決勝: 高野 成樹(東京) vs. 小暮 剛正(東京)

晴れる屋

By Atsushi Ito


 モダンというフォーマットは、本当に読めない。

 誰が勝つか、どんなデッキが勝つか。そしてそれがどのようなメカニズムによるものなのか。解き明かすのが非常に難しいのだ。

 今回、この第4期モダン神挑戦者決定戦もそうだ。

 何せ。

 決勝まで勝ち残った2人ともが、レガシープレイヤーだというのだ。


 だが、これがモダン環境のマッチアップの高いランダム性、デッキの多様性によるものかというと、また違うように思える。

 何故なら、高野と小暮、2人とも自分のデッキに対して圧倒的な自信と思い入れを持っているプレイヤーだからだ。

 高野は言わずもがなだが、小暮も「手札破壊と《タルモゴイフ》」というパッケージについてかなりのこだわりを持っているという話だ。

 【モダンを制する鍵 ~やり込みかデッキ選択か~】においても、デッキ選択というのはあくまで経験を十分積んだデッキの中で行われるべきという結論が出ていたように。

 レガシー的な「やり込み」、1つのデッキに長い時間をかけてサイドボードの最後の1枚までも考え抜き、プレイング面でも最適を研究し続け、そのデッキのエキスパートたらんとする姿勢が、モダン環境の攻略においても正道だったということなのだろう。


 「エルフマスター」、高野 成樹

 手札破壊と《タルモゴイフ》小暮 剛正

 全く違う分野を極めた2人が、300人の頂点を決めるべく、”プラチナプロ” 市川 ユウキへの挑戦権を手に入れるべく。

 今ここに、激突した。





Game 1


 先手は高野。スイス最終戦でオポネントが低くIDを選択できなかった高野は、第2期ミスターPWCの内藤との激戦を制してスイスラウンドを1位通過することに成功した。そのアドバンテージは、エルフという早いデッキを使う高野にとってこの上なく大きい。

 その証拠に、この決勝という大舞台で高野の動きは《イラクサの歩哨》→2点アタックから《イラクサの歩哨》《ラノワールのエルフ》プレイ(場には《ペンデルヘイヴン》)というロケットスタート。コンボ含みのビートダウンの本領発揮だ。

 一方、相手のデッキを知っているだけに少し悩んだものの、手札破壊も除去もない手札を意を決してキープをした小暮。だが後手2ターン目の初動は、除去を引きにいくための《闇の腹心》に留まる。



高野 成樹



 その緩手を、見逃す高野ではなかった。

 3ターン目、《エルフの大ドルイド》をプレイしてのフルアタック!

 これをスルーすると、既に小暮の残りライフは8点。

 挙句、返すターンの2ドローで除去を引き込めなかった小暮は、後手3ターン目にして投了を余儀なくされてしまった。


高野 1-0 小暮


Game 2


 今度は除去の豊富な手札をキープした小暮。

 《ラノワールのエルフ》に対し《漁る軟泥》を送り出すと、《エルフの大ドルイド》《突然の衰微》し、即座に追放してクロックとする。

 手札の残りは除去が溢れており、何を展開されても盤石といった様相だ。



小暮 剛正




 だが高野がプレイしたのは《漁る軟泥》への《四肢切断》

 エルフデッキから飛んできたまさかの除去で完全にプランを崩され、除去はあるもののクロックがないという厳しい情勢となってしまう。高野のデッキは《集合した中隊》を使用したアドバンテージ勝負もできるのだ。早急にクロックを再設置しなければ、好き放題やられてしまう。

 だが、引くのは除去ばかり。しかも高野が続けて送り出したのは《台所の嫌がらせ屋》。除去は十分あるとはいえ、2枚使わされるのは厳しい。

 しかも、このタイミングで小暮が引き込んだ《思考囲い》で明らかとなった高野の手札は。


台所の嫌がらせ屋永遠の証人遺産のドルイド召喚の調べ


《台所の嫌がらせ屋》
《永遠の証人》
《遺産のドルイド》
《召喚の調べ》

 という、エルフデッキらしからぬタフなもの。《永遠の証人》を落とすものの、小暮の場には一切のクリーチャーがいないのだ。《台所の嫌がらせ屋》を並べられていくだけでも厳しいところ。

 それでも、2体目の《台所の嫌がらせ屋》の返しでどうにか《漁る軟泥》の2体目を引き込んだ小暮。さあここから反撃だ……というところで。


四肢切断


 高野がトップしたのは2枚目の《四肢切断》

 最後の希望を失った小暮は、そのままエルフと《台所の嫌がらせ屋》との混成軍に押しつぶされてしまった。


高野 2-0 小暮


 レガシー大会の結果を追っているなら、高野 成樹の名を知らぬ者はないだろう。

 ”最も濃いトップ8″ として記憶に残った【第1回レガシー神決定戦】でも当然のごとくトップ8に名を連ねていたほか、数々の国内レガシートーナメントで入賞を重ねている、日本有数の「エルフマスター」だ。

 しかし【グランプリ・京都15】も終わり、ひとまず国内にはレガシープレイヤーにとって手近な目標がない。そこで高野はモダンに目を付けた。

 《イラクサの歩哨》《遺産のドルイド》《エルフの幻想家》。モダンのエルフデッキの構成パーツはレガシーとあまり変わらない。《ガイアの揺籃の地》はないが、《ニクスの祭殿、ニクソス》がある。《自然の秩序》はないが、《召喚の調べ》がある。

 しかもエルフデッキはつい前週、【グランプリ・シャーロット】で優勝したばかり。

 モダンにおいてエルフが強い、まさしく最高のタイミングで、高野はモダンに参入したのだ。

 そして、これである。予選ラウンド1位通過から、圧倒的なパフォーマンスで決勝戦に進出し、見事優勝。

 「エルフマスター」は、フォーマットを選ばない。

 もちろん練習は欠かさなかっただろう。主な調整相手は【第4期レガシー挑戦者】の斉藤 伸夫で、今回も75枚同じレシピで出場したと聞く。

 だが勝ったのは高野だった。なぜか?その要因としては高野の並々ならぬ「エルフ愛」があるような気がしてならない。

 環境でエルフデッキが組める限り。高野の快進撃は止まらないだろう。




 第4期モダン神挑戦者決定戦、優勝は高野 成樹(東京)!おめでとう!!






 高野 成樹は第4期モダン神決定戦で”プラチナプロ” 市川 ユウキと激突します!お楽しみに!!