサハラ タクヤ | 白単アグロ |
権利獲得 | サイダ トシヒロ | ラクドスミッドレンジ |
権利獲得 | イシカワ ヒカル | アゾリウスコントロール |
トップ4 | アオキ タカシ | バント人間 |
トップ8 | マツウラ タクミ | 白単アグロ |
トップ8 | カンダ トウヤ | 青単スピリット |
トップ8 | タナカ シュン | ジェスカイオパス |
トップ8 | スギモト タカシ | 緑単信心 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
メタゲームおよびデッキリストにつきましてはBIG MAGIC様にご協力いただき、掲載しております。
参加者205名で開催されたプレミアム予選(BIG MAGIC)は白単アグロ、ラクドスミッドレンジ、アゾリウスコントロールの3つが抜けました。苦境に立たされていたラクドスミッドレンジが改めて存在感を示すとともに、トップメタ以外のアーキタイプが抜けたことも印象的でした。
カサハラ選手の白単アグロは《粗暴な聖戦士》に加えて《スカイクレイブの亡霊》と《巨人落とし》まで採用した除去多めの構築。序盤に稼いだダメージをきっちりと押し切れるように、またキーカードに触れる工夫がとられています。
サイダ選手のラクドスミッドレンジはまさに構築限界ギリギリを攻めたメインボード。《墓地の侵入者》に《未認可霊柩車》とかなり墓地を睨んだ構築です。《サテュロスの道探し》や《縫い師への供給者》を牽制し、切削とリアニメイトが同一ターンに難しい序盤に押し切ってしまおうという作戦です。
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロールは、白のパーマネント対処手段と青の打ち消し呪文、歴代のプレインズウォーカーによって構築された伝統的なコントロールデッキです。ボードコントロール確立後にプレインズウォーカーが着地すれば、それは敗北と同義。干渉領域が広く万能感があり、パイオニアで《ドミナリアの英雄、テフェリー》をもっとも上手く使えるアーキタイプです。反面、メタゲームへの依存度が強く、構築の成否が勝敗へと直結します。
《至高の評決》を中心に構築されたこのデッキは一度ボードをクリアにしてからが本番。蓄えたマナと手札を使い、相手の戦力を削いでいきます。《至高の評決》は4マナと軽く、パイオニアの速度にも耐えうる仕様。青単スピリットを考える上で「打ち消されない」の一文は頼もしくあります。ただし、《呪文捕らえ》にはご注意を。
《告別》はやや重いためほかのカードと組み合わせてで延命することが必要ですが、墓地を含めたあらゆる脅威を排除してくれます。《タミヨウの保管》や《アーティファクトの魂込め》付きの《ダークスティールの城塞》など破壊不能ですら対処可能。
ボード以外のコントロール要素はやはり打ち消し呪文ですが、《ドビンの拒否権》は緑単信心を考える上で必要不可欠な1枚。2マナと軽いためほかのカードと組み合わせやすく、また、構える際のリスクを最小限に抑えられるのが嬉しいところ。《ニクスの祭殿、ニクソス》からいくらマナを生成しようとも、プレインズウォーカーも《収穫祭の襲撃》もこの前では無力なのです。
ただしマナ差が開きすぎると同一ターン中に脅威を連打されて撃ち漏らす可能性が高くなります。自分のマナに余裕がうまれたら全体除去で「信心」を制限し、《ニクスの祭殿、ニクソス》を自由にさせない必要があります。
おわりに
今回はBIG MAGIC Openと同日開催だったプレミアム予選をご紹介しました。アゾリウスコントロールが増加傾向にあるため、ほかのデッキは手札破壊のような干渉手段やリソース回復手段を増やす必要があります。
一度は最強の盾が勝利したわけですが、パイオアにはあらゆる形の矛が揃っています。次回はどうなるでしょうか。
今週末はいよいよプレミアム予選最終週となります。東京、大阪の両TCでも開催されますので、次回はその結果をご紹介したいと思います。それでは!
(本稿ではデッキの詳細解説は行わないため、それにつきましては以下の記事をご覧ください。トッププレイヤー視点での環境解説がございます。 )
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