原根健太のThe Last Sun 2015レポート

原根 健太


先日開催された【The Last Sun 2015】に参加してきました。

今日はそのイベントレポートをお届けします。


The Last Sunは晴れる屋様が主催する年末の招待制イベントです。詳しくは【こちら】をご覧ください。

スタンダード+レガシーの特殊な複合フォーマットにて実施され、構築戦における幅広い知識・技術が要求されます。

毛色の異なる両フォーマットに通ずることは難易度が高く、マジックにおける総合力が試されます。これまではカバレージ上でしか見てこなかった世界なので、今大会をとても楽しみにしていました。



◆ 使用デッキ

今回僕が選んだデッキはスタンダードが「マルドゥ・ミッドレンジ」で、レガシーが「オムニテル」でした。


・「マルドゥ・ミッドレンジ」



原根 健太「マルドゥ・ミッドレンジ」
The last Sun 2015

2 《沼》
2 《山》
1 《梢の眺望》
1 《燻る湿地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《樹木茂る山麓》
4 《遊牧民の前哨地》
4 《乱脈な気孔》
3 《戦場の鍛冶場》

-土地(25)-

4 《搭載歩行機械》
4 《道の探求者》
4 《ケラル砦の修道院長》
3 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》

-クリーチャー(15)-
4 《焦熱の衝動》
2 《強迫》
4 《コラガンの命令》
4 《はじける破滅》
1 《完全なる終わり》
2 《残忍な切断》
2 《龍語りのサルカン》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-呪文(20)-
4 《自傷疵》
2 《灰雲のフェニックス》
2 《強迫》
2 《精神背信》
2 《苦い真理》
2 《光輝の炎》
1 《焼き払い》

-サイドボード(15)-
hareruya



【GP神戸】とそれ以降のイベントの結果を踏まえ、「アブザンアグロ」に対して有利なデッキ選択を行うプレイヤーが多いと予想しました。

「ダークジェスカイ」「エスパーメンター」「エスパードラゴン」あたりが有力候補で、それらに対し構造上強いデッキを使いたいという思いから、このマルドゥミッドレンジを選択しています。

メインボード時点で21枚(《ピア・ナラーとキラン・ナラー》含む)もの除去が採用されているため、《ヴリンの神童、ジェイス》《僧院の導師》《龍王オジュタイ》といったクリーチャー群を対処しやすく、「アブザンアグロに強いデッキに対して強い」位置付けだと認識しています。


焦熱の衝動コラガンの命令


ただし、逆にアブザンアグロそのものには弱く、《焦熱の衝動》《コラガンの命令》は同デッキに対して有効な場面が限定的で、有効牌の差で競り負けてしまうことが多々あります。

アドバンテージ獲得能力が低いために《棲み家の防御者》《風番いのロック》がとにかく厳しく、特に後者は着地すれば9割負けます。


棲み家の防御者風番いのロック


他にも「ランプ」や「4Cラリー」など軸の異なるデッキは苦手でほとんど勝てません。サイドボードに多量のメタカードを用意してようやく戦えるレベルで、他のデッキを相手にする際もそれほど余裕があるわけではありませんから、悩んだ末に切り捨てました。

勝てるマッチと勝てないマッチの差が激しく、なんとか2敗以内に収まればといったところでしょうか。



・「オムニテル」



原根 健太「オムニテル」
The Last Sun 2015

5 《島》
1 《山》
1 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
1 《Badlands》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》

-土地(19)-

1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(1)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《定業》
3 《呪文貫き》
4 《燃え立つ願い》
1 《衝動》
4 《狡猾な願い》
3 《実物提示教育》
1 《直観》
4 《Force of Will》
4 《全知》

-呪文(40)-
1 《圧服》
1 《紅蓮地獄》
1 《商人の巻物》
1 《実物提示教育》
1 《虐殺》
1 《否定の契約》
1 《有毒の蘇生》
1 《狼狽の嵐》
1 《蟻の解き放ち》
1 《エラダムリーの呼び声》
1 《直観》
1 《拭い捨て》
1 《殺し》
1 《誤った指図》
1 《火想者の予見》

