ほとんど知られていないジャッジのお仕事

晴れる屋

By Yohei Araki

皆さんこんにちは。DCI認定レベル1ジャッジの荒木洋平です。

マジックとの付き合い方は人それぞれですが、その一つに「ジャッジ」という付き合い方があります。

「プレイヤー」からの記事は多くあれども、「ジャッジ」側からのコラムは少ないと思います。
そこで今回はジャッジがどのような理念のもと活動を行っているか、簡単にではありますが、ご紹介させていただきます。


GP名古屋2014では初の試みとして『ジャッジカンファレンス』というものが行われました。

これは一言で言えばジャッジ同士の意見交換会のようなものです。
同じようなことはこれまでにも行われてきましたが、それはあくまで個人間でのレベルでした。
ノウハウの継承が行われづらいことから、今回からオフィシャルな会合として意見交換の場が設けられる事になりました。

早速ですが、この『ジャッジカンファレンス』に参加してきましたので、いくつか印象に残ったトピックを紹介していきたいと思います。



1コマ目:スロープレイの取り方についての解説講座

どちらかいえば遅延行為といったほうがわかりやすいでしょうか。
いわゆる「遅いプレイ」についての裁定の出し方について、レベル2ジャッジが丁寧に解説していました。

こういった講座が行われるのはどうしてかといえば、プレイが「遅い」か「速い」というのは個人の主観によっても変わってくるものなので、そこに基準を設けることである程度ジャッジの裁定に一貫性を持たせる狙いがあるからです。

無論それについて文章化されていないということはないのですが、それでもやはり時間についての概念は曖昧なものなので、そこを補強し、意識の共有をしていくというのは良い着眼点だと思いました。




特にレベル2以上のベテランジャッジにとってはスロープレイの扱いは慣れているかもしれませんが、駆け出しのジャッジはどうしてもプレイヤーに「もう少し速くプレイしてください」とは言い難いものです。

ベテランであればあるほど、トーナメントの進行が遅れることがジャッジのみならず全てのプレイヤーの不利益にどれだけ繋がるかということをよく知っています。
そういった理念についてもこの講座では触れていました。

「どうしてそうなるのか」という理念を知る事は、特にジャッジにとっては、とても大事なことです。

裁定がテンプレ対応に成り下がらず、状況に応じてフレキシブルに対処することが可能となるからです。

何しろ人もマジックのゲームも「生き物」なので、ジャッジとして上を目指すには思考の柔軟性を欠かしてはいけません。



2コマ目:GPジャッジについての基本講座

GPは競技レベルのイベントであるため、普段運営してる店舗レベルの大会とは異なる部分が数多くあります。

そのひとつが、「違反行為をしたプレイヤーにはペナルティが出る」という点です。

本当は誰もがプレイヤーにペナルティなど出したくないのですが、トーナメントを健全に運営するためには必要なことなのです。

プレイヤーにペナルティを与える意味とは、決して「プレイヤーに懲罰を出すこと」ではなく、懲罰によって「そのプレイヤーを教育すること」です。

ですが、ペナルティを与えることは否が応でもネガティブさがついてまわります。
もしジャッジがプレイヤーをきちんと納得させることができず、ただペナルティを出すだけで終われば、プレイヤーにはただ不快感が残るだけでなく、ジャッジに対する不信感が根強く残ります。
そうなればプレイヤーはジャッジを呼ぶ事を躊躇うようになるでしょう。

それは本意ではありません。何故そのようなペナルティが出るのかを理解させ、同じ誤ちを犯してはいけないと諭さなければなりません。
特に競技レベルにおいてはジャッジの仕事はそのような意味を大きく含んでいます。

そしてそれこそが、この講座の意義でもあります。
こちらも現行のレベル2以上のジャッジを中心に、裁定の出し方やスリップの記入の仕方を説明していきました。

僕が初めてGPにジャッジとして参加した時にはジャッジカンファレンスは存在せず、正直初めてのGPジャッジは不安だらけのまま当日を迎えました。

そのときと比べると、今回初めてGPに参加するジャッジたちはきっと安心できたことでしょう。




3コマ目:GPを終えてのダメ出しや反省会

先ほどまではGP前の準備的な講座となりましたが、今回は見出しの通り、GP後の反省会が行われました。

もっとスムーズに、もっとプレイヤーにとって円滑に運営することができないものか。ジャッジは常にそういったことを考えながら運営に取り組んでいます。
様々な意見が飛び交っていましたが、皆積極的に発言をしていたように思います。

ジャッジにとって良いGPとプレイヤーにとって良いGP、これらは必ずしも両立するとは限りませんが、その一方でプレイヤーの満足度を上げる事はジャッジの使命でもあるからです。

この講義では特に、スリープインスペシャルやオンラインペアリングといった、近年導入されたばかりのシステムについてのトラブルの多さが課題として挙がりました。
これらを運用することでプレイヤーの満足度が上がったり、手間を省いたりすることが可能ですが、実際にそれらを完璧に使いこなすにはまだ至ってないのが現状です。
しかしそれもまた、実務にあたったジャッジのフィードバックを積み重ねて行けば、改善が進んで行くことでしょう。

これらのことが少しでも次回以降のGPに活かせるよう、ジャッジ一同取り組んで行きたいと思います。




いかがでしたでしょうか。
ひとえにジャッジ活動といっても、トーナメントで裁定を出す、それだけの存在でない事がわかっていただけたらと思います。

もしこの記事を読んでみて、少しでもジャッジに興味を持ったという方がいましたら是非こちらのアドレスまで。

日本Regional Coorinator レベル3ジャッジ 牧野さん:makino@icacup.com