準々決勝: 夏目 拓哉(山梨) vs. 高橋 優太(東京)

晴れる屋

By Yohei Tomizawa

QFb


 高橋 優太はレベル5のプロプレイヤーであり、スタンダードからレガシー、リミテッドにキューブドラフト、EDHと大会専用のフォーマットだけでなく、カジュアルマジックも大いに楽しむ無類のマジック好きである。

 今回は調整の結晶であるANTにてここまで勝ち上がってきた。ハンデスを多めにとった青黒2色型、赤の儀式系スペルを足した3色型とも違う、青黒+白緑の4色のデックとなっている。メインに《オアリムの詠唱》が多めに取られ、コンボマッチに強い形となっている。

 対するはニコニコ動画にて編集長の名で呼ばれる夏目 拓哉。現在は山梨に在住とのことだが、嘘なのではないかと思えるくらい頻繁に関東の大会に出場している。ことレガシーに限っては、参加していない大会などないのではないかと思える程である。

 剛腕ぶりも有名で、「トロンランド揃うから、必要なくない?」と緑トロンデックから《森の占術》を抜こうとしたり、逆にその剛腕ぶりが祟ってフラッシュハルクの1ターンキルハンドをキープし、1ドローで引いてはいけないカード、具体的には《ハートのスリヴァー》を引いてしまい敗北と、お茶目な一面も見せる。

 デックはCTG(カウンタートップゴイフ)の亜種であるCTP(カウンタートッププロジェンティス)。《師範の占い独楽》+《相殺》のロックと《タルモゴイフ》《ヴェンディリオン三人衆》のアタッカーに加え、《自然の秩序》《大祖始》をサーチするエンジンを持ち合わせている。各カードのスペックは高く、バランス良くカードがとられているため、ビート、コントロール、コンボ全てに勝てるようデザインされている。

 高橋と夏目はレガシーに限らず、デックやピックについて一緒にプレイや意見を交わしている所をよくみる。デックだけでなく、プレイも癖も互いに知りつくした者同士の対戦、というわけだ。

 二人にマッチの相性を聞くと、“先手ゲー”と即座に言われた。先手後手でカードの強さが2倍違うらしいのだ。

 このマッチはコンボとクロック=パーミッションの対決であるため、夏目はクロックを用意し、用意した上で如何に守るか。また高橋側から言えば《オアリムの詠唱》をうまく使い、阻害出来るかどうかにかかっているだろう。

 二人はこれから始まる準々決勝の試合の予想ではなく、《魔力の乱れ》《呪文嵌め》《目くらまし》どれが強いかなどマジックトークが絶えない。本当にマジックが好きなんだと伝わってくる。この二人なら、きっといい試合をしてくれるに違いないだろう。


Game 1
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 高橋の手札:2《オアリムの詠唱》《渦まく知識》、フェッチランド、《裏切り者の都》を含む4土地。

 高橋は1ターン目の《渦まく知識》で戻すカードを相当に悩み、土地を戻すが、これが後々影響してくることとなる。

 ニッコリほほ笑む《大祖始》を涙ながらにライブラリーに送り、マリガンを宣言した夏目の初動は《貴族の教主》《渦まく知識》も手札に控え、上々のスタートといえるだろう。

 高橋は夏目のアップキープに《オアリムの詠唱》をキャストすることでターンをスキップさせる。

 3ターン目にドローすると高橋は「ミスった。」と呟いた。彼のドローしたカードは《モックス・ダイアモンド》《渦まく知識》で土地カードを残しておけば、《目くらまし》をケアしながら《むかつき》に繋げることが出来たのだ。

 4ターン目もドローすると小さく「クソっ。」とつぶやく。いよいよ台パンタイム突入だろうか、対戦相手に、ギャラリーに緊張が走る。

 誰かが望んだかどうかはわからないが、台パンタイムが来ることはなかった。5ターン目にドローした《水蓮の花びら》《オアリムの詠唱》から《冥府の教示者》経由で《むかつき》へと繋げる。《オアリムの詠唱》をカウンター出来なかった時点で夏目は《むかつき》死を祈るしかない。

 夏目の想いが届いたのだろうか、高橋の残り5点となるが、1マナ足りない。

 『1マナ足りない』

 若干泣きそうになりながら、覚悟を決め捲ったカードが《陰謀団の儀式》であり、一気にマナ面の問題は解決。後はパズルであり、高橋ミスするハズもない。

 順調にストームを稼ぎ《苦悶の触手》がキャストされると、夏目はクリーチャーに塗れた手札を公開し、投了の代わりとした。


夏目 0-1 高橋



Game 2

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 高橋の手札:《Tundra》《神秘の教示者》《冥府の教示者》《陰謀団の儀式》《暗黒の儀式》《水蓮の花びら》《恭しき沈黙》

 互いに初手で悩む。結局夏目はダブルマリガン、高橋はキープを宣言する。

 1本目を取られ、ダブルマリガンという泣きっ面に蜂状態であったが、《師範の占い独楽》でスタート。アップキープに見た先には《相殺》《Force of Will》の姿があり、青マナさえあればロック完成となるが残念ながら《森》しかなく《タルモゴイフ》を召喚するにとどまる。

 高橋は《師範の占い独楽》の見る能力にスタックしてドロー、さらに《神秘の教示者》と玄人芸を披露し、一連の行動によって《沈黙》を手に入れながら山札の上3枚を入れ替える。

 これで準備は整ったと《沈黙》《Force of Will》を打たせ、マナを増やす一連の動作から《むかつき》をサーチするために《冥府の教示者》をキャストする。

 夏目は不敵に笑い《師範の占い独楽》をタップすると、ライブラリーから《Force of Will》を公開。

 高橋の手札は0枚となっており、しかもあらゆるカードが墓地に置かれ《タルモゴイフ》がサイズアップし、2枚目まで追加されてしまう。

 《オアリムの詠唱》で時間を稼ごうとするが、逆転するには至らず、そのまま速やかにライフを削り切った。


夏目 1-1 高橋



Game 3


 高橋の手札:《冥府の教示者》《陰謀団の儀式》《恭しき沈黙》、フェッチランド、《裏切り者の都》を含む土地4枚。

 最速1ターンキルもあるため《Force of Will》がない夏目はキープするか悩むが、残り時間が5分と分かり、キープを宣言する。時間が切れた場合ライフ差による勝敗のため、俄かに二人のプレイが加速する。

 《渦まく知識》から2ターン目に《相殺》がキャストされるが、それにスタックして高橋はフェッチ起動し《Tropical Island》をサーチ。

 これによりメインで《恭しき沈黙》がキャスト出来る状態となり、キーカードである《相殺》を守るため、夏目は《Force of Will》で打ち消した。

 3マナ揃えるとすぐさま《ヴェンディリオン三人衆》をキャストし安全確認をすると、《タルモゴイフ》をキャストし、7点のクロックを用意。高橋の命を2ターンとする。

 高橋も《師範の占い独楽》にてライブラリー操作にはしる。《神秘の教示者》《渦まく知識》、兎に角《むかつき》を引きに行かなければならない。そのためにGame1と同様1マナ残しながら《オアリムの詠唱》をキャストし、ターンを稼ごうとする。

 その《オアリムの詠唱》《目くらまし》2枚で打ち消されると、高橋は右手を差し出した。


夏目 2-1 高橋