スタンダード・デッキ・ピックアップ! -黒緑「昂揚」-

渡辺 和樹



 『カラデシュ』の発売以降、活躍しているのは新たなデッキだけではありません。既存のコンセプトはそのままに、新カードによって強化されたデッキも存在します。「現出」は、その代表例と言えるでしょう。




 最終回となる今回ご紹介させていただくスタンダードのデッキは、『カラデシュ』参入後の新環境でさらに強化されたこちらのデッキです。



Dasein「黒緑『昂揚』」
Competitive Standard Constructed League – 2016/10/08(5-0)

8 《沼》
7 《森》
4 《花盛りの湿地》
4 《風切る泥沼》

-土地 (23)-

4 《節くれ木のドライアド》
4 《残忍な剥ぎ取り》
2 《森の代言者》
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
2 《新緑の機械巨人》
1 《害悪の機械巨人》
2 《不屈の追跡者》

-クリーチャー (17)-
4 《ウルヴェンワルド横断》
2 《顕在的防御》
4 《闇の掌握》
3 《過去との取り組み》
4 《密輸人の回転翼機》
3 《最後の望み、リリアナ》

-呪文 (20)-
4 《精神背信》
2 《破滅の道》
2 《餌食》
2 《死の重み》
2 《発生の器》
2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
1 《約束された終末、エムラクール》

-サイドボード (15)-
hareruya


節くれ木のドライアド闇の掌握過去との取り組み


 前環境で登場した黒緑「昂揚」は『カラデシュ』でも活躍を続けています。

 「昂揚」は『イニストラードを覆う影』で登場したキーワード能力であり、墓地にあるカードにカード・タイプが合計4種類以上含まれるときに、クリーチャーや呪文が強化されます。

 「クリーチャー、インスタント、ソーサリー」は墓地に落ちやすいので、「土地、エンチャント、アーティファクト、プレインズウォーカー」を墓地に落としていく手段が必要です。そしてその手段は、『カラデシュ』によって強化されています


密輸人の回転翼機


 まずは、新環境を席巻している《密輸人の回転翼機》です。どのデッキでも活躍をしている印象ですが、「昂揚」との相性も抜群です。「1枚引いて、1枚捨てる」という能力はキーカードをドローするだけでなく、墓地のカードを増やせるという点でも強力ですね。捨てる1枚は自分が選ぶので、「昂揚」を達成するために必要なカード・タイプを選ぶことが可能です。


 そして、『カラデシュ』で数を増やしたアーティファクト・クリーチャーは2種類のカード・タイプを持っているため、「昂揚」達成を手助けしてくれる点も忘れてはいけません


害悪の機械巨人


 他の機械巨人と同様に、《害悪の機械巨人》も非常に強力な1枚です。クリーチャーを破壊してライフゲイン、そして5/4が盤面に残るわけですからね。忘れがちな威迫も、相手のブロッカーを減らせる能力と噛み合っている点に注目です。


 墓地のカードタイプを増やして「昂揚」を達成すれば、このデッキのパワーは跳ね上がります


残忍な剥ぎ取り


 このデッキの主力である《残忍な剥ぎ取り》2マナ、4/4、トランプルに! ダメージを与えれば能力も誘発できて、まさに強力!


墓後家蜘蛛、イシュカナ


 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》も蜘蛛・トークンを引き連れて盤面に這い出てきます。その状態で能力を起動すれば、4点ダメージ! 蜘蛛・トークンは《密輸人の回転翼機》に「搭乗」することもできますし、タフネスが2である点にも注目ですね。


ウルヴェンワルド横断


 《ウルヴェンワルド横断》は序盤は土地をサーチして土地事故を防止し、「昂揚」達成後は各種フィニッシャーをサーチ、とゲームの終盤まで頼りになる1枚です。現在の盤面に対して最適な1枚を探しましょう。


発生の器約束された終末、エムラクール死の重み


 また、墓地のカード・タイプを増やしていく「昂揚」と相性が良い《約束された終末、エムラクール》はサイドボードに潜んでいます。《発生の器》《死の重み》という墓地に落としやすいエンチャントも採用されているので、サイドボード後は《約束された終末、エムラクール》をフィニッシャーに据える、というプランも可能となっています。



