晴れる屋劇場 -Romeo × Juliet-

大久保 寛







 みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの大久保です。



登場人物:大久保 寛

晴れる屋メディアチームのエディター兼ライター。自分がない。



 突然ですが、みなさんはアイデンティティ(自己同一性)、確立できていますか?



アイデンティティ(自己同一性)とは?

人が時間や環境を越えて一個体の人格として存在し、自己認識を確信する自我の統一を持っていること。本質的自己規定。



 法律上は成人していますが、まだまだ精神的に大人になりきれていない僕には自分というものが見えていません。自分とは何か? 私以外? 私じゃないの?? などと根源的な疑問へとぶつかり、仕事も手につかない状態です。



自我の危機



 仕事に手が付かないなら仕事をしなければいいじゃない。にんげんがさき。仕事があと。

 そう思った私はさっそく職場へと勤怠報告のメールを一通入れました。



各位


お疲れ様です。晴れる屋メディアチームの大久保です。

ここ数日アイデンティティを見失いがちなこともあり、自分探しのために北へ向かうことにします。
つきましては、本日より1か月ほどお休みをいただきたいです。

一身上の都合で誠に恐縮ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

緊急の連絡などがございましたらXXX-XXXX-XXXX(大久保携帯)にご連絡ください。


CC. まつがんさん
現在進行中のタスクに関しまして、まつがんさんに引き継ぎをお願いします。


大久保 拝



 が、普通にめちゃくちゃ電話がきて怒られました。せっかく自分探しの旅のために予約した北海道グルメツアーもキャンセルです。世間はアイデンティティを確立していない人間に対してかくも冷たいのですね。社会の闇を垣間見た気がします。


 しかし、このままでは私も引き下がれません。そこで、今日は晴れる屋が誇る個性派プレイヤーのみなさんにアイデンティティについてインタビューを実施しました。




登場人物:まつがん(伊藤 敦)

晴れる屋メディアチームのチーフ。マジックに関する様々な記事を豊富な語彙とユニークな表現を用いて時にユーモラスに、時にドラマティックに書き分ける奇才。その独特のセンスで組み上げられたオリジナルデッキの構築論、【だらだらクソデッキ】は必見。




「まつがんさんはどうしてまつがんさんなんですか?」







「藪から棒だね。簡潔に言い表すのは難しいけど、ゼウスを目指すことは一つのレーゾンデートルになっているかもね。ゼウスを目指す以上は、デッキを組むという行為そのものが自己表現……すなわち生きる目的であると言えるんだよ。たとえクソデッキを組んでしまったときでもね」







「(クソ)デッキを組むことが存在の証明、ということですか……困難な道ですね」







「ところで、あと2枚でクソデッキが完成する」







「クソデッキを組むとどうなるんだ?」







「知らんのか」







チケット(※)が溶ける









(※:チケットとは【Magic Online】中の仮想通貨のこと。英語表記はTix。大会参加やカードの売買の際に使用される。)





登場人物:津村 健志

Hareruya Pros所属プロ。メディアチームのエディター兼ライター。フェアプレイ精神溢れる紳士的なプレイヤーとして、2012年にマジック界の最大の栄誉の一つである「マジック・プロツアー殿堂」を受賞。近年の主な成績は【ワールド・マジック・カップ2015】(団体戦)トップ8入賞など。