-サイドボード(15)-
hareruya



レガシーをプレイするのは【GP京都】以来になります。

スタンダードの調整で手一杯だったので、ストレージに眠っていたオムニテルを現行仕様に組み替えてぶっつけ本番で臨みました。


全知実物提示教育


同じ《実物提示教育》系列のデッキである「スニークショー」も考慮しましたが、一度もプレイしたことがないデッキをいきなり持ち込むことに抵抗があり、運用をイメージできず断念しました。

オムニテルは《時を越えた探索》禁止以降すっかりと鳴りを潜めてしまいましたが、《時を越えた探索》が中枢を担っていたデッキであるためいたし方ありません。僕も【GP京都】に向けた練習のときは「探索を効率良くプレイする手順と、その最適な構築」を追求し続けていました。

初ターンから1マナのドローソースをプレイし続け、その過程でフェッチランドかライフコストの《ギタクシア派の調査》を合計3回使用すると、3ターン目に《時を越えた探索》《呪文貫き》を構えられます。これで《時を越えた探索》を通し、4ターン目に土地を置いて今度は《実物提示教育》《呪文貫き》でコンボを仕掛ける、これが僕のオムニテルにおける基本的なゲームプランでした。

常に1マナ浮かせて動くので《目くらまし》をケアでき、相手側に先打ちの《Force of Will》を強要できるのが利点です。


時を越えた探索呪文貫き


《時を越えた探索》のないオムニテルは、他の青いデッキと比較しても著しく劣化してしまったことが否めませんが、僕の他のデッキに対する理解も実戦レベルとは言い難い状態です。

やむなくオムニテルを続行し、上記の「2マナ+1マナ」⇒「3マナ+1マナ」の流れを汲めるよう《時を越えた探索》の代わりに《燃え立つ願い》を使う形のオムニテルをプレイすることに決めました。



オムニテルは原則ノーガードデッキで、相手側の攻撃の全てを受け入れることになります。

レガシーにおけるビートダウンのスタンダード、先手1ターン目《秘密を掘り下げる者》を基準に考慮した場合、4~5ターン目あたりを勝負ターンに定めるのが適切で、それより遅いゲームプランは選びづらいです。

キーカードである《実物提示教育》の入手に戸惑っていてはどうしてもコンボターンが遅くなってしまうので、規定ターンに安定的なコンボ達成を見れるよう、《燃え立つ願い》を選んでいます。

《燃え立つ願い》を用いてなお《狡猾な願い》を維持したのは、コンボに関係するカードを極力「青く」「汎用的なもの」にしたかったからです。

《引き裂かれし永劫、エムラクール》を多めに採用するパターンは《Force of Will》の運用に難があり、《ドリーム・ホール》《祖先の記憶》を使うことは非コンボ達成時の汎用性に難がありといった具合で、結局元の《狡猾な願い》にすることを決めました。


燃え立つ願い狡猾な願い


問題は当然サイドボードが圧迫されることで、デッキタイプの多いレガシーというフォーマットにおいてあらゆるデッキ相手にサイドボーディング0枚の暴挙に出ることになりました。今回本戦中サイドボーディングは1枚もしていません……。

実戦感覚がないため「願い」のサーチ先も山勘状態で、当日後悔しないことを祈るばかりです。



◆本戦結果


スタンダード・レガシー共に両日を2敗以内とすることが目標です。

初日の結果は……


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 1ダークジェスカイ 〇×〇
Round 2アブザンアグロ ×〇×
Round 3ダークジェスカイ ×〇〇
Round 4アタルカレッド ×〇〇


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 5ミラクル
【ビデオカバレージ】
 ××
Round 6Lands 〇〇
Round 7ミラクル 〇〇
Round 8Lands ××


スタンダード3勝1敗、レガシー2勝2敗の計5勝3敗。

やはりレガシーラウンドで躓いてしまいました。


2回戦でアブザンアグロに敗北。

消耗戦から土地・《強迫》《焦熱の衝動》のような無駄カードが続いてしまう良くある負けパターンで、ここに相手の《棲み家の防御者》も加わってリソース差で競り負けました。


5回戦は【フィーチャーマッチ】にてミラクルに敗北。

ここで早速、懸念していたウィッシュボードの選択ミスが発覚してしまい、残るラウンドも厳しい戦いになることが確定してしまいます。詳細は後述の反省項にて。


8回戦はLandsに敗北。

有利なマッチアップではありますが、最速の《暗黒の深部》《演劇の舞台》を決められてしまい、対処できませんでした。どちらのゲームも自分がコンボに向かう1ターン前に上記コンボを揃えられてしまい、2ゲーム目は《踏査》からの《暗黒の深部》《演劇の舞台》で2ターンキルでした。デッキの構造上この動きには触れることができません。

今回《山》《Badlands》を使った関係で《裏切り者の都》のような無色2マナランドの採用が難しくなってしまい、相手の高速展開を逆転しづらくなっています。


裏切り者の都


《不毛の大地》をケアし、《島》《山》と並べて《燃え立つ願い》をプレイする場合、次に2マナランドを置くと青マナが1つしかないため《実物提示教育》《呪文貫き》を構えることができません。

デュアルランドをセットした場合、もし《不毛の大地》されると2ターンの遅れが出ますし、一度《島》を置いてから2マナランドを置くと、必要牌が1枚増える上に遅れも出ているので、意味を成していません。

また赤マナや無色マナしか出ない土地のみのハンドはマリガンの対象ですし、キープ率も低下してしまいます。

《時を越えた探索》を失くしたことで手札枚数を増やすスペルが消え、《Force of Will》のコスト捻出に困ることが増えていますから、初手を極力7枚でキープするためにも、マリガンのリスクを引き下げたい思いがあります。



初日5勝3敗の成績からトップ8を目指すためには、2日目を5勝0敗1分する必要があります。

デッキ的に望み薄ですが、一縷の希望を持ち2日目へ。


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 9アブザンアグロ ×〇△
Round 10エスパートークン ××
Round 11アタルカレッド ×〇〇


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 12BUG続唱 〇〇
Round 13Lands 〇〇
Round 144Cデルバー ××


スタンダード1勝1敗1分、レガシー2勝1敗。

初日と合わせて8勝5敗1分の32位でした。


9回戦、再びアブザンアグロとマッチング。

《精神背信》で見掛けの優位を確認するも、返しに《風番いのロック》をトップデックされ一気に形勢逆転。

守勢に回り手持ちのリソースがあっという間に消え、そのまま引き分けてしまいました。

10回戦では後1度攻撃できれば勝利の場面でまたしても《風番いのロック》をトップデックされ1本目を逆転負けし、2本目は《白蘭の騎士》から4ターン目に「強襲」されて一瞬で敗北。


風番いのロック

このカードヤバ過ぎ……


この後3つ勝ちを重ね、最終戦は【前回チャンピオン】の林 隆智さんとマッチアップ。

4Cデルバー相手にミスもあってのストレート負け。

相変わらずオムニテルは《若き紅蓮術士》《陰謀団式療法》のコンボに弱く、このリカバリーは《時を越えた探索》に依存していていましたが、今回その代役を見つけることができませんでした。

「打たれる前に仕掛けるしかない!」と無茶な算段を立てていましたが、きちんとコンボの1ターン前に上記セットを唱えられて敗北しています。せめてもの抵抗と、ハンデスされた《実物提示教育》を拾えるように《有毒の蘇生》を用意していたのですが、《死儀礼のシャーマン》まで出てきてしまい完全敗北。

コンボを通しにいくのは難しいので、このデッキにしっかり勝つなら《若き紅蓮術士》《僧院の導師》のような別角度の攻め手が必要になってくると思います。また《時を越えた探索》がなくなったことで墓地を肥やす必要がなくなったこともあり、《師範の占い独楽》をドローソースに使うのも悪くないかもしれません。先に挙げた《僧院の導師》とシナジーするため、サイドボード後の戦略にも幅が出ます。


師範の占い独楽僧院の導師




◆終わってみての反省点

・スタンダード

アブザンアグロにロクに勝てないのはやはり問題でした。特に《風番いのロック》に無策なのは非常に良くありません。

ハンデスでは今回のようなトップデッキに対応できませんし、クロックが細く、速やかなフィニッシュ手段を持たない関係上その機会を多く与えてしまうため、引かれてしまっても文句は言えません。

《軽蔑的な一撃》のようなカウンターをタッチで採用できるようマナベースに変更を加えるか、《苦い真理》を多めに採用して手数を増やし、「強襲」達成要因を除去し続けたり本体とトークンの双方に除去を向けられるような余裕を生み出すのが良いと考えています。


軽蔑的な一撃苦い真理


現状得意なデッキ相手には勝ち過ぎる試合展開が多いように思うので、《コラガンの命令》のようなスペルは少し削っても良いかと思います。

また、後日知ったMOPTQ突破の【コントロール寄りダークジェスカイ】が今回やりたかったことをより高い精度でこなせているように思うので、今デッキを選択し直すならこちらの方が良さそうですね。



・レガシー

こちらは前述したように明確な構築ミスがありました。

具体的にはサイドボードに《思考囲い》が必要で、下記のようなシチュエーションで求められます。




続くターン《実物提示教育》《Force of Will》でコンボを仕掛けたい場面。このターンは見た目余っている《燃え立つ願い》で何かをサーチできますが、今回のリストには有効なカードは《圧服》しかありません。しかしここで《圧服》をサーチしても次のターン土地を引き込めなければ無駄にターン消化してしまうか、ドロー効果に賭けるような展開になってしまいます。

また《Force of Will》《全知》がそれぞれ《島》《呪文貫き》のような状況でも同じで、4マナ目の使い道が決まっているため《圧服》《呪文貫き》のどちらか片方しか唱えることができず、無駄になってしまう恐れがあります。

こういった場面を想定して、1つ前のターンでのマナ活用手段としてハンデスが必要でした。


思考囲い


ハンデスを打つためにサーチしてきたデュアルランドを《不毛の大地》されてしまうとコンボターンが遅れてしまうため、「願い」のサーチ先は基本地形が使用可能な色に極力絞っていたのですが、ハンデスが必要なのは《不毛の大地》を採用しづらいコンボデッキやミラクル相手なので、この点を考慮する必要はなかったように思います。実戦不足でした。

ちなみに《強迫》ではなく《思考囲い》である理由は、カウンター呪文だけでなく《ヴェンディリオン三人衆》《グリセルブランド》も捨てさせることができるからです。《実物提示教育》のプレイに大きく作用するため、これらを対処範囲に収められることも大きな利点になります。

その点では《陰謀団式療法》でも構いませんが、毎回《ギタクシア派の調査》を引けているとも限りませんし、《渦まく知識》でごまかされてしまう可能性もあるので、確実性を取って《思考囲い》を使うのが良いと思います。


またメインボードの《呪文貫き》3枚も1枚は《狼狽の嵐》にすべきだったと思っていて、相手が《呪文貫き》を警戒して十分にマナを立たせながら動いてきた場合浮いてしまいますし、被ったときに弱いので分けておいた方が良いと思います。


呪文貫き狼狽の嵐


ミラクルの《相殺》とスニークショーの《騙し討ち》を対処できるよう《呪文貫き》に絞ったのですが、特定のカードを気にし過ぎるがあまり、より多く発生するシチュエーションに対応できていませんでした。


上記はどちらも敗因に直結しました。

サイドボードの《直観》はプレイする余裕がなく頭でっかちなカードになってしまったので、ここを《思考囲い》に変更すべきです。

また《時を越えた探索》がなくなった関係でデッキ内から「探査」スペルが消え、《ギタクシア派の調査》の価値が落ちました。

手札を見ることで得られるリターンも少ないので、今なら《手練》か、上記に挙げた《師範の占い独楽》を使うのが良いと思っています。





以上です。

もうすぐ2015年も終わりますが、僕個人としては激動の1年でした。

【The Last Sunカバレージのインタビュー】でもお答えしましたが、新鮮の一言に尽きる1年で非常に充実していました。

来年度は更なる飛躍に繋げると共に、プロとして結果で示す1年を目指したいですね。

それではまた次回。


原根



この記事内で掲載されたカード


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事