こんにちは!
【前回の記事】では、今をときめくデッキをご覧いただきましたが、今回はそれに対抗するコンボデッキをご覧いただきたいと思います。
先週末にアメリカで行われた【StarCityGames.com Invitational】と、併催された「モダンオープン」では、そういったコンボデッキの活躍が顕著だったので、今回はそこから「土地絡みのコンボデッキ」をいくつかピックアップしたいと思います。
まずは「土地絡みのコンボデッキ」の特徴からご覧ください。
■ 土地絡みのコンボデッキの強みと弱み
「土地絡みのコンボデッキ」の代表格といえば、「赤緑トロン」と「アミュレット・ブルーム」です。辿る道こそ違えど、膨大なマナを力に変える点はどちらも同じですね。
ともに爆発力が魅力的なデッキですが、これらのデッキに共通しているのは、(1)フェア(非コンボ)デッキに強いこと、(2)明確な弱点があること、の2点です。
(1)フェアデッキに強いこと
「土地絡みのコンボデッキ」の強みは、フェアデッキと称される真っ当なデッキに相性が良いことです。その好例が「エルフ・カンパニー」や「アブザン・カンパニー」といった《集合した中隊》を軸にしたデッキであったり、「アブザン・ジャンク」や「ジャンド」のようなミッドレンジ系のデッキが挙げられます。
《集合した中隊》の入ったデッキは妨害手段が乏しく、ミッドレンジ系のデッキは妨害手段にこそ富んでいるものの、「土地への妨害手段」は限られているので、「赤緑トロン」や「アミュレット・ブルーム」にとって比較的組しやすいマッチアップと言えます。
また、フェアデッキで使用される機会の多い《漁る軟泥》や《未練ある魂》といったカードは、その他のマッチアップでは強力なものの、「土地絡みのコンボデッキ」に対しては無力に等しいカードですし、軸が違うからこそ得られる潜在的なアドバンテージは、この手のデッキを使う最大の動機となりえます。
(2)明確な弱点があること
その反面で弱点はというと、《大爆発の魔道士》や《血染めの月》のようなキラーカードが存在することです。
特に《血染めの月》はそれだけでゲームが終了してしまうほどのインパクトがあるので、対策は必須です。
そして、もうひとつの懸念材料が、モダン環境でポピュラーな「青赤《欠片の双子》コンボ」デッキに相性が悪いことです。
「青赤《欠片の双子》コンボ」は、コンボ成立ターンが速く、なおかつ《差し戻し》のような妨害手段も豊富なので、「土地絡みのコンボデッキ」にとって悪夢のようなマッチアップです。《詐欺師の総督》で土地をタップされるだけでも《Time Walk》になりかねませんし、極めつけはサイドボードに《血染めの月》が採用されていることです。
「青赤《欠片の双子》コンボ」デッキは、モダン環境で最高のコンボデッキと評されるほどに強力なデッキなので、それに相性が悪いという事実は、これらのデッキの使用を躊躇う原因となっています。
ただし、先週までのモダン環境は、《集合した中隊》を使用したデッキに大きな注目が集まっていました。つまるところ、「土地絡みのコンボデッキ」が勝つための舞台が整っていたというわけです。
■ 赤緑トロン
1 《森》 4 《燃え柳の木立ち》 4 《ウルザの塔》 4 《ウルザの魔力炉》 4 《ウルザの鉱山》 2 《幽霊街》 1 《ウギンの目》 -土地(20)- 1 《呪文滑り》 3 《ワームとぐろエンジン》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(5)- |
4 《古きものの活性》 4 《紅蓮地獄》 4 《森の占術》 4 《彩色の宝球》 4 《彩色の星》 4 《探検の地図》 2 《大祖始の遺産》 3 《忘却石》 4 《解放された者、カーン》 2 《精霊龍、ウギン》 -呪文(35)- |
4 《自然の要求》 3 《引き裂く流弾》 2 《スラーグ牙》 2 《世界のるつぼ》 2 《沸騰》 1 《大祖始の遺産》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
《ウルザの塔》・《ウルザの魔力炉》・《ウルザの鉱山》の3種類の土地を高速で揃え、そこから生み出される圧倒的なマナで《解放された者、カーン》や《精霊龍、ウギン》へとアクセスするデッキが「赤緑トロン」デッキです。
初見だと、どのくらいの速度で「ウルザランド」が揃うのか分かりづらいかと思いますが、《古きものの活性》と《森の占術》を駆使することで、遅くとも4ターン目には膨大なマナを確保できる構成になっています。
一度「ウルザランド」が揃ってしまえば、あとは《ワームとぐろエンジン》でも《解放された者、カーン》でも何でもござれ。その状況なら《マナ漏出》をケアすることも容易ですし、大抵のデッキはこういった大味なカードに立ち向かう術を持ちません。
