Round 3: 神長 孝佳(埼玉) vs. 青木 力(東京)

晴れる屋

By Yuuya Hosokawa



CTGとはどんなデッキか。
 レガシーに少しでも触れたことがある人ならば、この質問に答えるのは容易であろう。《Force of Will》《目くらまし》といった軽く強力なカウンターで、相手の序盤の動きを押さえ込み、《相殺》《師範の占い独楽》のソフトロックで後続をシャットダウンしてしまい、《タルモゴイフ》で速やかにライフを削りきるデッキである。
 デッキの要である《相殺》《師範の占い独楽》《タルモゴイフ》の名前を一文字ずつ取り、CTGと呼ばれているこのデッキは、様々な種類のカードを自由に使え、多種多様なデッキが存在するレガシー環境においてでも、六ラウンド戦えば一回は絶対に当たるであろうと言えるほど、有名であり人気で、そして何より強力なデッキだ。
 閑話休題。
 さて、CTPとは何であろうか?
 この質問に答えられる人は、かなりのレガシーオタクだ。かくいう筆者も実は知らなかった。CTGに《自然の秩序》《大祖始》が投入された、いわゆるバントオーダーと言うものかと思っていたのだが、どうやら違うらしい。
 CounterTop…までは想像がつく。ではPは何か?
 Pの意味を教えてくれたのは、ニコニコしながらフューチャリングテーブルにやってきた、青木力だった。そして笑顔でCTPの存在について語ってくれるその表情は、同じ笑顔ではあったが、今度はニヤニヤとしたものだった。
 そしてそれは対戦相手である神長孝佳に向けられていた。何でもそのCTPの製作者が神長であるらしい。レガシー巧者として有名な神長の名前は、珍しいその苗字もあり、知っている方は多いのではないだろうか?
 レガシー巧者同士の一戦、Pの意味とともにお届けしよう。


Game 1


 先手を得た神長は《沼》をセットする、レガシーとしてはそこそこ珍しい立ち上がり。謎に包まれるばかりのCTP。一方青木は、《樹木茂る山麓》から《山》をサーチし、《霊気の薬瓶》という立ち上がり。こちらはゴブリンであろうか。
神長は二枚目の《沼》から、《Hymn to Tourach》。これが青木の手札から《ゴブリンの戦長》《スカークの探鉱者》を奪い去る。強力な二枚を失った青木は、二枚目の《霊気の薬瓶》と山を置くのみ。
 手札がズタズタになった青木に追い討ちをかけるように、更に《思考囲い》を打ち込んだ神長は、ゴブリンのアドバンテージ源である《ゴブリンの首謀者》を手札に見つけ、即座に墓地へと追いやる。
そして戦場には、レガシーでおなじみ――いや、MTGでおなじみとなる、《タルモゴイフ》が現れた。CTPのTはもしかして《タルモゴイフ》のことなのだろうか?
 この神長の脅威に対抗したい青木だが、《リシャーダの港》を置いてターンを返すにとどまる。
 アップキープに唯一の緑マナ源である《Bayou》《リシャーダの港》で寝かせるも、神長の手札から《汚染された三角州》が出てくると、《Bayou》と一緒に二枚目の《タルモゴイフ》が。青木はターンエンドに《ゴブリンの群衆追い》を出してみるものの、あまりにも心もとない。
 そして青木はこのターンでもアクションを起こせず、行動を起こす権利を明け渡すことしか出来ない。二体の《タルモゴイフ》の攻撃を受け、残るは僅か7となる。
 そしてここで青木は勝負に出る。まずは《霊気の薬瓶》から《ゴブリンの首謀者》を戦場へと送り込む。この首領が手札に送り込んできたゴブリンは……なんと0枚。薄情な手下たちに苦笑しつつ、手札からもう一枚の《ゴブリンの首謀者》を。これには今度は神長が苦笑い。この二体目のゴブリンには、《ゴブリンの群衆追い》《ゴブリンの従僕》、そして《猪牙のしもべ》の三体がしっかりと付いて来た。そして速攻を持つ二体の《ゴブリンの首謀者》《ゴブリンの群衆追い》で攻撃。
 が、神長は落ち着き払って《燻し》《ゴブリンの群衆追い》を除去。そして自分にターンが戻ってくると、ノータイムでタルモゴイフで攻撃。これで青木の残りライフは1に。
 そして神長は満を持してプレイした、CTPのPである《悪疫》によって、青木のライフを削りきった。