「津村さんはどうして津村さんなんですか?」







「うーん、話すと長くなるけど今時間大丈夫?」







「要点だけで大丈夫で……」







「まず、これまでのマジック人生があってこそ今の僕があるってことから話すべきかな。あれはまだ1997年、マジック的には『第5版』が発売された頃、マジックをプレイしていた友達がいたから一緒にマジックをやるようになってね。当時はまだ一過性のマイブームでしかなかったんだけど、中学生になってからまたのめり込んでいって……あの頃はほとんど家とカードショップの往復だね。まぁ、ある意味今でもそれは変わってないんだけど(笑)それは置いておいて、それから認定大会なんかにもちょくちょく出るようになったんだ。そのときに地元・広島の強豪プレイヤーである【檜垣 貴生さん】や、後に僕と2012年の『マジック・プロツアー殿堂』を受賞することになる【大磯 正嗣さん】と知り合ったり、遠征して大会に参加したりするようになって。そうそう、グランプリに参加するようになったのもこの頃からで、初グランプリの【グランプリ・宇都宮02】では初めてのロチェスタードラフトで運良く21位に入ることができたんだけど、その頃からプロツアーを意識して各地で開催されていたプロツアー予選に真面目に参加するようになってね。初めて参加した【プロツアー・シカゴ03】の会場で伝説のマジックプレイヤーである【カイ・ブッディ】を見たときの感動は今でも忘れられないよ。それからしばらくして東京のプレイヤーと練習したりプロツアーに参加するようになって、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手賞)も獲得することができて、あの頃はマジック漬けなんて言葉じゃ言い表せないほどマジックばかりしていたね。そのあと大学に入学して、マジックを制作した会社であるウィザーズ・オブ・ザ・コーストさんから【コラムの連載】をお願いされるようにもなったんだ。大学在学中はプロマジックからは少し距離を置こうと思ってたんだけど、記事は書くのも読むのも大好きだから日本のマジックの記事っていうものをもっと高めたいと思っていて、このコラムの執筆にすごく力が入って……」






「始まっちゃった……」







(省略しています。【全て読むにはこのリンクをクリック!】)









登場人物:齋藤 友晴

Hareruya Pros所属プロ。「株式会社晴れる屋」の代表取締役社長。ハッピーの求道者として、"マジックで世界をひとつにすること"をライフワークとする。現在も【グランプリ・メキシコシティ2016】で準優勝という好成績を収めるなどプロシーンでも活躍中。




「齋藤さんはどうして齋藤さんなんですか?」







「よく聞いてくれたね。つまり、ハッピーとは何か? という質問に置き換えられると思うんだけど」







「その置き換えだと質問の意図が変わってくるような気がするんですが……」







「いや、置き換えられるよ。いい? まず前提を共有するけど、実はこの世界はそもそもハッピーで構成されているんだ。ありとあらゆる人やモノ、出来事がハッピーだから、古今東西の森羅万象はすべてハッピーに帰結するってわけ。だからその質問もハッピーとは何か? と置き換えることで演繹的に答えが出せるんだよね。業界ではこれをハッピー三段論法って呼ぶんだけど」







「あ、危ない人だ……」







つまりアイデンティティハッピー☆







「もうやだこの人」









・  ・  ・



 さすが晴れる屋を代表する個性派メンバーだけあって、ちょっと……というか、全体的に理解が追いつきませんでした。


 ところでこのインタビューをしているときに、ふとある古典演劇の有名なセリフについて思いだしました。

 ウィリアム・シェイクスピアの代表作の一つでもある『ロミオとジュリエット』です。該当部分をざっくり抜き出してご紹介しましょう。



ウィリアム・シェイクスピア著『ロミオとジュリエット』

生家の対立から苦しむ若き男女、ロミオとジュリエット。作中で、ジュリエットはロミオに問いかける。

「ロミオ、あなたはどうしてロミオなの?」

これに対し、ロミオは「ただ一言、僕を恋人と呼んでくれたなら、その言葉こそ僕の洗礼。今日から僕はロミオでなくなります」と応じ、2人は愛を確かめ合ったのでした。



 このジュリエットのセリフは誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。これは"モンタギュー家のロミオ"という名前(記号)とその本質に関する疑問です。

 『ロミオとジュリエット』の舞台は14世紀のイタリアと言われています。時代的背景をふまえた上でロミオの回答を取り上げてみると、ロミオという一個人の生きる道、ロミオをロミオたらしめる形而上学的な要因(≒アイデンティティ)についての対話であるとも考えられるでしょう。






