奇跡デッキでエルドラージを倒す方法

Jeremy Dezani



こんにちは。

レガシーがプロツアーのフォーマットになったことがないので、正直なところ私は奇跡とエルドラージについてそこまで詳しいわけではありません。ですが先日【グランプリ・プラハ2016】のためにエルドラージ、続唱BUG、リアニといった様々なデッキをテストした結果、最終的に私は青白奇跡を使用することに決めました。

この奇跡というのは本当にすごいデッキです。何せこのデッキを回し始めてからというもの、レガシーが楽しくて仕方がないのです。毎ゲーム面白い場面がありますし、どんなデッキとも戦えます。ゲーム中の選択肢は「いつフェッチするか?」「何をカウンターするべきか?」「どんな順番でライブラリトップにカードを積むか?」など無数にあり、完璧にプレイするのはおよそ不可能に近いようにも思えるほどです。

もちろんゲームが長すぎてゲームスコア1-0でのマッチ決着ということも珍しくないデッキではありますが、それは大抵、ほぼ詰んでいるのに対戦相手がなかなか1ゲーム目を投了しない、といった場合がほとんどです。【グランプリ・プラハ2016】でも、14マッチ中3回そういった決着の仕方がありました。



奇跡とはどんなデッキか?


師範の占い独楽相殺


既にたくさんの記事が奇跡デッキについて色々と書いてくれているので、ここではいくつか基本的なことを書くにとどめます。

奇跡というのはレガシー環境において唯一の純正コントロールデッキです。したがってあなたが奇跡を使っているなら、ゲームを早々に決着しようと焦る必要は一切ありません。ゲームが長引けば長引くほど、奇跡の側が有利になるからです。

《相殺》《師範の占い独楽》のコンボは対戦相手をロックすることが可能です。レガシーのカードプールは広大で軽くて強力なカードが数多く使えるため、より早いターンに脅威を展開するべく大抵はマナカーブは低く寄せられており、したがって1~3マナの呪文への依存度が極めて高いからです。

奇跡デッキでは《師範の占い独楽》のおかげで、トップのカードを手札に加えるかライブラリに残しておくかという選択肢ができます。それに加えて、相手のターンに《師範の占い独楽》のドロー能力を起動することで、ライブラリトップに積んだ《終末》を引き入れて「奇跡」を誘発させ、インスタントタイミングで《終末》をプレイすることもできます。

欲しいカードを欲しいタイミングで引き込むのに十分な回数ライブラリをリシャッフルするためには、たくさんのフェッチランドが必要です。しかしあまりライフを支払いすぎるとバーンスペルを入れたデッキに対して少々不安が出てきます。そこで私は《Tundra》の採用を2枚だけにとどめ、代わりにたくさんの《島》《平地》を入れることで、《基本に帰れ》を貼った状態でも問題なく動けるようにしました。



Jeremy Dezani「奇跡」
グランプリ・プラハ2016

6 《島》
2 《平地》
2 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《沸騰する小湖》
2 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
1 《乾燥台地》

-土地 (21)-

1 《瞬唱の魔道士》
2 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー (3)-
4 《渦まく知識》
4 《剣を鍬に》
3 《思案》
1 《対抗呪文》
1 《議会の採決》
1 《天使への願い》
4 《意志の力》
4 《終末》
1 《払拭の一撃》
4 《相殺》
2 《基本に帰れ》
4 《師範の占い独楽》
3 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (36)-
3 《狼狽の嵐》
2 《Moat》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《誘惑蒔き》
1 《精神壊しの罠》
1 《払拭の一撃》
1 《安らかなる眠り》
1 《基本に帰れ》
1 《謙虚》
1 《真髄の針》
1 《カラカス》

-サイドボード (15)-
hareruya







奇跡のメタ上の立ち位置は?