また、これまでは《解放された者、カーン》だけだった「プレインズウォーカー」の枠に、《精霊龍、ウギン》が加わったことは、このデッキにとって朗報でした。
事前の予想では、このデッキにこれ以上重いカードが必要なのか疑問に思っていましたが、このカードは《集合した中隊》を使ったデッキを始めとした、フェアデッキ全般に非常に強力な1枚でした。《解放された者、カーン》ではどうしようもない状況であっても、《精霊龍、ウギン》ならばなんとかなることも多いですし、《精霊龍、ウギン》のおかげで有利なデッキに対して取りこぼしが少なくなった印象を受けています。
サイドボードは、このデッキの天敵である「青赤《欠片の双子》コンボ」対策を中心に構成されています。
特に《引き裂く流弾》は1マナ軽い《焼却》として、優秀な「青赤《欠片の双子》コンボ」対策カードとして、多くのデッキのサイドボードに搭載されています。
ほかには《大爆発の魔道士》対策を兼ねつつ、《幽霊街》との組み合わせでミラーマッチにも強くなる《世界のるつぼ》が印象的です。
この「赤緑トロン」は、先週末に開催された【StarCityGames.com Invitational】、「モダンオープン」、【GPTプラハ2015】の3つの大会を制しており、いかに良いポジションに付けていたかがよく分かる結果となりました。
これを受け、今後は《大爆発の魔道士》や《血染めの月》の増加が見込まれるため、それらをどう乗り越えるかに注目が集まります。
■ アミュレット・ブルーム
1 《森》 4 《シミックの成長室》 3 《グルールの芝地》 1 《ボロスの駐屯地》 1 《ゴルガリの腐敗農場》 1 《セレズニアの聖域》 4 《宝石鉱山》 1 《マナの合流点》 1 《氷の橋、天戸》 3 《トレイリア西部》 2 《魂の洞窟》 1 《カルニの庭》 1 《光輝の泉》 1 《処刑者の要塞》 1 《軍の要塞、サンホーム》 1 《ヴェズーヴァ》 -土地(27)- 2 《迷える探求者、梓》 4 《原始のタイタン》 1 《龍王ドロモカ》 -クリーチャー(7)- |
4 《召喚士の契約》 2 《否定の契約》 1 《殺戮の契約》 4 《古きものの活性》 4 《血清の幻視》 4 《花盛りの夏》 3 《集団意識》 4 《精力の護符》 -呪文(26)- |
3 《スラーグ牙》 3 《神聖の力線》 2 《原基の印章》 2 《紅蓮地獄》 1 《女王スズメバチ》 1 《虚空の杯》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《彩色の灯籠》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
「土地絡みのコンボデッキ」で欠かすことができないもうひとつのデッキが、「アミュレット・ブルーム」です。【プロツアー『運命再編』】で準優勝に輝いてからというもの、【グランプリ・バンクーバー2015】でも決勝ラウンドに2名を送り出したりと、枚挙に暇がありません。
最速だと2ターンキルも可能なこのデッキは、様々なデッキがひしめき合うモダン環境でも、屈指のスピードを持つデッキとして知られています。
今回の【StarCityGames.com Invitational】でもその勢いは留まることを知らず、【7勝1敗以上】に4名が名を連ね、勝ち組の一角として大きな足跡を残しました。
このデッキと前述の「赤緑トロン」を比較してみると、《忘却石》や《解放された者、カーン》のような対戦相手に干渉する手段をほとんど採用していないこともあって、「アミュレット・ブルーム」の方が速度に長けています。
そういった妨害手段と引き換えに得たその速度は、「赤緑トロン」との対戦で何よりも大きな武器となります。
「赤緑トロン」のミラーマッチは、先に《解放された者、カーン》を出せる都合でどうしても先行のプレイヤーが有利になりやすいので、「土地絡みのコンボデッキ」対決を意識するのであればこちらの「アミュレット・ブルーム」がお勧めです。
このリストは、通常は1枚だけ採用されることが多い《魂の洞窟》が2枚に増量されていたり、《龍王ドロモカ》が採用されていたりと、青いデッキを意識した造りが目を引きます。
こういったカードの有無は《秘密を掘り下げる者》の入ったデッキと対峙する際に重要なので、カウンター呪文を意識するのであれば、ぜひこのリストを参考にしてみてください。
また、サイドボードに採用された《彩色の灯籠》は、《血染めの月》対策として要注目のカードです。
