rizer’s answer -Khans of Tarkir Sealed- Part3

石村 信太朗

written and interviewed by Atsushi Ito



 グランプリ静岡まであと2週間を切った。

 『タルキール覇王譚』シールドの集大成を見せつけるときが来たのだ。

 それでは始めよう。


 






講義編1: 強い『変異』から出すか弱い『変異』から出すか?

--「今回は『プレイングとサイドボード』がテーマということで、この環境でプレイングといったらやはり『変異』絡みが主になると思うんですが、まずは基本的なところから、3ターン目に強い『変異』と弱い『変異』がいた場合、どちらをプレイするのか。そしてそれは先手と後手で変わるのか。この点についてお答えいただければと」

rizer 「一般にも言われていることではありますが、弱い『変異』からプレイするのが鉄板ですね。特に対戦相手が黒いデッキのときには、強い『変異』は少し温存するのが無難です」



--「どうしてでしょうか?」

rizer 「相手が黒いデッキの場合には、序盤の『変異』は《消耗する負傷》の的になりやすいからですね。また相手が黒くない場合も、序盤はお互いにやることがないために最初の『変異』は交換する動きになることが多く、そのときに交換に乗らないとそれはそれで中身が強いのがバレてしまうので、結局交換に乗るために弱い『変異』からプレイした方が良いですね」

--「逆に強い『変異』からプレイするのはパターンとしては、どのようなものが考えられるでしょうか?」

rizer 盤面で先手をとっていて、コンバットトリックや除去を握っていて『変異』交換にならず、5マナで表にできる行動予定がたっている……みたいな場合には、5マナでオープンする強めの『変異』からプレイすることは十分にありえますね」

--「逆にいうとほとんどの場合、相手に2枚の『変異』があってどちらかを除去しないといけない場合は、2枚目の『変異』を除去した方が良いということになりますね」

rizer 「他に情報がない場合にはそれが丸いですね」


 結論

強い『変異』からプレイした方が良い場合も例外的にあるが、大抵は弱い『変異』からプレイした方が良い。







講義編2: 『変異』をいつ表返すべきか?

--「次に、『変異』をいつ表返したらいいのかという点も、何かしら原則のようなものがあれば教えていただきたいです」

rizer 「基本的には、『ここだ!』と思う場面までは後回しでいいというのはありますね。大雑把なタイミングで表返していいのは《サグの射手》《隠道の神秘家》といった『到達』や回避能力持ちくらいです」

--「表返せるときに表返すものでもないんですね」

rizer 「特に、戦闘で得できるときでもない限り、表返して即座に除去されるようなタイミングでは表返さない方が良いですね。表返すマナを払っておいて除去されるとテンポ損が著しいので。後回し、後回しで、マナが余ってきた頃にエンド前オープンな感じが良いかと」

--「まずは展開を優先して、『変異』のまま殴りながらエンド前に順次表返していく、と」

rizer 「その方が裏目が少ないですからね」


 結論

表返した『変異』に除去を合わせられてのテンポロスは避けるようにしよう。
基本的には展開を優先して、エンド前に表返すようにすると裏目が少ない。








講義編3: 『変異』の判別法その1

--「自分で使っているときのプレイングも難しいですが、何より『変異』というのは相手に使われると非常に厄介なわけです。《長毛ロクソドン》かもしれないし、《シディシのペット》かもしれない。そのあたり、判別法みたいなものってあるんでしょうか?」

rizer 「判別法というわけではないですが、『変異』を警戒するかどうかは、相手のデッキの色によって変わりますね。特に相手に青マナがあるときの『変異』には気を付けた方が良いです。次点は緑で、逆にマルドゥの『変異』なんかは無理して除去る必要はまるでないですね」



--「それは何故でしょうか?」

rizer 「青だけレアの『変異』が多くて、しかも《千の風》《ケルゥの呪文奪い》とあってサイズや効果がド派手なんですよね。《氷羽のエイヴン》《隠道の神秘家》などトリッキーな要素もあって、ハズレでも《氷河の忍び寄り》な青緑の『変異』は本当に恐ろしいです。一方白赤黒の『変異』は大した能力もサイズも持っていないものばかりなので、放置しても問題が起こりにくいです」

