挑戦者インタビュー: 和田 寛也 ~初タイトルに向けて~

晴れる屋

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By Kenji Tsumura


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 和田 寛也(東京)。

 2007年にマジックを始めたという和田は、今現在はシルバーレベルのプロプレイヤーで、昨年には【BIG MAGICとユニホーム契約を締結】した。




 和田は独自の構築論を持つプレイヤーとして知られており、モダン環境で行われた【ばりエクスプレス神戸】では《野生語りのガラク》《変わり谷》の入った【黒緑ジャンク】で、【プロツアー・タルキール覇王譚 板橋予選】では4枚の《波使い》《フェアリーの集会場》が印象的な【マーフォーク】を使用して優勝を果たし、世間に結果以上の大きなインパクトを与えた。


野生語りのガラク変わり谷波使いフェアリーの集会場


 【第5期スタンダード神挑戦者決定戦】でも当然のごとく自作の【白蘭の騎士入りアブザン・アグロ】を持ち込み、見事に高橋 優太への挑戦権を獲得している。


白蘭の騎士


 聞けば「スタンダード神」高橋 優太とは因縁めいた出会いがあったらしく、「スタンダード神決定戦」には並々ならぬ思いがあるとのこと。今回は自身のデッキへのこだわりや、「スタンダード神決定戦」にかける意気込みについて語ってもらった。



自分が環境をどう捉えてどのようにアプローチするのか、その過程を重要視している



--「和田さんとマジックとの出会いはいつ頃ですか?」

和田「マジックを始めたのは『次元の混乱』くらいです。大学を卒業するまで4年間音楽をやっていたんですが、自分には才能がないなと(笑) 就職を機に新しい趣味を探そうと思い立ったものの、この歳だとスポーツは厳しいし、マインドスポーツがいいんじゃないかと思ったんです。でも将棋や囲碁を始めるにはやっぱり年齢がネックになったので、前々から存在を知っていたマジックを始めました」

--「音楽からマジックはかなり異色ですね。将棋や囲碁なども候補に挙がったということは、もともと競技志向が強かったんですか?」

和田「そうですね。マジックに惹かれた1番の理由は、競技体制がしっかりしているところでした。プロツアー予選があるということも知っていましたし、なるべく早いうちに挑戦したいと思っていました。ですが、マジックを始めたばかりの自分にとって構築戦のハードルは高く、直後の『タイムスパイラル』ブロック構築のプロツアー予選への参加は叶いませんでした。ただその次の予選がリミテッドだったので、これならカード資産の問題もないし、ということですぐにリミテッドを始めました」

--「和田さんは構築が得意というイメージがあるので、スタートがリミテッドというのは意外ですね。ちなみにそのプロツアー予選の結果はどうでしたか?」

和田「1回戦がやまけんさん(山本 賢太郎)、2回戦がなかちかさん(中島 主税)で、2戦ともぼこぼこにされました(笑) その頃には構築用のカードも揃ってきていたので、【PWC】【五竜杯】に毎週通い詰めるようになりました」




--「和田さんは自作のデッキに強いこだわりをお持ちのようですが、当時から自分でデッキを作っていたんですか?」

和田「当時も自作のデッキで参加していました。人のデッキを教えてもらって参加する、という流れはあまり記憶にないですね。僕はただ勝ちたいのとは少し違って、やりたいことをやって勝ちたいんです。マジックというゲームを自分の思い通りにしたい。その中で、自分が環境をどう捉えてどのようにアプローチするのか、その過程を重要視しているので、自分が試行錯誤した結果として選択したデッキが人と同じだったり、ネットに掲載されているデッキと同じだったことはありますが、その過程を飛ばしていきなりコピーデッキを使うことはないですね」



自分の成功体験の引き出しを増やすことも大切



--「ご自身の思考過程を大事にされているということですが、その中で大切なことはありますか?」

和田「他のプレイヤーが何を意識しているかを常に考えるようにしています。例えば【グランプリ・神戸2014】前後のモダン環境は『親和』・『《出産の殻》』・『青赤《欠片の双子》コンボ』・『緑黒ジャンク』の4強環境でした。そうやって突出したデッキがいくつかあると、みんな必ずそれらのデッキを意識したデッキ構築や練習をしてきますよね」

--「強いデッキだからこそ、しっかりと対策されると」

和田「そうです。それを踏まえたうえで、環境的に勝ちやすいデッキを探した結果が【マーフォーク】でした。強いデッキが人気が出たり対策されるのは当たり前なので、それよりもひとつ上のレイヤー(層)である、『どの戦略に勝ちたいとトーナメント参加者が考えているか』を見てデッキや戦略を選ぶようにしています」




--「和田さんが『煮詰まった環境』が得意な理由が分かった気がします」

和田「環境末期は周囲の考えていることが分かりやすいですからね。逆にプロツアーのように環境初期だと、周囲のプレイヤーがどのようなメタゲームを想定しているかが把握しづらいため、環境末期よりはやりづらいです。また、自分の成功体験の引き出しを増やすことも大切だと考えています。1度成功することができれば、次に似たような状況になったときに成功体験を適応させればいいだけなので、練習効率がグッと上がります」



今手が届きかかっている『神』というタイトルには強い気持ちで挑みたい



--「高橋 優太さんとの出会いは印象的だったとお聞きしましたが、どのような出会いだったんですか?」

和田初めて構築のデッキを作って大会に参加した最初の対戦相手があんちゃん(高橋 優太)だったんです。それ以来むちゃくちゃライバル視していて、『手つきが上手いしなんだこの人は!』と思っていたら、いつの間にか【グランプリで優勝】してて。しばらくしたらまた【グランプリ優勝】して、『あー、あの人強かったんだ』みたいな(笑)」




--「それ以来、高橋さんと公式戦で当たったことはなかったんですか?」

和田「一緒にドラフトをやったりはしますが、公式戦での対戦はないですね。今回ようやくリベンジのときがきました!それとこれだけマジックをやってて、タイトルを持っていないんですよね。【ミスターPWC】の称号はいただいたことがあるんですけど、プレミアイベントで上位入賞したり優勝したことがなくて……それだけに、今手が届きかかっている『神』というタイトルには強い気持ちで挑みたいと思っていますし、良い機会がいただけたと感謝しています」

--「本日はありがとうございました。本戦もがんばってください」






 マジックを思い通りにしたい。

 和田が自作のデッキにこだわる背景には、調整過程が自身の成長を促すという明確な理念があった。

 マジックに対する真摯な思いゆえに、調整期間が長ければ長いほど消耗も激しくなるとのことだが、それだけに結果が伴った際の喜びはひとしおだろう。

 意外なことにこれまではタイトルに恵まれなかった和田。初めてのタイトル獲得に向け、今日も自分のデッキに磨きをかける。