これさえあれば、《血染めの月》の影響下でも土地から好きな色のマナを出すことができるので、《原始のタイタン》や《集団意識》で勝利することができます。これまで通り《白鳥の歌》や《原基の印章》で対策するのもいいですが、これらのカードは《血染めの月》が着地してしまったあとに何もしないという大きな弱点がありました。
《白鳥の歌》や《原基の印章》には、《欠片の双子》などにも対処できるというメリットもありますが、こと《血染めの月》に関しては、《彩色の灯籠》に勝る対策手段はないのではないかと思います。
さて、ここまでは先週末に大活躍を見せてくれた2種類のデッキをご覧いただきましたが、続いては、「土地絡みのコンボデッキ」の天敵である「《欠片の双子》コンボ」デッキをチェックしてみましょう。
■ グリクシス(青赤黒)・ツイン
4 《島》 1 《山》 1 《沼》 2 《蒸気孔》 2 《湿った墓》 1 《血の墓所》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 4 《硫黄の滝》 -土地(23)- 4 《瞬唱の魔道士》 4 《詐欺師の総督》 2 《やっかい児》 2 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(12)- |
4 《血清の幻視》 4 《稲妻》 3 《コジレックの審問》 1 《呪文嵌め》 4 《差し戻し》 2 《終止》 2 《コラガンの命令》 1 《謎めいた命令》 4 《欠片の双子》 -呪文(25)- |
2 《呪文滑り》 2 《誘惑蒔き》 2 《払拭》 2 《紅蓮地獄》 2 《血染めの月》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《呪文嵌め》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《四肢切断》 1 《コラガンの命令》 -サイドボード(15)- |
モダン界最高のコンボデッキとして、長きにわたってモダンを牽引する「《欠片の双子》コンボ」デッキ。これまでにも、コンボに特化した形や、《タルモゴイフ》を搭載して殴る形など、様々なバリエーションが混在していましたが、ここ数ヶ月で「タッチ黒」をしたリストが数を増やしてきています。
黒をタッチする最大の理由は、通称バナナさんこと《黄金牙、タシグル》の存在です。
《黄金牙、タシグル》は、その単体性能もさることながら、「《欠片の双子》コンボ」デッキが苦手としている《突然の衰微》が効かない点が秀逸です。
これまでは《ミジウムの外皮》や《巨森の蔦》で強引に乗り越えたり、《誘惑蒔き》や《嵐の神、ケラノス》といった4マナ以上のカードで対抗する手法が一般的でしたが、《黄金牙、タシグル》は軽さ、サイズともに申し分のない完璧な《突然の衰微》対策として活躍してくれます。
《誘惑蒔き》や《嵐の神、ケラノス》が採用され始めてからというもの、《突然の衰微》だけで勝てるほど簡単なマッチアップではなくなりましたが、《黄金牙、タシグル》が入ったことで、その傾向はより顕著になったと思います。
それでもなお、「黒緑」系のデッキが最も当たりたくないデッキであることに変わりはありませんが、「黒緑」側も以前とは違うゲーム展開、サイドボードプランが必要になるかもしれません。
最近はカウンター呪文を多用して「《欠片の双子》コンボ」を無理やり通す戦略は少なくなっているので、カウンター呪文に強い《突然の衰微》を優先するのではなく、《黄金牙、タシグル》も除去できる《流刑への道》や《終止》を増量するといいでしょう。
■ グリクシス(青赤黒)・コントロール
6 《島》 1 《山》 1 《沼》 2 《蒸気孔》 2 《湿った墓》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 1 《溢れかえる岸辺》 1 《アカデミーの廃墟》 -土地(22)- 4 《瞬唱の魔道士》 1 《呪文滑り》 1 《嵐の神、ケラノス》 3 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(9)- |
4 《稲妻》 4 《血清の幻視》 3 《思考掃き》 3 《呪文嵌め》 2 《剥奪》 2 《喉首狙い》 2 《マナ漏出》 2 《コラガンの命令》 1 《四肢切断》 2 《謎めいた命令》 2 《血染めの月》 2 《ヴィダルケンの枷》 -呪文(29)- |
3 《払拭》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《仕組まれた爆薬》 1 《呪文滑り》 1 《嵐の神、ケラノス》 1 《否認》 1 《神々の憤怒》 1 《血染めの月》 1 《対抗変転》 1 《思考を築く者、ジェイス》 1 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
