こんにちは八十岡です。
先日行われた【プロツアー『イニストラードを覆う影』】で偶然にもトップ4という成績を残せたので、簡潔ですが、そのレポートになります。よろしくお願いします。
■ カードパワーとマナベースの妥協点を探して
『イニストラードを覆う影』が発売したことにより、スタンダードのカードプールから『タルキール覇王譚』と『運命再編』が落ちて、スタンダードは激変しました。
マジックの歴史の中でも「雑に強いカードトップ3」に入るであろう《包囲サイ》が落ちたことも1つの要因ですが、やはり一番でかいのはフェッチランドがなくなったことによるマナ基盤の弱体化です。
僕はまず最初に「エスパードラゴン」はまだ強いんじゃないかと思い組んでみたのですが、あまりのマナベースの弱さに愕然とし、そして挫折しました。そうなると、マナベースが強い2色のデッキを探すしかないのですが、やはり2色にまとめるとカードパワーが弱くなり、それはそれで微妙といった感じで、
このスタンダードはカードパワーとマナベースの妥協点をどう見つけるかだと思いました。
そして『イニストラードを覆う影』の発売から1週間がたったころ、「バントカンパニー」と「白単人間」という2つのデッキがメタのトップに上がってきました。
「バントカンパニー」は3色ということもあり、やはりマナベースには不安を抱えていましたが、それを《集合した中隊》のカードパワーで補っているデッキ。
それとは逆に「白単」は単色ならではのマナベースの安定性で勝っているデッキ。
このように環境を象徴するような2つのデッキが勝っているなと感じました。他には「緑白人間」や「青白人間」もありましたが、「人間」というアーキタイプでは、やはり単色で安定性の高い「白単」が頭1つ抜けていたと思います。
■ 2つの仮想敵と復活の「エスパードラゴン」
プロツアーでは間違いなく「バントカンパニー」と「白単人間」が多いので、少なくともこの2つと戦えるデッキを持っていくことが、プロツアーで勝つための最低条件になりました。なので、出発前までは「白単人間」を永遠と回しつつ、周りが「バントカンパニー」を回しているのを眺めていました。
その結果。結論としては、強い全体除去と1枚でゲームに勝てるフィニッシャーがあればなんとかなりそうということでした。
このスタンダード環境の全体除去と言えば、
さらにフィニッシャーというと、
このあたりでしょうか。とはいえ、「エスパードラゴン」は最初にも書いたとおり、マナベースの不安定さから、かなり厳しいと思っていたので、《衰滅》と《保護者、リンヴァーラ》をうまく使った「白黒系」を色々と考えました。
特に《徴税の大天使》《衰滅》《保護者、リンヴァーラ》のラインはかなり美しく可能性を感じたのですが、ドロー操作が弱くデッキが重いため安定性がなく、そもそもトリプルシンボルとダブルシンボルを要求するので、きちんと回るわけがない、ということで終了。
最終的に、この環境は2色のコントロールではカードが弱く、3色以上のコントロールだとマナベースが厳しい、ということで落ち着きました。どちらの選択にも問題が残っている以上は、どちらかの長所を伸ばした方がよさそうです。そこで一番強い全体除去と一番強いフィニッシャーをもつ「一番カードが強いコントロール」がいいだろうと、「エスパードラゴン」を使うことにしました。
4 《島》 4 《沼》 4 《窪み渓谷》 3 《大草原の川》 4 《詰まった河口》 2 《港町》 3 《コイロスの洞窟》 2 《乱脈な気孔》 1 《水没した骨塚》 -土地(27)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《龍王オジュタイ》 2 《龍王シルムガル》 -クリーチャー(10)- | 2 《意思の激突》 4 《シルムガルの嘲笑》 3 《究極の価格》 2 《闇の掌握》 2 《精神背信》 3 《忌呪の発動》 2 《苦い真理》 1 《骨読み》 3 《衰滅》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -呪文(23)- | 3 《強迫》 2 《死の重み》 2 《否認》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《苦渋の破棄》 1 《無限の抹消》 1 《悪性の疫病》 1 《闇の誓願》 1 《龍王の大権》 1 《死の宿敵、ソリン》 -サイドボード(15)- |
大量のタップイン土地で色マナを確保しつつ、2マナ域のカードをたくさんいれることで、3ターン目にもタップインを処理できるようにしました。
基本的には「1ターン目にタップイン土地、2ターン目にアンタップイン土地、3ターン目にタップイン土地」を置き、4ターン目に《衰滅》か、4ターン目タップイン土地からの5ターン目《龍王オジュタイ》の動きを想定したマナベースになっています。6枚目の土地をアンタップインできるかは運次第です。
サイドボードには、なかしゅー(中村 修平)から教えてもらった「《闇の誓願》+《無限の抹消》or《悪性の疫病》」を採用しました。3枚のカードスロットでも2種類のカードを2枚換算できるテクニックです。あとはそれっぽいものを入れて終了。
個人的なデッキの評価は、入っているカードだけ見れば95点ぐらいだが、マナベースは70点といった感じです。何回事故って負けるかといったところでしょう。
そして結果は、
ドラフト: 5勝 1敗
スタンダード: 7勝 2敗 1分
でトップ8に入り、2没で4位でした。
ちなみに負けたゲームは、ほぼすべて5、6ターン目の土地がタップインのせいで負けました。逆に言えば、綺麗に土地を引けたゲームはきちんと勝てたので、予想通りといえば予想通りな結果でした。ドラフトをきちんと5勝できたのが今回の勝因だと思います。最近ドラフトの調子がいいので、【晴れるーむ合宿】の成果がきちんと出ているのかなと感じています。
ちなみに個人的なプロツアー『イニストラードを覆う影』のベストデッキは、優勝した「緑白トークン」です。
「人間」や「バントカンパニー」に相性がいいうえに、大量のプレインズウォーカーを採っているのでコントロールにも相性が悪くない。このようにかなりいいデッキでした。ただ「緑黒アリストクラッツ」には相性がよくないため、これからどうなるかはわかりませんが、2色のデッキの中では一番強いデッキだと思います。
今回のトップ4入賞により来年度のプラチナレベルが確定したので、また来年も同じような生活ができそうです。あとは今年の世界選手権に出られるように、さらに頑張っていきたいと思います。
ヤソ
■ 追記: プラチナレベルの報酬変更について
そういえば、プロツアーの最終日に「来年度からの殿堂報酬とプラチナ報酬が大幅にカットされ、その代わりに再来年からの世界選手権の賞金があがる」という発表があり、プロマジック界が大騒ぎになりました。
その後、色々なプロプレイヤー達が意見を発信しはじめました。一応、自分も殿堂&プラチナという立場なので黙っているわけにもいかないかな、と思いたって記事を書いたのですが、書き終えた直後に、【「やっぱりあの話はなかったことにします」という発表】がされて記事が没になってしまう、という悲しい事件がありました。
ちなみに僕のスタンスは、この変更があったとしてもマジックとの付き合い方は変わりません。目標がプラチナではなく世界選手権になるだけの話です。
ただ、今回の件で、いつまでもウィザーズから与えられているものを頼りにしていくだけではダメなんだな、と再認識しました。おそらく8月のプロツアー『異界月』に来年度、再来年度の話がきちんと発表されると思いますが、そこでは、いい意味でも悪い意味でも、多くのプロプレイヤーにとっての転機が訪れるのではないかなと思っています。
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