--「相手が青マナを積極的に出そうとしているデッキの場合、『変異』は除去対象として認定した方が良いんですね」

rizer 「そうですね。あとは相手に黒白緑が出るときの雑な『変異』アタックは《アブザンの先達》一点読みしてブロックした方が良いですね。《長毛ロクソドン》とか《松歩き》とか恐れずに全力で行きましょう。4点タダで回復された上にブロッカーとして立たれるとかなり攻めづらくなりますから」


 結論

青や緑のデッキの『変異』は平均的に危険度が高い。
逆にマルドゥの『変異』は放置しても問題ない。







講義編4: 『変異』の判別法その2

rizer 「他には、『戦闘に参加したか否か』は『変異』の脅威度を判定するにあたって有力な指標になりますね」

--「ブロッカーがいるような状況で戦闘に参加した『変異』は、相手がブロックで打ち取られるリスクを許容しているわけですから、危険度が低くなると」

rizer 「ですね。逆に一見殴り得な場面などで戦闘に参加しなかった『変異』は脅威度がドカンと跳ね上がります。『変異』の危険度については、ゲーム中にライフメモに『低中高』の3段階で良いのでメモっておくと良いかもしれません」

--「『4ターン目に殴ってこなかった……1枚目は危険度高』みたいな?」

rizer 「一拍おいて出てきた、序盤交換してこない、こちらにマナがなくて向こうは5マナ出る状況で殴ってこないなど、怪しい挙動はその都度記録しておかないと、《千の風》などで手痛いしっぺ返しを食らうことになります」

--「なるほど。でも2ゲーム目以降は相手の『変異』の正体も大分掴みやすくなりますよね。2~3枚は既に見ているわけですから」

rizer 「そうですね。ただ記憶力に自身がない人は相手がプレイした『変異』の種類も全部メモした方が良いですね。見たコンバットトリックや除去を全部メモするのと同じ感覚で」


 結論

戦闘に参加していない『変異』は危険度高し。
『変異』の正体を見定めるため、相手が出してきた『変異』の危険度はゲーム中に適宜メモしよう。








講義編5: サイドボードからの色変えが必要な場合とは?

--「ではプレイングについてはこのへんにしていただいて、今度はサイドボードの話に移りたいと思いますが、実際問題、この環境では『色ごとサイドチェンジ』することは普段より少ないとみていいんでしょうか?」

rizer 「はい、少ないです。基本的にメインボードから色関係なくプールの総力を結集させた構築にすることが多いですからね」

--「その上で『色ごとサイドチェンジ』をする必要性が出てくるのは、どのような場合でしょうか?」

rizer ビートとコントロールの転換、または空中戦と地上戦の移行ですかね。まあ概ね前者ですね」

--「メインがビート寄りで、そのままだと通用しそうにない場合にもう片方に転換するケースと」

rizer 「『通用するorしない』レベルならビートでいくのがこの環境の鉄板なので若干語弊があるかもしれません。どちらかといえばこれも『安定性』の話で、より安定して勝てそうな形にシフトするということですね」

--「相手のデッキを見てそれに合わせたXXX(『1枚被せ』な)カードをチョイスする結果、サイド後はよりコントロール寄りになるということでしょうか?」

rizer 「そうですね。後手が取れるプールであること前提で、デッキを最適化するイメージです」

--「メインはダメージコントロールで差しきって、サイド後は相手の攻めをいなして長期戦をする感じでしょうか」

rizer 後手が確定している場合はダメージコントロールで差しきる方針は不安がありますからね。先手有利なご時世ですから」


 結論

この環境では『色ごとサイドチェンジ』するパターンは少ないが、プールによっては相手のデッキに合わせた後手仕様のコントロールにした方が勝率が上がる。







講義編6: サイドボードのテクニック

--「他にサイドボードに関してテクニックなどあればお伺いしたいのですが」

rizer 「この環境はスペルがどれも非常に強いので、一度相手に見せたスペルは積極的にサイドで入れ替えた方が良いですね」



--「それは初耳ですね。でも確かにスペルの厳選にいつも苦心しますから、高いレベルでスペルの質が拮抗しているのは間違いないわけで、そうなると似たような役割のスペルを入れ替えてもさして問題はないと」

