Temur New Generation調整録

伊藤 敦



 あけましておめでとう。

 さていきなりだが、「Temur New Generation (TNG)」というデッキを覚えているだろうか。

 昨年【だらだらクソデッキ vol.10】で私が作った、『戦乱のゼンディカー』入りのスタンダード対応のクソデッキだ。



「Temur New Generation」

3 《森》
3 《山》
1 《島》
3 《開拓地の野営地》
4 《シヴの浅瀬》
1 《ヤヴィマヤの沿岸》
1 《伐採地の滝》
3 《精霊龍の安息地》
4 《魔道士輪の魔力網》
1 《見捨てられた神々の神殿》
1 《ウギンの聖域》
1 《荒廃した瀑布》

-土地(26)-

3 《搭載歩行機械》
2 《龍王アタルカ》
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー(7)-
4 《焦熱の衝動》
3 《払拭》
1 《火口の爪》
2 《龍詞の咆哮》
2 《軽蔑的な一撃》
1 《予期》
2 《ニッサの復興》
1 《彼方より》
4 《ティムールの戦旗》
3 《面晶体の記録庫》
2 《揺るぎないサルカン》
2 《精霊龍、ウギン》

-呪文(27)-
2 《僧院の群れ》
2 《乱撃斬》
2 《光輝の炎》
2 《飛行機械の諜報網》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《龍王シルムガル》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《払拭》
1 《焙り焼き》
1 《否認》
1 《宝船の巡航》

-サイドボード(15)-
hareruya



 なぜ今更そんな話を?と思うかもしれない。「TNG」は、記事を読めばわかるが、残念ながら【Super Crazy Zoo】のようにメタゲームに食い込むようなデッキにはならなかったからだ。

 だが、私は今こそ「TNG」の話をしたい。

 「TNG」を完成させるまでの過程が、私に「大切なこと」を教えてくれたからだ。

 そう、私はついに「TNG」を完成させた。あれから1か月をかけて、どうにか現在のスタンダードで使用に耐えうるデッキへと進化させることに成功したのだ。

 そしてその過程で、私は学んだ。デッキビルダーにとって「大切なこと」を。

 もしかしたら私はついに、【ゼウス】の高みを覗き込んだのかもしれない。

 そうだとしたら私はその経験を、【ゼウス】の精神をより多くの人に共有したい。

 デッキビルダーを志すすべての人のために。それが今回この記事を執筆するに至った動機だ。



 そういうわけで誰も望んでいないことを知りつつこれから「TNG」の完成までの経緯を説明するわけだが、それだけだとあまりにもどうでもいい記事になってしまう。

 そこで普段はあまり語られることがない、「デッキ構築の手法」に焦点を当てつつ記事を書いてみようと思う。



■ 課題の設定

 【だらだらクソデッキ vol.10】の最後で一旦完成したかに見えた「TNG」。だが、新たな問題が立ちはだかった。



「アブザンアグロ」

2 《森》
2 《平地》
2 《梢の眺望》
1 《燻る湿地》
1 《窪み渓谷》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
4 《乱脈な気孔》
2 《ラノワールの荒原》

-土地(26)-

4 《始まりの木の管理人》
3 《荒野の後継者》
3 《棲み家の防御者》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
4 《包囲サイ》
2 《風番いのロック》
1 《黄金牙、タシグル》

-クリーチャー(21)-
4 《ドロモカの命令》
4 《アブザンの魔除け》
1 《残忍な切断》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文(13)-
4 《強迫》
4 《絹包み》
2 《自傷疵》
2 《精神背信》
2 《究極の価格》
1 《黄金牙、タシグル》

-サイドボード(15)-
hareruya



 「アブザンアグロ」に勝てないのだ。

 もともと「TNG」を作った当時は「ダークジェスカイ」が流行しており、そして「ダークジェスカイ」に対しては《カマキリの乗り手》だけ打ち落としていれば時間はいくらでも稼げたため、こんなクソデッキでもある程度まともにゲームをすることができた。


先頭に立つもの、アナフェンザ包囲サイゼンディカーの同盟者、ギデオン


 しかし「アブザンアグロ」のタフな生物たち……特に《先頭に立つもの、アナフェンザ》《包囲サイ》、そして何より《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

 これらは1枚の火力では対処できないサイズを有し、さらに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に至っては火力が一切効かないため、青緑赤というカラーリングの「TNG」ではクロックを下げることすらままならず、カードを手札の端から順番に展開された上で横に倒されているだけで自動的に敗北が確定するという始末であった。

 当時は序盤の時間稼ぎのために《搭載歩行機械》を採用していたが、《先頭に立つもの、アナフェンザ》を出されるだけでただのチャンプブロッカーと化してしまう。

 それでも、「アブザンアグロ」がメタゲームの一部に過ぎないのならば問題はなかった。しかし当時は折しも【グランプリ・神戸2015】の直前期、すなわち「アブザンアグロ」全盛期である。

 【第5期スタンダード神挑戦者決定戦】の結果を見てもわかるとおり、猫も杓子も「アブザンアグロ」という有様。そしてそのような状況下において、「アブザンアグロ」に勝てない「TNG」には何の価値もなかった。

 とはいえ、何をどうしたら「TNG」で「アブザンアグロ」に勝てるというのだろう。

 「ダークジェスカイ」を仮想敵として作り上げたこのデッキが「アブザンアグロ」に勝てないのは道理とはいえ、このデッキが「アブザンアグロ」に勝つためには、ともすると20枚~30枚もの、デッキ構成の根本からの変革が必要となる可能性がある。

 想像するだにあまりに果てしない道のりを前にして、私は「TNG」というデッキそのものを諦めつつあった。


 しかし、そんな私にとある小さなきっかけが訪れる。

 【日本選手権2008】で準優勝し、【プロツアー・京都09】では【青白GAPPO】で私とらっしゅとともに神への感謝 (サンキュー) を捧げた高桑 祥広が、【グランプリ・神戸2015】にまつがんのデッキで出るよ」と言い放ったのである。

 「所詮クソデッキなのだから」と諦めてしまうことは容易い。

 だが私は何より、自分で作り上げた「TNG」というデッキが好きだった。私自身は予定があって【グランプリ・神戸2015】に参加できないことは確定していたが、しかしもし出られるとしたなら、デッキは「TNG」以外にありえないとさえ考えていた。

 そんなとき、私の代わりに「TNG」を表舞台に立たせてくれるという、力量も申し分ないプレイヤーが現れたのだ。

 クソを量産するのが仕事のこの私にデッキを依頼するということがどういうことか、知らないはずもない。それでも私のデッキに乗っかると高桑は言ってくれた。

 この覚悟に応えられないようでは、デッキビルダーの名折れだ。

 そう考えた私は、「何とかして『アブザンアグロ』に勝てる『TNG』を作る」という課題を設定し、困難を乗り越えて「TNG」をさらなる高みへと導く決意を固めたのだった。



■ コンセプトの言語化

 「アブザンアグロ」に勝つためには何をすればいいか……そのためにはまず「TNG」とは何かを知る必要があった。

 単に「『アブザンアグロ』に勝つ」という命題を実現するだけなら、「こんなデッキは紙の束だ!よし、《トレイリアのアカデミー》《厳かなモノリス》《修繕》《ファイレクシアの処理装置》を入れよう!」「『ティンカー』じゃねーか!」ということにもなりかねない。

 大事なのは「『TNG』で勝つこと」なのである。そしてその条件を達成するためには、「TNG」を「TNG」たらしめているものは何か……すなわち、「TNG」の「コンセプト」を知る必要があった。

 では「TNG」の「コンセプト」とは何だろうか?

 デッキの「コンセプト」を知るには、類似のデッキと比較するのが手っ取り早い。このデッキの場合、「マナ加速」や「ビッグアクション」といった要素を持つことから、「エルドラージ・ランプ」の「コンセプト」との差別化が重要となる。

 もし「TNG」が「エルドラージ・ランプ」と差別化できない同一の「コンセプト」を持っているとしたら……「TNG」は高確率で【青白GAPPO】と同じ運命を辿ることになるだろう。



「エルドラージ・ランプ」

9 《森》
2 《平地》
1 《梢の眺望》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《樹木茂る山麓》
1 《精霊龍の安息地》
4 《見捨てられた神々の神殿》
4 《ウギンの聖域》

-土地(26)-

2 《搭載歩行機械》
4 《爪鳴らしの神秘家》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《龍王ドロモカ》
4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー(14)-
4 《ニッサの巡礼》
4 《爆発的植生》
4 《ニッサの復興》
4 《面晶体の記録庫》
4 《精霊龍、ウギン》

-呪文(20)-
4 《正義のうねり》
3 《ガイアの復讐者》
3 《次元の激高》
2 《アラシンの僧侶》
2 《カル・シスマの風》
1 《見えざるものの熟達》

-サイドボード(15)-
hareruya


爪鳴らしの神秘家ニッサの巡礼爆発的植生


 このように考えたとき私は、「エルドラージ・ランプ」と「TNG」とは、ちょうどモダンの「緑トロン」と「青トロン」との関係に似ていることに気付いた。

 「緑トロン」は対戦相手にほとんど干渉せず、自己の勝利条件であるビッグアクションに向けて真っ直ぐにリソースを拡充していく。それに対し「青トロン」は自己のリソースを拡充する代わりに、カウンターやバウンスなど対戦相手への妨害を挟みながらビッグアクションのターンまで盤面を平穏に保つことを目標としている。

 要は「緑トロン」とはコンボデッキであり、そして「青トロン」はコントロールデッキなのである。そして「TNG」の「コンセプト」は、「エルドラージ・ランプ」とは違い、「対戦相手を適宜妨害しつつビッグアクションまでたどり着く」……すなわちコントロールのそれだったのだ。

 それはデッキを製作した私にとってすら意外な真実だった。私自身、「TNG」をマナランプの亜種だと思い込んでいたのだ。

 だがコントロールだとわかれば、デッキ構築の方針が定まってくる。コントロールということなら、「TNG」はそもそもそんなにマナ加速をする必要がないのだ。《ティムールの戦旗》を4枚も入れるより、「アブザンアグロ」に効果的な妨害を増やした方がいいということになる。

 「TNG」で「アブザンアグロ」を「コントロールする」。

 一見不可能に見えた「課題」に、一筋の光明が差した瞬間であった。



■ 必要な条件の絞り込み

 では「アブザンアグロをコントロールする」ためには何が必要だろうか?

 それはもちろん「適切な妨害」と「適切なフィニッシャー(ビッグアクション)」だろう。

 そして「適切なフィニッシャー」ということに関して言うならば、「アブザンアグロ」に対する最大最強のフィニッシャーは間違いなく《精霊龍、ウギン》であった。


精霊龍、ウギン


 《始まりの木の管理人》《先頭に立つもの、アナフェンザ》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《包囲サイ》《風番いのロック》……それらが何体並ぼうが、《精霊龍、ウギン》さえいればすべての盤面は解決するのだ。

 よって「アブザンアグロ」に勝ちたい以上、「TNG」は《精霊龍、ウギン》を4枚搭載する」「その上で他に必要なフィニッシャーがあれば適宜追加する」という構築方針を採用せざるをえない。この結論には比較的スムーズにたどり着いた。


 しかし《精霊龍、ウギン》を4枚積んだ上で「適切な妨害」のスロットを構築しようとしたとき、致命的な障害が立ちはだかった。

 思いつく限りのカウンターや除去を試してみたが、どうやっても《精霊龍、ウギン》にたどり着く前に「アブザンアグロ」のクリーチャー陣に攻めきられてしまう or 《包囲サイ》圏内へとライフを落とし込まれてしまうのだ。

 その原因は、《精霊龍、ウギン》8マナという重さにあった。

 さてここで問題だ。《精霊龍、ウギン》をゲーム中にプレイするには何枚のカードが必要か?

 一人回しなら9枚で十分だろう。8枚の土地と《精霊龍、ウギン》だけあればいいからだ。

 しかし少なくとも3ターン目以降は毎ターンクリーチャーをプレイしてくる「アブザンアグロ」というデッキを相手にしたとき、事情は異なってくる。

 先手3ターン目の《先頭に立つもの、アナフェンザ》に対してこちらに一切の応手がないとき、《先頭に立つもの、アナフェンザ》は5ターンクロックだから、後手8ターン目にたどり着くことなく死んでしまうのだ。つまりそれに対する「応手」は必要条件となる。

 同様に4ターン目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》にも、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はプレイしたターンの2/2と自身の5/5で3ターンクロックなので応手は必要だ。加えて、もし相手が1ターン目に《始まりの木の管理人》をプレイしていたならそれにもどこかで応じなければいけない。つまりその分だけ、「《精霊龍、ウギン》をプレイするために必要なカードの枚数」は増えていくのだ。

 このように考えていったとき、「アブザンアグロ」相手に無事に (≒《包囲サイ》圏外であるライフ4点以上を残して) 《精霊龍、ウギン》をプレイするためには、感覚的には2~3手ほどの応手が必要という結論が出てくる。

 「TNG」には《魔道士輪の魔力網》《ティムールの戦旗》《面晶体の記録庫》が入っているから事態はもう少し複雑だが、《精霊龍、ウギン》のプレイを大体6ターン目くらいだとすると、先手6ターン目のリソースは初手7枚とドローを合わせて12枚。

 仮にこのうち8枚は何らかのマナ関連のカード、3枚が妨害、1枚が《精霊龍、ウギン》とすると、その妨害がカウンターであろうと除去であろうと、6ターン目に《精霊龍、ウギン》をプレイするのに一切のドローの分散が許容されなくなってしまうのだ。

 頭が悪すぎてこの事実に辿りつくのに50マッチくらいの時間を要した (そしてそのたびに「なぜか勝てないな?」と思いつつ再び8構やリーグに特攻した) が、気づいてしまえばどうということはない。「エルドラージ・ランプ」が《ニッサの巡礼》《爆発的植生》《ニッサの復興》でカードの枚数を確保しているところを1:1交換のカウンターや除去に差し替えたら8マナが出なくなるのは当然である。

 しかもそもそも12枚引いたところで《精霊龍、ウギン》に辿りついているかすらも怪しい。

 つまり「適切な妨害」のスロットを構築しようにも、そもそも1:1で交換しようとする限り、「アブザンアグロ」に対して《精霊龍、ウギン》の着地までたどり着く確率は極端に低いという残酷な事実が判明してしまったのである。


 ではこの問題を解決するにはどうすればいいか?

 不毛な50マッチを経て、既に私はその方法を何となく悟っていた。

 交換するからダメなのだ。交換を超える概念があるとしたら、それはタダ (FREE) しかありえない。

 つまり。


Time Walk


 そう。「TNG」に足りないのは、《Time Walk》だったのだ。



■ 正しい検索条件での検索

 デッキを作るときに誰もが無意識にこなしていることがある。

 「理想のオリジナルカードの作成」だ。

 オリカと聞くと馬鹿にしがちだが、デッキ構築においては何よりも必要な能力だったりする。

 たとえばちょっと前のスタンダードではメインに《自傷疵》《正義のうねり》が入ったりしていたが、それは「2マナ以下で《先頭に立つもの、アナフェンザ》であろうと《カマキリの乗り手》であろうとどちらも後腐れなく除去できる能力を持つカードA」を想像し、それに近い現実のカードを探した結果なのだ。

 自らの理想のカードの能力を具体的にイメージすること。そしてそれに近い能力を持つ現実に存在するカードを探し出すこと。これはデッキを完成させるにあたってなくてはならない作業である。

 デッキのコンセプト部分として使いたいカードを探すときは、新セットのカードリストを眺めるだけでいい。

 しかし使いたいカードが決まって20枚程度のスペルスロットが埋まった後に残りのカードを決める段階、つまり使いたいカードを健全に機能させるためのカードを探す段階においては、必ず「求められる条件からカードの能力を逆算する」必要が出てくるのだ。


 私が「TNG」のコンセプト、「適宜妨害を挟みながら《精霊龍、ウギン》をプレイする」を全うするにあたって導きだした結論は、《Time Walk》が欲しい!」というものだった。

 無論スタンダードに《Time Walk》が存在するはずもないので冷静にもう少し妥協すると、「『妨害しながらカードを引く』という能力を持ったカード」ということになる。

 「カードを1枚引く」……いわゆる「キャントリップ」能力がついた妨害カードならば、先手6ターン目の12枚は実質13枚となる。これならば分散に余裕はできるし、《精霊龍、ウギン》へとたどり着く確率も上がるので一石二鳥だ。

 だが、はたしてそんな都合のいいカードが存在するのだろうか?

