『戦乱のゼンディカー』、発売間近。
となれば世界中のデッキビルダーたちは、いつでも飛び出せるようスタンバイしているに違いない。
何せアイデアはアイデアのままでは意味がない。一番最初にデッキとして世に出した者だけが、そのデッキの製作者としての栄誉を得る。
はたしてプロツアー『戦乱のゼンディカー』で活躍するのはどのようなデッキか。そしてその後の環境は。
来るべき未来を予測し、他者に先んじるためには、エキスパンションが発売するよりも前から、新しいカードを使ってデッキとしての形をある程度組み上げておかなければならないのだ。
というわけでこの記事は新環境のデッキをいち早く組み上げてお届けする、というものだ。
ただしカードの実物もなければ対戦相手もいないため、デッキとしてはどれも脳内で組んだ3分クオリティにとどまることはご承知願いたい。
さてそれでは、『戦乱のゼンディカー』のカードを使って私が反射的に組んだデッキたちを見ていこう。
■ 1. 最強×最強=最強
最強のデッキを作るにはどうすればいいか?
答えは簡単だ。
各マナ域の最強カードを集めればいいのだ。
2ターン目に最強カードをプレイ、3ターン目に最強カードをプレイし、4ターン目にも最強のカードをプレイする。これなら理論上負ける道理はない。
同型戦でもない限り、相手は毎ターン最強のカードをプレイし続けることはできないからだ。
ではスタンダードにおける各マナ域の最強カード、すなわち各マナ域でカードパワーが最も高いカードとは何か?
その答えを私は発見した。見れば間違いなく納得するであろうラインナップ。
スタンダード最強のカードたち……それはこいつらだ。
カードパワー的に間違いなく最強。
《搭載歩行機械》《ヴリンの神童、ジェイス》《僧院の導師》といえば、いずれもレガシーやヴィンテージレベルのカードたち。
となればカードパワーは折り紙付きな上に、マナカーブも2-2-3-4と美しいラインを描いている。色も青白で統一されており、まさに「デッキを作ってくれ」と言わんばかりだ。
そして期待の星、新カードの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は攻めてよし守ってよしの万能カード。このデッキならば即「-4」能力を起動して横に並んだ飛行機械トークンやモンクトークンを強化する使い道も考えられる。
しかもジェイスとギデオンが何だかストーリー上イチャイチャしているっぽいこともあり、これはきっと「ジェイスとギデオンは一緒に使え」というウィザーズからのメッセージに違いない。
そんなわけで申し訳ないが早くも『戦乱のゼンディカー』入りのスタンダードは私が終わらせてしまった。
理論上最強のデッキ。それがこれだ!
3 《島》 2 《平地》 2 《沼》 2 《大草原の川》 2 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《乱脈な気孔》 3 《コイロスの洞窟》 -土地(26)- 4 《搭載歩行機械》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《僧院の導師》 -クリーチャー(12)- |
3 《蔑み》 4 《予期》 2 《勇敢な姿勢》 2 《衰滅》 3 《残忍な切断》 1 《宝船の巡航》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 2 《真面目な訪問者、ソリン》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -呪文(22)- |
青と白だけではスペルの質に難がありそうだったので黒を足してみた。
《蔑み》は《思考囲い》と比べると悲しくはなるが、環境のデッキ次第では《思考囲い》に匹敵する強さを持つことも考えられる。また《残忍な切断》は環境最強の除去の一角で、このためだけに黒をタッチする価値は十分にある。
《乱脈な気孔》を《歴戦の戦士、ギデオン/Gideon, Battle-Forged》の「-4」能力で強化できるのも地味に強力だ。
ほかにもタッチカラーを緑や赤にするアプローチも考えられる。ぜひこの「最強」のラインナップを軸に、新デッキを考えてみて欲しい。
■ 2. 無限ライフ(物理)
「ライフを得る」という行動は、マジックにおいては勝利に直結しない行動だ。
何せ勝利条件は「対戦相手のライフをゼロ以下にする」なのである。自分のライフがいくら増えようが、それだけでゲームに勝てるということはない。たとえライフが「3億 対 20」になろうとも変わらない、いわば宇宙の法則なのだ。
だが、その法則をねじ曲げるカードがある。
「ライフを得る」ことが勝利に直結する。そんなカードがあれば、《部族養い》は《稲妻の一撃》に、《名誉の報賞》は《極上の炎技》に変貌する。
これまで見向きもされなかったようなカードが、強力なレアや神話レアと同じ土俵で戦えるようになるのだ。
まさしく規格外の能力と言って差し支えないだろうが、その宇宙の法則を壊しかねない禁断の能力を持ったカードが、実は『戦乱のゼンディカー』に存在していたのだ。
《フェリダーの君主》。
このカードさえあれば、マジックのルールは「ライフを40点以上にすれば勝利」に早変わりだ。
あとはライフを得るカードとライフを減らさないためのカードを適当にぶち込めば、デッキの完成だ。
22 《平地》 4 《荒廃した草原》 -土地(26)- 4 《搭載歩行機械》 4 《白蘭の騎士》 4 《アラシンの僧侶》 4 《前線の僧侶》 4 《休息地の見張り》 4 《徴税の大天使》 4 《フェリダーの君主》 -クリーチャー(28)- |
2 《勇敢な姿勢》 4 《見えざるものの熟達》 -呪文(6)- |
キーカードは『運命再編』より、構築・リミテッドを問わず幾多のクソゲーを発生させてきた《見えざるものの熟達》。
重ね貼りすると効果が倍になるこのカードを毎ターンひたすら地道に4マナ払って起動し、十分なクリーチャーが溜まったところで「予示」を表返せば膨大な量のライフが獲得できる。《搭載歩行機械》や《休息地の見張り》は0マナで表返せるので(前者はその後すぐ墓地に置かれてしまうが)テンポも抜群だ。
あとは相手のエンド前にいきなり《フェリダーの君主》を表返して勝利条件を達成するだけだ。
そう。
また、『戦乱のゼンディカー』から加入した頼もしい新カードにも注目だ。
土地でありながら10点以上ものライフを獲得できる可能性があるこのカードは、極めて高いポテンシャルを秘めている。このサイクルの他の土地も、何かしらのデッキを新たに誕生させる力があるかもしれない。
土地・クリーチャー・スペルと、とにかくあらゆる行動がライフゲイン。
赤単が憎くてたまらない人にオススメのデッキだ。
■ 3. Standard Crazy Zoo
【Super Crazy Zoo】は間違いなく私の最高傑作であり、だからこそ【ジャイアンツ】のようなデッキを作ってまで、スタンダードでもSCZを再現しようと必死に試みてきた。
その思いが、ようやく報われるときが来たのかもしれない。
《鎌豹》。そして《マキンディの滑り駆け》。
この2種類の「上陸」生物たちは、新たな「赤緑『上陸』アグロ」を成立させるのに十分なパワーを持っているように見える。
しかも《マキンディの滑り駆け》は、フェッチランドを起動すればパワーが4。2マナ域のクリーチャーでありながら《ティムールの激闘》の「獰猛」を容易に達成できるという頼もしさがある。
これは《鎌豹》《マキンディの滑り駆け》《強大化》《ティムールの激闘》でデッキを組むしかない!
5 《山》 3 《森》 2 《燃えがらの林間地》 4 《樹木茂る山麓》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《吹きさらしの荒野》 -土地(22)- 4 《僧院の速槍》 4 《鎌豹》 4 《マキンディの滑り駆け》 2 《わめき騒ぐマンドリル》 -クリーチャー(14)- |
4 《乱撃斬》 4 《タイタンの力》 4 《マグマの洞察力》 4 《苦しめる声》 4 《ティムールの激闘》 4 《強大化》 -呪文(24)- |
《強大化》の問題は「探査」のコストだ。
たとえフェッチを2枚しか引かずとも3ターン目か遅くとも4ターン目に《強大化》を撃てるようにするためには、《ギタクシア派の調査》《ミシュラのガラクタ》のような、手軽に墓地の枚数を増やせる「燃料」が必要になる。
スペルの選択肢に乏しいスタンダードでは「燃料」の発見はかなりの難題だが、そこで《スフィンクスの後見》コントロールが《宝船の巡航》の「燃料」として《マグマの洞察力》と《苦しめる声》を採用していたのを思い出し、参考にしてみたのがこのデッキだ。
「果敢」の誘発も容易になるため、《ケラル砦の修道院長》の採用も検討してみてもいいかもしれない。
「赤アグロ」は【プロツアー『タルキール龍紀伝』】【プロツアー『マジック・オリジン』】と、ここ2回のプロツアーを制しているド本命のアーキタイプである。
はたしてプロツアー『戦乱のゼンディカー』の決勝テーブルで《強大化》+《ティムールの激闘》コンボを見ることができるのか。
プロツアーの放送を観戦するのが今から楽しみだ。
■ 4. ウォー!!
ここからが本番だ。
『戦乱のゼンディカー』の全カードリストが発表された日。
私が最も注目していたのは、エルドラージや土地といったありきたりなカードではなく、とある符号についてだった。
揃ったな……「8枚」……!!
