プロツアー『異界月』現地レポート 2日目・3日目編

伊藤 敦



 【1日目編】に引き続いて、今日は【プロツアー『異界月』】の2日目と3日目のHareruya Prosの模様をお伝えします。



■ プロツアー2日目・ドラフトラウンド

 プロツアーも折り返しに入り、残り8回戦。2日目の運命を占うセカンドドラフトが幕を開けました。





 ここでは高橋 優太選手が非常に強力な赤黒デッキをドラフトし、見事3-0で9-2、スタンディング7位まで勝ち上がります。


熱錬金術師謎の石の断片霊魂破


 2枚ずつの《熱錬金術師》《謎の石の断片》、そして3枚の《霊魂破》で本体を一瞬にして焼き尽くすコンセプトデッキで、同卓で同じく2-0で勝ち上がっていたAndrew “Gainsay” Cuneo選手を苦にせず打倒していました。

 また、津村 健志選手も堅実な青白でプレイングを生かして3-0と調子をあげてきたほか、齋藤 友晴・森 勝洋選手両名も2-1でまとめあげ、7-4で残りスタンダードラウンド5戦全勝にかけます。

 一方で、ここで6-2ラインだったJeremy Dezani選手が残念ながら0-3してしまい大きく失速。トップ8戦線から脱落することとなりました。



■ プロツアー2日目・スタンダードラウンド

 残り5回戦。トップ8ラインは4敗のオポネント上位のため、この時点で4敗以内にいないとトップ8の可能性はありません。

 そんな中で9勝2敗の高橋選手は相当良い位置につけていたのですが、スタンダードラウンドの初戦に立ちはだかったのは今回トップ8に入ったSamuel “Smdster” Pardee選手。




※画像は【Magic: the Gathering 英語公式ウェブサイト】より引用させていただきました。



 【Face to Face Games】が開発した「黒緑『昂揚』」を前に高橋選手はフィーチャーマッチで敗北を喫してしまいます。

 さらに高橋選手への試練はまだ続きます。




 ここにきての日本人対決、しかも相手は前日に殿堂プレイヤーに選出されたばかりの渡辺 雄也選手。

 負けた方がトップ8争いにおいて大きく後退する厳しい戦い……しかし高橋選手はこの正念場の一戦でどうにか勝利を収めると、第15回戦のReid Duke選手との戦いも勝利し、どうにか3敗のまま迎えた最終戦でLuis Scott-Vargas選手と無事IDすることができたのでした。

 3敗1分はほぼトップ8入りが確定しているラインです。席を立った高橋選手に「長かったね」と話しかけたところ、「本当に。10年かかった」と答えてくれたのが印象的でした。

 高橋選手がプロツアーに初めて出場したのは【2005年のプロツアー・ロサンゼルス】。そこから10年と少しあまりの間、34回ものプロツアーに出場し、その中で双頭巨人戦リミテッドで行われた【プロツアー・サンディエゴ2007】で山本 賢太郎選手とともに準優勝を収めてはいますが、個人戦でトップ8に入ったことは一度もありません。

 とはいえ高橋選手が全く勝っていないかというとそんなことはなく、いつもあと一勝が足りずトップ8を逃し続けてきたのです。それだけに今回のトップ8は高橋選手にとって「ようやく届いた」という思いでしょう。万感の思いがこみ上げてくる中でトップ8の発表を待ちます。


 その一方で、最終16ラウンド終了後に他の試合の結果を固唾を飲んで見守るもう一人のHareruya Prosの選手がいました。





 森 勝洋選手。初日を5-3で終えた彼は、2日目のドラフト初戦を落とすものの、なんとそこから7連勝。12勝4敗、オポネント勝負で8位に滑り込めるかどうかというラインまでこぎつけたのです。

 「あとは50%だね」 森選手がトップ8に入るには、Reid Duke選手と行弘 賢選手との対戦がDukeの勝利で終わる必要があります。

 やがて……、ついに、その時が訪れました。




 高橋 優太選手、トップ8!

