企画の経緯については【vol.1】を参照願いたい。というわけで、この記事はモダンのPPTQを優勝した各アーキタイプの達人たちにインタビューし、そのデッキについて教えてもらう、というものだ。
早速始めていこう。第4回目となる今回は、【双子】を紹介する。
ゲストはこの方だ。
フェイズ新瑞橋店さんのPPTQ 2016 #1
優勝は イシグロ サトシ さんに決定しました。おめでとうございます。
— Magicians' Place (@MTG758) 2015, 6月 14
伊藤 「というわけで、石黒 聡志(愛知)さんにお話を伺いたいと思います」
石黒 「よろしくお願いします」
伊藤 「石黒さんは【プロツアー『ラヴニカへの回帰』】の出場経験があるということで、今の目標はプロツアー出場ということになるんでしょうか?」
石黒 「そうですね。プロツアーが終わってからも、まずは次のプロツアーの権利を取ることを目標にしていましたが、なかなか届かずにいるのが現状です」
伊藤 「RPTQでの活躍、期待してます。それでは、石黒さんがPPTQで使用した双子というデッキについてお話を伺いたいと思います」
■ 双子とは?
石黒 「以下が双子の一般的なレシピになります」
4 《島》 1 《山》 3 《蒸気孔》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《沸騰する小湖》 4 《霧深い雨林》 3 《硫黄の滝》 1 《魂の洞窟》 2 《僻地の灯台》 -土地(23)- 4 《瞬唱の魔道士》 4 《詐欺師の総督》 2 《やっかい児》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(11)- |
4 《稲妻》 4 《血清の幻視》 2 《払拭》 1 《のぞき見》 1 《呪文嵌め》 1 《呪文貫き》 4 《差し戻し》 1 《焙り焼き》 2 《電解》 2 《謎めいた命令》 4 《欠片の双子》 -呪文(26)- |
2 《嵐の神、ケラノス》 2 《神々の憤怒》 2 《血染めの月》 1 《渋面の溶岩使い》 1 《呪文滑り》 1 《ザルファーの魔道士、テフェリー》 1 《自然の要求》 1 《引き裂く流弾》 1 《焙り焼き》 1 《否認》 1 《古えの遺恨》 1 《思考を築く者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
伊藤 「こうしてみると、モダンというフォーマットが始まった【プロツアー・フィラデルフィア11】の頃と比べて、【大分デッキが変わっていってます】よね。《詐欺師の総督》/《やっかい児》と《欠片の双子》とのコンボデッキという点は一緒ですが」
石黒 「そうですね。一番の違いは、あのときは『イニストラード』が発売する前で《瞬唱の魔道士》が入っていなかったのですが、今考えると信じられないくらい、双子における《瞬唱の魔道士》は極めて重要なパーツになっていると思います」
伊藤 「なぜ双子デッキの《瞬唱の魔道士》が重要なのでしょうか?」
石黒 「初期のモダンはオールイン系のデッキがほとんどだったのでコンボ自体への妨害が少なく、双子側もコンボに特化しているだけでよかったのですが、近年のモダンは妨害手段がそれなりに入っているデッキが増えてきたので、コンボ特化型だと厳しくなってきた、というのが大きいですね」
伊藤 「確かに今の双子は《稲妻》を《瞬唱の魔道士》で使いまわすことによるダメージプランで勝つこともよくありますからね」
石黒 「妨害手段を積んだフェアなデッキに対しては、《瞬唱の魔道士》でアドバンテージをとりながらそれなりに勝負ができるようになっているのが最近の双子の強みですね」
伊藤 「最近の双子といえば、メインに《魂の洞窟》、サイドに《ザルファーの魔道士、テフェリー》というのはここ最近のトレンドなんでしょうか」
石黒 「そうですね。《魂の洞窟》は同型やグリクシスコントロールなどのマッチで《瞬唱の魔道士》や《詐欺師の総督》を安全に通すことができますし、《ザルファーの魔道士、テフェリー》は通ったら相手のカードの大半を無効化することができます。ただ《魂の洞窟》はマナベースに負担をかけているので、個人的にはあまり好きではないですね。《謎めいた命令》も入っているデッキなので、リスクとリターンが釣り合ってない気がします」
伊藤 「『タルキール龍紀伝』の《焙り焼き》もすっかり1枚差しで定着しましたよね」
石黒 「2マナソーサリーというのは隙が大きくて本当は入れたくないのですが、青赤という色の都合上、後腐れなくクリーチャーを対処できるカードは基本的に火力に限られますが、《タルモゴイフ》や《黄金牙、タシグル》といった近年の軽くてタフなクリーチャーを捌ける火力となると、これくらいしかないので仕方なく採用している感じですね」
