USA Legacy Express vol.223 -ティムールに復権の兆し-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

レガシーは今年の年末に開催される『THE LAST SUN 2023』のフォーマットに採用されていることもあり、各地で予選大会も盛り上がっています。

さて、今回の連載では『Legacy Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

Legacy Challenge 9/17
やはり強いオーク、Dimir Scamがワンツーフィニッシュ

2023年9月17日

  • 1位 Dimir Scam
  • 2位 Dimir Scam
  • 3位 Sneak and Show
  • 4位 Oops! All Spells
  • 5位 Mono Green Cloudpost
  • 6位 Doomsday
  • 7位 Mono Red Stompy
  • 8位 Temur Delver

トップ8デッキリスト

フェア、コンボ、プリズン系とさまざまなデッキが入賞するなか、決勝戦にまで勝ち残ったのはDimir Scamでした。

『エルドレインの森』からの新カード《探索するドルイド》を採用したDelverも見られました。

デッキ紹介

Dimir Scam

モダンでも《悲嘆》+《不死なる悪意》のコンボによって相手のゲームプランを妨害しつつプレッシャーをかけていくRakdos Griefが活躍していますが、《悲嘆》はレガシーでも第一線で活躍できるほどの強さを見せています。またレガシーでは《再活性》が使えるので、モダン以上の強さを発揮します。

『指輪物語:中つ国の伝承』から得た新戦力は《オークの弓使い》だけではありませんでした。《カザド=ドゥームのトロール》《ロリアンの発見》といった「基本土地サイクリング」カードはデッキの安定性の向上に貢献しており、レガシーの必須カードとして定着しているのです。

《悲嘆》《再活性》はコンボデッキに強く、今大会でもSneak and ShowやOops! All Spellsに勝利して決勝まで勝ち残っていました。

☆注目ポイント

Troll of Khazad-dumロリアンの発見

《カザド=ドゥームのトロール》《ロリアンの発見》は序盤の安定性を担保し、《悲嘆》《意志の力》のピッチスペルのコストとしても使えるため場面を選ばずに活躍が期待できます。サイクリングした際はデッキをシャッフルすることができるので《渦まく知識》と相性が良く、1ターン目の相手エンド時に《渦まく知識》という選択肢も取りやすくなります。

再活性

序盤から墓地に送り込める《悲嘆》《カザド=ドゥームのトロール》により、《再活性》を強く使えます。特に《カザド=ドゥームのトロール》は火力で処理しづらいサイズを持ち回避能力もあるので、2ターン目に出せればそれだけでゲームを決めてくれます。

サウロンの交換条件

《サウロンの交換条件》はこのデッキのアドバンテージ源で、各種ピッチコストにもあてられます。インスタントなので使いやすく墓地にカードが溜まるため、《濁浪の執政》《再活性》と相性が良いのもポイントです。

Temur Delver

レガシーでも使える『エルドレインの森』からの新カードは《鏡に願いを》《豆の木をのぼれ》だけではありませんでした。

《探索するドルイド》はプレビュー段階ではそれほど評価されていなかったカードでしたが、アドバンテージ+クリーチャーを展開する動きがなかなか強くTemur Delverにとって嬉しい収穫となりました。

☆注目ポイント

Questing Druid

《無謀なる衝動》《クウィリーオンのドライアド》を合わせた《探索するドルイド》は、「出来事」と本体どちらも優秀なスペックであり、特にレガシーでは《渦まく知識》を始めとした軽いスペルが多いのであっという間にフィニッシャー級のサイズに成長します。また、追加のドローではないので《オークの弓使い》にも引っかからないところも評価点になります。

時を超えた英雄、ミンスクとブー

緑をタッチする利点として、現環境最高のプレインズウォーカーである《時を超えた英雄、ミンスクとブー》が使えることが挙げられます。4マナとデルバーにとっては重いコストなので1枚挿しが多いですが、コントロールや墓地対策を投入してくるデッキに対して軸をずらしたフィニッシャー兼アドバンテージ源として活躍が期待できます。

森の知恵

《森の知恵》は対コントロール用の定番サイドカードでしたが、最近は《オークの弓使い》の存在もあり減少傾向にありました。ただJeskai Controlなどクロックが遅く黒くないマッチアップでは、依然として有力なアドバンテージ源として使えます。

Legacy Challenge 9/23
勝ち続けるDimir

2023年9月23日

  • 1位 Dimir Scam
  • 2位 Hogaak
  • 3位 Dimir Scam
  • 4位 Blue Zenith
  • 5位 Mysticforge Combo
  • 6位 Lands
  • 7位 Dimir Scam
  • 8位 Temur Beans

トップ8デッキリスト

先週末のLegacy Challengeでも結果を残していたDimir Scamが今大会でも優勝し、圧倒的な強さを見せていました。

デッキ紹介

Temur Beans

《豆の木をのぼれ》は多色コントロールのアドバンテージエンジンとしてだけでなく、ティムールカラーのテンポ・ミッドレンジデッキにも採用されています。

今回入賞したリストはミッドレンジ寄りではありますが、複数採用されたキャントリップに《ドラゴンの怒りの媒介者》《濁浪の執政》《目くらまし》《不毛の大地》など、基本的な構成はデルバーを踏襲しています。