レガシーでエルドラージデッキが流行って以降、奇跡は多大な苦難に見舞われていると言われています。ですが、私はその考えには賛同しません。きちんとしたエルドラージ対策を搭載することで、奇跡は今よりもっと進化することができる、と考えています。

エルドラージが奇跡に強いと言われる理由の一つは、奇跡というデッキが《師範の占い独楽》《相殺》とのコンボを軸にしているからです。エルドラージのように高いマナコストのカードや《魂の洞窟》があるとこれらは狙った効果を発揮しませんし、それに加えてエルドラージ側はこちらの軽い呪文全般を鬱陶しいアーティファクトで妨害してきたりもするのです。


《虚空の杯》《アメジストのとげ》


虚空の杯アメジストのとげ


通常奇跡は《渦まく知識》《師範の占い独楽》《思案》《剣を鍬に》の計16枚の1マナカードを搭載していますから、《虚空の杯》が脅威となります。後に出てくるエルドラージたちが《魂の洞窟》のバックアップを受けて出てくるかもしれない以上、《意志の力》の主な当てどころはここしかありません。

加えてエルドラージ側はサイド後にこれらのアーティファクトを増量したり、《師範の占い独楽》を止めるカードをサイドインすることでこちらが態勢を整えるのを妨害してきたりもします。


《無のロッド》《真髄の針》


無のロッド真髄の針


しかし奇跡側にはこれらのアーティファクトすべてを対処できる2種類のカードがあるのです。


払拭の一撃議会の採決


私は奇跡のメインの《思案》を1枚減らし、《払拭の一撃》をメインに1枚とサイドに1枚、搭載することにしました《払拭の一撃》《虚空の杯》《アメジストのとげ》を排除できるのはもちろん、場に出ているエルドラージクリーチャーに対しても有効です。《解呪》のようなカードと違い、他の多くのマッチアップで完全な死に札となってしまうというようなこともありません。

追加の《剣を鍬に》のように使えるこのカードは、メインに入れても何ら問題ないカードです。仮にエルドラージ側の妨害アーティファクトを《意志の力》できなかったとしても、トップすればいいカードが複数枚 (《議会の採決》も含まれるので) まだライブラリーの中に眠っていると思えば随分やりやすいことでしょう。

そして《虚空の杯》さえ排除してしまえば、《師範の占い独楽》なり《思案》なり《渦まく知識》とフェッチなりで《終末》《剣を鍬に》を見つけ出し、エルドラージクリーチャーたちを難なく対処できるはずです。

また別の工夫としては、《基本に帰れ》をメインに1枚サイドに1枚入れたことと、エルドラージを完璧にロックできるカードである《Moat》を2枚サイドに忍ばせたこと、というのがあります。これら2枚のエンチャントを設置してしまえば、あとは《漸増爆弾》で脱出しようとしてくるのを《払拭の一撃》《議会の採決》《意志の力》でケアするだけでいいのです。


基本に帰れMoat


《基本に帰れ》はエルドラージに対して劇的に刺さるほか、グリクシス/BUG/RUG/ジェスカイなどあらゆる種類の《秘密を掘り下げる者》デッキに対しても対戦相手が全く警戒しないカードということもあり有効だと、私自身の体験で実証済です。純正2色かつ《Tundra》2枚というレシピを使っているのはそういった理由からで、これにより《不毛の大地》《血染めの月》でこちらをマナトラブルに陥れようとしてくる相手に対しても耐性が付くことは言うまでもありません。

サイドボードの《謙虚》《Moat》ほどエルドラージにとって致命的なカードというわけではないですが、その代わりエルフやリアニメイト、《実物提示教育》デッキに対してもサイドインできます。

主な勝ち手段は、勝ち確の盤面になるまでのアドバンテージ供給源としての役割を果たしてくれる《精神を刻む者、ジェイス》になります。《精神を刻む者、ジェイス》がいる状況でターンが返ってきたらほとんど勝ったようなもので、「-12」能力の奥義が大抵ゲームを終わらせてくれるでしょう。



このデッキにとって相性の悪いマッチアップは?