 なんといってもこの「妨害」とは「アブザンアグロ」に対する妨害としてきちんと機能する必要があるのである。ということは、《始まりの木の管理人》《先頭に立つもの、アナフェンザ》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《包囲サイ》といったラインナップの攻撃をきちんと阻害しつつ「カードを1枚引く」カードでなければならない。

 そんなカードが存在していたら、もう既にスタンダードで使われているはずである。でなければ、4マナか5マナか6マナか、いずれにせよ尋常なマナコストではない。

 だが《Time Walk》は存在しなければならないのだ。存在しなければ「TNG」はコンセプト的に破綻する。きっとウィザーズなら用意しているはずなのだ。私に「この符合……!」と言わせるようなカードを。

 そう思いながら私は恐る恐る、スタンダードで「カードを1枚引く」というテキストを持ったカードを検索した。

 そしてその結果……



「Next Level Temur New Generation」

5 《島》
1 《山》
1 《窪み渓谷》
1 《大草原の川》
1 《燃えがらの林間地》
1 《燻る湿地》
3 《血染めのぬかるみ》
3 《汚染された三角州》
4 《精霊龍の安息地》
1 《伐採地の滝》
4 《魔道士輪の魔力網》
1 《ウギンの聖域》

-土地(26)-

1 《ヴリンの神童、ジェイス》
1 《龍王ドロモカ》
1 《龍王アタルカ》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー(4)-
1 《火口の爪》
1 《意思の激突》
1 《予期》
1 《分散》
4 《悪寒》
2 《逆境》
2 《残忍な切断》
2 《ニッサの復興》
1 《時を越えた探索》
2 《氷固め》
4 《錬金術師の薬瓶》
3 《ティムールの戦旗》
2 《面晶体の記録庫》
4 《精霊龍、ウギン》

-呪文(30)-
4 《焦熱の衝動》
4 《払拭》
4 《大地の断裂》
1 《龍王ドロモカ》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《否認》

-サイドボード(15)-
hareruya


錬金術師の薬瓶悪寒逆境


 少なくとも【フューチャー・フューチャー・リーグ】の面々は絶対使ってないであろうカードをかき集めた、すさまじいカオスが爆誕した。


 そう、何と「カードを1枚引く」をテキストに持った妨害カードは現実に存在したのだ。しかも《始まりの木の管理人》《先頭に立つもの、アナフェンザ》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《包囲サイ》も全て妨害可能と、完璧に条件を満たした形で。

 《錬金術師の薬瓶》《悪寒》

 これこそが私がたどり着いたスタンダードの《Time Walk》であった。

 とはいえ、私も検索結果を見ただけで最初からこの2枚を「これだ!」と思って採用したわけではない。

 《錬金術師の薬瓶》はともかく、《悪寒》というカードは『アヴァシンの帰還』からの再録カードである。そして『アヴァシンの帰還』当時ですら、スタンダードのデッキに採用された形跡はほとんどなかった。

 そんなわけだから検索に《悪寒》が引っかかったときも、「いやぁ~……《悪寒》はさすがにないだろ……」と一瞬で切り捨て、パッと見まともな《錬金術師の薬瓶》だけを一度は採用したのである。

 しかし《錬金術師の薬瓶》はさすがに2マナのカードだけあって、攻撃を押しとどめるのは1ターンのみ。しかも1スロット4枚だけでは毎回引くとは限らない。ということに、「アブザンアグロ」にまた5マッチほどボコボコにされてから私は気づいた。

 そして。私はついに《悪寒》をデッキに投入し。

 使った瞬間に、「これだ!」とわかった。

 相手が《先頭に立つもの、アナフェンザ》を3ターン目にプレイしても、こちらが次の相手のターンの戦闘開始ステップに《悪寒》をプレイすると、何と《先頭に立つもの、アナフェンザ》の攻撃を2度も押しとどめることができるのだ (テキストを読み上げただけ)。

 それにどうせ《精霊龍、ウギン》で全部流すのだから、もともと完全な除去である必要がないというところも噛み合っていた。

 こうして「TNG」はデッキに8枚の《Time Walk》を搭載し、全く新しいデッキへと生まれ変わった。

 しかし。

 それでもまだ、「アブザンアグロ」には勝ったり負けたりを繰り返していた。

 《悪寒》は確かに強いのだが、《悪寒》を引かないと《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の高すぎる打点を前に《錬金術師の薬瓶》だけでは不十分だったのだ。