《秘密を掘り下げる者》がデッキから抜けるようになった理由として、《オークの弓使い》に弱いことが挙げられます。抜けた代わりにカードアドバンテージ源やサイズで勝る「探査」クリーチャーを多めに採用し、《オークの弓使い》デッキに対抗することを試みているのです。

☆注目ポイント

豆の木をのぼれ

《豆の木をのぼれ》《意志の力》をピッチでプレイした際のディスアドバンテージを帳消しにすることができ、《わめき騒ぐマンドリル》《濁浪の執政》といった「探査」カードとの相性が良いためミッドレンジでも活用できます。

《秘密を掘り下げる者》など《オークの弓使い》に弱いカードが不採用なので、追加のドローによるデメリットも小さくなっています。従来のTemur Delverよりもロングゲームに対応しやすくなり、Dimir Scamとのマッチアップでも互角以上に渡りあえるようになりました。

わめき騒ぐマンドリル濁浪の執政

《わめき騒ぐマンドリル》は現在のレガシーのカードパワー基準では平凡な性能で、飛行を持つ《濁浪の執政》のほうが優秀ではありますが、《紅蓮破》に引っかからないところは評価点となります。

夏の帳

Dimir Scamの流行により《夏の帳》の価値が相対的に上がっています。ReanimatorやStormといったコンボデッキもカウンター対策にハンデスを用いることが多いので、それらに対しても有効です。

Legacy Challenge 9/24
アーティファクトコンボが勝利

2023年9月24日

  • 1位 Mystic forge Combo
  • 2位 Dredge
  • 3位 Reanimator
  • 4位 Mystic Forge Combo
  • 5位 Lands
  • 6位 Maverick
  • 7位 Dimir Scam
  • 8位 Selesnya Depths

トップ8デッキリスト

Legacy Challengeを3連覇していたDimir Scamでしたが、ここにきて少し変化が見られました。Dimir Scamはプレイオフには残っているものの、MaverickやLandsといったフェアデッキに強いデッキが複数勝ち残っていたのです。

今大会を制したのは《一つの指輪》を得て強化されたMystic Forge Comboでした。《豆の木をのぼれ》を使ったコントロールやミッドレンジと相性が良いデッキなので、現環境では良チョイスになります。

デッキ紹介

Mystic Forge Combo

《古えの墳墓》など2マナ以上出る土地やマナ加速を利用して、強力なカードを高速展開していくデッキです。《ウルザの物語》《一つの指輪》といった近年登場したカードによって大幅に強化されました。

最速で1ターン目から強力なカードをプレイして圧倒していくスタイルなので《意志の力》《否定の力》といったカウンターには弱くなりますが、メインからフル搭載された《防御の光網》などで対策することができ、1枚でも脅威を通すことができれば勝利は目前です。

主なデッキの動きとして、《通電式キー》《厳かなモノリス》で大量のマナを生み出しつつ《一つの指輪》でカードを引き《パラドックス装置》をプレイ。そこから、マナアーティファクトなどを唱えて《一つの指輪》《厳かなモノリス》をアンタップしてドローとマナを得ながら勝ち手段までつなげます。

☆注目ポイント

防御の光網

メインからフル搭載された《防御の光網》はデルバーなどカウンターを使うデッキ全般に効果的なカードで、多くの場合マストカウンターとなるためキーカードが通りやすくなります。

ウルザの物語

《ウルザの物語》はカウンターを使う相手に対して有力な勝ち手段として機能します。大量にアーティファクトを並べるこのデッキでは、容易にフィニッシャークラスの構築物・トークンを生成することができます。

一つの指輪

《一つの指輪》《ライオンの瞳のダイアモンド》《永劫のこだま》に代わるリソースを補充する手段になり、デッキに一貫性をもたらしています。場に出たときのプロテクションにより、あらかじめマナアーティファクトが場にあれば大量のマナを生み出せる状態でターンが返ってくるので、《引き裂かれし永劫、エムラクール》《大いなる創造者、カーン》から《歩行バリスタ》をサーチしてゲームを決めやすくなります。

総括

悲嘆豆の木をのぼれQuesting Druid

Dimir Scamはここ数週間特にLegacy Challengeで圧倒的な強さを見せています。コンボに強いデッキですが、このタイプの戦略が苦手とする《豆の木をのぼれ》を採用した多色コントロールやTemur Midrangeも増加傾向にあります。

また《オークの弓使い》の能力を誘発させないドローエンジンは重要であり、《探索するドルイド》はテンポデッキの新たなアドバンテージ源としてTemur Delverの復権に貢献しています。

USA Legacy Express vol.223は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

この記事内で掲載されたカード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら