《稲妻のらせん》がスタンダードとパイオニアで復活
みなさん、こんにちは。スタンダード担当の紳さんです。
『カルロフ邸殺人事件』のカードプレビューが始まりましたね。
- 2024/1/17
- 『カルロフ邸殺人事件』プレビュー情報まとめ
- いってつ
「諜報2色土地サイクル」「変装」「事件」など新カード&新メカニズムに注目が集まるとは思いますが、『カルロフ邸殺人事件』発売に際し、我々にはあらためて考えなければならないことがあります。
《稲妻のらせん》は再録して本当に大丈夫なのでしょうか?
今回の記事は丸々《稲妻のらせん》にスポットを当てて進行してまいります。
《稲妻のらせん》とは?
まず、《稲妻のらせん》がどれほどのカードなのか、おさらいすることにしましょう。
《稲妻のらせん》は今から18年以上も前の2005年10月07日に発売された『ラヴニカ:ギルドの都』で初めて収録されたカードです。
インスタント
1つを対象とする。稲妻のらせんはそれに3点のダメージを与える。あなたは3点のライフを得る。
3点のダメージを与えて、3点のライフを得る。とてもシンプルな効果です。攻防を兼ね備えた呪文だといえます。
否。
それだけの評価にはとどまりません。《稲妻のらせん》はどう考えても強すぎるのです。
《稲妻のらせん》が強すぎる理由
それでは、なにをもって《稲妻のらせん》が強すぎるという結論に至るのか、その根拠を提示します。
冷静に考えると、そもそもの呪文の効果が強すぎるのです。
インスタントタイミングで3点というダメージを好きな対象に与えられるのは、かの伝説の最強火力呪文《稲妻》と同等であり、それにくわえて《治癒の軟膏》相当のライフ回復をもたらすのですから。
え?《稲妻》と《治癒の軟膏》はどちらも1マナの呪文だから、2マナの《稲妻のらせん》の効果は妥当ですって?
まったくの見当違いです。《稲妻》と《治癒の軟膏》を同時に唱えるためには2枚の手札が必要なのに対し、《稲妻のらせん》はたった1枚で両方の役割を担うわけですから、手札1枚分の差があります。
現スタンダード環境ではX=3の《不憫な悲哀の行進》を唱えるのに等しいことですが、《不憫な悲哀の行進》では4マナかかる上にプレイヤーやバトルを対象に取ることができません。
《稲妻のらせん》はなんでも対象に取れる上にわずか2マナなのです。
この尋常ではないマナ効率からも、《稲妻のらせん》がいかにブッ壊れカードなのか理解できると思います。
十数年間、スタンダードで再録されたことはない
これまで幾度となく《稲妻のらせん》は再録されてきました。
『モダンマスターズ』『アイコニックマスターズ』『ミスティカルアーカイブ』。
『ダブルマスターズ2022』『ラヴニカ・リマスター』『Secret Lair 30th Anniversary』。
そう、再録は何度もされているんです。
ただし!
これまで再録が実現したのはすべてモダン以下の環境でしか使えない特殊セットであり、パイオニアはおろかスタンダードで《稲妻のらせん》の再録が許されたことなど、この十数年間で一度もないのです。
無論、《稲妻のらせん》が強すぎる故に再録ができなかったことは明白です。
想像をしてみてください。《擬態する歓楽者、ゴドリック》《ヨーグモスの法務官、ギックス》《グリッサ・サンスレイヤー》などスタンダード最強クラスのクリーチャーたちがわずか2マナで落とされるばかりか、3点のライフ回復までされては勝負になりません。
それなのになぜ、《稲妻のらせん》が再録されることになったのか?
類似カードなど存在しない
え?フラッシュバックつきの類似カード、《聖なる火》が使われていないから、《稲妻のらせん》も大丈夫ですって?
ナンセンス。《稲妻のらせん》に類似カードがあると思わないでください。
マジックにおける1点のダメージ差、1マナのコスト差は果てしなく大きいのです。
あなたは《稲妻》の類似カードとして《ショック》や《稲妻の一撃》を挙げますか?挙げませんよね?
《ショック》や《稲妻の一撃》が《稲妻》の足元にも及ばないように、《聖なる火》も《稲妻のらせん》とは比較対象にすらならないのです。
カードに書いてあるテキストがどんなに似ていても、効果やマナコストに果てしない差がある場合は類似カードとみなさない。経験を積んだマジックプレイヤーなら誰しもが理解できることです。
この観点から、《稲妻のらせん》の類似カードはマジックの歴史上に存在せず、唯一無二でありながら最強の呪文であることがわかっていただけるかと思います。
スタンダードに与える影響
それでは実際、《稲妻のらせん》が使えるようになることで、スタンダードではどんなデッキの台頭&衰退が予想されるでしょうか。
あくまで個人の予想ですが、見解を発表させていただきます。
有力デッキ1 「トリコロール」
まず、赤単やアゾリウス兵士といったメタゲームの中心にいるアグロデッキは新デッキ「トリコロール」の誕生により衰退すると予想します。
ちなみにトリコロールとはフランスの国旗などに代表される白・青・赤の色の組合わせのことで、現代マジックにおける「ジェスカイ」のことです。なんとなくトリコロールって言ったほうが強そうなので、当記事ではそう呼んでいます。
《稲妻のらせん》と抜群に相性の良いカードは青に集まっています。
呪文をコピーする《感電の反復》は言うまでもなく、《秘儀の代理者》はさながら《瞬唱の魔道士》のように働き、《第三の道の創設》は手札にある《稲妻のらせん》をタダで唱えたのち、2ターン後に再び《稲妻のらせん》をキャストすることができます。
どれだけライフが削られても、《稲妻のらせん》を5回、6回と唱えられれば負ける気がしません。とくにアグロに関しては抜群の勝率を誇ることでしょう。
ライフ回復とシナジーがある、これらのクリーチャーも活躍しそうです。《平和の世継ぎ、ウィル》に関しては過去記事で一度救っており、有用性が証明されています。
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以上の理由から、トリコロールがスタンダード最強のデッキとして君臨することが予想されます。
有力デッキ2 「毒性アグロ」
『カルロフ邸殺人事件』発売直後の新環境では《稲妻のらせん》の影響によりアグロデッキが減り、ランプやコントロールといったデッキが幅をきかせるようになります。
そんな中、唯一《稲妻のらせん》の魔の手から逃れた毒性アグロがランプやコントロールを喰い荒らすことは火を見るより明らかです。
現状でもTier1の毒性アグロですが、さらに立ち位置がよくなることは間違いありません。
ただし、トリコロールとの対戦においては《一時的封鎖》を4枚フル投入されることにより、一方的にフルボッコにされます。
毒性アグロがどんなに活躍しても、トリコロールがスタンダード最強のデッキとして君臨することを止めることはできないのです。
有力デッキ3 「トリコロールドラゴン」
こちらは、私が1月のフレンドリーイベントで「8 Discover」(ラクドスミッドレンジ)やゴルガリミッドレンジに勝利し、3-0した「トリコロールドラゴン」のデッキリストです。
お相手のデッキもかなり強かったですが、《ズルゴとオジュタイ》と《骨集めのドラコサウルス》という、マジックの神様が気まぐれで誕生させてしまった超強力ドラゴンの競演には手を焼いたようで、2024年は完全にドラゴンの年ということをわかっていただけたかと思います。
とくに《燃える魂、サルカン》が《ズルゴとオジュタイ》のコピーになる現象はバグとしか思えないヤバさであり、私はこのデッキに大きな可能性を感じていたのです。
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しかし、いってつさんの兎デッキに苦汁をなめさせられるなど、このジェスカイドラゴンはアグロ戦略に鬼弱いことが判明し、すぐに解体することになります。
ドラゴンたちはコストが重い上に除去耐性もなく、現在のアグロ優位なスタンダード環境には合わなかったのです。
しかし、《稲妻のらせん》再録後は話が変わります。
トリコロールドラゴンのカードパワーは環境随一で、アグロとの相性さえ改善できれば最強デッキになりえるポテンシャルを秘めているのです。
足りなかった最後のパーツ、それが《稲妻のらせん》でした。
《稲妻のらせん》はいざとなれば《ゴバカーンへの侵攻》を対象に取ることができるのも便利すぎます。ライフを回復しながら、ドラゴン軍団を除去から守る強力な盾を用意することができるのです。
結局は、なんらかのトリコロールがスタンダード最強のデッキとして君臨することが予想されます。
本当に再録して大丈夫?
ほかにも《稲妻のらせん》と相性が良いカードはたくさんありますし、『カルロフ邸殺人事件』で追加される新カードでヤバいシナジーを発揮する可能性もあります。
アグロデッキが活躍できなくなり、環境が破壊され、大会がトリコロールカラーのデッキで埋め尽くされたりしないでしょうか?
パイオニアに与える影響
パイオニアで《稲妻のらせん》が使えるようになるのも初めてのことです。影響はあるのでしょうか?
まず、禁止解除されてなにかと世間を騒がせた《密輸人の回転翼機》ですが、《稲妻のらせん》でピッタリ撃墜できます。
あれれ~?パイオニアを代表する極悪コンボクリーチャーたちも軒並みタフネスが3ですね?
これはどういうことでしょうか?
もはや《稲妻のらせん》がパイオニアでもめちゃくちゃ使われることは確定事項のようですね。
では、どんなデッキが活躍するのか予想していきましょう。
有力デッキ1 「ボロスバーン」
モダンのボロスバーンが強いのは、フェッチランドも含めて自傷によるライフロスを咎める戦略が有効であるから、といった理由もあるでしょう。
パイオニアでも《思考囲い》やショックランド、《マナの合流点》などが環境で多用されていることから、バーン戦略が有効であることは十分に認めることができるはずです。
というわけで、モダンのボロスバーンにどれだけ肉薄できるか、という観点からパイオニアにおけるボロスバーンの有力性を考えたいと思います。
まず、《稲妻》《裂け目の稲妻》《溶岩の撃ち込み》といった1マナ3点火力がパイオニアには存在しません。《批判家刺殺》がギリギリ、1マナ3点火力といえないこともない、ぐらいの性能です。
このことから、モダンに比べるとスピード面では遥かに劣るということがいえますが、パイオニア全体のゲーム速度がモダンよりは遅いため、さほど問題にならないと判断します。
それでは主力となる火力呪文はどんなものがあるでしょうか。
《稲妻のらせん》《ボロスの魔除け》《灼熱の血》はモダンのボロスバーンに採用されているほどですから、性能に関して疑う余地はありません。
とりわけ、パイオニアはフェアデッキが多く活躍する環境であるため、ライフレースに強くなる《稲妻のらせん》が新戦力として加わったのはかなり好材料です。
このあたりもさすがに採用されるのではないでしょうか。正直、カードパワーとしては物足りないのですが。
クリーチャーに関しては、さすがに《ゴブリンの先達》の代わりが務まるクリーチャーはいないものの、《僧院の速槍》と《損魂魔道士》の「果敢」コンビは及第点の性能ですし、《大歓楽の幻霊》は《孤独》がパイオニアに存在しないことにより、モダンより活躍できる可能性があります。
《砕骨の巨人》と《バグベアの居住地》の強さは、パイオニアのいわずとしれたトップメタデッキである「ラクドスミッドレンジ」が強さを証明済みです。
クリーチャー除去・墓地対策・コンボ対策・置物破壊などサイドプランも充実し、対応力があります。
さらに、バーンというコンセプト的に採用せざるを得ないライフ回復妨害手段が、そのままパイオニア環境のトップメタである「アブザン探検」に刺さる点も見逃せません。
以上の理由から、《稲妻のらせん》が使えるようになったパイオニアのボロスバーンは有力デッキと考えることができます。
また、バーンデッキ以外では「追放ボロス」などでも《稲妻のらせん》の採用が検討されそうです。
有力デッキ2 「ジェスカイコントロール」
従来のアゾリウスコントロールにタッチ赤の形で《稲妻のらせん》を採用したジェスカイコントロールも有力です。
ちなみに「トリコロールコントロール」ってすごく言いづらかったので、おとなしくジェスカイコントロールと呼ぶことにしました。
除去+ライフ回復が可能な《稲妻のらせん》は、このデッキが喉から手がでるほど欲しいカードでした。
アグロ耐性が上がり、《ドミナリアの英雄、テフェリー》着地までの時間(ターン)を稼ぐのにこれ以上ない除去パーツです。
また、赤をタッチすることでパイオニアおなじみの白青アンチカードをサイドボードに採用できる点にも注目です。
人間・スピリット・ボロス招集といったデッキへの耐性が上がり、《ドミナリアの英雄、テフェリー》《帳簿裂き》《大牙勢団の総長、脂牙》《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》などを簡単に処理できるようになります。
《塔の点火》で《弧光のフェニックス》や《大釜の使い魔》を対処できるのも魅力的です。
《ポータブル・ホール》との比較になりますが、《弧光のフェニックス》を追放できる分、やや《塔の点火》の方がメタに合っているといえるでしょう。
よりアグレッシブなジェスカイコントロール
《マグマ・オパス》とのコンボを狙ったアグレッシブな構成のコントロールデッキも大いに考えられます。
従来のアゾリウスコントロールではロータスコンボや灯の分身コンボとの戦いにおいて、《思考のひずみ》や《龍王ドロモカ》がネックとなっていました。
《マグマ・オパス》型のジェスカイコントロールであれば、先にコンボを決めて勝ちにいくという新しい選択肢が生まれます。
おわりに
本当に再録して大丈夫ですか?
…なんてね。《稲妻のらせん》の再録が嬉しくてついつい、はしゃいでしまいました。
実際のスタンダードはしっかりタフネス4社会ですので、そこまで大袈裟な事態にはならないと思います。また、現状のスタンダード環境はややアグロデッキが優位すぎる面もあるので、かなりバランスがとれるのではないでしょうか!
今回の記事を通じて、《稲妻のらせん》の強さ・魅力が少しでも伝われば幸いです。
『カルロフ邸殺人事件』の発売が楽しみですね!それでは、また。