高橋優太のGPコペンハーゲン2015・GPシンガポール2015レポート

高橋 優太


これまでのあらすじ

【GP京都優勝】により、プロポイント14点となったタカハシ。
プロレベル・シルバー(20点)を目指すためにGP上海/GP千葉と続けて参加するものの、あえなく初日落ち。
プロツアー『マジック・オリジン』の権利は持っているため、プロポイントのノルマは3点。トップ16を目指して、モダンGP2連戦を決意したのだった。

(※編注:プロツアーに参加すると、成績に関わらず最低でも3点のプロポイントがもらえます)



■ 6/19-21 GPコペンハーゲン


モダン環境のメタゲームを考えるに当たって、まずデッキをカテゴライズすることにした。



1・緑黒+α


コジレックの審問タルモゴイフヴェールのリリアナ


手札破壊+《タルモゴイフ》《ヴェールのリリアナ》がメインの戦略。除去のために赤や白を足したものが一般的。

青赤に強く、妨害しにくい土地コンボと、アドバンテージ源の多い《集合した中隊》デッキに弱い。



2・青赤


瞬唱の魔道士血清の幻視稲妻


《瞬唱の魔道士》《血清の幻視》《稲妻》がメインの戦略。《稲妻》連打というのがモダン環境定義であり、中途半端なタフネス3以下のクリーチャーデッキが存在できない。

瞬唱パッケージ以外のデッキの自由度が高く、《欠片の双子》/《秘密を掘り下げる者》/グリクシスなど様々なバージョンがある。

ハンデスも除去も刺さるデッキなため緑黒に弱い。こちらの妨害手段が多く、相手の妨害手段が少ないため、土地コンボとオールインに強い。



3・オールイン


頭蓋囲いゴブリンの先達ぬめるボーグル


デッキを1つの要素に特化させることで爆発的な展開力を持つ。親和/感染/バーン/オーラなど。コンボデッキに近く、メイン戦の勝率が高い。

しかし1つの要素に特化させているため、どのデッキも「対処できなければ負け」の致命的なサイドカードがあるのが特徴。(《石のような静寂》《呪文滑り》《神聖の力線》など)

土地コンボに強く、青赤に弱い。



4・土地コンボ


ウルザの塔精力の護符風景の変容


名前の通り、多くの土地を並べることがアドバンテージや勝ち手段になるデッキ。ウルザトロン/アミュレットブルーム/《風景の変容》など。

モダンの妨害はクリーチャー除去に寄っているため、そこを無視できるのが強み。

相手への妨害手段が乏しいため青赤とオールインに弱いが、緑黒と《集合した中隊》デッキには土地を妨害されにくいため強い。



5・《集合した中隊》デッキ


集合した中隊


エルフ/アブザン/Zooなど、《集合した中隊》を軸にした、クリーチャー同士のシナジーでアドバンテージを生むデッキ。《集合した中隊》《永遠の証人》で長期戦に強い。

緑黒と青赤に強く、オールインと土地コンボに弱い。




○○に強い/弱いはサイドボードの取り方で少し変動するが、基本的にはこの5種類でメタゲームが成り立っていると分析した。

最初は【ジャンドを使って大会に参加】
環境はクリーチャー除去に寄っており、《稲妻》《電解》《コラガンの命令》でアドバンテージを取られてしまうようなデッキ構築はしたくないな、というのがジャンドの感想。

また《血染めの月》で負けたゲームもあった。《血染めの月》もモダンを定義する一枚であり、なるべく基本地形の多いデッキを使いたい。


血染めの月


クリーチャー除去に強く、《血染めの月》に強いデッキはないものか?