 本日は、黒緑「昂揚」をもう一つご紹介しておきます。



HyPPeR「黒緑『昂揚』」
Competitive Standard Constructed League – 2016/10/07(5-0)

8 《森》
8 《沼》
4 《花盛りの湿地》
4 《風切る泥沼》

-土地 (24)-

4 《節くれ木のドライアド》
3 《残忍な剥ぎ取り》
2 《不屈の追跡者》
4 《精神壊しの悪魔》
2 《新緑の機械巨人》
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《害悪の機械巨人》

-クリーチャー (18)-
2 《過去との取り組み》
4 《闇の掌握》
1 《殺害》
3 《ウルヴェンワルド横断》
1 《死の重み》
4 《密輸人の回転翼機》
3 《最後の望み、リリアナ》

-呪文 (18)-
3 《死の重み》
3 《精神背信》
2 《人工物への興味》
2 《失われた遺産》
2 《破滅の道》
1 《自然のままに》
1 《集団的蛮行》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード (15)-
hareruya


殺害花盛りの湿地ウルヴェンワルド横断


 デッキリストに大きな違いはありませんが、メインボードに《精神壊しの悪魔》が4枚採用されている点に注目です。


精神壊しの悪魔


 4マナ、4/5、飛行、トランプル、という優秀なスペックを持ちながら、「昂揚」を達成していない場合は4点ダメージを受けてしまうという強烈なデメリットを持っています。

 『イニストラードを覆う影』発売当初は使いづらい印象が強かったのですが、《過去との取り組み》などの「昂揚」達成を助けるカードが『異界月』で登場して評価が向上しました。そして、先述の『カラデシュ』のカードによってさらに活躍しやすくなった印象を受けます。


最後の望み、リリアナ


 《最後の望み、リリアナ》は、まだまだ姿を見せそうですね。「+1」能力で相手のクリーチャーのパワーを減らして、「搭乗」コストを満たせなくすることも可能です。黒のデッキと対戦する際は、「3ターン目に盤面に現れるかもしれない」と意識してゲームを進めていきましょう。



 前環境でも活躍した黒緑「昂揚」は、環境を最高速で駆け抜けるデッキのような「派手な展開」とは違い、序盤から墓地のカード・タイプを増やし、「昂揚」達成後の有利な状況を目指していくところに一味違った面白さがあります。新カードによって新たな展開も可能となっているので、ぜひ、大会で使ってみてください!




 さて、今回で「スタンダード・デッキ・ピックアップ」は、一旦終了となります。

 晴れる屋の大会を中心に、新環境で活躍を見せている新たなデッキをご紹介してきましたが、いかがでしたか? 『カラデシュ』のスタンダードを概観し、新環境を把握する手助けが少しでもできていたのなら幸いです。そして、「スタンダード、やってみよう」「このデッキリストを参考にして、大会に出てみよう」と思ってくださった方がいたのなら、これ以上の喜びはありません。



 プロツアー『カラデシュ』の開幕まで、あと数時間になりました。どのようなデッキが活躍し、それによって、プロツアー後のスタンダードはどうなるのか。そして、この「スタンダード・デッキ・ピックアップ」で紹介したデッキは、どのような立ち位置になるのか。非常に楽しみです。

 今回はホノルルで開催されるため、日本時間では日付変更線の関係で15日(土)の午前4:00から始まります。



 この週末は寝不足になるマジック・プレイヤーが多いはず……もちろん、私もその一人です。Hareruya Prosの応援をしながら過ごそうかと思います。皆さんも、応援よろしくお願いいたします!



 この連載を締めくくるために、まつがん(伊藤 敦)さんの人気連載【週刊デッキウォッチング】の冒頭を飾る言葉をお借りしたいと思います。



 “マジックの華は、デッキリストだ”



 プロツアー『カラデシュ』で咲き誇る華に思いを馳せつつ、またどこかで!ありがとうございました!



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