 それはこのデッキがまだ完成していないことを示していた。

 何か……何か最後の1ピースが足りない。

 《悪寒》は間違いなく強かった。なら《悪寒》と同様の効果を持つカードは「アブザンアグロ」に対してやはり強いはず。

 そう考えた私はすぐに《逆境》を想起した。

 だが《逆境》は4マナと重く、しかも《錬金術師の薬瓶》《悪寒》と違ってカードが引けるわけではない。思いついたとはいえ、私はその効能には半信半疑であった。

 とはいえ、私はもはや《逆境》に縋るしかなかった。

 はたして効果は、絶大だった。

 考えてみれば当然だ。効果は単純に《悪寒》の2倍である。

 しかもカードは引けないので《精霊龍、ウギン》を探しだすことはできないとはいえ、エルドラージ・末裔トークンは8マナまでの土地の代替となる。

 つまり《逆境》こそが、3種類目の《Time Walk》だった。

 あとはさすがにタップインが多すぎたのでマナベースをフェッチバトランベースに転換し、青赤ベースで勝手に黒マナが出てしまうことから適当に《残忍な切断》を入れてデッキが完成した。

 それは【だらだらクソデッキ vol.10】で作ったデッキとは似ても似つかない、しかし「アブザンアグロ」に対して明らかに有利な構造のデッキだった。

 そう。私はついに成し遂げたのだ。


 ちなみに。

 私はこのデッキレシピを詳細な解説文とともに高桑に渡したが、【グランプリ・神戸2015】に出場した高桑は、ノーバイから一度も「アブザンアグロ」に当たらず2-3ドロップした。

 初戦の相手はマルドゥ・メガハンデスだったそうである。そりゃ勝てんわ!



■ ゼウスの教訓

 これだけだらだらと書いておいて。

 いつものように、「TNG」は何ら結果を残してはいない。

 だから傍から見れば今回の記事は、「謎の縛りプレイでクソデッキだけを100回以上回して頭がおかしくなったマゾがいた」というだけの話でしかないのかもしれない。

 しかし私は今回の件で確かに学んだのだ。

 《錬金術師の薬瓶》《悪寒》。そして《逆境》。スタンダードでまさか使うはずがないと思っていたカードたち。余裕の全部10円である

 そんなカードたちが、実際には「アブザンアグロ」というトップメタをクソデッキで打ち破るための最後の切り札だったのである。

 そう、だから。


 どれだけクソカードに見えても論理的に考えて導き出した結論がそれなら、デッキビルダーたるもの一度は試してみるべきである。


 あまりに当たり前すぎるかもしれない。だがこれこそまさしく【ゼウス】の精神そのものだ。

 いったいどれだけのデッキを作ったら、【ゼウス】の境地にたどり着くのか。

 しかし、結局のところ今はひたすらクソデッキを作り続けるしかないのだろう。

 そうして私はまた【『ゲートウォッチの誓い』のカードリスト】を眺める作業に戻るのだ。

 今年こそはゼウス元年にしたいと、そう思いながら。



「Temur New Generation (完成版)」

4 《島》
2 《山》
1 《窪み渓谷》
1 《大草原の川》
1 《燃えがらの林間地》
1 《燻る湿地》
4 《血染めのぬかるみ》
3 《汚染された三角州》
4 《精霊龍の安息地》
1 《伐採地の滝》
4 《魔道士輪の魔力網》
1 《ウギンの聖域》

-土地(27)-

1 《龍王ドロモカ》
1 《龍王アタルカ》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー(3)-
1 《火口の爪》
2 《予期》
2 《分散》
4 《悪寒》
4 《逆境》
2 《残忍な切断》
2 《ニッサの復興》
4 《錬金術師の薬瓶》
3 《ティムールの戦旗》
2 《面晶体の記録庫》
4 《精霊龍、ウギン》

-呪文(30)-
4 《焦熱の衝動》
4 《払拭》
4 《大地の断裂》
1 《龍王ドロモカ》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《否認》

-サイドボード(15)-
hareruya





この記事内で掲載されたカード


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事

このシリーズの過去記事