Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/10/18)
イントロダクション
ご存じでない方もいらっしゃると思いますが、僕の好きなフォーマットはモダンです。モダンのカードプールは僕がマジックを始めたころと一致していますし、それぞれのデッキがやろうとしていることが違っていてどれも最高なんです。
そしてモダンがお気に入りの理由はもうひとつあります。それは新しいセットが出ると、環境に変化が生まれることが圧倒的に多いことです。ラヴニカのギルドも例外ではなく、すでにモダンで活躍しているカードも多いですよね。例えば《暗殺者の戦利品》や《這い寄る恐怖》、そして今回の記事の主役である《弾けるドレイク》です。
《弾けるドレイク》を搭載した新型ブルームーン
『ラヴニカのギルド』がMagic Onlineで使えるようになって間もなく、僕の親友であるイーストン・ドウグラス/Easton Douglasがモダンの競技リーグで見事に5-0を達成しました。そのときに使ったデッキリストがこちらです。
1 《山》
3 《蒸気孔》
4 《沸騰する小湖》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《汚染された三角州》
1 《霧深い雨林》
3 《硫黄の滝》
-土地 (22)- 4 《瞬唱の魔道士》
4 《弾けるドレイク》
-クリーチャー (8)-
4 《思考掃き》
4 《稲妻》
2 《呪文嵌め》
2 《収穫の火》
2 《マナ漏出》
1 《否認》
1 《論理の結び目》
1 《削剥》
1 《イゼットの魔除け》
3 《電解》
2 《神々の憤怒》
1 《イオン化》
2 《血染めの月》
-呪文 (30)-
2 《払拭》
1 《渋面の溶岩使い》
1 《凶兆艦隊の向こう見ず》
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
1 《儀礼的拒否》
1 《汚損破》
1 《削剥》
1 《否認》
1 《神々の憤怒》
1 《血染めの月》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《イゼット副長、ラル》
-サイドボード (15)-
彼は長い間ブルームーンを定期的に使い続けてきてはいたのですが、このリストは彼が初めてブルームーンで《弾けるドレイク》を使ったリストに近いものになっています。彼は週に数回Twitchで配信をしていて、このデッキを使うときはほぼ毎試合配信してきました。デッキの改良を重ねつつも、まだ調整しているようですが、僕がこの記事を書いている時点での最新のリストがこちらになります。
このデッキは間違いなくさまざまな形で組めると思いますが、どのデッキを相手に想定して組むかで変わってくると思います。しかしここで注目していただきたいのは、4枚の《思考掃き》です。このカードがあることで、デッキの他のカードがうまく使えるようになっています。また、彼の配信をたくさん見ていて気付いたのですが、彼は可能な限り多くの《思考掃き》を引き込み、キャストするようにしていました。《思考掃き》があれば《弾けるドレイク》が1~2ターンクロックになる確率が高まるのはもちろん、《瞬唱の魔道士》で使い回すカードの選択肢を増やし、《論理の結び目》を《対抗呪文》にし、《収穫の火》を《終止》にしてくれます。
《精神を刻む者、ジェイス》との比較
《弾けるドレイク》は従来のブルームーンの《精神を刻む者、ジェイス》の枠に入っているようです。どちらも4マナで勝てるカードという点で共通しているのですが、お互いに長所と短所があります。
現在のモダンのデッキは、人間やスピリット、ドレッジのようにクリーチャーで盤面を埋め尽くして、戦闘ダメージで勝つものが多いのですが、このような相手には《弾けるドレイク》の方がはるかに優秀です。盤面に着地すれば相手の軍勢に相対し、相手のクリーチャーよりもサイズが大きくなることもあります。少なくとも相打ちに持ち込むことはできますし、仮に生き残ろうものなら1~2回の攻撃でゲームの幕を引いてしまう力があります。
消耗戦の要素がさらに強い対戦であれば、《精神を刻む者、ジェイス》に軍配が上がるように思われます。ですが、《弾けるドレイク》ではダメだというわけではないのです。仮に《致命的な一押し》や《流刑への道》といった軽い除去で対処されたとしても、カードアドバンテージは得ていて、それが結果的に消耗戦を制する要因になりますからね。
また、《精神を刻む者、ジェイス》は《稲妻》を使うデッキに対して扱いが難しい部分があります。つまり、《稲妻》のことを考えると、「0」の能力でカードアドバンテージを手に入れにいくか、「+2」の能力で忠誠値を5にして《稲妻》以外の回答を相手に要求させるのかという選択を迫られることが多いのです。
しかし、《弾けるドレイク》であれば《稲妻》を意に介しません。《論理の結び目》のような確定カウンターが手札にあれば相手に複数の除去を迫ることになり、相手がもし持っていなければすぐにでもゲームに勝てるでしょう。そういった意味でも、そもそも《弾けるドレイク》は消耗戦で頼りになるといえるかもしれないですね。
そのうち《謎めいた命令》を数枚入れる形が定番になるのではないかと僕は思っています。《弾けるドレイク》を守る確定カウンターとしても優秀ですし、相手のクリーチャーをタップさせる効果を使えばダメージレースをひっくり返すことも容易いはずです。
また、コンボデッキに対しては《精神を刻む者、ジェイス》よりも《弾けるドレイク》の方が概して強いはずです。なぜなら、《精神を刻む者、ジェイス》だと潤沢にカウンターを引いてこなくてはいけなかったり、相手にキーとなるカードを引かれないようにしなくてはいけないことが多いです。他方、《弾けるドレイク》は相手のライフを直接削りにいくことができるため、ゲームをいち早く終わらせることができるのです。これはトロンに対して特に顕著で、《弾けるドレイク》であればトロン側が《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をキャストしてこちらの勝ち手段を追放してしまう前にゲームを終わらせることができます。
《弾けるドレイク》のその他の長所
《弾けるドレイク》は一般的な墓地対策が効かないというのも特筆すべき点でしょう。個人的に、《瞬唱の魔道士》を使うデッキに対して《安らかなる眠り》を入れるのは好きではありません。2/1のクリーチャーというだけでも価値がまだありますし、《安らかなる眠り》を使ったプレイヤーはカードを1枚消費してしまっているからです。
しかし、イーストンの配信を見る限りでは、《虚空の力線》や《安らかなる眠り》を入れてくる相手が多いので、《弾けるドレイク》というメインの勝利条件に何の影響もないのは喜ばしいことです。《外科的摘出》を《血清の幻視》に対して打っているのも見たことがあります。そのせいで《弾けるドレイク》のパワーが余分に3もあがってしまうのに!
追放領域のカードでもパワーが上がるという効果は、自分自身のデッキのカードとの兼ね合いでも意味を持ってきます。追放されてもクロックが下がらないので、《論理の結び目》《収穫の火》《瞬唱の魔道士》といったカードを気兼ねなく使うことができ、「待機」中の《祖先の幻視》さえもパワーを上げてくれるのです。
まとめ
近い将来に《弾けるドレイク》がモダンでさらなる結果を残しても何の驚きもないと思います。活躍できるかどうかはブルームーンや青赤系のデッキがモダンでいい立ち位置にいられるかどうかにかかっていますが、間違いなく使ってみる価値のあるカードでしょう。モダンでは能動的である方が良いですし、《弾けるドレイク》は戦場に出ればアドバンテージが約束されるため、コントロールデッキのゲームプランともかみ合っているように思います。