rizer 「そうですね。《龍鱗の加護》《熊の覚醒》に変えたり、《引き剥がし》《目潰しのしぶき》に変えたりすると良いかと」

--「スペルなら何でも入れ替えちゃって良いんでしょうか?」

rizer 「除去やカウンターあたりはオンリーワン性能なのでいじれませんね。ですがコンバットトリックはどんどん入れ替えた方が良いです」


 結論

一度相手に見せたコンバットトリックは積極的に入れ替えるようにしよう。







実践編1: rizer’s answer

--「さてここからは実践編になりますが、津村さん・山本さんとかなり構築方針が分かれたことといい、結構何でも組めるプールですよね。そんな中で彼らの構築に問題があるとすれば、それはどこになるんでしょうか?」

rizer 「コントロールの津村さんの形の問題点は、そもそもメインでは相手のカードがわからないのでコントロールしきれるか不安があるという点もありますが、もっと単純に遅めのデッキ対決でアドバンテージがとれる《苦々しい天啓》のようなカードがないことと、《グドゥルの嫌悪者》をめぐる対決も辛そうということですね」

--「スゥルタイ多色同型を制するヴィジョンが見えない、と」

rizer 「そうですね。《砂塵破》《悪逆な富》でも食らおうものなら弾け飛びます。そういったデッキに当たったときに守りが鉄壁でない上に攻めっ気がなさすぎるのが問題になりますね。タフネス2除去やタフネスの高い壁に秀でているのでそこが効果的な相手には非常に有利ですが、逆に言えば同じ役割のカードが固まりすぎているので弱点でもあります。どちらかといえばサイド向きの構築でしょうね」

--「逆に山本さんみたいなビートダウンはいかがでしょうか?」

rizer 「緑の太いデッキを踏んだときに辛そうなんですよね。この環境は似たようなデッキ対決が頻発するので、強さにそこまで差がないのなら太い方を選ぶのが無難です。赤緑が組めれば理想だったんですが、枚数が足りないので緑白になりました」




「緑白タッチ青黒」


7 《森》
5 《平地》
1 《砂草原の城塞》
2 《陰鬱な僻地》
2 《平穏な入り江》

-土地(17)-


2 《アイノクの盟族》
1 《射手の胸壁》
1 《煙の語り部》
1 《荒野の後継者》
1 《頭巾被りのハイドラ》
1 《休息地の見張り》
1 《高山の灰色熊》
2 《雪花石の麒麟》
1 《スゥルタイの剥ぎ取り》
1 《塩路の巡回兵》
1 《ケルゥの呪文奪い》
1 《象牙牙の城塞》
1 《長毛ロクソドン》

-クリーチャー(15)-
1 《果敢な一撃》
1 《頑固な否認》
2 《凶暴な殴打》
2 《大物潰し》
1 《龍鱗の加護》
1 《停止の場》

-呪文(8)-

hareruya












実践編2: サイドプランについて

--「ちなみにこのプールに関しては、積極的に『色変えサイドボード』していくパターンは多いと思いますか?」

rizer 「そこそこあると思います。特に後手の場合は津村さんの構築のようにコントロールに寄せることが多いでしょうね」




「白黒タッチ緑青」


5 《平地》
4 《沼》
3 《森》
1 《島》
1 《砂草原の城塞》
2 《陰鬱な僻地》
2 《平穏な入り江》

-土地(18)-


1 《マルドゥの悪刃》
2 《龍の眼の学者》
1 《頭巾被りのハイドラ》
1 《僧院の群れ》
2 《雪花石の麒麟》
1 《塩路の巡回兵》
1 《ケルゥの呪文奪い》
1 《朽ちゆくマストドン》
1 《象牙牙の城塞》
1 《長毛ロクソドン》
1 《よろめく従者》

