カラデシュのデッキを煮詰めよう!

Pierre Dagen

Translated by Tsubasa Tomita


挨拶と『カラデシュ』

やぁ読者諸君、世界選手権も終わり、我々の次なる視線は新たに発売された新セット、『カラデシュ』に向いていると思う。俺みたいなMTGファンなら、プレビューカードを毎日見ていろんなデッキのイメージができているのではないだろうか?

今日はそんな自分で試したかった新たなカードを使った、新たなデッキをいくつか紹介させてほしい。詳しく話す前に『カラデシュ』の個人的な分析した内容を話したい。俺の中では二種類のセットの形式がある。

まずは『ラヴニカへの回帰』などが当てはまる“パワー”を代表とするセットだ。続いてテーロスなどが当てはまる“シナジー”を代表するセットだ。

突然の衰微スフィンクスの啓示ロクソドンの強打者


“パワー”セットは単体で強いカードが色さえ合えばどこでも活躍できるようなセットだと思う。そのカードを中心にカードを選ぶ必要が薄い。《突然の衰微》《スフィンクスの啓示》《ロクソドンの強打者》などが主な例となるカードだ。これらのためにデッキを組む必要性がとても少ない。

そして“シナジー”セットは基本的に単体ではあまり強くない。だがそのカードを中心にデッキを組むと環境を制することのできる凄まじいデッキができる。《海の神、タッサ》《岩への繋ぎ止め》《アスフォデルの灰色商人》などがスタンダードに居た時はかなり大きな存在だったが、それはそれらのカードを生かすためにデッキがデザインされていたからである。

海の神、タッサ岩への繋ぎ止めアスフォデルの灰色商人


『カラデシュ』は俺から見たら確実に”シナジー”セットだ。いくつか個々で動けるカード良いカード(基本的に機械巨人やプレインズウォーカー)がある。だが多くのメカニックが知れ渡り、超革新的なデッキが登場し、スタンダードを席巻するかもしれない。この記事で俺は二つのメカニックを体験してみたい。

デッキ1: UW《パンハモニコン》

今回収録されている4マナのレアアーティファクトたち(《ギラプールの宇宙儀》とその類)はとても興味深い。すべてスタンダードで大きな波を起こせるかもしれない(《霊気貯蔵器》に関してはあまり個人的に期待はしていない)。だが実現させるためには努力は必要だ


Pierre Dagen – 青白 パンハモニコン
テストデッキ

4《進化する未開地》
4《大草原の川》
2《港町》
4《霊気拠点》
3《島》
5《平地》
1《荒地》
1《発明博覧会》
2《抵抗者の居住地》

-土地 (26)-

3《光り物集めの鶴》
4《面晶体の這行器》
4《反射魔道士》
4《空中生成エルドラージ》
4《変位エルドラージ》
2《発明の天使》
3《希望を溺れさせるもの》

-クリーチャー (30)-
4《密輸人の回転翼機》
4《パンハモニコン》
2《領事の旗艦、スカイソブリン》

-呪文 (4)-
hareruya

パンハモニコン


このデッキは《パンハモニコン》を使い倒すために最初に実行したデッキである。このカードを評価する際に問題となるのは、「このカードを使うだけの価値を見出すためには、このカードを出した後にはたして何回のETB能力を、しかも《呪文捕らえ》のものを除いて、発動させないといけないのか」ということだ。

反射魔道士領事の旗艦、スカイソブリン


一回だと元は取れないね(現スタンダードでは一回で4マナ投資して元の取れるETB効果を持つカードは存在しないと思っている、まぁ機械巨人たちならかなり元を取る位置に近い)、2回ならまぁ妥協点辺りか、でもこの動きをするためにテンポを失ってる可能性があり、あまり結果に興奮はしない。3回でやっと納得のいく見返りが膨らんでくるところだと思う。基本的に《反射魔道士》《領事の旗艦、スカイソブリン》《希望を溺れさせるもの》《光り物集めの鶴》の内、三つのETB能力を合わせて使えれば4マナ投資した元以上は確実に戻ってくるだろう。

まず軸となる部分を把握したところで、次はゲームプランをまとめなきゃならない。個人的に一番大きな問題点は4マナの自ら何もしないアーティファクトを唱える際、手札に複数のカードを持ってないといけないことだ。別の言い方をすれば、《パンハモニコン》をゲームに影響させるためには3か4ターン目に置かなければならないだろう。これを置くことで間違いなくテンポで相手に劣ると思う。そのために共にする色を青と白を選んだのは必然である。《反射魔道士》1枚がETBを2回使い始めたら最悪な事態になることは間違いない。さらに失っていたテンポも1枚で劇的に解決するのではないか?

光り物集めの鶴


残りのデッキは説明は必要ないと思う。だが多くのとても良いシナジーを提供してくれる。《光り物集めの鶴》なんてもう大好きだ。《パンハモニコン》を探す手助けをしてくれる。さらに《パンハモニコン》を既に持っていても別の物を選べる可能性もあり、今後のゲームプランも左右できる。

密輸人の回転翼機発明の天使


それとは別に、青白テンポみたいな動きもできる。空中から《空中生成エルドラージ》《密輸人の回転翼機》で制し、《反射魔道士》で陸を制す。《発明の天使》はこの組み合わせでとても良い。ETBが《パンハモニコン》で反応するだけでなく、《パンハモニコン》を引けない場合でも多くのクリーチャー、とくにその辺に転がっている末裔トークンに影響を与え、劇的とは言わないまでも堅実なテンポゲームで制することもできる《変位エルドラージ》もまたこのデッキで輝くカードでもある。デッキ内の大抵のカードと《変位エルドラージ》はシナジーがあり、ロングゲームを見た時このカードで多くの価値をゲーム中見出せると思う。

変位エルドラージ希望を溺れさせるもの


最後に、もし気づいてないのであれば、このデッキはとてもパワフルなコンボフィニッシュが用意されてる。テストの時こういう組み合わせを試すんだ。《パンハモニコン》《変位エルドラージ》《希望を溺れさせるもの》をもしコントロールしているのであれば、無限に《希望を溺れさせるもの》《変位エルドラージ》でブリンクすることができ、無限のマナを産みながら、無限の末裔トークンを作り、無限にブリンクもできる!