神長 1-0 青木

ちなみにCTPはCounterTopPoxの略で、今日のデッキはCTPではないらしい。残念。


Game 2

 お互いに再びマリガンはなく、七枚のままゲームが始まる。一本目と同じく《霊気の薬瓶》からのスタートの青木に、神長も応えるかのように沼を置くのみ。
 ここまでまったく同じ初動の二人だったが、青木はドローして顔をしかめた。なんと土地が止まってしまったのだ。そしてセットしている土地が不毛の大地であるために、展開もできない。何もせずターンを終える。
 この隙をなんとしても突きたい神長は、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を置き、《暗黒の儀式》からの《Hymn to Tourach》。これに対応する形で《霊気の薬瓶》から《ゴブリンの従僕》が出てくるのだが、ひとまず《クローサの掌握》《棘鞭使い》を手札から叩き落し、手札破壊を逃れたゴブリンには《残響する衰微》を打ち込む。
 青木はまだ土地を引けず、だが代わりに引いた二枚目の薬瓶をプレイし、なんとか土地の足らない現状をカバーしようとする――が、神長の場に出した一枚のアーティファクトに、青木は頭を抱えることとなった。
 その名は《無のロッド》
 これによって二枚の薬瓶が置物と化してしまったのだが、嘆いていても仕方ないと気合を込めたドロー。すると青木の願いが通じたのか、待望の《Badlands》を手に入れる。が、アクションは起こせない。しかも《Sinkhole》《Badlands》を一瞬で戦場から消し去り、思ったような動きが取れない。
 青木にとって唯一の救いは、神長に攻め手がないことだった。今度はすぐさま土地を引き込んだ青木は、アーボーグ下においては《Badlands》の上位互換である《山》を引き込んだ。
 ようやく神長は《惑乱の死霊》をプレイするのだが、ターンを返してしまうと、《巣穴の運命支配》によって攻撃の機会も得ないまま退場を余儀なくされる。ドローも芳しくない神長は、二枚目の《無のロッド》を出すにとどまる。
 青木はこの間、連続して土地を引いていた。四枚目のセットランドをしながら《ゴブリンの女看守》を戦場に送り出し、サーチするカードを慎重に選び、《ボガートの汁婆》を選択。
 場に出てしまうと対処するカードが限られてしまうため、手札にあるうちになんとかしてしまいたい神長は、ここで《不毛の大地》をドロー。出して即《不毛の大地》《不毛の大地》で破壊し、土地を引かれさえしなければとりあえず《ボガートの汁婆》は出ない。神長の思惑通り青木は土地を引かず、《ゴブリンの従僕》を出すことしかできない。
 土地ばかりをドローし続けてきた神長は、ようやく《墓忍び》をトップデッキ。一方青木は四枚目の土地を引かない。
 《墓忍び》をレッドゾーンへ送り込み、がら空きになった状態でターンを終える神長。これには思わず青木も苦笑。除去を持っていると公表しているようなものなのだ。それでも殴らない意味はないと攻撃を仕掛け、予定調和的に《ゴブリンの従僕》《燻し》で戦場から消える。
 更に引いたばかりの《ゴブリンの女看守》で三枚目の《ゴブリンの女看守》を手札に。
 このドローも土地だった神長は、《墓忍び》を戦場に翔けさせることしかできない。そんな神長を尻目に、ついに四枚目の土地に辿り着いた青木。嬉々として《ボガートの汁婆》を戦場へ。神長のドローは……除去ではなく《タルモゴイフ》
 《ボガートの汁婆》が生き残ったことにより、手札を減らすことなく毎ターン墓地からほぼ好きなカードを手に入れ続けることができる青木は、二ターン目に捨てた《棘鞭使い》をまずは拾い、戦場に出す。入れ替わる形で《墓忍び》を手札へ。
 《暗黒破》でなんとかゴブリンの数を減らそうと試みるも、《ボガートの汁婆》を擁する青木の軍勢は気にせず侵攻を続ける。
 起死回生の《悪疫》により、なんとか《ボガートの汁婆》を戦場から退けることには成功したのだが、ライフが2となってしまった神長。
 《ゴブリンの戦長》を手札に持っていた青木が、鮮やかな逆転劇を見せた。

神長 1-1 青木


Game 3

 神長は痛恨のダブルマリガン。対照的に迷った様子もなく青木はオープンハンドをキープ。
 汚染された三角州をセットする神長に、三度の一ターン目の《霊気の薬瓶》の青木。このスタートに対して初手五枚は厳しく思えるが、神長は意地を見せ付ける。
 まずは《タルモゴイフ》
 続くターンに《タルモゴイフ》
 そして《霊気の薬瓶》のお返しとばかりに、なんと三枚目の《タルモゴイフ》
 一方、土地をセットし続けるだけでゴブリンを一体も出していない青木は、一枚目の《タルモゴイフ》《火炎破》で破壊し、二枚目を《ゴブリンの女看守》経由の《巣穴の運命支配》で除去。充実した手札の青木は、とりあえずゆっくりとゲームを進めさえすればいいのだ。初期手札の少ない神長には勝機は薄い――
 とほとんどの人間は思ったはずだ、神長以外は。神長は仕組んでいたのだ――ゴブリンを死滅させる疫病を。
 それは読んで字のごとく、《仕組まれた疫病》

神長 2-1 青木

神長 Win!