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— Atsushi Ito (@matsugan) 2015, 9月 18
そう、《帆凧の斥候》の登場によりスタンダードには8枚の白の1マナ1/1「飛行」が揃ってしまったのである。
だが問題は、これが何を意味するのかということだ。
まさかあのウィザーズが、こんなただ名前が違うだけのほとんどバニラみたいなコモンを2種類も収録していたずらにカードプールを減らすような真似をするはずがない。そこには何らかの「意図」があるはずなのだ。
では《帆凧の斥候》に込められた開発部の「意図」とは何か。
まずこの2枚のカード、イラストが何となく線対称となっており、並べたときに気持ちがいい。
そう思ってこれらの2枚を1枚の絵として見たとき……完成したイラストは、どこか「広げた両翼」を想起させる部分がある。
「広げた両翼」……「空に向かって両手を広げる」……ということは「神への感謝」に他ならない……では何に感謝しているのか?
決まっている。「勝利」にだ。
つまりこれは「この2枚を戦場に並べた者が次期スタンダードの勝者となり神に感謝するだろう」という開発部からのメッセージだったのだ!!
このメッセージを解読しているのは今のところ世界で私一人だろう。
「デッキのコンセプトが成立するためには、同じ役割のカードが8枚必要」というのが【私の持論】だが、《帆凧の斥候》と《エイヴンの散兵》の8枚で成立する唯一無二のコンセプトのデッキを作ることができれば、私の勝利は開発部……いや、神によって約束されているということだ。
辿りついた。『戦乱のゼンディカー』に収録された274枚の中で、最もスタンダードに影響を与えるであろうカード。
《帆凧の斥候》で、私が世界を変える!!
20 《平地》 -土地(20)- 4 《帆凧の斥候》 4 《エイヴンの散兵》 4 《探検隊の特使》 4 《マルドゥの悲哀狩り》 4 《ドラゴンを狩る者》 4 《勇者の選定師》 2 《アクロスの英雄、キテオン》 2 《結束した構築物》 4 《領事補佐官》 2 《族樹の精霊、アナフェンザ》 -クリーチャー(34)- |
4 《キテオンの戦術》 2 《戦の角笛》 -呪文(6)- |
1マナ1/1飛行がプレイアブルになるためには、やはり「全体強化」は必須だ。
だがスタンダードの全体強化は《雷鳴のワイヴァーン》《歴戦の戦士、ギデオン/Gideon, Battle-Forged》など、4マナのものが多い。しかし1マナで始まるビートダウンが4マナまで到達してようやくまともな打点を獲得するようではあまりに遅すぎる。
できれば《十字軍》。せめて《栄光の頌歌》のようなカードがあれば。
とはいえそんなカードがあるはずもない……と思いきや。
あった。
【青黒ジャッカル】でも散々お世話になったこのカード、《戦の角笛》。
「ウォー!!」と叫びながらクリーチャーをレッドゾーンに向かわせたくなる (※やめましょう) 絶妙なカード名だ。
さらに《領事補佐官》と《キテオンの戦術》。この3種類の全体強化のバックアップがあれば、《帆凧の斥候》はさらに高く飛べる。
ん……【青黒ジャッカル】?
まさか……8枚では足りないとでも言うのか!?
4 《平地》 2 《島》 2 《山》 1 《大草原の川》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《戦場の鍛冶場》 4 《シヴの浅瀬》 -土地(21)- 4 《帆凧の斥候》 4 《エイヴンの散兵》 4 《フェアリーの悪党》 4 《グドゥルの闇潜み》 4 《勇者の選定師》 4 《シディシの信者》 4 《層雲の踊り手》 4 《カマキリの乗り手》 -クリーチャー(32)- |
4 《キテオンの戦術》 3 《戦の角笛》 -呪文(7)- |
この完璧なフォーメーション。
これこそが開発部の意思ということか。
『戦乱のゼンディカー』入りのスタンダードは、《帆凧の斥候》と《戦の角笛》が切り開く!
(※なお【「神への感謝」=サンキュー】したとしても責任は負いかねます)
なに、まだ満足できないって?
しょうがないな……では、とっておき
2 《山》 2 《沼》 2 《平地》 1 《燻る湿地》 4 《血染めのぬかるみ》 1 《汚染された三角州》 1 《樹木茂る山麓》 4 《戦場の鍛冶場》 4 《コイロスの洞窟》 -土地(21)- 4 《果てしなきもの》 4 《血に染まりし勇者》 4 《僧院の速槍》 4 《マルドゥの影槍》 4 《稲妻の狂戦士》 4 《結束した構築物》 3 《鐘突きのズルゴ》 4 《グルマグの速翼》 -クリーチャー(31)- |
4 《マルドゥの隆盛》 4 《戦の角笛》 -呪文(8)- |
ヴォォォォーーーッ!!
いかがだっただろうか。
『戦乱のゼンディカー』のデザインコンセプトを完全に無視したデッキしか作っていないような気もするが、それでもこれだけデッキが作れるのだから、『戦乱のゼンディカー』のカードを使った強力なデッキの可能性はまだまだ眠っていることだろう。
読者の皆さんもぜひ自分の力で色々な面白いコンセプトに挑戦してみて欲しい。
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