「エネルギー」に「搭乗」と。『カラデシュ』から登場した新しいキーワード能力をフィーチャーしたデッキは、最近では毎日のように産声をあげています。
《静電気式打撃体》と強化呪文を組み合わせて一撃必殺の大ダメージを狙ったり……
- 2016/10/07
- スタンダード・デッキ・ピックアップ! -赤緑ビートダウン-
- 渡辺 和樹
《霊気池の驚異》から4ターン目に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を叩き付けたり……
『カラデシュ』ならではのコンセプトをもったデッキたちは、その実力が未知数であることも含めて、新鮮な感触と驚きを、そして未体験の楽しさを与えてくれます。
でも、『カラデシュ』で生まれたのは新しいキーワード能力を使ったデッキばかりではありません。「現出」や「昂揚」など、今では慣れ親しんだデッキたちも『カラデシュ』からの新顔が加わったことで生まれ変わっているのです。
本日ご紹介するのは、見たことはある、でも『カラデシュ』で何かが確実に変わったデッキです。
◆ 生まれ変わった「現出」!
4 《島》 3 《山》 1 《沼》 4 《窪み渓谷》 3 《燻る湿地》 4 《進化する未開地》 3 《尖塔断の運河》 2 《霊気拠点》 -土地(24)- 4 《査問長官》 3 《傲慢な新生子》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《秘蔵の縫合体》 4 《憑依された死体》 2 《不憫なグリフ》 4 《老いたる深海鬼》 -クリーチャー(25)- |
4 《安堵の再会》 3 《コジレックの帰還》 4 《密輸人の回転翼機》 -呪文(11)- |
4 《稲妻の斧》 3 《儀礼的拒否》 3 《集団的蛮行》 2 《血統の呼び出し》 2 《膨らんだ意識曲げ》 1 《コジレックの帰還》 -サイドボード(15)- |
『異界月』から登場した「現出」というキーワード能力を活かした青赤黒の墓地利用デッキです。
このデッキの核は、知っている方にとってはお馴染みの『現出コンボ』です。
墓地からの帰還能力をもつ《秘蔵の縫合体》と《憑依された死体》は、少ないマナコストで戦場に登場できること、再利用できることから、「現出」のお供としてとても優秀なのです。デッキが最高の動きを見せると、4ターン目に《老いたる深海鬼》が4枚の土地を寝かしつけながら、《コジレックの帰還》の誘発効果で戦場を一掃するなんて、むちゃくちゃなことが起きます。
ただ、そんな強力な一面を持っているかわりに、墓地を経由しなくては《秘蔵の縫合体》も《憑依された死体》も並み程度のスペックしか持たない、という弱点を抱えたデッキでもあるのです。そのため、そんなピーキーな彼らをどれだけスムースに墓地に送り込むことができるのか。その工夫の良し悪しこそがデッキの強さを支えていました。
《ヴリンの神童、ジェイス》や《群れの結集》をローテーションによって失い、暗雲が立ち込めていた「現出」でしたが、『カラデシュ』には、かつてと同じくらい、いや、それ以上の逸材が眠っていました。
その逸材こそが《査問長官》《安堵の再会》《密輸人の回転翼機》の3枚です。
◆ 墓地エンジンを支える期待の3枚
《査問長官》はデッキが待望していた強力な1マナ域です。これ1人で6枚の墓地をこさえてくれるため、《憑依された死体》や《秘蔵の縫合体》に最高速かつ確実にアクセスしてくれる逸材なのです。また、《密輸人の回転翼機》に「搭乗」したり、《屑鉄場のたかり屋》の餌になったりと、エネルギーを使い果たした後も八面六臂の活躍を見せてくれます。
《安堵の再会》は、大規模な《苦しめる声》的なカードですが、こと”手札からカードを捨てること”に価値のあるデッキにおいては超上位互換ともいうべく存在です。手札に抱えて困っていた《コジレックの帰還》《憑依された死体》《秘蔵の縫合体》を一瞬で《老いたる深海鬼》に変えてしまいます。《秘蔵の縫合体》を引けば引くほどデッキは強い動きを見せるため、単純にデッキを掘り進み、より多くのカードを見ることができる。この点だけでも優秀だといえるかもしれません。
右を見ても左を見てもヘリコプター。そんな現環境では、どれだけ相手よりも強く《密輸人の回転翼機》を使えるか、が問われています。「赤白機体」は《模範操縦士、デパラ》らによるサイズに勝機を見出したようですが、「現出」は戦闘時に誘発するルーター能力で差をつけようと企んでいます。他のデッキではともかく、手札を墓地に送ることにメリットがある「現出」にとって、ルーター能力には額面以上の価値があるのです。
《査問長官》や《傲慢な新生子》が「搭乗」要員としても輝き、《憑依された死体》のおまけで持て余していた1/1のスピリットも「搭乗」できることによって付加価値が生まれました。
◆ 《屑鉄場のたかり屋》という逸材
以前から《秘蔵の縫合体》と《憑依された死体》による粘り強さが魅力的なデッキでしたが、『カラデシュ』からの新人、《屑鉄場のたかり屋》によって長所に磨きがかかりました。
粘り強いとはいえ、戦場を立て直すために《憑依された死体》の帰還能力に要する”手札2枚”が辛かったものですが、《屑鉄場のたかり屋》さえいれば何のそのです。複数の《秘蔵の縫合体》と《屑鉄場のたかり屋》が不眠不休の攻勢を作り上げてくれます。
墓地にたくさんのクリーチャーが落ちるこのデッキにとって、《屑鉄場のたかり屋》の帰還能力にかかるコストは屁でもありません。どのデッキを相手にしても必要だった”手札2枚”が、これからはたった2マナを支払うだけでよくなったことから消耗戦において右に出るものはいなくなりました。
◆ サイドボードは弱点を補うように!
こうして一躍強化された「現出」ですが、いまだ環境には致命的な弱点が残っています。
墓地利用と聞くが否や飛び出てくる「現出」にとって最悪のカウンターです。ひとたび5/6に成長されてしまうと《コジレックの帰還》でも落とせなくなるため、できるかぎり迅速な対応が必要になります。「緑黒『昂揚』」「青黒コントロール」「赤黒コントロール」など黒いコントロールにはもれなく採用されているため、この形の「現出」を使う方は、念には念を入れた対抗策を用意しておきましょう。
赤に寄せた形であれば《稲妻の斧》を、黒に寄せた形であれば《悪意の調合》を用意しておくと吉です。前者は速度勝負をする「赤白機体」などのアグロデッキにも有効な1枚で、これのために赤に寄せる価値があるといっても過言ではないかもしれません。
これらは《霊気池の驚異》や《金属製の巨像》といった”普通じゃない”アプローチを見せるデッキへの最高の対抗策です。
墓地を利用する「現出」は、基本的には墓地を利用するカードと、墓地を肥やすカードだけで構築されることが理想になります。そのため、《儀礼的拒否》などサイドボード後の対策でしかないカードの枚数には気を配り、最低限に留めるようにしましょう。
旧環境から『カラデシュ』の支援を受けて更に強力になった「現出」はこれからが楽しみなデッキです。
今回紹介したものは「青赤黒」のものでしたが、「青緑黒」や「黒赤」など、《秘蔵の縫合体》を中心にしたデッキタイプにはまだまだ可能性が溢れています。墓地の数だけデッキの姿があるに違いありません。皆さんも未知なる「現出」の姿を探してみてはいかがでしょうか?
それでは、また明日!
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