決勝戦: 夏目 拓哉(山梨) vs. 金澤 亮(埼玉)

晴れる屋

By Yusuke Osaka

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晴れる屋×龍王戦、参加者88名の頂点を決める戦いは、名実共にレガシーの強豪によって行われる。

金澤は去年マジックに復帰し、その復帰した大会のAMCで準優勝。その後にAMCチームレガシー準優勝、エターナルパーティー17位という好成績を収める。普段は《ゴブリンの放火砲》デッキを使用しており、地元では「三大放火砲使い」として有名らしい。大会に出る人のほぼ全員が《精神壊しの罠》をサイドボードに入れて金澤を対策していた時期もあったそうだ。

今回、デッキ選択理由として、「今日はカウンターデッキが多いと思ったので、放火砲ではなくカウンター系に強いマーフォークを選択しました」と答えている。ベスト8のデッキはカウンター系3人、ANT2人、Zoo2人、マーフォーク1人。金澤のデッキはコンボとカウンターに強いマーフォークなので、ベスト8で見ても7分の5に有利なデッキ選択であり、金澤のデッキ選択は当たりである。

決勝の対戦相手である夏目も、カウンターデッキだ。

夏目はLMCベスト8、PT京都レガシー選手権3位。大会出場数は50回を超えるというレガシーの古豪だ。

夏目のデッキはCTP。《相殺》《師範の占い独楽》《大祖始》、の3枚の名前からCounter Top ProgenitusでCTP。「《タルモゴイフ》だけではゲームが長くなりすぎてしまうので、《大祖始》《自然の秩序》を入れて素早くゲームを終わらせるようにしました」とのこと。事実、竜王戦の会場内で《師範の占い独楽》vs《師範の占い独楽》の対決では、《師範の占い独楽》起動時に考える時間が長くかかりすぎるために引き分けてしまうマッチを見かけた。

日常的にレガシーをプレイしている二人なだけに、デッキに論理的な選択理由がある。その環境理解度によって決勝まで勝ち上がってきた。龍王戦には多くのプロプレイヤーも参加しており、夏目、金澤共に数名のプロを倒して決勝まで勝ち上がってきている。二人は、レガシーしかプレイしない生粋のレガシープレイヤーである。頂点を決める戦いに二人が座っていることは、レガシーにはレガシーのLegacy(財産)があるということだ。

この試合で「龍王」の称号を手に入れるのはDOTCH?



Game 1


先攻は夏目。

先手の夏目は《貴族の教主》。金澤がキャストした《霊気の薬瓶》に夏目が《Force of Will》《大祖始》をリムーブ)を打つが、金澤が《目くらまし》によって《霊気の薬瓶》のを着地させる。決勝に相応しい1ターン目の熱い攻防だ。

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しかし、その後デュエルは一進一退の長期戦になり、夏目が《貴族の教主》2体の賛美を受けた《タルモゴイフ》でアタックを繰り返す。金澤もパワータフネスを強化するマーフォークの恩恵により、2体ブロックなどを駆使して、5/6の《タルモゴイフ》を順番に葬り去っていく。

4体目の《タルモゴイフ》が出た辺りで金澤がため息をこぼす。

独楽を駆使して、無駄なドローをしない夏目が毎ターンのようにクリーチャーを展開し、ついにチャンプブロックをするしかなくなってしまった金澤が敗北を喫する。途中で夏目がクリーチャーを用意したターンのどれかが欠けるだけでゲームの優位は金澤に傾いてしまうほど競ったゲームであった。

夏目のデッキには4枚の《タルモゴイフ》、4枚の《ロウクスの戦修道士》、1枚の《大祖始》の9枚がフィニッシャーとして入っているのだが、夏目はこのうち8枚を引いてゲームに勝利した。

夏目 「僕は引きが強いキャラなんですよー」

適切なタイミングで《師範の占い独楽》とフェッチランドを起動し、無駄なドローをしないための選択肢を選んだ夏目。

引きの強さは運であるが、正しいプレイをしたものが運を手にする資格を持つ。


夏目 1-0 金澤



Game 2


先攻は金澤。

金澤は1,2ターン目に連続して《霊気の薬瓶》のを場に出す。

夏目は《貴族の教主》《タルモゴイフ》と展開。

金澤が《霊気の薬瓶》にカウンターを1、2と乗せ、手札に2枚あった《呪い捕らえ》を1枚出す。返しの夏目は《霊気の薬瓶》2枚と《呪い捕らえ》を流すために《仕組まれた爆薬》をX=1で設置して即起動。金澤は対応して《アトランティスの王》《霊気の薬瓶》の効果で場に送り込む。更に夏目は場に《貴族の教主》を追加して、4/5になった《タルモゴイフ》でアタック。
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《霊気の薬瓶》を破壊されて動きがぎこちなくなってしまった金澤は、《呪い捕らえ》を2体場に追加して次のターンから《アトランティスの王》によって島渡りでの攻撃を計画する。

次のターンの攻撃前に《メロウの騎兵》を出して《呪い捕らえ》を3/3にしようとするが、フルタップでキャストしたために夏目の《目くらまし》によって妨害されてしまう。しかも夏目の場に出ていた土地が《Tropical Island》《森》《地平線の梢》であったために、《目くらまし》で戻された《Tropical Island》によって夏目の場に《島》が無くなり、呪い捕えが島渡りを失ってしまう。

夏目は2体目の《タルモゴイフ》《師範の占い独楽》《台所の嫌がらせ屋》と展開するが、金澤の《精神支配》によって攻撃を中断する。

しかし奪った《タルモゴイフ》が睨み合っているため、イマイチ攻められない金澤は《精神支配》の累加アップキープによってマナを拘束され、足かせによって少しずつ身動きが取れなくなっていく。夏目は3体目の《タルモゴイフ》を引いて、攻撃も可能な場にするが、《精神支配》の累加アップキープが払えなくなるのを待ってから、3体の《タルモゴイフ》で攻める戦術を取るために待つ。

夏目が待ち続ける間に《相殺》《師範の占い独楽》を揃えるのを尻目に、金澤は有効牌を引き込めない。

《精神支配》の累加アップキープコストが払えなくなり、夏目の場に3体の《タルモゴイフ》が並んだのを見て金澤が投了。


夏目 2-0 金澤


金澤三度目の準優勝。津G
金澤は【レガシー界のシルバーコレクター】の称号を手に入れた。

夏目 「引きの強さが勝因ですね」

2デュエルで7枚の《タルモゴイフ》を引いた夏目。

しかし、予選ラウンド7回戦、決勝ラウンド3回戦を勝ち抜いた者が運だけだったとは思えない。夏目の《師範の占い独楽》は非常に早く、正確だ。起動した次のターンの夏目の行動は前のターンから決められているかのようであった。《師範の占い独楽》を巧みに使うことにより、引きの強さを演出している。夏目のプレイの早さ、プレイの正確さというのは、レガシーという環境に深く精通していることを示している。スタンダードやリミテッドと違い、大きく環境が変わる事が無いため、50回という多くの大会に出場した経験が夏目の強さに繋がっている。

今年一人目の龍王はこれからもレガシーの世界で大きく羽ばたいていく。


Congratulations 夏目 拓哉!!