 同作品をベースに2007年に制作された『ロミオ×ジュリエット』(制作:株式会社ゴンゾ)というアニメーション作品もあります。



『ロミオ×ジュリエット』あらすじ

これは2人の若者の恋のお話。
しかし、恋と呼ぶにはあまりに過酷で切ないお話。

舞台は空中浮遊都市ネオ・ヴェローナ。

キャピュレット家統治の下
神秘の力の恩恵に恵まれ栄華を誇ったこの場所は
14年前、モンタギュー家の反乱により、
その平和は過去のものとなる。

暴君による悪政が敷かれ、貧富の差は明白。

キャピュレット王家の血を引きし、
ただ一人の生き残りである少女 ―― ジュリエット
両親のカタキ ―― 独裁者の息子ロミオ

残酷な運命は2人を引き合わせ、恋に落ちる。

【GONZO | Animation Studio Japan】作品紹介ページより引用。



 『空中浮遊都市』や『神秘の力』といった王道ファンタジーに欠かせないパワーワードに加えて、あらすじから漂うこの大河的スケール感……心躍らないわけがない! さっそく視聴してみましょう!





・  ・  ・



■ TVアニメ『ロミオ×ジュリエット』Memorial DVD-BOX発売記念!


 ウィリアム・シェイクスピア没後400周年記念として、7月6日(水)にTVアニメ『ロミオ×ジュリエット』のDVD-BOXが発売されます!







■ 商品情報



商品名: シェイクスピア没後400周年記念
「ロミオ×ジュリエット」Memorial DVD-BOX
発売日: 2016年7月6日発売
価格: 本体価格16,000+税
品番: FFBA-9007
枚数: DVD 3枚組
収録分数: 本編約570分
音声仕様: 日本語 ステレオ
画面サイズ: 16:9
ディスク仕様: 片面2層
製作年: 2007年
製作国: 日本
発売元: フロンティアワークス
販売元: フロンティアワークス







 Twitterキャンペーンも実施! 上記ツイートをRTしてくださった方の中から抽選で5名様に『シェイクスピア没後400周年記念「ロミオ×ジュリエット」Memorial DVD-BOX』をプレゼント!






 7月23日()には晴れる屋と『ロミオ×ジュリエット』のコラボ杯を開催します! 優勝者には通常の晴れる屋ポイントに加えて『シェイクスピア没後400周年記念「ロミオ×ジュリエット」Memorial DVD-BOX』を進呈!!

 さらに、大会にご参加いただいた方全員に『ロミオ×ジュリエット』の特製ポストカードをお配りさせていただきます!




 アニメタイトルと『マジック:ザ・ギャザリング』の大会がコラボするのは業界初!? この新たな試みとなるコラボ大会にみなさんぜひご参加ください☆


 また、晴れる屋では『ロミオ×ジュリエット』Memorial DVD-BOXを7月6日(水)~7月23日()の期間限定で販売させていただきます! 皆さまぜひお買い求めください!








 なるほど、よく分かりましたよ。僕にもジュリエットが必要だということが。


 ということでジュリエットを探すために旅に出るので1ヵ月ほどお休みをいただきたいです……っと、メール送信。さて、さっそく旅行会社でもチェックするとしましょう。今回はしっかりと上司にも根回しをしましたしね。



「この前勧めてくれた『ロミオ×ジュリエット』観たよ。やはり我々にもジュリエットが必要か……」







まつがんさん!







「俺も同行するよ。ウチら最強のコンビで……」







最高の夏にしようぜ!!!!


















カタカタカタカタ……







カタカタカタカタ……







カタカタカタカタ……




……自我を失いそう











「なんだろう、これ……」











『ロミオ×ジュリエット』……?







「……帰ったら見てみようかな」















そして誰もいなくなった























– Fine. –









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