そう思い悩んでいた中で、【6/7のSCGオープンの青トロン】が目に留まる。
土地コンボなためジャンドに強く、カウンターのおかげで双子と赤緑トロンに強く、《血染めの月》を出されても青コンとして振る舞えるデッキ。

これだ!と思い、MOで調整。

揃える速さを上げるために《トレイリア西部》は4枚。《島》《島》トロンで3ターン目変成は遅いので、速度を上げるため+色マナ確保で《旅人のガラクタ》も採用。

《白金の天使》はオールイン用にサイドから追加、中隊用に《不気味な戯れ児》など、細部を変更した。


白金の天使不気味な戯れ児


オールインデッキには弱いものの、他に対して非常に勝率が良かったので、GPコペンハーゲンに持って行くことを決意。



高橋 優太「青トロン」
グランプリ・コペンハーゲン2015

7 《島》
1 《雲の宮殿、朧宮》
4 《トレイリア西部》
4 《ウルザの塔》
4 《ウルザの鉱山》
4 《ウルザの魔力炉》
1 《ウギンの目》

-土地(25)-

1 《ワームとぐろエンジン》
1 《白金の天使》
1 《不気味な戯れ児》
1 《隔離するタイタン》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(5)-
4 《卑下》
3 《差し戻し》
4 《知識の渇望》
4 《探検の地図》
4 《旅人のガラクタ》
4 《忘却石》
4 《解放された者、カーン》
3 《精霊龍、ウギン》

-呪文(30)-
3 《はらわた撃ち》
2 《呪文滑り》
2 《エレンドラ谷の大魔導師》
2 《白金の天使》
2 《虚空の杯》
2 《否認》
1 《不気味な戯れ児》
1 《大祖始の遺産》

-サイドボード(15)-
hareruya



ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 1BYE
Round 2BYE
Round 3青白コントロール 〇×〇
Round 4グリクシスデルバー ××
Round 5バーン 〇〇
Round 6親和 〇×〇
Round 7アミュレットブルーム ××
Round 8バーン 〇〇
Round 9アブザン 〇××


初日落ち。

グリクシスデルバーにはデルバーに12点受けてあっさり負け、アミュレットは相手の3ターン目《魂の洞窟》《原始のタイタン》により負け。
オールインには運よく先手でブン回ったため勝てたが、アブザンには相手が《聖遺の騎士》《幽霊街》4枚の構成で全く揃えられずに負け。


聖遺の騎士幽霊街


回しながら、自分のデッキ構築に多くの疑問が残った。(デルバーに12点受けたり、《魂の洞窟》なんて想像できる範囲の負け方で、なぜ対抗手段を入れなかったのかと)

翌日もサイドイベントで青トロンを回したが、ジャンド/双子/トロンには圧勝、感染/親和に圧敗と、相性差の激しいデッキであることを再認識する結果となった。

色々なマッチアップの相性を改善するために、《併合》/《撤廃》/《精神隷属器》など思いつく限りのカードを試したが、どれもピンとこない。


併合撤廃精神隷属器


《解放された者、カーン》《精霊龍、ウギン》もオールインデッキに対しては滅法弱く、必殺技で勝つことができない相手がいるのはだめだ。


解放された者、カーン精霊龍、ウギン


相性差ですべてが決まってしまうようなデッキではなく、プレイである程度相性差を緩和できるようなデッキを使うべきだ。

帰りの飛行機でデッキを悩んでいると、隣の席から天の声が……



天の声(井川): 「私のタルモツインを使いなさい。不利なのは緑黒だけで、あとは全てに5分以上の良いデッキだよ」








二度と使うことのないようにMOで青トロンパーツを売却し、早速タルモツインを作成。
天の声を頼りにデッキを微調整し、驚くほど勝率が良かったため、GPシンガポールに持って行くことを決意。
練習時間が全く足りなかったため、睡眠時間を削ってMOに費やした。



■ 6/26-28 GPシンガポール




高橋 優太「タルモツイン」
グランプリ・シンガポール2015

4 《島》
1 《山》
1 《森》
2 《蒸気孔》
1 《繁殖池》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《沸騰する小湖》
4 《霧深い雨林》
1 《樹木茂る山麓》
3 《硫黄の滝》
1 《僻地の灯台》

