後藤 広行 (東京)。
【第6期スタンダード神挑戦者決定戦】で予選ラウンドを8勝1敗の1位で駆け抜け、勢いそのままに優勝を掴み取った後藤は、【第2回マナバーン杯】での優勝経験もある折り紙付きの実力者だ。
【第6期スタンダード神挑戦者決定戦】の【決勝戦】では、ライフが100点を越えるスタンダード離れした試合模様となったが、その様子を固唾を飲んで見守った方も多いのではないだろうか。
このインタビューでは、後藤がマジックにのめり込むようになったルーツ、そして【第6期スタンダード神挑戦者決定戦】への意気込みを伺った。
みんなで飲みながらワイワイドラフトするのがとにかく楽しくて
--「後藤さんはいつ頃からマジックを始めたんでしょうか?」
後藤「最初にマジックを知ったのは中学生くらいでした。ルールとかは全然分からなかったんですけど、イラストがすごくかっこよかったので、とりあえずといった感じで購入してみたのがきっかけです」
--「それではマジックとはかなり長いお付き合いなんですね。その後すぐに大会に出たりするようになったんですか?」
後藤「いえ、遊ぶお店もなかったりルールも分からなかったりで、そのときはすぐに辞めました。ちゃんとルールを覚えたのは、4年くらい前に仕事の都合で上京することが決まってからです。上京する際にふと『そういえば昔こんなゲームやってたな』とマジックのことを思い出して、東京なら遊ぶお店にも困らないだろうし始めてみようかなと」
--「当時はどのお店でプレイされていたんですか?」
後藤「下北沢に【Atelier】ってお店があるんですけど、そこではお酒を飲みながらドラフトができるんですよ。みんなで飲みながらワイワイドラフトするのがとにかく楽しくて、そこでルールを教わりながらドラフトにはまっていきました。【Atelier】は大会の開始時間も遅いので、仕事が終わった後でも気軽に参加できる点もありがたかったです」
--「良いお店と良いお友達に恵まれたんですね。そこから構築戦を始めるまでは時間がかかりましたか?」
後藤「ドラフトの回数をこなしていくうちにカードも揃い始めたので、フライデーナイトマジック (以下FNM) や【五竜杯】に参加するようになりました。大会の仕組みとかスイスラウンドとか全く理解してなくて、行き当たりばったりでしたけど(笑)」
--「ちなみに【FNMに参加していてもドラフトのためならドロップする】とお伺いしましたが、これは本当なんでしょうか?(笑)」
後藤「本当です(笑) ドラフトは個々人の趣味や趣向がデッキに反映されるのも面白いですし、毎回違ったデッキになって常に新鮮なところが好きです。なので機会があればできるだけ参加するようにしています」
構築戦は自分でデッキを作るところが一番の魅力
--「【第6期スタンダード神挑戦者決定戦】の【決勝戦】は大熱戦でしたが、実際にプレイされていてどのように感じていらっしゃいましたか?」
後藤「最後は《束縛なきテレパス、ジェイス》の『-9』能力や、《搭載歩行機械》が分裂しても負けそうなギリギリの展開だったんですけど、なんとか勝てて良かったです。ただあのとき使っていた【エルドラージデッキ】は、何にでもバランス良く戦える反面で劇的に相性が良いマッチアップがないんです。なので決勝戦に限らずどの試合もギリギリで、常に気の抜けないゲームばかりでした」
--「後藤さんが優勝された当時は、まだスタンダードで『エルドラージ』デッキが活躍する前だったので、スタンダードでも《空中生成エルドラージ》や《不快な集合体》が採用されたことに驚きました。普段はリミテッドをメインにプレイされているとのことですが、リミテッドでの経験が構築のデッキを作る際にも役に立つと感じることはありますか?」
後藤「難しいところですが、リミテッドで強いカードは構築でも使ってみたいという意欲は湧きますね。『エルドラージ』デッキなんかはその典型と言えるかもしれません」
--「いつも構築戦では自作のデッキを使用されるんですか?」
後藤「コピーデッキも練習用に作りはするんですけど、本当に練習用といった感じで、大会には自作のデッキで出るのがほとんどです。構築戦は自分でデッキを作るところが一番の魅力だと思っているので、なるべく自分でデッキを作るようにしています」
自分は本当の意味での挑戦者
--「最後に、『神決定戦』に向けての意気込みをお聞かせいただけますか?」
後藤「今回から試合方式が変わった (※この度からメインボード戦を2本を行い、サイドボードが使えるのは3本目以降となる) ので、それがデッキ選択に与える影響が大きいんじゃないかなと。例えば『白単人間』みたいにメイン戦の勝率が明確に高いデッキは、以前よりも価値が高まったように思います。ほかにも各マッチの相性差がハッキリしたデッキを選ぶのは当たり外れが大きくなりましたし、以前にも増して読み合いが難しくなったと思います」
--「確かに、このルール変更が与える影響はかなりのものだと思います。対戦相手である和田さんに関してはどのような印象をお持ちでしょう?」
後藤「和田 (寛也) さんも含めて『神』になる方は強豪ばかりなので、自分は本当の意味での挑戦者だと思っています。今のスタンダード環境は強いデッキの種類が多くてデッキ選択も練習も難しいですが、せっかく手に入れた機会なので、しっかりと勝ちきりたいです。『神決定戦』特有のデッキの読み合いも意識して本戦に挑めればと思います」
--「ありがとうございました。本戦もがんばってください」
自分は本当の意味での挑戦者。
そういって謙遜してみせた後藤だが、【第6期スタンダード神挑戦者決定戦】の段階で「エルドラージ」デッキに目を付けていた着眼点、そしてマジックの実力に疑いの余地はない。
「挑戦者」と「神」。個性的なデッキ選択が光る両者だけに、試合が始まる前の読み合いやデッキ選択も勝負を分かつポイントになるだろう。