グランプリの楽しみは、メインイベントだけではない。
2日目にはスタンダード、モダン、レガシー、シールドなどなど、あらゆるフォーマットでサイドイベントが開催され、本戦もかくやという盛況ぶりを誇っている。
その中でも、参加者合計300人以上を集めた大会があった。
その名も熊猫杯。
今回のグランプリの主催であるホビーステーションの看板による、2日目の目玉イベントだ(ちなみに名前の由来はホビステのマスコットキャラがパンダであることから)。
というわけでここからは、参加者141名を集めた熊猫杯スタンダードのフィーチャーマッチをお送りしよう。
新セット「ニクスへの旅」の発売も迫っている中、環境終盤のスタンダードで最後の花火を打ち上げるのは果たして誰になるのか。
1回戦目から早速フィーチャーエリアに登場したのは、プロツアートップ4経験もある関東の強豪、永井。
だが、永井ならたとえ同じく2日目に開催しているスーパーサンデーシリーズ予選の方に出場しても突破できそうなものだ。
そんな疑問をぶつけてみると、
永井 「実はもうスーパーサンデーシリーズの権利を持ってまして」
そう、永井は既にGPクアラルンプールでスーパーサンデーシリーズの予選を突破していたのだ。
この男、やはり強い。永井にかかれば、この熊猫杯もあっさり優勝してしまうかもしれない。
もはや風格すら感じられる穏やかな佇まいからは、強者にふさわしい余裕が見てとれる。
一方、そんな永井に対するは東京の岩永。
普段マジックしている場所はどこかと尋ねれば、晴れる屋やPWC、五竜杯などの関東の草の根大会で、とのこと。
あまりフィーチャー慣れしていない雰囲気が初々しいが、シャッフルを始めた永井の真剣な表情を見て、岩永もスイッチを切り替えた。
岩永 耕平
Game 1
先手は永井。《変わり谷》含みの手札から《血の墓所》を置いたところからして、先日のGPフェニックスで活躍した黒単信心タッチ赤を早速使用しているようだ。
そして岩永が《悪意の神殿》を置いてターンを返すと、2ターン目に《群れネズミ》を送り出す。
……と、ここで岩永、2枚目の土地もタップインの《奔放の神殿》で、このネズミが生き残ってしまう。
はたして、『一匹見たら百匹いると思え』という言い回しさながらに。
ジャンドモンスターの岩永はこの小さな、しかし無数に増殖した『モンスター』に全身くまなく齧り尽されてしまった。
永井 1-0 岩永
Game 2
《血の墓所》2枚に《草むした墓》をタップインと、再びゆっくりとした立ち上がりの岩永。
対する永井のファーストアクションは《生命散らしのゾンビ》。《魔女跡追い》《荒野の収穫者》《嵐の息吹のドラゴン》《戦慄掘り》《見えざる者、ヴラスカ》《森》という岩永の手札内容から、《荒野の収穫者》を追放する。
岩永も返しでようやく《魔女跡追い》を出すが、永井は岩永の手札に5枚目の土地がないと見るや、《地下世界の人脈》で手札を拡充しにかかる。
ここで岩永の5枚目の土地は……《奔放の神殿》。《嵐の息吹のドラゴン》を走らせることが、できない。
仕方なく《生命散らしのゾンビ》を《戦慄掘り》し、続く《冒涜の悪魔》も《見えざる者、ヴラスカ》で対処するが、《地下世界の人脈》が淡々とアドバンテージ差を広げていく。
《肉貪り》からの《変わり谷》アタックで《見えざる者、ヴラスカ》を失い、2体目の《荒野の収穫者》も《英雄の破滅》されてしまった岩永。わずかな希望を込めて《原始の報奨》を送り出す。
確かに、永井のデッキは黒と赤でエンチャントに触ることはできない。
永井 守
だが、十分なマナから再び《群れネズミ》が降臨すると、このエンチャントがもたらす「報奨」をもってしても全くリソースが足りていない。
まさしくネズミ算式に岩永のライフが蝕まれていき。
膨大な「信心」を獲得した《アスフォデルの灰色商人》が、岩永を介錯した。
永井 2-0 岩永