これが可能ならもう相手のクリーチャーを全部タップでき、《反射魔道士》で相手のクリーチャー全部バウンスもできるし、もしかしたらもっとすごいこともできるのかもしれない。《光り物集めの鶴》をブリンクして《領事の旗艦、スカイソブリン》を見つけにいったりさらにキャストして搭乗クルーが用意できるまでブリンクし続けること(末裔トークンは無限に作れるから無限の搭乗を用意することも可能)もできる。

霊気拠点サヒーリ・ライ博覧会場の警備員


こんなことができるならこのデッキは良い感じだと認めてもいいかもしれない。まだ実験段階でいくつか修正点はあると思うが、とても良いデッキの軸ができたと思っている。もっとこのデッキのことを話すなら、《面晶体の這行器》《最後の望み、リリアナ》がいる環境では使いたくない。そして全体除去はクリーチャー同士のシナジーを組み上げるこのデッキにとっては大問題だ。それでも多くのシナジーを実現しながら大半が一定の役割が持てる良いカードを使えていることに満足してるよ。他にも2マナクリーチャーも試してみたい、もしかしたら5枚目の《反射魔道士》の役割が持てるかもしれない《博覧会場の警備員》をアグロマッチングに使えるかもしれない。ちょっと変わったプランとして《霊気拠点》使って赤も入れてしまえば《サヒーリ・ライ》も使えてETB効果はさらに強化できる上に除去にも怖くない。選択肢が多くて悩ましい限りだね。

デッキ2: 赤緑エネルギー

エネルギーカウンターはマジックにおいて6番目の色になりうる存在だろう。これはとても楽しみなメカニックだ。エネルギーを軸としたデッキを作るのも楽しそうだが、今回の目的はエネルギーがマジック最古の戦略デッキ、赤緑ビートとどれほど共存できるメカニックか見てみよう。


Pierre Dagen – 赤緑エネルギー
テストデッキ

4《霊気拠点》
2《燃えがらの林間地》
4《獲物道》
4《山》
10《森》

-土地 (24)-

4《牙長獣の仔》
4《通電の喧嘩屋》
4《導路の召使い》
4《ラスヌーのヘリオン》
4《不屈の追跡者》
4《逆毛ハイドラ》
4《新緑の機械巨人》

-クリーチャー (28)-
4《焼夷流》
4《蓄霊稲妻》

-呪文 (8)-
hareruya

通電の喧嘩屋ラスヌーのヘリオン


ここはシンプルに始めよう。最も良いアグレッシブなクリーチャーを束ね、ゲームを速やかに終わらせてみたい。《通電の喧嘩屋》《ラスヌーのヘリオン》が良さそうだ。彼らをマナカーブ順に置くと、3ターン目に8点叩き出すことができる。とても早く、簡単に実現できる。両クリーチャーがエネルギーがあるとより良く動くことができるからもう少しエネルギー寄りに思考してエネルギーをもっと使うカードを選んでみた。

牙長獣の仔


そんな中見つけた《牙長獣の仔》はとても素晴らしい結果を残してくれている。2マナクリーチャーとしてではなく、序盤に相手はゲームで早めのクリーチャーを殺しに来るからそういった展開上、大半がエネルギーを消費せずに残っているからだ。逆にこの2マナクリーチャーを6ターン目に引いて来たら(本来この段階の2マナクリーチャーは輝かないが)4/4または5/5で出すこともできる。とてもアグレッシブな《森の代言者》ってイメージすればどれだけの高い評価か分かるであろう。

焼夷流蓄霊稲妻


一つ知ってほしいことがある。火力系の呪文は本体に当てることが多いと思う。《焼夷流》は説明不要だと思うが、《蓄霊稲妻》はパンプ呪文としても使える。簡単なことだ、呪文を打ち、その呪文にエネルギーを使わなければエネルギーは溜まるだけ、あとは《牙長獣の仔》にエネルギーを使わせるか、《ラスヌーのヘリオン》にもう1ターン生き延びらせることもできる。

新緑の機械巨人逆毛ハイドラ


最後はこのデッキのカーブの頂点、ここには着地時、ゲームに大きなインパクトを与えられ、自身でゲームを制する力があるものが良い。《新緑の機械巨人》なんかどうだろうか。膠着した盤面に大きな影響を与え(4つのカウンターを《通電の喧嘩屋》に乗せると強いと思う)《逆毛ハイドラ》ならコントロール相手に脅威となるだろう。呪禁があるだけで相手はとても嫌がるだろう。そして《蓄霊稲妻》があればこの脅威をインスタントのように付けることができる。これで相手は頭を抱えるだろう。

結局どれぐらい良いデッキなのか?って聞くなら、第一段階でこの出来ならとても良いデッキと言えるだろう。そのうちメタはこれに対応できるようになると思うが、新環境の1週目にはこういったデッキが輝くことが多いだろう。ぜひ皆さんにこの時期だからこそこのデッキたちを試してもらいたい!

ではまた次回!

Pierre Dagen

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