伊藤 「このレシピだとサイドに《古えの遺恨》と《自然の要求》が散らしてありますが、これはどういった趣旨なんでしょう?」
石黒 「《抑制の場》や《亡霊の牢獄》など、コンボを阻害するエンチャントをケアする趣旨だと思います。親和相手はもともと有利なので、《古えの遺恨》を減らしても構わないという判断なのでしょう」
■ 一般的なレシピとの違い
石黒 「こちらが、PPTQを抜けた後に少し調整した、僕が現在使用しているリストになります」
5 《島》 1 《森》 1 《山》 2 《蒸気孔》 1 《繁殖池》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《沸騰する小湖》 4 《霧深い雨林》 1 《樹木茂る山麓》 2 《硫黄の滝》 1 《僻地の灯台》 -土地(23)- 4 《タルモゴイフ》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《詐欺師の総督》 2 《高原の狩りの達人》 -クリーチャー(14)- |
4 《血清の幻視》 4 《稲妻》 3 《呪文嵌め》 1 《払拭》 3 《差し戻し》 2 《マナ漏出》 1 《電解》 2 《謎めいた命令》 3 《欠片の双子》 -呪文(24)- |
3 《血染めの月》 2 《スラーグ牙》 2 《古えの遺恨》 2 《部族養い》 2 《紅蓮地獄》 2 《仕組まれた爆薬》 1 《払拭》 1 《剥奪》 -サイドボード(15)- |
伊藤 「石黒さんのこの形は『タルモツイン』と呼ばれる、双子に《タルモゴイフ》をタッチした形になりますが、そもそも正直このデッキがなぜモダンで存在しているのか、というかモダンにおいてこのデッキだけが持っている独自のポジションは何なのかよくわからないんですよね」
石黒 「そんなに難しく考えずとも、《瞬唱の魔道士》を入れてダメージプランを強めた形の延長線上と捉えればいいと思いますよ」
伊藤 「なるほど。『タルモツイン』は《タルモゴイフ》を入れることで双子のサブプランであるダメージプランをより強化した形なんですね」
石黒 「どちらかといえば、コンボをサブプランにした形と言ってもいいかもしれません。まわしている側の気持ちとしては、青緑赤のグッドスタッフに揃ったら勝ちの双子コンボが入っている、というくらいの感覚ですからね」
伊藤 「デッキの分類は理解できたのですが、具体的に普通の双子を『タルモツイン』にすることでモダンにおいてどのようなメリットやデメリットが生じるのでしょうか?」
石黒 「まず《タルモゴイフ》を入れることでバーンに強くなるというのがあります。今のバーンは序盤はクリーチャーで打点を稼いでくるところ、純正双子だと《稲妻》を引かない限り盤面のクロックが捌けず、余計なダメージをもらってしまうことが多かったのですが、《タルモゴイフ》がいると序盤の受けが安定します」
伊藤 「バーンはモダンにおいては親和と同じくらい定番のデッキですから、それはありがたいメリットですね」
石黒 「また双子同型や緑黒系/グリクシスなどのフェアデッキ相手にも《タルモゴイフ》は活躍します。これらのデッキ相手はそもそも双子コンボ自体の信頼性が落ちるのでダメージプランをとることが多く、《タルモゴイフ》がいた方が攻めやすいですね」
伊藤 「そういえば《瞬唱の魔道士》が入った経緯も『双子コンボの単純な信頼性が下がった』というものでしたね。となると、双子コンボが妨害されやすいマッチではなおさら《タルモゴイフ》の必要性が際立つわけですね」
石黒 「そうですね。なので双子コンボが妨害されやすい今のモダンでは純正よりも『タルモツイン』の方がオススメできると僕は思います」
伊藤 「ですが、もちろんデメリットもあるわけですよね?」
石黒 「ですね。バニラクリーチャーを入れている分、《むかつき》などのオールインコンボやトロン、アミュレットブルームといった土地系コンボへの耐性は下がることになります。なので、サイドはそれらのデッキに勝てるよう、《血染めの月》を3枚と多めにとっています」
伊藤 「あとは特徴的なのは《マナ漏出》の採用と、《呪文嵌め》の枚数でしょうか。3枚はかなり多く感じますね」
石黒 「《マナ漏出》については、《差し戻し》は所詮あとでコンボを決める前提の時間稼ぎなので、《タルモゴイフ》で殴りきるプランをとるときはこういったきっちり打ち消しきるカードの方が欲しいんですよね。《呪文嵌め》は個人的には腐ることがほとんどないカードなので最低2枚は欲しいです。リビングエンドにでも当たらない限り、環境的に打ちどころはどこかにあるので」
伊藤 「ちなみに、もし石黒さんの友人が純正双子を使おうとしていたら、『いいから《タルモゴイフ》を入れろ』と説得しますか?」