最後を飾るのは、ここのところ活躍が目立ってきた「グリクシス・コントロール」です。先ほどの「アミュレット・ブルーム」と同様に、こちらも【7勝1敗以上】に4名ものプレイヤーを送り込んでいます。
イメージとしては、【前回のグリクシス・デルバー】から《秘密を掘り下げる者》と《若き紅蓮術士》を抜いてしまい、コントロール要素を増やしたようなデッキです。
このアーキタイプの長所としては、《瞬唱の魔道士》と《コラガンの命令》の組み合わせもあり、長期戦に強くできていることです。
この2種が稼ぎ出すアドバンテージ量は凄まじいので、フェアデッキの中でも長期戦に長けたデッキがこの「グリクシス・コントロール」ではないかと思います。
メインボードにカウンター呪文と《血染めの月》が採用されているので、他のミッドレンジ系のデッキと比べて1本目から「土地絡みのコンボデッキ」に耐性がある点も加点対象と言えるでしょう。
また、《血染めの月》と同じく、特定のマッチアップで一撃必殺となりえる《ヴィダルケンの枷》の採用も、このデッキの特徴のひとつです。
このカードがいかに強力無比であるかは、みなさんもすでにご存知かと思います。ただし、《ヴィダルケンの枷》は、《コラガンの命令》の今後の活躍次第では、他のカードへの変更を余儀なくされる可能性もあるでしょう。
同デッキを使用し、同じく7勝1敗を記録したGerard Fabianoは、《コラガンの命令》の存在を加味してか《ヴィダルケンの枷》を抜いたリストで結果を残しています。
6 《島》 1 《山》 1 《沼》 2 《蒸気孔》 2 《湿った墓》 1 《血の墓所》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 1 《滝の断崖》 -土地(22)- 4 《瞬唱の魔道士》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《嵐の神、ケラノス》 3 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(10)- |
4 《稲妻》 4 《血清の幻視》 3 《コジレックの審問》 2 《呪文嵌め》 2 《思考掃き》 2 《マナ漏出》 1 《差し戻し》 2 《コラガンの命令》 1 《電解》 2 《謎めいた命令》 3 《残忍な切断》 2 《血染めの月》 -呪文(28)- |
3 《払拭》 2 《呪文滑り》 2 《神々の憤怒》 2 《思考を築く者、ジェイス》 1 《オリヴィア・ヴォルダーレン》 1 《引き裂く流弾》 1 《悪夢の織り手、アショク》 1 《血染めの月》 1 《対抗変転》 1 《殺戮》 -サイドボード(15)- |
こちらはメインボードにアーティファクトが含まれていないリストです。《ヴィダルケンの枷》は「グリクシス・コントロール」の固定パーツのような扱いを受けていましたが、《コラガンの命令》や、サイド後の《古えの遺恨》などで割られるとそのままゲームに負けてしまうことも多いので、こういった《ヴィダルケンの枷》を入れないアプローチも十分に検討に値すると思います。
Gerard Fabianoといえば、「プレインズウォーカー」を投入した革新的な【スゥルタイ・コントロール】での栄冠が記憶に新しいですが、このデッキのサイドボードにも《悪夢の織り手、アショク》や《思考を築く者、ジェイス》が搭載されています。
スタンダードとは違い、モダンでは《英雄の破滅》のように効率良く「プレインズウォーカー」に触れるカードはほとんど使われない傾向にあるので、モダン環境はスタンダード以上に「プレインズウォーカー」が活躍しやすいフィールドになっています。
《思考を築く者、ジェイス》のように、仮に破壊されてもアドバンテージを獲得できるものであったり、《未練ある魂》など特定のカードを封殺できるほどのカードパワーがあればなお良しですね。「プレインズウォーカー」は今後もバンバン増えていくでしょうし、スタンダードだけではなく、モダン視点で見てみると新たな発見があるかもしれません。
■ おわりに
「コガモダン vol.10」は以上です。「土地絡みのコンボデッキ」の活躍が印象的な1週間でしたが、出る杭は打たれるのが世の常なので、来週以降も同様の活躍ができるかどうかに注目です。
6月20日(土)には【第4期モダン神挑戦者決定戦】が開催されますので、次回はその結果をチェックしたいと思います!
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
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