【グランプリ・プラハ2016】は、残念ながら9-4-1ドロップに終わりました。負けたのはジャンド、奇跡同型、そして続唱BUGが2回でした。

続唱BUGは最も相性が悪いマッチアップだと思います。《ヴェールのリリアナ》《精神を刻む者、ジェイス》といったこちらにとって極めて脅威となるカードがありますし、《トーラックへの賛歌》《突然の衰微》《師範の占い独楽》《相殺》が場に定着するのを許しません。それに加えて《断片無き工作員》《祖先の幻視》でカードアドバンテージもとってきます。

このマッチで一番重要なのはおそらく《天使への願い》なので、続唱BUGにたくさん当たると思うのであれば、サイドボードに2枚目の《天使への願い》を入れておくといいかもしれません。続唱BUGもまたエルドラージに強いデッキなので、現在メタゲーム上ではかなり良い位置に立っています。

ジャンドも続唱BUGと同じような構造で、したがって同様に奇跡にとってあまり良いマッチアップとは言えません。

ですがそれ以外のデッキは、すべて相性が良いマッチアップだと思います。


GPプラハで経験した長時間のゲーム


Round 3: BUGデルバー

ライフ1点で《精神を刻む者、ジェイス》の奥義が決まり、45分にも及ぶ熱戦だった1ゲーム目が終了した後で、私のマリガン中に対戦相手が残り時間では勝てないと判断してマッチを投了しました。ですがそれでも私たちは、大きなイベントの決勝戦が決着したかのように清々しく握手を交わすことができました。互いに非常に複雑なゲーム展開に頭を悩ませつつも、どちらも可能な限り早くプレイしていたからです。

最終的には、対戦相手にミスがあったとすれば、私が一時《師範の占い独楽》をライブラリトップに置いていたターンに彼が《精神を刻む者、ジェイス》をプレイしたシーンがあったのですが、そこで「+2」で私の《師範の占い独楽》をボトムに置くのではなく「0」能力を起動したことだったのだろう、という話になりました。その時点でおそらく彼の敗勢が決定的になったのだろうと思います。


Round 8: エルフ

1ゲーム目で私はダブルマリガンをしましたが、誤って初期手札を6枚引いてしまいました。ジャッジを呼んだところ、「対戦相手に手札を見せた上でそこから1枚選んで捨てて5枚にするか、トリプルマリガンして4枚で始めてください」とのことだったので、私はデッキを知られるよりは良いと考えてトリプルマリガンを選択しました。

このときの私の考えとしては、フェッチだけ置いてターンを返し、対戦相手が何のデッキをプレイしているのかわかった時点で1ゲーム目を投了することで、そのデッキに対する完璧なサイドボーディングを行った状態で2ゲーム目と3ゲーム目に臨み、2-1で勝利する……というものでした。なので、私は1ターン目に《師範の占い独楽》をプレイせずにターンを返しました。

ところが対戦相手がエルフクリーチャーを場に大量に並べたので、私は4ターン目のエンド前に《渦まく知識》をプレイして次のターンに《終末》を「奇跡」してから、《基本に帰れ》を設置しました (エルフデッキには基本地形は《森》が2枚しか入っていないのです)。

そこから50分をかけ、ライフ1を残して何とか1ゲーム目を勝つことができました。つまりトリプルマリガンの挙句に1-0でマッチを勝利したことになります。「投了しない得」ですよ!


Round 11: エルドラージ

3ゲーム目に私は《基本に帰れ》を設置しましたが、対戦相手はその3ターン後に《漸増爆弾》でこれを破壊すると、次のターンにフルタップでクリーチャーを全力展開してきました。私は《終末》を「奇跡」してから再び《基本に帰れ》を設置し直し、数ターン後には《Moat》《謙虚》も貼りましたが、彼は投了せずに何らかのトップデッキを狙っているようでした。

そこから私が最終的にゲームに勝つためには、《精神を刻む者、ジェイス》を探し出し、5ターンかけて「+2」能力を起動した上で奥義を発動させ、そこから「+2」能力を起動しながらさらに7ターンを過ごす必要があります。

事ここに至って、私は毎ターン、「+2」能力を相手に起動した上で相手のライブラリトップを見ることすらなく「そのまま」と言い、ディスカードしてターンを返す……それだけを繰り返し続け、結局その13ターンをわずか5分未満でプレイしてマッチに勝利しました。



各マッチアップで実際に行ったサイドボード




















私がそうだったように、皆さんが奇跡を使って楽しんでくれることを願っています。ですがこのデッキを使いこなすにはたくさんの練習が必要だということを忘れないでください。

私自身に関して言えば、もしまたレガシーをプレイする機会があれば、そのときも間違いなく奇跡デッキを使用していることでしょう。


Jeremy Dezani,
Hareruya Pros



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