スタンダード・デッキ・ピックアップ! -白赤「機体」-

渡辺 和樹



 『カラデシュ』が発売され、最初の週末が終わりました。皆さん、新しい次元へのプレインズウォークは無事に終わりましたか?




 ボックスを購入した人は、パックを剥き終わって一喜一憂していることでしょう。シングルを購入した人は、早速新しいデッキを試しに大会へ参加した頃でしょうか。

 今日から10月14日(金)にホノルルで開催されるプロツアー『カラデシュ』までの2週間、晴れる屋の大会や、世界各地で活躍したデッキと、注目のカードをご紹介していきます。

 発売当初は有名でなかった1枚のカードが、一躍トップメタのキーカードにもなり得るのが、新環境の、そしてマジックの面白さです。短い間ではありますが、お付き合いいただければ幸いです。




 さて、「新セット発売後の週末が終わった」ということは、「環境の初動を決める大きな大会が終わった」ということでもあります。そう、【StarCityGames.com Standard Open Indianapolis】です。

 “新セット発売後のSCG”といえば、新環境で、そしてプロツアー前に唯一開催される大型大会。世界中のプレイヤーが注目する、新環境の試金石とも言える大会であり、プロツアー『カラデシュ』で勝利し、環境を席巻するデッキの鍵は、このSCGにあると言えるでしょう。

 本日ご紹介するのは、そのSCGで優勝したこちらのデッキです。



Chris VanMeter「白赤『機体』」
SCG Standard Open(1位)

10 《平地》
6 《山》
4 《感動的な眺望所》
4 《鋭い突端》

-土地 (24)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《模範的な造り手》
4 《経験豊富な操縦者》
4 《無私の霊魂》
3 《模範操縦士、デパラ》
2 《ピア・ナラー》

-クリーチャー (21)-
4 《石の宣告》
2 《蓄霊稲妻》
4 《密輸人の回転翼機》
3 《高速警備車》
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-呪文 (15)-
4 《流電砲撃》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
3 《稲妻織り》
2 《断片化》
2 《空鯨捕りの一撃》

-サイドボード (15)-
hareruya


模範的な造り手模範操縦士、デパラピア・ナラー


 「白赤『機体』」「白赤人間」「白赤アグロ」と表記の違いはあれども、TOP8の内、5名が白赤の前のめりなビートダウンを選択しています。(【TOP64 デッキリストは、こちら】)

 まさに環境最速を決める戦い。各種「機体」の活躍にスポットを当てたいところなのですが……何よりも話題になったのは、このカードです。


密輸人の回転翼機


 《密輸人の回転翼機》


 トップ8に32枚!8名が4枚ずつ!

 今まさにもっとも熱い1枚ですね。効果は、2マナ3/3、飛行。搭乗コストは1。そして「カードを1枚引いて、1枚捨てる」という、いわゆるルーター能力を持っています。


ヴリンの神童、ジェイス


 ルーター能力と言えば、『カラデシュ』の発売と同時にスタンダードから姿を消した《ヴリンの神童、ジェイス》!手札の質を高めたり、墓地を肥やして「昂揚」達成の手助けをしたり、マッドネスの始点になったり、と「変身しなくても強い」という評価のとおり、とにかく強力でしたが、我々は懐かしむ暇もなく、新たなルーター能力持ちを手に入れたわけです。

 注目すべきは、ルーター能力が誘発する条件です。こういった戦闘時に誘発する能力は、「戦闘ダメージを与えるたび」と書かれていることがほとんどだったのですが、この《密輸人の回転翼機》は、「攻撃かブロックするたび」


波止場の潜入者


 《波止場の潜入者》との大きな違いが際立ちますね。2ターン目に2マナ3/3飛行が盤面を警備し、動き出せばルーター能力が起動する……うーむ、これは恐ろしい。TOP8の32枚、そのすべてがメインボードから採用されていたというのも納得の強さです。



 ちなみに、《密輸人の回転翼機》をメインボードから4枚採用しているデッキが、発売当日の9月30日に開催された、晴れる屋の平日大会でも結果を残しています



Fukuda Yuuki「白赤ビートダウン」
平日スタンダード14時の部 – 2016/09/30(3-0)

6 《山》
5 《平地》
4 《霊気拠点》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》

-土地 (23)-

4 《模範的な造り手》
4 《スレイベンの検査官》
4 《発明者の見習い》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
3 《模範操縦士、デパラ》
-クリーチャー (23)-
4 《蓄霊稲妻》
2 《癇しゃく》
4 《密輸人の回転翼機》
4 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (14)-
3 《断片化》
2 《大天使アヴァシン》
2 《石の宣告》
2 《停滞の罠》
2 《高速警備車》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《ピア・ナラー》
1 《無許可の分解》

-サイドボード (15)-
hareruya


屑鉄場のたかり屋霊気拠点無許可の分解


 こちらも白と赤のカードでまとめられたビートダウンデッキですが、《屑鉄場のたかり屋》が採用されており、「黒マナが供給できる」ということでサイドボードには《無許可の分解》も採られています。



 ちなみに、「搭乗」コストとして支払うクリーチャーは召喚酔いしていても構いませんが、「機体」は召喚酔いをしてしまいます。忘れることのないようにご注意ください。


ゼンディカーの同盟者、ギデオン反逆の先導者、チャンドラ高速警備車


 環境初期は、サイドボードにも注目です。どんなデッキと出会うか分からない、ということで、様々なカードが並びます。白は《断片化》《停滞の罠》、そして《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が人気のようですね。赤では《流電砲撃》《反逆の先導者、チャンドラ》、そして色を選ばないアーティファクトでは《高速警備車》の姿が目立ちます。




 初期環境の鍵を握るであろう白赤「機体」デッキについて、Hareruya Prosの井川 良彦さんが詳しく解説をしておりますので、ぜひ、お読みください。採用されているカードの理由はもちろん、不採用の理由、そしてメタゲームを見据えたサイドボードの候補まで解説されています。プロプレイヤーによる環境初動のデッキ解説、必見です!




 プロツアーで活躍するのは、どのようなデッキなのでしょうか?最速でライフを削り取るビートダウン?それを押さえつけるコントロール?それとも、まだ見ぬ未知のデッキ……?

 あなたが調整しているそのデッキが、もしかしたら未来のトップメタかもしれません。

 とはいえ、まだまだ環境初期。答えを出すには早急過ぎるでしょう。一緒にゆっくりと、その動向を追っていこうではありませんか。

 それでは、プロツアーまでの2週間、どうぞお付き合いください。



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