SSS決勝ドラフト:行弘 賢のピック

晴れる屋

By Atsushi Ito

 長かったスーパーサンデーシリーズ予選も、いよいよ決勝ドラフトが始まる。

 ここまでスタンダードの方ばかり取材してきたが。

 シールド部門からは何と、GP本戦は疾風の0-3行弘 賢(和歌山)が2位通過していた!

行弘 「シールドのデッキ、バケモン弱かったんですけどね」

 それでも勝つのがプロの仕事ということか。

 ともあれ、ここからはドラフトラウンド。

 しかも行弘にとって運の悪いことに、対面にスタンダード部門実質9-0黒田 正城(大阪)が座ったため、準々決勝の相手が日本人初のプロツアーチャンピオン、黒田であることが確定してしまっている。

 環境も後半、誰にとってもピックし慣れたであろうこのテーロス×3ドラフトにおいて。

 はたして行弘はどう立ち回るのか。




 肝心の1パック目初手。

 行弘は早速、決断を迫られる。

タッサの試練航海の終わりマグマの噴流



 《タッサの試練》《航海の終わり》《マグマの噴流》

 今後のピックを進める上で、どれが最適解なのか。実に悩ましい3択だ。

 だが、行弘は迷わなかった。

マグマの噴流



 行弘が選んだのは、《マグマの噴流》!!!

 のちに行弘はこう語る。

行弘 《アクロスの十字軍》の一周を読んでのピックです」

 1パック目の初手が、ドラフト全体の方向性を決定づける最も重大なピックのうちの1つであることは間違いない。

 だが、1-1はそれゆえにいわゆる”丸い”ピック、2手目以降にどんなカードをピックすることになっても使いこなせるカードを取るのが定石のはずだ。

 にもかかわらず。

 行弘は、走った。

 迷わず赤へ行く、と。

 その決断力。その瞬発力こそが、プロのピックだ。

 それが功を奏したのか。

 以降の赤の流れは非常によく、早々と《稲妻の一撃》2枚を確保すると、《都市国家の破壊者》までもが行弘の目の前に流れてくる。

 是非もなし、とピックする行弘。

 さらに9手目には、宣言通り<アクロスの十字軍>を回収!!

 ついには2パック目の2手目には懸命に赤を枯らしにいったのが功を奏し、下家からの《歓楽者ゼナゴス》のプレゼント!!

行弘 「あれで2色目を緑に決めましたね」

 流れを読み、いやそれどころか自分で操作までして、作り出した極上の好ポジション。

 そんな行弘に、神様も粋な計らいをしたくなるものなのだろうか。

 ダメ押しに3パック目の初手&2手目と、立て続けに《モーギスの狂信者》を獲得!!

 出来たデッキははたして、鬼のような強さの赤緑であった。



行弘 賢 「赤緑」

9 《山》
7 《森》

-土地(16)-

3 《アクロスの十字軍》
1 《死呻きの略奪者》
1 《旅するサテュロス》
1 《炎語りの達人》
1 《ミノタウルスの頭蓋断ち》
2 《モーギスの狂信者》
1 《不機嫌なサイクロプス》
1 《都市国家の破壊者》
1 《信条の戦士》

-クリーチャー(12)-
2 《統率の取れた突撃》
2 《タイタンの力》
2 《マグマの噴流》
2 《稲妻の一撃》
1 《蛮族の血気》
1 《破壊的な享楽》
1 《パーフォロスの試練》
1 《歓楽者ゼナゴス》

-呪文(12)-
-サイドボード(0)-
hareruya





行弘 「ドラフト3回戦を3回やったら、うち2回は3-0できるレベルの強さですね。これは90点あります」

 と、さすがの匠もご満悦な様子。

行弘 「卓に《ナイレアの信奉者》《蘇りし者の密集軍》といった苦手なカードがあまり出てないのも好都合です。3パック目の初手は《モーギスの狂信者》一周もありえる流れだったのえ、カットするか素直に《モーギスの狂信者》ピックするか悩んだんですが、さすがにリスク高すぎと思って《モーギスの狂信者》をピックしました」

 自分のデッキを作りながらも、卓全体のカードプールを考慮し、必要があればカットする。その広い視野とバランス感覚も、プロたる所以なのだろう。

行弘 「まあ本当に初戦の黒田さんが鬼門ですね。そこさえ勝てればあとはいけると思いますよ」

 プロのピックで至高のデッキをドラフトした行弘。



 スーパーサンデーシリーズ突破に向け、準々決勝で黒田に挑む。