-土地(23)-

4 《瞬唱の魔道士》
4 《タルモゴイフ》
4 《詐欺師の総督》
2 《高原の狩りの達人》

-クリーチャー(14)-
4 《血清の幻視》
4 《稲妻》
2 《呪文貫き》
2 《呪文嵌め》
4 《差し戻し》
1 《焙り焼き》
2 《謎めいた命令》
4 《欠片の双子》

-呪文(23)-
2 《渋面の溶岩使い》
2 《嵐の神、ケラノス》
2 《払拭》
2 《否認》
2 《古えの遺恨》
2 《血染めの月》
1 《呪文滑り》
1 《スラーグ牙》
1 《焙り焼き》

-サイドボード(15)-
hareruya



■ 初日

ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 1BYE
Round 2BYE
Round 3グリクシスデルバー 〇〇
Round 4グリクシスツイン 〇××
Round 5赤緑トロン ×〇〇
Round 6アブザンカンパニー 〇〇
Round 7グリクシスコントロール 〇×〇
Round 8バーン 〇〇
Round 9エルフカンパニー 〇〇


8-1で初日を通過。



■ 2日目

ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 10赤緑トロン 〇〇
Round 11親和 〇〇
Round 12青赤ツイン 〇×〇
Round 13ジャンド ×〇〇
Round 14ID
Round 15ID


4-0-2でトップ8確定。

13回戦目の対ジャンド(Reid Duke)が非常に熱いゲーム展開で、この大会で一番記憶に残るものだった。

対戦相手 (ジャンド)
ライフ:5
手札:なし
場:
《血染めのぬかるみ》
《森》
《沼》
《黒割れの崖》
《黒割れの崖》

《タルモゴイフ》(6/7状態、タップ)

あなた (タルモツイン)
ライフ:10
手札:《否認》《血染めの月》
場:
《島》
《森》
《硫黄の滝》
《踏み鳴らされる地》
《僻地の灯台》

《高原の荒廃者/Ravager of the Fells》(タップ)
《嵐の神、ケラノス》



現在は自分のターンの第2メインフェイズ。

この場面で自分の《血染めの月》《否認》を撃つ。相手のアップキープに《高原の狩りの達人》に変身して狼が出る。(自ライフ10→12)
《タルモゴイフ》がアタック。相手が除去orクリーチャーでも《嵐の神、ケラノス》の3点本体で勝てるのでブロックせず。(自ライフ12→6)
第2メインで《黄金牙、タシグル》をプレイ。探査で墓地に残ったのは《殺戮の契約》と土地のみになる。

自分のターン、《嵐の神、ケラノス》の公開は《山》、追加ドローは《沸騰する小湖》
《僻地の灯台》を起動するも引いたのは《呪文嵌め》だったのでターン終了。

相手はこちらのターン終了時に、意を決したようにフェッチから《踏み鳴らされる地》ショックイン。(相手ライフ5→2)
《黄金牙、タシグル》起動→ソーサリーかクリーチャーなら《高原の狩りの達人》変身で勝ちの予定→めくれたのは土地2枚で《殺戮の契約》が戻る!


殺戮の契約


相手のアップキープ、《高原の狩りの達人》変身誘発にスタックで《殺戮の契約》。メインで《黄金牙、タシグル》を起動すると、今度は《漁る軟泥》がめくれてそれを手札に。
《タルモゴイフ》《黄金牙、タシグル》でアタック→《タルモゴイフ》を狼でブロック。(自ライフ6→2)

ラストターン、《嵐の神、ケラノス》の公開は……



稲妻


《稲妻》


今までのマジック人生ベスト5に入る楽しい試合だった。
強い相手と戦うことが生き甲斐だ!


■ 決勝

ラウンド 対戦デッキ 勝敗
【準々決勝】親和 ××


決勝は特にいいところもなく1没してしまったものの、6位でプロポイント4点ゲット。
プロツアー『戦乱のゼンディカー』の権利+プロクラブ・シルバー到達!
目標達成!!

デッキを教えてくれた井川さんに感謝。



次回は『マジック・オリジン』入りのスタンダードを考えて行こうと思う。
ではまた。

高橋優太


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事