-クリーチャー(13)-
1 《頑固な否認》
1 《族樹の発動》
1 《ラクシャーサの秘密》
2 《大物潰し》
1 《死の激情》
2 《消耗する負傷》
1 《停止の場》
1 《スゥルタイの戦旗》

-呪文(10)-

hareruya




rizer 「仮想敵が曖昧なのでデッキも41枚で若干曖昧になっていますが、津村さんの形とほとんど差はないと思います。たださすがに空戦要員が欲しかったので白が濃くなりましたが」

--「このデッキはどういった相手に対してのサイドチェンジでしょうか?」

rizer 「ビートダウンを綺麗に捌ききりたいときはこの形にすると良いと思います」

--「他にサイドプランはありますか?」

rizer 《石弾の弾幕》《軍族の解体者》のどちらかが欲しいときや、トークンを並べて《死の投下》をかわしたいときなどは、また41枚で申し訳ないのですが、こちらのプランの方が良いと思います」




「赤白タッチ黒緑青」


7 《山》
5 《平地》
1 《砂草原の城塞》
2 《陰鬱な僻地》
1 《急流の崖》
1 《平穏な入り江》

-土地()-


2 《アイノクの盟族》
2 《谷を駆ける者》
1 《軍団の伏兵》
1 《休息地の見張り》
1 《沸血の熟練者》
2 《雪花石の麒麟》
1 《塩路の巡回兵》
1 《ケルゥの呪文奪い》
1 《山頂をうろつくもの》
1 《軍族の解体者》
1 《子馬乗り部隊》
1 《長毛ロクソドン》

-クリーチャー(15)-
1 《果敢な一撃》
1 《騎乗追撃》
1 《石弾の弾幕》
1 《冬の炎》
1 《ラッパの一吹き》
1 《軍族童の突発》
2 《矢の嵐》
1 《停止の場》

-呪文(9)-

hareruya




--「それらのカードが欲しくなるのはどういった相手なんでしょうか?」

rizer 「タフ1の『接死』クリーチャーを複数並べてくる相手や、『飛行』が弱点みたいなオーラをビンビンだしてるアブザン相手なんかには、メインの緑白よりもこちらの方が効果的ですね」







終わりに

--「さて、タルキール編全体で語り逃したことなど何かあれば」

rizer 「そうですね……とりあえず枠が余ったらオススメということで、《頑固な否認》《軽蔑的な一撃》《蔑み》《抵抗の妙技》あたりを推しておいてください。特に《頑固な否認》はメイン当確ですね」


頑固な否認軽蔑的な一撃蔑み抵抗の妙技


--「結局気持ちよくクソビートやレア1枚で勝つのではなく、泥にまみれながらデカブツを守って殴って勝つミッドレンジが最適という結論なんですかね」

rizer 「一番安定するのはそれですね。あとは《必殺の一射》《大物潰し》をどうくぐり抜けるかという環境です」

--「なるほど。それでは全3回ありがとうございました。『Blood』ブロックでまたお会いしましょう」

rizer 「お疲れ様でした」








 いかがだっただろうか。

 これを読んだ読者諸兄がグランプリ静岡のトップ8に入賞できることを祈っている。

 それでは、またしばらく間が空いてしまうかもしれないが、また会う日まで。




 さらに。

 ここでお知らせがある。

 2014年12月23日(火)から2015年1月9日(金)までの間、晴れる屋トーナメントセンターでは例によって。

 今回の記事で題材となったシールドプールの店内貸し出しを行っている。

 これであなたが考えたデッキの一人回しが可能になる。

 友達と一緒に借りて、どのような構築が良いか議論するのもオススメだ。

 「タルキールシールドの練習がしたい」「実物のカードを並べて考えてみたい」「作ったデッキを実際に回してみたい」といった方は。

 トーナメントセンターにご来店の際、大会受付カウンターにてスタッフにお気軽にお尋ねください。