 そして行弘選手が最終戦を勝利したため、森選手は9位に終わりました。

 あと一勝あれば……というところですが、森選手いわく「やりきった結果なのでしょうがない。2日目頑張ったよ、俺」ということでした。



■ Hareruya Pros2日目の成績まとめ

プレイヤー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 成績 デッキ
高橋 優太×××12-3-1 (トップ8)バントカンパニー
森 勝洋××××12-4 (9位)バントカンパニー
齋藤 友晴××××××10-6 (44位・賞金圏内)バントカンパニー
Jeremy Dezani×××××××9-7 (85位)白黒コントロール
井川 良彦××××××××8-8 (124位)赤緑『昂揚』ランプ
Petr Sochurek×××××××7-7-1ドロップ青白スピリット
八十岡 翔太××××××××6-8ドロップ青黒ゾンビ『現出』
津村 健志×××××××7-7ドロップスゥルタイ『昂揚』コントロール
Michael Bonde×××××2-5-1 (初日敗退)スゥルタイ『現出』


 9人参加したHareruya Prosのうち、賞金圏内まで勝ち残れた選手が3人。とはいえうち1名はトップ8でうち1名は9位ということからすると、チームとしては上首尾と言えるでしょう。

 各プレイヤーが使用したスタンダードのデッキリストは後日に各人のブログに掲載されると思いますのでそれをお待ちいただくとして、ひとまず何人かに使用したスタンダードのデッキの感想を聞いてみました。


齋藤「使ったデッキは、バントカンパニー界では結構良い構成だったと思う。会場にいたデッキも、もちろん完成度はこっちの方が低いけれど、『昂揚』とか『現出』とかどれも試したようなデッキばかりだったしね。ただ、ゾンビはもう少し試してみても良かったかな」

井川「デッキは強かったと思うので、スタンダードのデッキ選択には満足しています。今回のトップメタであるバントカンパニーには五分で戦えて、バントカンパニーをメタった《衰滅》《闇の掌握》デッキには軒並み有利がつくので。ただ練習の段階でも組んでいて不利だとわかってはいたんですが、《老いたる深海鬼》デッキを持ち込む人がどれくらいいるのか未知数で、それが蓋を開けてみたら予想より多かったのが厳しかったですね」

八十岡「ひたすら土地2と土地5の手札ばっかり来て楽しかったよ。やはりバントカンパニーだね。ていうか《墓所破り》4枚のデッキなのに10マッチやって1回も1ターン目に出してないんだけど!どうなってるの!」

津村「ガガッ……ツーツー……ピーーーーーーーーーー……… (へんじがない。ただのしかばねのようだ)



■ プロツアー3日目・高橋 優太 対 Owen Turtenwald

 こちらは【カバレージ】をご覧ください。

 このシングルエリミネーション、高橋選手は準優勝以上で世界選手権の権利とワールド・マジック・カップ2016の日本代表キャプテンとなる資格を得られるというところだったのですが、世界でも指折りの強豪であるOwen Turtenwald選手相手に惜しくも準々決勝敗退となりました。


約束された終末、エムラクール即時却下老いたる深海鬼


 《約束された終末、エムラクール》を誘発型能力ごと打ち消す《《即時却下/Summary Dismissal》など見せ場はありましたが、《過去との取り組み》で何度も回収される《約束された終末、エムラクール》を前に、高橋選手はついに膝を屈しました。



■ プロツアー『異界月』を終えて

 さて、今回のプロツアー『異界月』が終わったことで、同時にプロシーズンとしては2015-2016シーズンが終わりを迎えたことを意味しています。

 しかしHareruya Prosにはすぐにまた新シーズンの戦いが待っています。

 9月の第1週に開催されるマジック:ザ・ギャザリング世界選手権2016、出場できる日本人は今回の結果からHareruya Pros・八十岡 翔太選手、渡辺 雄也選手、玉田 遼一選手・瀧村 和幸選手の4名に決まりました。

 11月に開催されるワールド・マジック・カップの日本代表も、Hareruya Pros・八十岡 翔太選手を中心に、有田 賢人選手・竹下 徹選手、そしてあと一人を待つのみとなっています。

 そして時期は前後しますが、いよいよ10月にはプロツアー『カラデシュ』がホノルルで開催となります。

 はたしてHareruya Prosは連続でトップ8にプレイヤーを送り込むことができるのか?

 これからプロシーンでますます存在感を増していくであろうHareruya Prosを、どうか応援よろしくお願いします。

 それと、今回いろいろと拙い部分があって申し訳ないのですが、次回のホノルルでもこういった (あるいはまた違った形の) 現地レポートをお届けできればと思いますので、お付き合いいただけると幸いです。

 それではこの辺でお別れといたしましょう。次回、10月のホノルルレポートをお楽しみに!



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