石黒 「いや、その人が純正双子を使う十分な理由があるなら止めないと思いますよ。先ほど言ったように、たとえば土地系コンボが多いなら純正の方が勝てるわけですし。ただフェアデッキが多いなら、『タルモツイン』の方がいいと思いますけどね。特に最近は《コラガンの命令》があるので、《やっかい児》や《ヴェンディリオン三人衆》ですらあまり使いたくないですから」
■ 各主要デッキに対するサイドボーディング
伊藤 「主要なマッチアップでのサイドインアウトは、どういった感じになるんでしょうか?」
◎ 対 アブザンカンパニー
石黒 「対戦相手のデッキにはメインから《静寂の守り手、リンヴァーラ》《呪文滑り》《クァーサルの群れ魔道士》があるので、コンボは決まりづらいです。なので、基本的にはビートプランをとることになります」
石黒 「《タルモゴイフ》を並べてグダらせ、《稲妻》や《電解》を《瞬唱の魔道士》で使いまわしてダメージを蓄積させ、《謎めいた命令》でオールタップして殴りきるのを狙いましょう。メインは少し厳しいですが、サイド後もダメージプランを狙っていくことを忘れなければ、マッチ的には有利かなと思います」
◎ 対 バーン
石黒 「バーン相手はコンボが決まりやすいので、《稲妻》《タルモゴイフ》《呪文嵌め》《払拭》などでお茶を濁しながらコンボを狙っていきましょう」
石黒 「そんなに滅茶苦茶有利というわけでもないですが、特にサイド後は無駄になりやすいカードがかなり減るので、有利に戦えるマッチだと思います」
◎ 対 ジャンド
石黒 「《血染めの月》は2枚しかサイドインしていませんが、このカードに頼るプランは裏目が結構あるので3枚全部サイドインはあまりやりたくはないですね。相手もできる限り《沼》《森》とサーチしてケアしてきますし、あとこのマッチは《謎めいた命令》が重要になるので、それを自ら封じてしまう可能性が高いのもマイナスです」
石黒 「基本的には《瞬唱の魔道士》や《スラーグ牙》といったカードで誤魔化し誤魔化しやっていくプランになります。コンボよりも盤面を作ってダメージレースすることを意識しましょう」
◎ 対 双子
石黒 「《タルモゴイフ》を出せたら、相手の方から動かざるをえなくなるので非常に有利になります。引かない場合、こちらの方が《僻地の灯台》が少ないのがネックになりますね。《スラーグ牙》をサイドインするかは、5マナで隙が大きいカードなため難しいところですが、基本的には相手もコンボパーツを減らしてくるので問題ないだろうと考えています」
石黒 「《古えの遺恨》は《呪文滑り》くらいしか対象がないので基本的にサイドインしないですね。《ヴィダルケンの枷》や《殴打頭蓋》を見たら入れようくらいの気持ちでいいと思います」
◎ 対 親和
石黒 「このマッチはあまり言うことがないですね。とにかく相手の強いパーマネントを壊していきましょう。《払拭》はコンボ合わせの《感電破》がカウンターできますが、それ以外のパターンで腐りやすいので、《頑固な否認》まで見ないと残さないですね」
◎ 対 グリクシスコントロール
石黒 「相手の《黄金牙、タシグル》がネックですが、《高原の狩りの達人》の変身能力と《稲妻》との合わせ技で落とせたりもするのでどうにもならないというほどではありません。《高原の狩りの達人》は《コラガンの命令》で除去されてしまうとはいえ、リソース的に損はしていないので強力です。《血染めの月》は相手のサイドにも入っているくらいで効きが悪いので入れたくないですね」
◎ 対 トロン
石黒 「有利と思われがちですが、今の双子はコンボパーツが少ない上に、トロン側のサイドから鬼のように対策カードが飛んでくるのでマッチ全体では不利かもしれません。《沸騰》まで見たら《払拭》もサイドインしましょう」
■ まとめ、双子に興味がある人へ
伊藤 「最後に、このデッキに興味がある方にアドバイスなどあれば」
石黒 「双子というデッキはコンボやビート、クロックパーミなど多彩なゲームプランがとれて、使っていて楽しいデッキなのでオススメです」
石黒 「気を付けるべきは、サイド後も《欠片の双子》を全部残すマッチは少ない、ということですかね。モダンにおいてこのコンボはかなり警戒されていて、特にサイド後になるとコンボの成功率は格段に落ちるので、サイド後はコンボをサブプランにした方が無難です」
伊藤 「ありがとうございました」
「モダンの達人」シリーズ目次
vol.1 -アブザンカンパニー-
vol.2 -バーン-
vol.3 -ジャンド-
vol.4 -双子- (今回)
vol.5 -親和-
vol.6 -グリクシスコントロール-
vol.7 -トロン-
vol.1 -アブザンカンパニー-
vol.2 -バーン-
vol.3 -ジャンド-
vol.4 -双子- (今回)
vol.5 -親和-
vol.6 -グリクシスコントロール-
vol.7 -トロン-
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